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AI-UXを実現する請求書自動分割の裏側

Takamichi Omori
March 25, 2025
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 AI-UXを実現する請求書自動分割の裏側

Tech-AI Meetup ~Webサービス開発におけるAI活用~
https://levtechcareer.connpass.com/event/347974/

私たちが開発しているバクラクは、煩雑な経理業務を効率化するSaaSとして、AIを活用した体験を提供しています。本セッションでは、その一例として 「請求書自動分割機能」 の開発を題材に、AI導入の開発フローと得られた学びを紹介します。AIは「生データの理解」から始まり、誤りを前提としたUXやシステム設計が不可欠です。実際の開発過程を通じて得た知見を具体的に説明し、AIを効果的に活用するためのポイントを共有します。

Takamichi Omori

March 25, 2025
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  1. © LayerX Inc. 2 X: たか @onsd_ 画像を入れてね 自己紹介 Takamichi

    Omori バクラク事業部 AI-UXチーム エンジニア 趣味 - バスケットボール 🏀 - フリースタイルスキー 🎿 ひとこと - 3月前半は裁判員をやってきました󰳌
  2. 3 © LayerX Inc. 「すべての経済活動を、デジタル化する。」をミッションに、 AI SaaSとAI DXの事業を展開 事業紹介 バクラク事業

    企業活動のインフラとなる業務を 効率化するクラウドサービス Fintech事業 ソフトウェアを駆使したアセットマネジ メント‧証券事業を合弁会社にて展開 AI‧LLM事業 社内のナレッジやノウハウをデータ ベース化するAIプラットフォーム AI SaaSドメイン AI DXドメイン
  3. © LayerX Inc.  5 「バクラク」シリーズラインナップ ‧AIが請求書を5秒でデータ化 ‧仕訳 / 振込データを⾃動作成 ‧電帳法‧インボイス制度にも対応

    仕訳‧⽀払処理効率化 ‧年会費無料で何枚でも発⾏可能 ‧カード利⽤制限で統制を実現 ‧すべての決済で1%以上の還元 法⼈カードの発⾏‧管理 ‧帳票の⼀括作成も個別作成も⾃由⾃在 ‧帳票の作成‧稟議‧送付‧保存を⼀本化 ‧レイアウトや項⽬のカスタマイズも可能 請求書発⾏ ‧スキャナ保存データも直接取込み  ‧AI-OCRが書類種別を判定&データ化 ‧[取引先][取引⽇][取引⾦額]での検索 帳票保存‧ストレージ ‧AIが各種申請書の作成をサポート ‧スマホからも申請‧承認可能 ‧柔軟な通知設定 / 承認の催促機能あり 稟議‧⽀払申請 ‧直感的UIで従業員の負担を軽減 ‧Slack連携で打刻や⾃動リマインド可能 ‧わかりやすい残業 / 休暇管理レポート 勤怠管理 ‧AIが領収書を5秒でデータ化 ‧スマホアプリとSlack連携あり ‧領収書の重複申請などミス防⽌機能 経費精算
  4. © LayerX Inc. 7 伝えたいこと ➢ AI機能の開発は「⽣データの理解」から始まる ➢ (現状)AIは間違える前提で、「UX設計」と「フィードバックループ」が必要 ➢

    適切なところに適切な技術を使う ➢ 「モジュール化」を意識することで未来の拡張が容易になる 今⽇のテーマ AIをプロダクトに組み込む際の 従来の機能開発とは異なる観点‧⼯夫
  5. © LayerX Inc. 11 ⼤量に送られてくる紙をどう電⼦化するか 請求書⾃動分割について:課題 ➢ バクラクで処理するには、紙の請求書の電⼦化が必須 ➢ 電⼦化には、⼀般的にスキャナ‧複合機でスキャンを⾏いPCに転送する作業が必要

    ➢ 請求書電⼦化に関する業務フロー 1. 請求書が紙で届く 2. 担当者が請求書ごとに⼿動でスキャン 3. バクラクに転送 4. 請求書の数だけ繰り返す ➢ この作業に⼿間がかかる ◦ 担当者がスキャナの操作にかかりきりになり、待つだけの時間が発⽣してしまう
  6. © LayerX Inc. 12 ⼤量に送られてくる紙を効率よく電⼦化する⽅法 請求書⾃動分割について:課題 ➢ 請求書ごとにスキャンするのは⼤変なので、「まとめてスキャン」する → 複数の請求書が連結されたPDFファイルができる

    ➢ ただし、請求書ごとに処理するためには請求書ごとにファイルを分ける必要がある ➢ Q.「1枚ずつ単純に区切ればもとに戻るのでは?」 ◦ 請求書は複数枚にわたることもあり、1枚ずつ区切るのではうまくいかない
  7. © LayerX Inc. 19 ➢ やったこと:請求書をたくさんみてアノテーションする ◦ 視点:複数の請求書が連結されて⼀つのファイルになっているとき、⼈間はどのようにして分 割しているのか? ◦

