【登壇資料】Goのエラー管理を振り返ってみる

20251208　GO・GMOペパボ・アンドパッド "Go" 同勉強会

Transcript

1. Go のエラー管理を振り返ってみる 2025/12/08 GO ・GMO ペパボ・アンドパッド "Go" 同勉強会 株式会社エブリー@rymiyamoto/ パンダム
2. 自己紹介 宮本 涼司 (@rymiyamoto/ パンダム) 株式会社エブリー 開発本部 開発1 部 トモニテグループ ゆるくインターネットが好きなオタクです 近況：登山キャンプしてきた
3. サービス紹介
4. 前置き 直近出したブログのLT バージョンです、後でゆっくり見たい人はこちら
5. ことの始まり Go 1.26 で errors.AsType が導入される予定 これまでのエラーハンドリングを振り返ってみることにした https://github.com/golang/go/issues/51945
6. Go でのエラー構造 エラーは単なるError メソッドを持つだけのインターフェース このインターフェースを担保した型は error 型として扱うことができる https://github.com/golang/go/blob/go1.25.4/src/builtin/builtin.go#L306-L310 この状態のままだと単純にError メソッドを呼び出して文字列を取得するだけで比較が難しい… ( そもそも文字列比較だと部分一致で頑張るしかない) type error interface { Error() string }
7. 再帰的エラーハンドリングの導入(Go1.13~) 発生したエラーに対して新たな情報を追加し、エラーチェーンを構築するアプローチ Unwrap メソッドで元のエラー取得し、階層的な構造になっていてももエラーを辿れる 実際に fmt.Errorf で %w 返しているエラーの型はこんな感じ https://github.com/golang/go/blob/go1.25.4/src/fmt/errors.go#L54-L65 type wrapError struct { msg string err error } func (e *wrapError) Error() string { return e.msg } func (e *wrapError) Unwrap() error { return e.err }
8. エラーハンドリングのパターン(errors.Is / errors.As) errors.Is 値の厳密な一致 (`err == target`) 事前に定義されたエラー値の判定 errors.As 型への代入が可能かをチェック エラー内の型固有の情報の抽出 抽出用のポインタ変数の定義が必須 var err = errors.New("error occurred") if errors.Is(err, target) { fmt.Println("Error is the target") } var mysqlErr *mysql.MySQLError if errors.As(err, &mysqlErr) { fmt.Println("MySQL error occurred:", mysqlErr.Number) }
9. エラーハンドリングの流れ(errors.Is, errors.As) 内部では再帰的にエラーチェーンを辿り、特定のエラーが含まれているかをチェックしている ざっとの処理の流れはこんな感じ https://github.com/golang/go/blob/go1.25.4/src/errors/wrap.go 1. 現在のエラー値が、比較対象のターゲットエラー（target ）と 厳密に等しいか（err == target ）をチェック or 特定の型に代入可能かをチェックして値を取得 2. 現在のエラーがUnwrap() メソッドを持っている場合、そのメソッドを呼び出してラップされた下位のエラーを取得 3. 下位のエラーに対して、再びステップ1 のチェックを実行
10. errors.AsType によるエラーハンドリング(Go1.26 予定) Go1.26 で導入予定のAsType により、型を指定して値を取得することができる 抽出用のポインタ変数の宣言が不要になり、より簡潔な構文で値を取り出せる https://github.com/golang/go/blob/a846bb0aa523c8781248161b63bc2ab6a245cec1/src/e rrors/wrap.go#L153-L208 // ~ Go1.25 func RetrieveMysqlErrorCode(err error) (bool, uint16) { var mysqlErr *mysql.MySQLError // 一時変数の定義が必要 if errors.As(err, &mysqlErr) { return true, mysqlErr.Number } return false, 0 } // Go1.26 ~ func RetrieveMysqlErrorCode(err error) (bool, uint16) { if mysqlErr, ok := errors.AsType[*mysql.MySQLError](err); ok { // 不要な一時変数の定義が不要になり簡潔に！ return true, mysqlErr.Number } return false, 0 }
11. まとめ Go 1.13 で 再帰的エラーハンドリング（エラーチェーン） が導入され、コンテキスト保持 が可能に 既存の errors.Is と errors.As は内部的に再帰的にエラーチェーンを辿り、特定のエラーが 含まれているかをチェックしている Go1.26 で追加予定の errors.AsType はジェネリクスを活用し、型抽出のコードがより簡潔 になる