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AIと共に進化するモノタロウ - AI駆動開発 Conference Autumn 2025

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October 31, 2025
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AIと共に進化するモノタロウ - AI駆動開発 Conference Autumn 2025

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October 31, 2025
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  1. AIと共に進化するモノタロウ 1 AI駆動開発 Conference Autumn 2025 © 2025 MonotaRO Co.,

    Ltd. All Rights Reserved. 常務執行役・CTO 普川泰如 AI駆動開発チームリーダー 市原功太郎 OSLプロダクト開発 PM 山本華名美 株式会社MonotaRO
  2. モノタロウのシステムとエンジニア組織 コアシステムエンジニアリング (CSE)部門 Mission 業務例 ビジネスの成長を 支えるITの提供 顧客体験向上の ための継続開発 大企業ビジネスの

    成長加速 より良い仕事環境 の提供 価値提供の 基盤開発 • 内製基幹システムの導入、開発、運用 • 倉庫管理システム/インフラの構築、運用 • 会計システムの開発、運用 • ECサイト機能の開発、運用 • マーケティング基盤の開発、運用 • 大企業連携システムの開発、運用 • オフィスインフラの構築、保守運用 • オフィス系サービスの導入、運用 • ITサポート • セキュリティ統括 • サーバインフラの構築、運用 • データ基盤の構築、運用 • システム開発/保守基盤の構築、運用 • DevOps/Webセキュリティ ECシステムエンジニアリング (ECSE)部門 エンタープライズビジネス エンジニアリング(EBE)部門 コーポレートエンジニアリング (CE)部門 プラットフォームエンジニア リング(PE)部門 部門 10
  3. エンジニアリングのチャレンジ 事業成長に貢献するため、 アーキテクチャの再構築とシステムのモダナイズに挑む 現在の課題       取組方針 システム・業務の長年の変化に伴う複雑性 20年間の安定した成長に伴い、組織とシステムも拡 大。そのため、新たな取り組みに対する調整コストが 増加している状況。

    また、サービスが高度化し、独自の発展を遂げている ことにより、システムの複雑性が増している。 変更容易性の低下 システムが複雑になるにつれて、経営戦略や戦術への 迅速な対応が難しくなっている。 注力すべきサービスの進化に十分なリソースを割り当 てることが困難な状況。 方針:分割統治 大きな問題を小さな部分問題に分割し、それぞれを個別に解決する「分割 統治」戦略を採用。これにより、システムの複雑性を制御可能な範囲に抑 え、事業のさらなるスケールにも貢献する。 方法:ドメインモデリングと イベントドリブンアーキテクチャの導入 システムをビジネスドメインごとに分割し、各ドメイン間の連携をイベ ント駆動で行うアーキテクチャを採用。これにより、システムの変更容 易性を高め、ビジネスの変化に迅速に対応できる基盤を構築する。 11
  4. 春の登壇時(2025.05)からの状況変化 • Devin : 160名 → 340名 ◦ 継続利用する! •

    Cursor : 40名 → 220名 ◦ 標準に昇格! • Cline: 100名 → 40名 ◦ 縮小! • 新たなツール検証 ◦ Claude Code, Codex → 20名 ◦ Windsurf → 50名で実験、要件に合わず中断 14
  5. AI駆動開発の取り組み 2023年: 黎明期 GitHub Copilotの展開 2024年: 模索期 AIによる モダナイゼーションプロ ジェクト

    2025年1月: ツール展開 AI駆動開発チーム始動 2025年8月 取り組み結果を経て 方針のUpdate 15
  6. 人数 キャズム 17 我々が ”超えたキャズム” と “超えられていないキャズム” • 「AIツールの展開」についてはうまくいったが、生産性の向上を起こすような「AIによる プロセスの変容」まで繋げられているのは一部のメンバー

    • 要するに「AIによる開発プロセスの変容」はまだキャズムを越えることができていない ! AI駆動開発に情熱がある メンバー “熱量” を “文化” へ AI駆動開発への熱意
  7. 浸透のための仕組み—DOJO AI駆動開発 DOJO • 当社の組織学習機関 DOJO にAIについての学習プログラムを追加 • 直近事例: –

    Cursorの入門ハンズオン(2h)を実施 • 初心者ターゲット、70名程度が参加 • 帯制度 – AI駆動開発で求めるケイパビリティを定義して能力を認証する – 現在、入門レベル(黄帯)のスキル標準を作成中 22
  8. 浸透のための仕組み—トレンドラボ AI駆動開発トレンドラボ • 定期開催している社内勉強会 • ① AIに関する情報アップデート / LT •

    ② チーム別座談会 – 「課題・ツール・成果」を共有し、面白い取り組みが横展開される。 共感・関心から、AI活用事例をボトムアップに広げるための取り組み 24
  9. 現場のAI活用推進の仕掛け作り • 各種のAI駆動開発ツール(Devin/Cursor/Claude Code ect) • API Key発行管理(OpenAI/Anthropic/Gemini) • GitHubのOrganization