    具体的な着⽬点の例 ▪ 取引先名の有無 ▪ ページ数の有無 ▪ 書類番号など、同じ書類であることが判断できる情報があるかどうか ➢ 学び ◦ データセットを意図を持って眺めることでパターンやロジックが⾒えてくる ◦ データを⾒ている時間は直接的なアウトカムは出なくもどかしく感じるが、 ドメインについて学んでいる⼤事な時間である ▪ より良い機能につながるという意味で将来のアウトカムを最⼤化できているとも⾔える ステップ1:データを⾒る 請求書⾃動分割機能の開発の流れ:ステップ 1/3
  8. © LayerX Inc. 20 ➢ やったこと:LLMを使った検証 ◦ まずはLLMに丸投げして分割できるのか試す ▪ 丸投げではさすがにうまくいかなかった

    ▪ 例:明細しか無いページを先頭だと誤認識する ◦ LLMはプロンプトを変えればチューニングできるので、⾼速な仮説検証ができる ▪ 仮説が思いつかなくなったら「データを⾒る」ステップにもどる ▪ 請求書⾃動分割についてうまくいったのは2フェーズに分ける⽅法 • 請求書の中から特徴となる項⽬を抽出する • 抽出した項⽬を⽐較して分割できる場所を探す ➢ 学び ◦ LLMを使うことで⾼速な仮説検証ができる ◦ 詰まったらデータに⽴ち戻り、新たな仮説を⽴てる 請求書⾃動分割機能の開発の流れ:ステップ 2/3 ステップ2:実現⽅法を検討する
  9. © LayerX Inc. 21 ➢ やったこと:どのようにして本番提供するのか検討 ◦ 項⽬抽出のすべてをLLMでやるのは安定しないため、バクラクのAI-OCRの基盤を活⽤ ▪ 基本的な項⽬抽出はAI-OCRを利⽤

    ▪ 書類番号など、AI-OCRが取得していない部分はLLMで補助的に⾏う ◦ 抽出した項⽬をつかって分割点を探す ➢ 学び ◦ 課題に対して最適な技術を選ぶ ▪ なんでもLLMで解決するわけではなく、適材適所が⼤事 ◦ 進化していく技術をコアにする ▪ 今回の場合、AI-OCRが改善されれば⾃動分割機能も改善されていく 請求書⾃動分割機能の開発の流れ: ステップ 3/3 ステップ3:本番で提供するための構成を考える
  10. © LayerX Inc. 22 気をつけたこと1:AI-UXとフィードバックループ 請求書⾃動分割機能の開発の流れ:気をつけたこと ➢ AIは間違う可能性がある ◦ ユーザーが間違いに気づいて修正できるようなUI‧UXが必要

    ◦ 「AIを前提とした理想のUX」を追求していくのが⼤事 ▪ LayerX ではこれをAI-UXと呼んでいます ➢ 修正から改善を回す仕組みも必要 ◦ 実際にユーザーがどう分割したかをログとして記録 ◦ AIがだした⾃動分割の候補と実際にユーザーが分割した箇所を⽐較して、改善に役⽴てる ◦ ユーザーの⾏動から改善を図る「フィードバックループ」
  11. © LayerX Inc. 23 気をつけたこと2:モジュール化と未来の拡張性 請求書⾃動分割機能の開発の流れ:気をつけたこと ➢ 請求書分割サービスはモジュール化し、プロダクトとは切り離されて実装されている ◦ インターフェイス:PDFファイルをインプットとし、アウトプットとして分割点を返す

    ➢ モジュール化の意図 ◦ プロダクトの共通機能として汎⽤性を⾼める ▪ プロダクトが違っても同じ機能を提供できる ▪ 請求書⾃動分割機能は2つのプロダクトで間を空けずにリリースされた ◦ 将来の「業務の⾃動運転」構想の実現も視野に ▪ 今は⼈が使っているが、将来はAIエージェントがこのサービスを使う世界がくるかも ▪ 例:PDFをアップロードしたら、AIエージェントが分割から経費精算までやってくれる
  12. © LayerX Inc. 26 ➢ AI機能の開発は「⽣データの理解」から始まる ◦ ⼿を動かして分かった、ドメイン特有のクセやパターンが、ロジックに直結 ➢ (現状)AIは間違える前提で、「UX設計」と「フィードバックループ」が必要

    ◦ AIの間違いを前提に、ユーザーが⾃然に修正できる体験(AI-UX)を作ることが重要 ◦ フィードバックループで「継続して育てる設計」が品質改善の鍵 ➢ 適切なところに適切な技術を使う ◦ 価値検証にはLLMを活⽤し、本番提供では安定した技術を使うといった適材適所な技術選定が重要 ➢ 「モジュール化」を意識することで未来の拡張が容易になる ◦ 汎⽤性を⾼め、他プロダクトだけでなく、AIエージェント時代でも使える道具にしておく まとめ:今⽇のテーマ(再掲) AIをプロダクトに組み込む際の 従来の機能開発とは異なる観点‧⼯夫