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大手企業のAIツール導入の壁を越えて:サイバーエージェントのCursor活用戦略

 大手企業のAIツール導入の壁を越えて:サイバーエージェントのCursor活用戦略

Günther Brunner (グンタ)
株式会社サイバーエージェント | CTO室・Developer Productivity室

「日本の開発文化を最先端に」をミッションに、Developer ExperienceとAIドリブン開発の布教活動をしています。巨大ボトムアップ組織におけるCursorのバイラル導入戦略や、AIとゾーンに入る「Vibe Coding」など、生産性を爆上げするための実践的なノウハウを発信中。

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Gunther Brunner

June 06, 2025
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  1. なぜ今、私たちは AI コーディングに移行するのか? 世界のトレンド AI コーディング関連のキーワード検索 推移 2024 年11 月

    45 2025 年1 月 68 2025 年3 月 92 2025 年4 月 100 日本の現状 Zenn トレンドの50% がAI 関連 (2025 年4 月) エンジニアコミュニティの急速な変化 従来の開発手法からの大転換期 もはやAI を使わない開発は、電卓を使わない会計と同じ
  2. AI コードエディタ導入企業の最新事例 企業名 導入ツール 導入効果 投資対効果 株式会社ココナ ラ Cursor Business

    UI 実装速度 10 倍 月額$40 で年間数千万円相当の工数 削減 Ubie 株式会社 複数AI 開発ツー ル エンジニア満足 度 85% 向 上 離職率低下による採用コスト削減 某メガベンチャ ー Cursor + MCP 開発サイクル 60% 短縮 新機能リリース頻度3 倍 月額$40 の投資で、年収1000 万円のエンジニアの生産性が10 倍になる
  3. 自己紹介 Günther Brunner グ ン タ ブ ル ン ナ

    ー CyberAgent since 2012 現在の役職 CTO 統括室 Developer Productivity 室 Connect with me @gunta85 @gunta zenn.dev/gunta
  4. 12 年間のCA キャリア メディア部門 サービス精神の醸成 UX デザインスキルの向上 ユーザー中心の思考 ゲーム部門 フロントエンド技術の極限追求

    パフォーマンス最適化 インタラクティブ表現の探求 横軸部門 SLO (Service Level Objectives ) 開発生産性の追求 ⬅️ 🚀(今ここ) チーム横断的な改善活動 AI 部門 バックエンド技術の習得 Figma の習得 生成AI の実践的活用 最新技術のキャッチアップ
  5. なぜ私がCursor に2 年前から注目していたか 2022 年末 OpenAI が IDE に投資した 2023

    年初頭 Cursor の初期バージョンに出会う " これは革命だ" と直感 2023 年中頃 毎日使い始める 生産性が明らかに向上 優れたツールは、使った瞬間に未来が見える
  6. 数字で見るサイバーエージェント 組織規模 従業員数 10,000 人以上 エンジニア 約3,000 人 子会社数 100

    社以上 Slack ワークスペース 100 個以上 技術の多様性 使用言語 20 種類以上 フレームワーク 50 種類以上 クラウドプロバイダ AWS, GCP, 全て 開発手法 チームごとに異なる 統一なんて不可能。だからこそ面白い。
  7. バイラル戦略:ツール導入の唯一の方法 情報は" 感染" させるしかない Step 1 小さなチームで成功 実績を作る 効果を可視化 Step

    2 エバンジェリズム活動 社内勉強会 Slack での布教 成功事例の共有 Step 3 公開イベントで拡散 YouTube で配信 外部からの注目 内部の関心喚起
  8. なぜ社内だけでは限界があるのか 社内の壁 子会社間の情報分断 「他社の事例」扱い NIH 症候群(Not Invented Here ) 内輪の話と思われがち

    外部の力 客観的な評価 業界トレンドとしての認識 プレッシャーとモチベーション " 外圧こそ最強の推進力" " 日本人は外圧に弱い。それを利用する。"
  9. 私の技術選定基準 TTM (Time to Market) × Trend = 勝利の方程式 TTM

    重視 開発速度の向上 市場投入までの時間短縮 " 速さは正義" トレンド分析 Anthropic がWindsurf を切断 アンケートでCursor が圧勝 新機能・新モデルの対応速度 "IDE カテゴリーでは、Cursor に賭ける"
  10. 最新の業界動向(2025 年6 月時点) イベント 意味 影響 Anthropic のWindsurf API 切断

