20251205_layerxgo.pdf

Transcript

1. Goの内部実装に学ぶ、メソッド隠蔽とその活用 2025/12/05 layerx.go #3 赤川 正朋
2. 埋め込みの挙動について specなどを元に確認する 実装での活用例も見る わかりづらいタイトルにしてしまいましたが、話すことは上記です
3. 3 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. 自己紹介 名前：赤川 正朋 (X: まさとも @mathatomo57) 所属：株式会社エブリー 開発1部（2025.4~） 担当：ヘルシカ（健康管理アプリ）のバックエンド 主な技術領域： Go、 AWS、最近は認証認可周り Go歴：1年ちょっと 学生の時は数学をやっていました 最近社内で Goの勉強会を始めました。 知見ある方いたら懇親会でお話ししたいです！
4. 4 Goの埋め込みの挙動について
5. 5 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. Goの埋め込みの基本 • Goでは構造体に型を埋め込むことができる • 構造体は埋め込まれた型のフィールドやメソッドをあたかも自分のもののように使える （promoted） サンプルコードにはなるべくQR コード付けたので、必要に応じ て読み取ってください https://go.dev/play/p/UPx633_DuYZ
6. 6 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. promotedの定義 specより引用 A field or method f of an embedded field in a struct x is called promoted if x.f is a legal selector that denotes that field or method f. 構造体内の埋め込まれたフィールド x のフィールドまたはメソッド f は、x.f が f を表すlegalな selectorである場合に promotedと呼ぶ。
7. 7 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. legal selectorの定義 specより引用 For a value x of type T or *T where T is not a pointer or interface type, x.f denotes the field or method at the shallowest depth in T where there is such an f. If there is not exactly one f with shallowest depth, the selector expression is illegal. 型 T または *T の値 x について（ここで T はポインタ型でもインターフェース型でもない）、 x.f は T において f という名前のフィールドまたはメソッドが存在する 最も浅い深さ のものを指す。最も 浅い深さに f が一つだけ存在しない場合、この selectorはillegalである。 つまり…
8. 8 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. メソッドは上書きできるし http://go.dev/play/p/13_XmcfMEQ3
9. 9 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. メソッドは隠蔽できる https://go.dev/play/p/wz6N5vo6GlV
10. 10 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. 呼び出しさえしなければビルドは通る！ https://go.dev/play/p/m39EKx2EXBv
11. 11 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. ということが、Effective Go にも書いてあった Embedding types introduces the problem of name conflicts but the rules to resolve them are simple. First, a field or method X hides any other item X in a more deeply nested part of the type. 埋め込み型は名前衝突の問題を引き起こすが、これを解決するルールは単純である。まず、 フィールドまたはメソッド X は、型内のより深くネストされた部分にある他の項目 X を隠す。
12. 12 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. ということが、Effective Go にも書いてあった Second, if the same name appears at the same nesting level, it is usually an error; （中 略）However, if the duplicate name is never mentioned in the program outside the type definition, it is OK. （中略） there is no problem if a field is added that conflicts with another field in another subtype if neither field is ever used. 第二に、同じネストレベルで同じ名前が現れる場合、通常はエラーとなる。（中略）ただし、重複す る名前が型定義の外でプログラム内で一切言及されない場合は問題ない。（中略）別のサブタイ プ内のフィールドと競合するフィールドが追加されても、いずれのフィールドも使用されない限り問 題はない。
13. 13 メソッド上書きの Example -godocより- ドットファイルを除いたファイルシステム
14. 14 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. ドットファイルを除いたファイルシステム Readdirメソッドを上書きして、ドットファイルを無視している https://github.com/golang/go/blob/4d0658bb/src/net/http/example_filesystem_test.go
15. 15 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. ドットファイルを除いたファイルシステム ドットファイルが含まれていたらエラー、そうでないなら dotFileHidingFileにラップして returnする ようOpenを上書き https://github.com/golang/go/blob/4d0658bb/src/net/http/example_filesystem_test.go
16. 16 内部実装のメソッド隠蔽 WriteToできないFile
17. 17 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. Fileの書き込みでの例 noWriteToからpanicするだけの WriteToメソッドが生えていて、 fileWithoutWriteToに埋め込まれている https://github.com/golang/go/blob/master/src/os/file.go
18. 18 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. Fileの書き込みでの例 元のWriteToメソッドは中で genericWriteToを呼び出していて、 io.CopyにfileWithOutWriteToを渡している https://github.com/golang/go/blob/master/src/os/file.go
19. 19 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. Fileの書き込みでの例 io.Copyの中では再び WriteToが呼び出されている つまり、素直に Fileを渡すと無限ループに陥ってしまう！ https://github.com/golang/go/blob/master/src/io/io.go 他にも、tcpConnでも同様の実装が見られる
20. 20 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. 上書き、隠蔽は実装で使えるのか？ • パッケージなどで既に用意されている構造体をカスタムして扱う場合には有効 • わかりづらいので noWriteToほどのことはやらない方が良い • 特定のメソッドを隠蔽するくらいなら、小さいメソッド集合を持つ構造体を複数用意して埋め込 む方がわかりやすい（と、自分は思っています） • 複数のメソッドの上書き、隠蔽は構造体をどう命名したら良いのかわからないのでやりたくな い
21. 21 Copyright © 2015 every, Inc. All rights reserved. 自分の中での結論 隠蔽・上書きするメソッドは 1つだけにして、構造 体にわかりやすい命名を！