    Secretに各種のAPI Keyを設定 – OpenAI, Gemini, Anthropic, Devin – 活用例) PRをフックにコードレビュー、ドキュメント更新等 • チャットツール(Gemini, ChatGPT, LibreChat,MonoChat(Slack)) → 仕事の要求に応じて柔軟に組み立てられる 25
  10. • 新たな問い合わせの文章をOpenAI APIに送信し、 ◦ まず、いい感じに1文に要約する ◦ 次に、その要約文のベクトル(embedding)を取得する • 過去の全問合せのそれぞれの要約とそのベクトルはあらかじめ取得してあり、 シートに記録してあるので、それぞれとのコサイン類似度を計算する

    • さらに、新たな問い合わせの文章と過去の文章のキーワード一致率を、簡易的 な2-gramで比較する • コサイン類似度 * 0.8 + キーワード一致率 * 0.2 の値が大きい順に並べ、類似 率が0.5以上の事例を最大5件、Slackに投稿する。 44 GASでやっている処理
  11. • 新たな問い合わせの文章をOpenAI APIに送信し、 ◦ まず、いい感じに1文に要約する ◦ 次に、その要約文のベクトル(embedding)を取得する • 過去の全問合せのそれぞれの要約とそのベクトルはあらかじめ取得してあり、 シートに記録してあるので、それぞれとのコサイン類似度を計算する

    • さらに、新たな問い合わせの文章と過去の文章のキーワード一致率を、簡易的 な2-gramで比較する • コサイン類似度 * 0.8 + キーワード一致率 * 0.2 の値が大きい順に並べ、類似 率が0.5以上の事例を最大5件、Slackに投稿する。 45 GASでやっている処理 👇なぜ要約を挟むのか?
  12. 46 プロンプト紹介 function _getQuerySummaryFromOpenAI(queryText) { const payload = { model:

    SEISEI_DEPLOYMENT_NAME, messages: [ { role: "system", // プロンプト content: `以下の問い合わせ文を何に関する内容か一目で分かるように、 1文で要約してください。 ですます調の丁寧な日本語で、要約のみを出力してください(承知しました。といった応答が不要という事です)。 顧客コードや品番などの自動採番されていそうな数値と、具体的な年月や日付は要約に含めないでください。 問合せ元の主体を指す企業名や部署名は要約に含めないでください。 問い合わせ文の中にエラーメッセージを発見した場合は、それを要約文にそのまま記載してください(※それは 1文に数えません)。 なお、B2B、M.com、OSLとは、当社がお客様に提供する WEBサービス名です。` }, { role: "user", content: queryText } // この文章に対して(新たな問い合わせ文) ], temperature: 0.3, // 創造性低め max_tokens: 80, // 短文でお願い top_p: 1 // 核サンプリング無効 };
  13. • 新たな問い合わせの文章をOpenAI APIに送信し、 ◦ まず、いい感じに1文に要約する ◦ 次に、その要約文のベクトル(embedding)を取得する • 過去の全問合せのそれぞれの要約とそのベクトルはあらかじめ取得してあり、 シートに記録してあるので、それぞれとのコサイン類似度を計算する

    • さらに、新たな問い合わせの文章と過去の文章のキーワード一致率を、簡易的 な2-gramで比較する • コサイン類似度 * 0.8 + キーワード一致率 * 0.2 の値が大きい順に並べ、類似 率が0.5以上の事例を最大5件、Slackに投稿する。 47 GASでやっている処理  👇なんの効果が?
  14. • 無知なりに偶然作ったものが簡易RAGモックだった(←かっこいい) • GASだから導入コスト激安 ◦ 1日で作れた ◦ 記録シートのあるチームなら簡単に展開できる ◦ 導入にあたり追加予算不要

    • 誰でも問い合わせ対応できるようになった(大体真似すればいいので) • 当番の気が楽になって負荷軽減 • 導入時に自チーム以外と調整が不要→改善サイクルさっさと回せる 50 この改善やってよかったこと
  15. 普川泰如 (ふかわ たいすけ) 株式会社 MonotaRO CTO taipuka0 慶応義塾大学環境情報学部卒業、 SIer企業を経て2009年にオイシックス・ラ・大地 に入社、2016年同システム副本部長。 2019年にモノタロウに参画。

    2021年1月に ECシステムエンジニアリング部門長、 2022年4月に執行役CTO/VPoEに就任。 顧 客体験の向上をアジリティ高く行うべくシステム全体のモダナイゼーションと組織作 りを推進中。 趣 味 ランニング マラソン PB3時間48分 トレラン  高尾山、奥多摩周辺の山が多い キャンプ  なぜか焚き火台3台所有、ほぼ焚き火をしている 56 自己紹介
  16. 57 AIによる支援か?置き換えか? 分類 概要 代表ツール 効果 主な課題 支援型 Instruction Driven