    競合への直接支援停止 Cursor 優位性の確立 OpenAI のCursor 追加投資 戦略的パートナーシップ強化 長期的な安定性 Google のIDE プロジェクト中止 独自開発からの撤退 既存プレイヤーへの集約 Microsoft のVSCode AI 統合遅延 内部調整の難航 Cursor の先行優位 " 勝者はすでに決まっている。あとは乗るか乗らないか。"
  11. 転機:AI Code Agents 祭り! 2025 年2 月開催 🎯 結果 2

    万人以上が視聴 CA Developers YouTube 史上最高視聴数 きのぴーさん登壇! " バイラル戦略、大成功!"
  12. 利用可能なモデル(2025 年6 月現在) ベンダー モデル 特徴 OpenAI o3 最新の推論能力 Google

    gemini-2.5-pro-max 100 万トークンコンテキスト Anthropic claude-4-sonnet-max & opus 最高精度のコード生成 " これだけのモデルを自由に使える"
  13. 私の野望:CA の未来 目標1 全員がCursor を使う会社に エンジニアだけでなく デザイナーも ビジネス職も " コードを書かない人もCursor"

    目標2 MCP 最多企業を目指す 社内システム全てをMCP 化 生産性ツールの統合 "MCP サーバー数 > 従業員数"
  14. なぜ全員がCursor を使うべきか デザイナーの場合 Figma からコード生成 デザインシステムの自動化 エンジニアとの共通言語 実装可能性の即座の確認 ビジネス職の場合 SQL

    を書かずにデータ分析 簡単な自動化スクリプト作成 技術的な議論への参加 " コードが読める" 価値 " プログラミングは新しいリテラシー。Cursor はその入口。"
  15. 現在の社内MCP サーバー事例 Spindle Design System MCP Figma Dev Mode 連携

    生産性10 倍向上 RISKEN MCP リスク可視化の効率化 インシデント防止 CA 用語辞書 MCP 社内用語の統一理解 PipeCD Documentation MCP OSS 活用の促進 デプロイ自動化 Bucketeer Feature Flags MCP 機能フラグ管理の簡素化 ツールポータル & MCP ポータル cyberagent.tools (開発中) 社内MCP ポータル一覧(開発中)
  16. TaskMaster :リポジトリ内タスク管理の革命 PRD 用のGitHub Issues 、Linear 、手動管理にさようなら 従来の問題 GitHub Issues

    ⟷ コード間の移動 タスクの詳細をMarkdown で手動管理 実装とタスクの乖離 コンテキストスイッチングの頻発 プロジェクト全体の進捗が見えない TaskMaster MCP リポジトリ内で完結するタスク管理 AI との自然な対話でタスク作成 実装とタスクが常に同期 PRD 生成から実装まで一気通貫 Cursor 内ですべてが完結
  17. Spindle MCP :10 倍の生産性向上の秘密 Before (MCP 導入前) 1. Figma でデザイン確認

    2. コンポーネント名を探す 3. ドキュメントで使い方確認 4. コードを手動で記述 5. プロパティを調整 所要時間:30 分〜1 時間 After (MCP 導入後) 1. Figma のリンクを貼る 2. AI が自動でコード生成 3. 完成! 所要時間:3 分 " これが10 倍の意味。もう戻れない。"
  18. Vibe Coding とは? Flow State × AI = 最高の生産性 1.

    リズム タスクを細かく分割し、テン ポよく進める 2. フロー AI との対話でゾーンに入る 3. 楽しさ コーディングを音楽のように 楽しむ " コーディングは作曲。AI は最高のバンドメンバー。"
  19. 私のお気に入りモデル アイデア・計画 Claude Opus 4 ( メイン) o3 ( 数値計算が必要な時)

    コーディング Claude Sonnet 4 Gemini 2.5 Pro ( コンテキスト長で使い分け) 🎯 モデル選択のコツ " タスクに最適なモデルを、コンテキスト長で判断"
  20. タスク別モデル使い分けガイド タスク 推奨モデル 理由 アーキテクチャ設計 Claude Opus 4 深い思考と創造性 バグ修正

