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2025 年のコーディングエージェントの現在地とエンジニアの仕事の変化について

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September 05, 2025

2025 年のコーディングエージェントの現在地とエンジニアの仕事の変化について

2025年現在、開発現場では「コードを書く」から「AIと協働する」への大転換が起きています。GitHub Copilotのような補完型から始まったAI支援は、今や自律的にタスクを遂行するエージェントへと進化しました。

2025 年時点ではどのような類型のコーディングエージェントが存在しているか、コーディングエージェントの登場により私達エンジニアの仕事がどのように変化しているのか、急速な変化に伴いどのような課題が発生しているのかについて話します。

そして数年後に、「2025年は確かに時代の転換点だったね」と振り返ってその瞬間に立ち会えたことを楽しめるようにしましょう。

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September 05, 2025
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Transcript

  1. 補完型AI(GitHub Copilotなど) function add // ← ここまで書くと... function add(a: number,

    b: number): number { return a + b; } 開発者が書き始めたコードを補完し Tab キーで提案を受け入れ ▸ ペアプログラミングのような体験 ▸ 開発者が主導権を持つ ▸
  2. 補完型AIの利点と制約 利点 制約 定型的なコードの自動生成: テストのモックデータの生成のように決まり切ったコード を素早く生成 ▸ 新しい言語やフレームワークの学習: ユーザーが知らない書き方を提案 ▸

    ユーザーが何かを書き始めない限り、AIは何も提案してくれない ▸ 従来の「開発者がコードを書く」という基本的なワークフローは変わらない ▸ コードベース全体を理解していないため、コンテキストを無視した提案が多い ▸
  3. チャット型AIの利点と制約 利点 制約 自然言語での指示が可能: プログラミングの知識がなくても使える ▸ コードの生成だけでなく、コードの説明やデバッグも可能 ▸ コードの品質やセキュリティに関する保証がない ▸

    コードをレビューするエンジニアのスキルが依然として重要 ▸ チャット型の UI であるため、往復のやり取りが必要 ▸ コードベース全体のアーキテクチャを理解し、適切なコードを生成するといったことは 難しい ▸
  4. AI エージェントの仕組み 複雑なタスクを最終的な解決に向けた論理的なステップの連続に区切る(Chain of Thought) ▸ 外部と対話するための「ツール」を使用してタスクを実行 ▸ ファイルの読み書き ▸

    シェルコマンドの実行 ▸ ツールの実行結果からフィードバックを受け取り、次のステップを決定(Self- Correction) ▸ 例えばテストが失敗した場合、元の計画を修正しコードの修正を試みる ▸ 計画・実行・フィードバックのループを繰り返すことで、タスクの完了を目指す ▸
  5. CLI型、エディタ型を選ぶ場合 自律型を選ぶ場合 実装方針を AI と相談しながら決める ▸ Plan モードなどが有効 ▸ 間違った方向に進みそうであれば、随時人間が介入する

    ▸ ミーティング中など介入できない時間帯 ▸ 何もしないよりは60%程度の成果でも後で修正すれば効率的 ▸ 気に入らなければ捨ててしまってもいい ▸
  6. 大規模なタスク 人間によるタスク分解が必要 複数のサブタスクへの適切な分割が必要 ▸ When to Use Devin - Devin

    Docs ▸ 高度な知識と経験を持つテックリードやアーキテクトの判断が必要 ▸ AI に限らず人間の開発者にタスクを任せるときも同じ ▸
  7. 指示の言語化 曖昧な指示 明確な指示 カンバンボードのテストを書いてください カンバンボードのタスク操作に関するテストケースを作成してください - カンバンボードに表示されるタスクは、API から取得したデータに基づいていること - タイトルを入力するまで

    submit ボタンは無効化されていること - API のコールに失敗した場合、エラーメッセージがトーストで表示されること テストの記述は以下の要件に従ってください - API のモックは `msw` を使用すること - テストを書く際の注意事項は `docs/test-guidelines.md` を参照すること
  8. ドキュメントを育てる AI コーディングエージェントには長期記憶(メモリ)を管理する手段が用意されている ▸ Claude Code: CLAUDE.md ▸ Cursor: .cursor/rules/

    ▸ プロジェクトの設計やコーディング規約などを記述する ▸ Kiro により広まったスペック駆動開発 ▸ AI と相談しながら要件定義書や仕様書を作成し、その内容を元に AI にコードを書い てもらう ▸ コンテキストエンジニアリング ▸ AI に与える情報(コンテキスト)全体を体系的に設計・最適化する技術 ▸
  9. プロンプトエンジニアリングの学習 AI エージェントを効果的に活用するためには、プロンプトエンジニアリングの理解が重要 → LLM の仕組みを理解し、適切なプロンプトを設計する Prompt Engineering Guide ▸

