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アンエシカルデザインという枠組みについて

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April 24, 2026
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 アンエシカルデザインという枠組みについて

ダークパターンから考える、アンエシカルデザインの行方 (2026年4月24日開催)
https://peatix.com/event/4944732
上記イベントのセッション「アンエシカルデザインという枠組みについて」にて使用したスライドを公開用に編集したものです。

作者:森田 雄 / 株式会社ツルカメ
https://x.com/securecat
https://turucame.jp/

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Transcript

  1. 発表者 プロフィール • 森田 雄(もりた ゆう) • 情報アーキテクチャ、UXデザイン、アクセシビリティの専門家 • 株式会社ツルカメ(HCD-Net賛助会員)

    代表取締役社長 • 広告電通賞 イノベーティブ・アプローチ部門 委員長 • 日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構 幹事 • 一般社団法人Evolve Art & Design Japan 理事 • 毬藻企画合同会社 代表社員 2026/4/24 Yu Morita / Turucame ltd. 2
  2. ダークパターン概念の射程と限界 • ダークパターンは、不要な購入、不利益な契約、過剰な個人情報提供などへ誘導するUIとして社会問題化してきた • ただし、UIそのものが本質的にダークなのではなく、文脈のなかでダーク化する • 購買・契約フローは複数画面や時系列にまたがるため、局所的なUI観察だけでは判断できない場合がある • 契約時は問題が見えず、解約時にだけダークさが顕在化することもある •

    パーソナライズ環境では、ユーザーごとに異なる画面が提示されうる • その結果、一部のみを見て「ダークではない」と判断すると、全体構造の問題を覆い隠すダークパターンウォッシュが起こりうる ダークパターンの問題は重要だが、 UI現象の問題として捉えるだけでは足りない 2026/4/24 Yu Morita / Turucame ltd. 4
  3. UPBとUEDの比較表 観点 UPB UED 主たる分析対象 個人の非倫理的行動 非倫理的結果を生む組織設計 中心的な問い なぜ個人は「組織のため」に非倫理行動 をとるのか

    なぜ組織は非倫理的デザインを持 続的に産出するのか 行為の性質 自発的・意図的であることが前提 自発性の有無を問わない 命令・強制との関係 命令による行為は定義上こぼれやすい 命令、慣行、KPI圧力、既定業務も 含めて捉える 着目する主因 組織同一視、互恵信念、情緒的コミット メント等 KPI、評価制度、業務フロー、意思 決定構造、文化、ガバナンス 典型的な問題像 「会社のため」に自主的に不正を行う 本人が忸怩たる思いでも、仕組み として非倫理的設計を出力する 長期的変容の捉え方 近年、トップ/ミドル/ボトムの関係や ルーティン化が課題化 まさにその構造的固定化を中心問 題として扱う 2026/4/24 Yu Morita / Turucame ltd. 6
  4. UPBと連続するUEDの視点 • UPB研究では、組織同一視や積極的互恵信念、情緒的コミットメントなどが重要要因として扱われてきた • UPBの影響要因としてLMX、情緒的コミットメント、個人差を中心に検討しており、比較的「個人と組織の関係性」に重心を 置いている • また、組織の各層(トップ・ミドル・ボトム)とUPBの関係や、UPBが長期的に倫理判断を伴わないルーティン行動へ変容す る可能性にも関心が向けられており、UEDの問題意識とも近い •

    こうした知見を踏まえると、UPBが照らしてくれたものの延長線上で、組織設計そのものを問う視点が必要になる • UEDは、個人の自発的な非倫理行動も含みつつ、それを持続的に生み出す組織構造まで視野に入れようとする枠組みである UPBが「非倫理的に振る舞う個人」を中心に捉えるのに対し、 UEDは「非倫理的アウトプットを持続的に生み出す組織構造」 を中心に捉える 2026/4/24 Yu Morita / Turucame ltd. 7
  5. アンエシカルデザインという枠組み • ダークパターンの背後には、UI単体ではなく企業文化、組織の態度、業務目標の設定方法といった構造的問題が存在する • とくに、KPI主導のUI最適化やナッジ/行動経済学の不適切利用は、ユーザーの自律的選択を奪う設計を生みうる • こうした仕組みが組織全体に組み込まれると、非倫理的な設計が業務フレームワークとして固定化される • 問題は現場のデザイナー個人だけではなく、経営判断、評価制度、ガバナンスの欠如にもある •

    したがってUEDとは、単なる「ダークなUI」ではなく、非倫理的な業務遂行プロセス、またはその結果を生み出す組織デザインである • ここでいう「デザイン」は、UIとして表出する画面表現だけでなく、KPI、評価、手順、権限、意思決定、例外処理まで含む広義の設計 行為や組織としての営みを指す UED=非倫理的な業務遂行プロセス、またはその結果 を生み出す組織デザイン 2026/4/24 Yu Morita / Turucame ltd. 9
  6. 参考文献 山本郁也, 長谷川敦士, 川崎実紀, 岩楯ユカ, 森田雄, 伊原力也 (2025) . アンエシカルデザインの枠組みの提案

    -HCD-Net ダークパターン研究会活動報告- . https://turucame.jp/shared/HCD-Net_DPSIG__Proposal-for-a-Framework-of-Unethical-Design.pdf Umphress, E. E., Bingham, J. B., & Mitchell, M. S. (2010). Unethical behavior in the name of the company: The moderating effect of organizational i dentification and positive reciprocity beliefs on unethical pro-organizational behavior. Journal of Applied Psychology, 95(4), 769–780. https://doi.o rg/10.1037/a0019214 北居明, 鈴木竜太, 上野山達哉, 松本雄一 (2018) . 「組織のため」の罠:非倫理的向組織行動研究の展開と課題 . https://www.jstage.jst.go.jp/article/sos hikikagaku/52/2/52_18/_pdf/-char/ja 本間友大, 玉井佑実, 戸村龍司 (2020) . 非倫理的向組織行動に関する考察 : リーダー・メンバー交換関係と組織コミットメントに注目して . https://cir.nii. ac.jp/crid/1050009683080583808 竹内規彦, 竹内倫和 (2009) . リーダーシップ研究におけるメソ・アプローチ:レビュー及び統合 . https://www.jstage.jst.go.jp/article/soshikikagaku/4 3/2/43_20220820-37/_pdf 2026/4/24 Yu Morita / Turucame ltd. 11