    Claude Sonnet 4 正確性とスピードのバランス リファクタリング Gemini 2.5 Pro 大量のコード処理能力 ドキュメント作成 OpenAI o3 構造化された出力 " 適材適所。AI モデルも同じ。"
  21. 秘密のタレ:究極のVibe Coding Stack これは公開したくない... でも日本のために公開します! Opinionated Stack AI エージェント: Mastra

    バックエンド&フロント: Convex ネイティブアプリ: Expo ホスティング: Cloudflare なぜConvex ? 完全なe2e 型付け リアルタイムDB SQL なし! スキーマ強制でAI 生成が完璧
  22. なぜこのスタックが最強なのか 開発速度 アイデアから実装まで30 分 型安全でバグ激減 リアルタイム機能が標準 デプロイまで自動化 AI 親和性 完全な型情報でAI

    が間違えない Cursor Rules が完備 MCP サーバーも提供 "AI が理解しやすい設計" このスタックで、私は10 倍速で開発している
  23. 超重要な視点:バージョン問題 Tailwind v4 のコードを書いてほしいのに、v3 が生成される経験 ありませんか? 従来のアプローチの問題 LLM は古いStackOverflow 等のコードで学習

    バージョン違いでエラー多発 ベストプラクティスではないコード 解決策 Cursor Rules を持つツール(Convex など) MCP ドキュメントサーバー (Mastra など) 最新バージョン&ベストプラクティスを保証
  24. バージョン問題の具体例 よくある失敗 React 17 の古いコード AI が古いReact 17 のクラスコンポーネントを生成 非推奨API

    非推奨のAPI を使用 古いライブラリ 古いライブラリの書き方 Cursor Rules で解決 React 19 の最新コード 最新のReact 19 の関数コンポーネント 最新ベストプラクティス 最新のベストプラクティス 適切なhooks 適切なhooks の使用 Cursor Rules は、AI の教科書
  25. Context is King 👑 Cursor を離れる = 時間とCONTEXT を失う 生産性キラー

    コンテキストスイッチング 外部ツールへの移動 情報の分散 解決策:全てをCursor 内で 既存のMCP サーバーを活用 独自MCP サーバーを開発 ワークフロー全体を統合
  26. コンテキストスイッチングの実際のコスト 37.5% 実際のコーディング 本来の開発作業 25% ツール間の移動 IDE ⟷ ブラウザ ⟷

    ターミナル 18.75% コンテキスト再構築 何をしていたか思い出す時間 18.75% ドキュメント検索 API 仕様・使い方を調べる時間
  27. MCP ワークフローでビジネスの未来 1 Step 1: 手動作業 Cursor 内で全て手動実行 2 Step

    2: MCP 化 各作業をMCP サーバーでラップ Cloudflare Agent 推奨 & Mastra MCP Server 推奨 3 Step 3: エージェント化 Mastra で全ワークフローを自動化 4 Step 4: 収益化 a) Convex でUI/App 化 b) MCP SaaS として販売(Stripe Agent Toolkit )
  28. MCP SaaS の例 企業向けMCP 採用管理MCP 販売中 $50/ 月で販売中 経費精算MCP 販売中

    $30/ 月で販売中 勤怠管理MCP 開発中 ビジネスモデル 開発時間: 約10 時間 月額収益: $500 〜$2000 ROI: 3 ヶ月で回収 " 作れば作るほど収益源に"
  29. MCP 投資指標 MCP サーバー数は新しい企業価値指標になる 現在のトレンド Zapier: "MCP サーバー数 > 従業員数"

    Composio: 同様の発表 なぜ重要か 自動化レベルの可視化 生産性の定量的指標 投資家が注目する新指標
  30. なぜMCP サーバー数が重要なのか 投資家の視点 自動化レベルの定量化 将来の成長性予測 競争優位性の指標 " 人的リソース依存度の低さ" 企業の視点 生産性の可視化

    イノベーション力の証明 採用競争力の向上 " 最先端企業のブランディング" MCP サーバー1000 個 = ユニコーン企業の新基準
  31. Breaking: MCP Elicitations (まだ未リリース) 最新機能:LLM がユーザーに質問できる! 従来の問題 AI が情報不足で推測 ハルシネーションの発生

