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UIデザインの呪術性 -覚書-
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Yuki SASAKI
September 29, 2020
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UIデザインの呪術性 -覚書-
UI/UXデザイナーLT会 #uiuxdesignerslt
https://rakus.connpass.com/event/187048/
Yuki SASAKI
September 29, 2020
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Transcript
UIデザインの呪術性 -覚書- 佐々木 勇貴 〜 UI/UXデザイナーLT会 〜
- 株式会社SmartHR所属 - プロダクトデザイナー 兼 プロダクトマネージャー Yuki SASAKI tyoys00 自己紹介
今日話すこと - UIデザインの呪術性についての覚書です - 覚書なので特にオチはありません - 業務に役立つtipsもありません
2つの補助線 - クロード・レヴィ・ストロースの『野生の思考』 - ジャック・ラカンの「光点としてのまなざし」
クロード・レヴィ・ストロースの『野生の思考』
呪術とは - なんらかの目的のために,超自然的な存在 (神,精霊その他) の助けをかりて,種々の現 象を起させようとする行為およびそれに関連する信仰の体系のこと。 - 一般的には、科学的思考に対比させて前近代的なものと考えられがちである。
しかし、レヴィ・ストロースの解釈は異なる 自然哲学の体系として考えるとき、それ(witchcraft 妖術)には一つの因果理論が含まれている。すなわち、 不運は妖術が自然力と共同してひきおこすものである。ある男がアフリカ水牛の角でひっかけられるとか、穀物 倉の支柱が白蟻にむしばまれて倉が頭の上に崩れ落ちてくるとか、脳脊髄膜炎にかかるとかすれば、アゼンデ族 は、水牛や穀物倉や病気が原因であって、それが妖術と結びついてその男を殺したのだと言うであろう。水牛 や穀物倉や病気はそれ自体で存在するものだから、妖術はそれの存在については責任がない。しかしながら、 それらの原因が、ある特定の個人に対して破壊的な関係に置かれたという特定の状況については妖術に責任があ る。いずれにしても穀物倉は崩れ落ちたであろう。しかし、ある特定の人間がそのかげで休んでいるというある 特定の瞬間にそれが起こったのは、妖術のせいである。これらすべての原因の中で、妖術だけは人間が干渉して
変更させることができる。それは妖術がある一人の人間に発するところのものだからであ る。(Evans-Pritchard クロード・レヴィ・ストロース『野生の思考』より、再引用 大橋保夫訳 )
- 水牛に襲われる、穀物倉が崩れるなどはそれ単体で起こり得る - しかし、その男に対して起こり死へと繋がることには、その因果関係を結び付けようとし た「妖術」の存在がある - 「妖術」は人間が起こすものなので、それに対しては干渉し防ぐことができる man death 穀物倉
witchcraft
しかしながら、さらに一歩を進めて、次のように考えることはできないだろうか?すな わち、呪術的思考や儀礼が厳密で緻密なのは、科学的現象の存在様式としての因果性の 真実を無意識に把握していることのあらわれであり、したがって、因果性を認識しそれを 意識するより前に、包括的にそれに感づき、かつそれを演技しているのではないだろう か?そうなれば、呪術の儀礼や信仰はそのまま、やがて生まれ来たるべき科学に対する 信頼の表現ということになるであろう (『野生の思考』 同前) レヴィ・ストロースはさらに言う
つまり、レヴィ・ストロースは妖術=呪術という思考は非科学的な思考ではなく、偶然のよ うに見える事象であっても因果関係が存在し、変更可能であるとみなそうとする科学的な思 考(の萌芽)であることを指摘していた man death 穀物倉 witchcraft 変更可能なものとして扱う
さて、ではこれをソフトウェアとUIに結びつけてみるとどうなるだろうか? text user display progaming code
人は目に見えず原理を理解できない事象であっても、そこに因果関係を見出すことができる - ディスプレイ上にある対象をダブルクリックするとアプリケーションを起動してファイル が開かれる - 裏で行われている処理を理解してはいないが、そこに因果関係があることを学習すること ができる
目に見えないプログラミングコードを、さも物質的なものとして扱おうとする思考には呪術 的思考が根底にある text user display progaming code 操作可能な ものとして扱う
さて、では目に見えないプログラミングコードをさも物質的なものとして扱うことを可能に しているdisplayに映る「これ」は一体なんなのか?
ジャック・ラカンの「光点としてのまなざし」
ラカンのとある逸話 20代の若いインテリであったラカンは、狩りや漁といった実践に憧れ、漁師たちととも にブルゴーニュの海に船出する機会を得た。或る日、海の波間に缶が浮き、キラキラ輝い ていた。友達だったプチ・ジャンがおもしろがって言った、「あんたあの缶が見えるか い。あんたはあれが見えるだろ。でもね、やつの方じゃあんたを見ちゃいないぜ」。だ がラカンは大しておもしろくなかった。というのも、「第一にある意味で、それでもやは り缶を私を視ているからです。その缶は光点という意味で私を見ているのです」(『精神 分析の四基本概念』)
- ラカンは波間に浮かぶ缶こそがこちらを見ていると考えた - つまり、「私たちが対象を見ている時、対象もまた私たちを見ているという」のがラカン の考え方である man steel can まなざし 光点としてのまなざし
このまなざしの相互作用(インタラクション)はオブジェクトとユーザーとの関係性のモデ ルとして捉えることができる man object まなざし 光点としてのまなざし
ディスプレイという光の集合の上でさらに光る光点として私たちにまなざしを向けるオブ ジェクトを介して、目に見えない世界の接点を見つけている text user display progaming code 操作可能な ものとして扱う object
まなざし 光点 としてのまなざし
UIとは、表層の操作ではなく目に見えない世界から私たちを見つめ、そしてそれに気づいた 人間に行動を促す「まなざしの相互作用」であり、UIの認知には「呪術的思考」が基盤に ある text user display UI progaming code object
まなざし 光点 としてのまなざし
ご清聴ありがとうございました