    プロンプトエンジニアリングの概要 - Anthropic ▸ ChatGPT プロンプトエンジニアリング ▸ AI エージェント OSS のプロンプトを読むのもおすすめ ▸
  10. テストや Lint の重要性 AI エージェントを十分に活用するためには、テストや Lint の整備が不可欠 ▸ AI エージェントはフィードバックを受けて自己内省するため、テストや

    Lint の結果が 重要な情報源となる ▸ AI がコードを書く速度に比べてテストや Lint の実行時間はボトルネックになりがち ▸ CI の高速化が生産性の向上に直結する ▸ ガードレールとしての役割 ▸
  11. コードレビューがボトルネックにならないために Claude Codeによる生産性向上の限界|すてぃお レビューの自動化: Lint や自動テストを活用 ▸ プルリクエストを適切なサイズに分割 ▸ 適切にモジュール化されているコードベースでは、AI

    エージェントが生成するコード も小さなモジュールに分割されるため、レビューの負担が軽減される ▸ AI によるコードレビュー ▸ 論理的な誤りやセキュリティの問題を検出するのは得意 ▸
  12. 従来の開発生産性が高い組織がそのまま AIエー ジェントを活用できる可能性が高い ドキュメントの整備 ▸ テストや Lint の整備 ▸ コードを小さなモジュールに分割

    ▸ コードレビューの文化 ▸ これらの文化が根付いている組織は、AIエージェントを活用する際にもスムーズに移行 できる ▸
  13. AI に精通したジュニアエンジニアが活躍するチ ャンス https://github.blog/ai-and-ml/generative-ai/junior-developers-arent-obsolete-heres-how-to-thrive- in-the-age-of-ai/ AI の登場でむしろエンジニアの仕事の密度が濃くなった ▸ 新しいAI時代のエンジニアは、AIを活用したうえでプログラミングの学習を始めること が予測される

    ▸ AIは学習コーチとして適切な存在であり、わからないことを自然言語で質問したり、 知らない知識を教えてくれたりする ▸ AIネイティブの世代が登場した場合、始めから AI とうまく付き合うことができる可 能性がある ▸
  14. 「始めの一歩」のハードルを下げる 期待しすぎてはいけないこと 何も介入せずに完璧なコードが仕上 がる ▸ 複雑な要求も一発で正確に実装して くれる ▸ プロジェクト全体の設計を任せられ る

    ▸ 実際の価値 コードを書き始めるハードルを下げ る ▸ 最初の足がかりを提供してくれる ▸ そこから人間が改善・修正していく ▸
  15. 基礎力 → プログラミングの基礎的な知識やスキル AI はあくまでツールであり、最終的な判断は人間に委ねられる ▸ AI が生成したコードが正しいかどうかを判断するためには、プログラミングの基礎的 な知識やスキルが必要 ▸

    基礎的な知識は普遍的であり、長期間にわたって役立つ ▸ AI とのチャットでのやり取りでは体系的に学習することは難しい → 書籍での学習をおすすめ https://azukiazusa.dev/blog/computer-it-books/ ▸
  16. 瞬発力 → 新しい技術やツールに対して迅速に適応できる能力 日々新しい AI ツールが登場している ▸ 新しいツールが出たらとりあえず触ってみよう ▸ いち早く試すことで優位に立てる

    ▸ 新しいツールに触れることで、異なるアプローチや設計思想を学べる ▸ サンクコストを捨てる ▸ 子どものような好奇心旺盛な姿勢で新しい技術に触れる人が強い ▸
  17. 劇場のイドラ(Theater of Idols) フランシス・ベーコンの「4つのイドラ」より 権威や流行に盲従してしまう認知バイアス AI時代における「劇場のイドラ」 🎭 権威への盲従は 判断力を奪う AI

    の権威性: 「AI が言うから正しい」 ▸ 技術の流行性: 「最新のAIツールなら間違いない」 ▸ 自動化への過信: 「機械の方が人間より正確」 ▸
  18. 時代の転換点を楽しもう 人類の歴史は技術革新による仕事の変化の連続 狩猟採集 → 農耕社会 → 産業革命 → 情報化社会 →

    AI時代 歴史の転換点に立ち会える貴重な体験 ▸ 数年後に「2025年は変化に戸惑っていたけど、確かに時代の転換点だったね」と言え る日が来る ▸