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AI Readyなデータ基盤構築は、なぜ大企業では進みづらいのか ─現場での試行錯誤から考える...

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March 06, 2026
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AI Readyなデータ基盤構築は、なぜ大企業では進みづらいのか ─現場での試行錯誤から考える、乗り越え方のヒント

多くの企業でデータマネジメントの重要性が理解されつつありますが、基盤構築からその先の利活用までを一気通貫で成功させるのは容易ではありません。私はこれまで数多くのデータ基盤プロジェクトに携わってきましたが、その中では、思うように進まなかったり道半ばで停滞してしまった事例もさまざま経験しています。本講演では、そうした実体験を基に、特に規模の大きな企業において、なぜデータマネジメントの取り組みが「AI Readyなデータ基盤」に至る前で停滞しやすいのか、その要因を整理します。併せて、現在所属するDMM.comにおいて試行錯誤を重ねながら進めてきた取り組みの一部を例に、もし今あらためて取り組むとしたら、どのような考え方・進め方を選ぶのかについてもお話しします。データ基盤の構築・刷新やデータ活用に携わる方々が、自社の状況を見つめ直し、明日から何に着手すべきかを考えるためのヒントをお持ち帰りいただければ幸いです。

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March 06, 2026
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  1. スピーカーの紹介 エンタープライズ企業(製造業 → 情報通信業)の現場経験10年以上 ⾼橋 慶(@takaha4k) 合同会社DMM.com 開発統括本部 データ基盤開発部 前職:

    製造業(2014 〜 2024) ソフトウェアエンジニア(コードよりパワポを書いていた) 現職: DMM.com (2024 〜 現在) エンジニアリングマネージャー(コードよりプロンプト書いている) ▪ ▪
  2. 本セッションでお伝えしたいこと これまでの知⾒に基づき、明⽇からのアクションプランをご提案 ① 停滞要因の⾔語化 なぜ停滞するのか。その主な要因 を整理して解き明かす。 ② 停滞を打破する⽅策 AI Readyな基盤へ導く3本の⽮と

    DMMでの実践事例 ③ 明⽇からのアクション 現場と経営を巻き込み、少しずつ 始める具体アクション。 私個⼈の実体験や伝聞に基づき再構成した内容です。すべての企業に対する処⽅箋ではありません。 特定の企業を指すものではありません。 ▪ ▪
  3. ① 密室で決まる意思決定と放置される⼈材 現場が意思決定から外れ、社内⼈材の⼒が推進⼒に変わっていない 現場が意思決定に関与できていない 社内⼈材が活かされていない 上層部でベンダーと技術‧サービスなどが決まり、 背景なく現場に降りてくる。 判断軸が短期(コスト‧⻑年の付き合い)に偏り、 ⻑期視点(システムライフサイクル)が抜ける。 期限内PJ完遂が求められ、基盤が活⽤されること

    より、終わらせることを優先する。 社内に優秀なエンジニアがいるのに、ベンダー管理 や社内調整に忙殺され、開発に注⼒できない。 レガシーな開発⼿法(ウォーターフォール開発、ドキュメ ントがExcel⽅眼紙、⼈⼒テスト、デプロイ職⼈芸など)がま かり通って、技術的なディスカッションもろくにで きず、社内に技術知⾒がたまらない。 ▪ ▪ ▪ ▪ ▪ 忙殺されている間に、他社のエンジニアは技術⼒を つけているのかと思うと、⼼が折れてくる。 ▪
  4. ② 変えられない既存システムと動けない構造 ⾃社で⼩さく試しながら前に進める⾃由を失っている 連携元システムの聖域化 契約が⾝動きを奪い思考停⽌する 特定のベンダーに既存システムを握られている。 何かシステムに変更を加えようとすると、既存へ の影響を盾にされる。 ブラックボックス化しているため、社内のエンジ ニアが⼿を出せない。