    [同期作業] 人間が主導、AIが補助 GitHub Copilot Cursor, Windsurf Claude Code 開発者スキルが高い ほど効果的。タスク単 位の効率化。 成果は個人依存、浸 透に時間。 組織の底上げはスキ ルアップ必須 置き換え型 Issue Driven [非同期作業] AIが主導、人間は監督 Devin, Claude Code Action プロセス全体を自動化 し、スループット大幅 向上。 コンテキスト整備・品 質ガードレールが必 要。 組織の開発プロセスを 変える必要がある 置き換え型まで行くと生産性の効果が大きく出ている
  17. 58 CursorやClineでは意外と生産性は伸びてない … ? • Devin と比較して Cursor や Cline

    はPR数に対しての影響はあまりない • 「人間を支援する」よりも「人間を置き換える」ツールのほうが効果的 Cline, Cursor 導入開始
  18. 59 Devin は着実に生産性に貢献している • 7月時点でPull Requests (マージ済み) の 15% は

    Devin が作成 • また Devin のPRは過去と比較しても純増していそう
  19. [事例B] AIに業務を代替させる コンテナ基盤グループのDevin事例 • 利用者がSlackでフォーム入力 (ネームスペース追加や変更) • → WorkflowからDevinを呼び出し –

    Devin: Terraform/Kubernetes変更 → CI/CD → 自動修正 → PR作成 – 人間: レビューとマージだけ (→ 適用はCDが実施) • 難易度の高い依頼のみ人間対応 • 良い点 – 依頼の半数以上をDevinが自動で処理 – 専門的な知識がなくても、やりたいことをDevin(LLM)が補完 62
  20. [事例22] AIに業務を代替させる: コンテナ実行基盤 IaC の例 Slack Workflow -> Devin ->

    PR作成 -> CI/CD -> Devinが修正 人間はPRレビュー & マージすればOK ユーザーが入力したフォーム 情報で依頼文書作成 人間を介さず、いきなり Devinを呼び出す DevinがKubernetes 設定を 作成 CI/CD結果も確認してくれる
  21. IaC + Devin は相性がいい • TerraformやKubenetesの設定変更は定型的、反復的、宣言的 – LLMによる修正・複製の精度が高い • CIが整備されているので、問題があればDevinが自動で修正まで辿り着ける

    • DevinはSlack対応しているので、WorkflowやSlack Appで @Devin でOK このチームでは、半数以上のインフラ依頼がDevin + IaCで処理されている! 64
  22. まずはSDLCのすべてのフェーズでAIの活用度を着実にあげていく チームA チームB チームC 計画 設計 実装 テスト デプロイ 運用

    70% 70% 70% 70% 70% 70% 70% 70% 70% 70% 70% 70% 70% 70% 70% 70% 70% 70% チームA チームB チームC 計画 設計 実装 テスト デプロイ 運用 30% 40% 10% 40% 10% 30% 10% 70% 60% 20% 20% 30% 60% 50% 30% 40% 20% 40% Before After
  23. まずはSDLCのすべてのフェーズでAIの活用度を着実にあげていく 計画 設計 実装 テスト デプロイ 運用 • まずは Cursor/Cline

    のようなツールを使って試行錯誤しつつ AIに任せられるプロセスを徐々に増やしていく • プロセスがある程度増えた段階で、プロセスをどう変えたらどうエージェントに完全に 任せられるかを再度考えなおし、必要な環境を整備する 30% 60% 70% 30% 40% 20%
  24. 人数 変革への熱意 キャズム 69/23 “熱量” を “文化” に昇華する仕組みは継続 • ツールを使ってAIに任せられるプロセスを増やすのは、組織全体ですすめていく

    • “熱量” を “文化” へ昇華させる “仕組み” を継続させる AI駆動開発に情熱がある メンバー 1 価値探索プログラムと エバンジェリスト制度 2 AIトレンドラボ 3 AI駆動開発ツールDOJO “熱量” を “文化” へ 4 SDLCでの評価と可視化
  25. まとめ 1 どのようにAI駆動開発を組織へ展開したか モノタロウは 個人の “熱量” をどのように “文化” に昇華させたか 2

    実践から見えた学びと次の一手 AIの使い所と開発プロセス変容の必要性 → 3つの仕組みを実施 • 価値探索プログラムとエバンジェリスト制度 • AIトレンドラボ • DOJO → 「支援するAI」より「置き換えるAI」が効果的 → 「ツール浸透」の先に「プロセス変容」という新たなキャズムがある → 次の一手として、開発プロセス(SDLC)全体のAIによる置き換えを実施