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エムラン・メイヤー 『腸と脳』

ymgc
October 07, 2024

エムラン・メイヤー 『腸と脳』

エムラン・メイヤー 『腸と脳』
https://www.amazon.co.jp/dp/4314011572

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October 07, 2024
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  1. 目次 1. 腸の基本構造と機能 2. 腸の三大自慢:第二の脳としての機能 3. マイクロバイオームの重要性 4. マイクロバイオーム研究の歴史的展開 5.

    メイヤーの主要な主張 6. サリエンシー(顕著性)について 7. サリエンシーとマイクロバイオームの統合的理解 8. まとめ 2
  2. 用語まとめ マイクロバイオーム:多様な微生物たちが集まった体内コミュニティとその遺伝子の総体 ▶ 腸管神経系(ENS) :腸に存在する独自の神経系 ▶ サイトカイン:免疫系で働く生理活性タンパク質 ▶ セロトニン:神経伝達物質の一種、気分や睡眠などを調整 ▶

    サリエンシー:注意を引く顕著な特徴、目立つこと ▶ ソマティック・マーカー:身体状態の変化が意思決定に影響を与えるという仮説 ▶ 島皮質:大脳皮質の一部で、内臓感覚などの処理に関与 ▶ 再表象:メイヤーが提唱した、脳による情報の再編集プロセス ▶ 4
  3. エムラン・メイヤー (Emeran Mayer) 生年月日: 1950年7月26日(ドイツ・トラウンシュタイン) ▶ 専門: 消化器病学、神経科学 ▶ 所属:

    UCLA デイビッド・ゲフィン医学部 教授 ▶ 主な業績: ▶ 脳腸相互作用の医学研究のパイオニア - 370以上の科学論文を発表(h-index 115) - 3冊の科学書を共同編集 - 受賞歴: ▶ 2016年 アメリカ心身医学会デイビッド・マクリーン賞 - 2017年 ドイツ消化器・代謝疾患学会イスマール・ボア ス・メダル - 著書: 『腸と脳』 (原題:The Mind-Gut Connection)など多数 ▶ 5
  4. 腸の基本構造と機能 全長約9メートルの消化管、 「内なる外」を象徴するパイプ状構造 ▶ 口から食道、胃、腸(大腸・小腸・直腸)を経て排泄器官に至る ▶ 主な役割: ▶ i. 栄養吸収:唾液や胃の消化液による炭水化物とタンパク質の分解

    - ii. 水分吸収:腸での水分吸収と脂肪分解 - iii. 栄養素の取り込み:腸の内側にある絨毛の無数のヒダから体内に吸収 - 外界の危険物やウイルス、細菌を察知し克服する重要な防御機能 ▶ 7
  5. マイクロバイオームの重要性 腸内フローラの構成 ▶ 有用菌(善玉菌) :ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌系 - 有害菌(悪玉菌) :ウェルシュ菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌 - 日和見菌:状況に応じて善玉にも悪玉にもなる適応型細菌

    - 機能:腸-脳関係を取り結ぶ重要な介在システム ▶ コミュニケーション: 「微生物語」 (microbe-speak)という双方向型の生態系コミュニケーションの担い手 ▶ 12
  6. 「再表象」 (re-presentation) 定義:脳が内臓からの信号を処理し、再解釈する過程 ▶ プロセス:- 内臓からの信号 → 脳による編集 → 意識的な知覚

    ▶ 機能: ▶ 内臓感覚を意識可能な形に変換 - 感情や行動の動機付けを生成 - 例: ▶ 腸の不快感 → 不安や焦りの感情として再表象 - 空腹感 → 食欲として再表象 - 特徴: ▶ 単なる信号の伝達ではなく、脳による能動的な編集作業 - 過去の経験や記憶を活用して信号を解釈 - 20