    ちょっとしたデータ連携にも⼀括請負契約のウォー ターフォール開発が前提となり、⼩さく試すことが許 されない。こちらでハンドルを握れないまま、話が進 む。 設計議論が噛み合わない。データ設計の問題を指摘 しても契約範囲や⾃社標準を根拠に押し返され、技術 的な正しさで合意しづらい。 ▪ ▪ ▪ ▪ ▪
  5. ③ 判断できないデータセキュリティ 誰も判断できない状態が、停滞をつくる クラウドへの過剰反応 決められない空気 連携が進まない 最⼤安全に倒れてコストが膨らむ クラウドに出す=危険という漠然とした不安が先 ⾏し、リスク評価の前に議論が⽌まる。 責任者や判断基準が決まらず部署間で責任の押し

    付け合いが起きる。合意形成が無限ループする。 セキュリティ要件が決められない。ちょっとした 現場データ連携すら前に進まない。 決められないから、最⼤安全に倒す。その結果、 データセキュリティ関連の⾒積もりがどんどん膨 らんでいく。 ▪ ▪ ▪ ▪
  6. ④ 誰も⽬的を問い直さない定例会 データ基盤の価値追求ではなく責任追及ゲーム ⽬的を問い直す場がないこと 当事者意識の⽋如 会議ゴールが設定されず、進捗管理で終わる。 カメラオフミュートの参加者が散⾒される。 発注側は納期‧コスト管理に寄り、枝葉の指摘や 細部の確認に偏る。ベンダーは萎縮して、波⾵を ⽴てない報告に最適化していく。

    誰も良いデータ基盤にするための問いを⽴てない。 ここまで多⼤な時間とお⾦を投資したから⽌めら れない。という空気が⽣まれ、プロジェクトの軌 道修正の提案をしない。 軌道修正できず、⼈による運⽤でカバーという免罪 符で負債(役に⽴たない機能や重たい利⽤プロセス など)が積み上がる。基盤は便利ではなく関所にな り、現場は使わなくなる。 ▪ ▪ ▪ ▪ ▪ ▪
  7. 本セッションでお伝えしたいこと これまでの知⾒に基づき、明⽇からのアクションプランをご提案 ① 停滞要因の⾔語化 なぜ停滞するのか。その主な要因 を整理して解き明かす。 ② 停滞を打破する⽅策 AI Readyな基盤へ導く3本の⽮と

    DMMでの実践事例 ③ 明⽇からのアクション 現場と経営を巻き込み、少しずつ 始める具体アクション。 私個⼈の実体験や伝聞に基づき再構成した内容です。すべての企業に対する処⽅箋ではありません。 特定の企業を指すものではありません。 ▪ ▪
  8. まずは意思決定 Readyなデータ基盤 ⼈が⾒てすぐ判断できる状態。 その後、AI Readyなデータ基盤へ AIが⾃律的にデータを探し、選び、使える状態 AI Readyなデータ基盤とは? ⽬指すデータ基盤を定義する。⼈が判断できないデータは、AIにも使えない 集約:

    ⼀箇所に集まり、すぐアクセスできる 鮮度: タイムリーに判断できる 意味: 部⾨コードAが事業部Aだと分かる 責任: データ管理者が分かる ⾒つけられる: データカタログと利⽤実績でAIが 正しいデータを選べる 信頼できる: データ来歴‧品質が追え、異常や誤 りに気づける 実⾏できる: AIがデータを取得し、分析‧判断ま で⾃律実⾏できる
  9. AI Readyなデータ基盤へのアプローチ ゴールを決めたら、進め⽅の前提を揃える 旧来の⼤企業アプローチ 新たなアプローチ 数年以上かけて⼀括納品。 判断は最初と最後に集中し、決めた⼈と作 る⼈が分離する。 変更に弱く、リリース時には陳腐化。 誰も当事者として利⽤を推し進めない。

    ⼩さく作って検証し、1〜2週間で 要求変化に追従する。 判断の頻度を上げ、決める⼈と作る⼈を 近づけ、当事者意識を持たせる。 ⾃律した推進チームをつくり、横串で 束ねる体制へ。 ▪ ▪ ▪ ▪ ▪ ▪
  10. 3本の⽮ ゴールと進め⽅が揃っても、推進するチームがいなければ進まない。 第⼀の⽮ 現場起点 (ボトムアップ) 現場の痛みを起点に、⼩さな成功を 積み上げる推進チーム。 第⼆の⽮ 経営起点 (トップダウン)