    間違った実装 Elicitations で解決 AI が必要な情報を質問 対話的な問題解決 正確な実装 革命的効果 ハルシネーション激減 LLM のハルシネーションが激減する革命的機能
  32. Elicitations の実用例 開発タスク AI: " どの関数のテストですか?" AI: " エッジケースも含めますか?" AI:

    " 使用するテストフレームワークは?" データ分析 AI: " 期間を教えてください" AI: " 比較対象は?" AI: " 出力形式の希望は?" 対話型AI こそが、真のペアプログラミング
  33. 生産性の実測値 Before vs After ( 私の場合) 指標 Before After 改善率

    機能実装/ 日 1-2 個 5-8 個 400% バグ発生率 15% 3% 80% 減 コードレビュー時間 2 時間 30 分 75% 減 ドキュメント作成 翌日 即時 ∞ これは誇張ではない。
  34. よくある質問と回答 Q: セキュリティは大丈夫? A: Business プランなら完璧 SOC2 準拠 データは学習に使われない Q:

    既存のワークフローは? A: 段階的に移行可能 VSCode からの移行は簡単 拡張機能も大体使える チーム単位で導入OK 心配より、まず試してみる。無料枠あり。
  35. もっとよくある質問 Q: 学習コストは? A: VSCode 使えるなら即日 基本操作は同じ AI 機能は直感的 日本語ドキュメント充実

    Q: チーム導入の進め方は? A: スモールスタートを推奨 まず個人で試す 小さなプロジェクトから 成功体験を共有 導入の壁は低い。
  36. 導入を躊躇している方へ よくある心配事と現実 心配事 現実 AI に仕事を奪われる AI と協働してより価値の高い仕事ができる 使いこなせるか不安 1

    週間で慣れる、1 ヶ月で手放せなくなる コストが高い 生産性向上で即回収可能 チームの反発 使った人から推進者になる 恐れるより、まず体験。体験すれば理解できる。
  37. 成功するCursor 導入の秘訣 Phase 1: 個人 個人プロジェクトで試す 小さな成功体験を積む 使い方を習得 Phase 2:

    チーム 成功事例を共有 勉強会を開催 サポート体制構築 Phase 3: 組織 経営層への提案 予算確保 全社展開 急がば回れ。段階的導入が最速の道。
  38. Cursor Japan コミュニティ オンライン活動 Cursor-Japan.org 日本語リソース集約 Discord AI エージェントユーザー会(AIAU )

    YouTube チュートリアル動画 Zenn/Qiita 技術記事 オフライン活動 月次Meetup 東京・大阪・福岡 ハンズオン 初心者向けワークショップ 企業訪問 導入支援 カンファレンス 年2 回の大型イベント
  39. 未来のビジョン:2030 年の開発現場 5 年後の世界 予測される変化 全員がAI ペアプロ エンジニア以外も含む MCP エコシステム

    数万のMCP サーバー 新しい職種 AI Prompt Engineer 、MCP Developer 未来は既に始まっている 参加するなら今 今動かないと、永遠に追いつけない
  40. 行動を起こすための3 つのステップ 今日から始められること 1 今日 Cursor をダウンロード 無料トライアルを開始 簡単なプロジェクトで試す 2

    今週 Cursor Japan に参加 MCP サーバーを1 つ試す 成功体験をシェア 3 今月 チームメンバーに紹介 社内勉強会を企画 導入提案書を作成
  41. グンタからのメッセージ 1 ボトムアップ企業でのツール導入は" バイラル" が鍵 ( 外から攻めろ!) 2 未来の企業価値は"MCP サーバー数"

    で決まる 3 AI 開発の最強スタックは存在する (Convex 最高!) 4 LLM の知識を信じるな。" 最新の教科書(MCP)" を与えろ 5 CONTEXT IS KING. (Cursor から離れるな!)
  42. お知らせ 新しいプロジェクト MCPVerified.com • MCP 情報キュレーションサイト • ベストプラクティス集約 • Contributors

    募集中! Cursor-Japan.org • 日本語ドキュメント • イベント情報 • Contributors 募集中! イベント情報 CA.ai #2 2025 年7 月17 日(木)19:30 〜 会場:Abema Towers MCP の基礎から応用まで connpass.com/event/327061 夏の大型イベント • 海外から大物ゲスト予定! • 詳細は後日発表 We're Hiring!