    ビジネス成果へ直結させ、会社とし てやる⼤義を確⽴する推進チーム。 第三の⽮ 横串の統制 (ガバナンス) DWH‧BI‧メタデータを揃え、部署 ごとのばらつきを抑える。
  11. 3本の⽮ ゴールと進め⽅が揃っても、推進するチームがいなければ進まない。 第⼀の⽮ 現場起点 (ボトムアップ) 現場の痛みを起点に、⼩さな成功を 積み上げる推進チーム。 第⼆の⽮ 経営起点 (トップダウン)

    ビジネス成果へ直結させ、会社とし てやる⼤義を確⽴する推進チーム。 第三の⽮ 横串の統制 (ガバナンス) DWH‧BI‧メタデータを揃え、部署 ごとのばらつきを抑える。
  12. 3本の⽮ ゴールと進め⽅が揃っても、推進するチームがいなければ進まない。 第⼀の⽮ 現場起点 (ボトムアップ) 現場の痛みを起点に、⼩さな成功を 積み上げる推進チーム。 第⼆の⽮ 経営起点 (トップダウン)

    ビジネス成果へ直結させ、会社とし てやる⼤義を確⽴する推進チーム。 第三の⽮ 横串の統制 (ガバナンス) DWH‧BI‧メタデータを揃え、部署 ごとのばらつきを抑える。
  13. 固定観念の壁を壊すデータの機密レベル分け 第三の⽮の実践(視点) 全部最⾼機密という固定観念を決められる状態に変える よくある課題 ⼯場のデータはすべて機密で、外部ネット ワーク絶対不可という⼀律の縛り。 判断基準も、誰が判断するのか決まってい ないから、全部ダメに倒れる。 アプローチ案 データを機密性でレベル分けする

    (個⼈を識別できる情報はLv4のように整理する) レベルごとにアクセス制御‧連携⽅式を変える。 (厳格なアクセス制御がかかった隔離環境に限定し、暗  号化と全件ログ取得を必須など) 誰が判断するかを決める (データオーナーが利⽤範囲を判定し、セキュリティ部  ⾨が最終確認など) ▪ ▪ ▪ ▪ ▪
  14. ベンダー依存からの脱出ルートを作る 第三の⽮の実践(視野) 既存システムを変えずに、読み取り専⽤のルートを確保する よくある課題 連携元システムが特定のベンダーに握られ、単 純なデータ抽出ですら請負契約のウォーター フォール開発が前提になる。 契約⼿続きを開始してから、開発機能のリリー スまで数ヶ⽉以上はかかる。 納品後、障害時の対応範囲や責任分担が曖昧

    で、データ障害が発⽣した際に揉める。 アプローチ案 全⾯改修はしない。既存にほぼ⼿を⼊れず、読み取 り専⽤の出⼝を1つ確保する。 バックアップをもらって復元、リードレプリカ、標 準機能(APIや定期ファイル出⼒)など、新規開発な しに使える出⼝を探す。 データ抽出から先の検証や開発が、⾯倒な契約変更 なしに⾃社の判断で動かせるようにする。 ▪ ▪ ▪ ▪ ▪ ▪
  15. 本セッションでお伝えしたいこと これまでの知⾒に基づき、明⽇からのアクションプランをご提案 ① 停滞要因の⾔語化 なぜ停滞するのか。その主な要因 を整理して解き明かす。 ② 停滞を打破する⽅策 AI Readyな基盤へ導く3本の⽮と

    DMMでの実践事例 ③ 明⽇からのアクション 現場と経営を巻き込み、少しずつ 始める具体アクション。 私個⼈の実体験や伝聞に基づき再構成した内容です。すべての企業に対する処⽅箋ではありません。 特定の企業や団体、個⼈を指すものではありません。 ▪ ▪