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[依頼講演] 適応的実験計画法に基づく効率的無線システム設計

Koya SATO
October 18, 2024

[依頼講演] 適応的実験計画法に基づく効率的無線システム設計

発表日:2024年10月18日(金)
発表先:IEICE RCS研究会
発表会場:電気通信大学
プログラム :
https://ken.ieice.org/ken/program/index.php?tgs_regid=30fa6e9cd294401e8d77b1bb758ffd3e94faf1640fcd098a26b004bcc9e4ae52&tgid=IEICE-RCS

Koya SATO

October 18, 2024
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Transcript

  1. 研究背景と本日の主題 2 • 無線の効率的な運用に向けては事前の入念な基地局設計が重要 Øサイトスペシフィックな電波伝搬特性の考慮が必須 • 以下のような実験と設計を試行錯誤的に繰り返す必要 Ø電波伝搬シミュレーションで評価 Ø実際に基地局を配置しての実地評価 [A]

    K. Sato and K. Suto, "Bayesian Optimization Framework for Channel Simulation-Based Base Station Placement and Transmission Power Design," IEEE Netw. Lett., 2024 (Early Access). 評価コスト大 設計者 基地局のパラメータ: シミュレーション: 対象エリア 基地局 Update: 配置 電力 スループット • 主題:限られた評価回数で効率よく基地局を設計するには?[A]
  2. なぜ本セッションに持ち込んだか? 3 サイバー空間の更新 最適化 L. U. Khan et al., “Digital

    Twin of Wireless Systems: Overview, Taxonomy, Challenges, and Opportunities,” IEEE COMST, 4Q 2022. デジタルツインと6G • 実空間上の複雑な情報をもとにし た無線システム最適化が期待 Ø送信電力、配置 Øビーム、スケジューリング、… • 複雑な情報を考慮するほど 目的関数も複雑化 Øブラックボックスとして扱わざ るを得ない状況も増えそう • シミュレーションベースの最適化 が今後より重要になるのでは?と 考え、その要素の位置づけで持ち 込みました
  3. デジタルツイン×無線関連の成果例 (宣伝) 4 センサ座標が完全未知な環境での 相対座標上での空間回帰分析 [C] イメージセンサによる屋内環境の三 次元再構成&レイトレーシング [B] [B]

    N. Suga, Y. Maeda, and K. Sato, "Indoor Radio Map Construction via Ray Tracing with RGB-D Sensor-Based 3D Reconstruction: Concept and Experiments in WLAN Systems," IEEE Access, vol.11, pp.24863-24874, March 2023. [C] K. Kanzaki and K. Sato, "A Location-Blind Spatial Regression Framework for IoT Monitoring Systems Based on Location Distribution and Spatial Correlation," IEEE Sens. Lett., vol.8, no.9, Art no. 6011404, Sept. 2024.
  4. システムモデルと最適化対象 5 • 複数送信局が単一チャネルのダウンリンクで同一サービスを展開 • 最適化対象:各配置と送信電力 • 通信路:距離減衰+空間相関シャドウイング Ø設計者が伝搬シミュレーションにより推定可能と仮定 ある受信位置でのi番目の送信局に関するスループット:

    あるエリア上での総和スループットの面平均: 受信座標 帯域幅 平均雑音電力 各送信局からの受信電力 評価エリアの総面積 各基地局の座標と送信電力の集合 目的:限られた評価回数 でのこの関数の最大化 →非制約のブラックボッ クス最適化問題
  5. NOTE: シャドウイングについて 6 • 以下の場合、正則配置+送信電力最適化でよい Ø伝搬路が距離減衰のみの場合 Øシャドウイングを未知として平均最適を狙う場合 • 実際にはシャドウイングに伴う受信電力の局所変動により 必ずしも正則が最適ではない

    • 送信位置に応じたシャドウイング 変動の例 Ø平均相関距離50m Ø標準偏差6dB Øポアソン点過程+対数正規分布 により空間相関を表現 • シャドウイングまで推定できる場 合にどこまでスループットを向上 できるか?
  6. ベイズ最適化による適応的実験計画法 7 以下のような状況で最適化したい例は多い • 目的関数の性質が未知 (ブラックボックス) • 目的関数の1入力ごとの計算コストが重過ぎる Ø例:深層学習におけるハイパーパラメータ Ø例:各種製造(製品設計、材料設計)

    • この場合、多くの場合以下のようなサイクルを回すことになる 仮説 計画 実験 検証 コスト高 • このサイクルをデータ駆動で追い込む方法が適応的実験計画 Øそのフレームワークがベイズ最適化 (BO: Bayesian Optimization) • 無線システムの事前設計においても同様の難しさ Ø伝搬特性の影響は配置決定後に決まる→目的関数がブラックボックス Ø高精度な伝搬シミュレーションは重い
  7. ベイズ最適化による適応的実験計画法 8 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 x °2.0

    °1.5 °1.0 °0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 y y(x) = sin(2ºx) + ≤ Observed Data Mean (Est.) Mean (True) Confidence 探索対象となるパラメータ𝐱 評価値 手持ちの実験結果とパラメータ間の関係から以下を探索 実験結果 実験結果の 回帰曲線 回帰曲線の 不確定性 →非制約のブラックボックス最適化
  8. ベイズ最適化による適応的実験計画法 (1/3) 9 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 x

    °2.0 °1.5 °1.0 °0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 y Observed Data Mean (Est.) Confidence 何点かで実験しデータセットを構築 目的関数の統計モデルを更新 (※): ※実現例:目的関数がガウス過程に従うと仮定し、ガウス過程回帰 (GPR: Gaussian Process Regression)により平均と分散を計算
  9. ベイズ最適化による適応的実験計画法 (2/3) 10 獲得関数: 入力点の”良さ”を確率分布に基づいて定量評価 (後述) 0.0 0.2 0.4 0.6

    0.8 1.0 x °2.0 °1.5 °1.0 °0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 y Observed Data Mean (Est.) Confidence Acquisition Function Next Sampling Point 獲得関数を最大化する候補点を選ぶ
  10. 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 x °2.0 °1.5 °1.0

    °0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 y Observed Data Mean (Est.) Confidence Acquisition Function Next Sampling Point Next Experimental Result ベイズ最適化による適応的実験計画法 (3/3) 11 データセットを更新 以上を繰り返す 無線システム設計:送信電力や配置を並べた ベクトルを入力とみなせばよい →次元数:(送信局数)×3次元
  11. NOTE: 獲得関数あれこれ 12 改善確率量 (PI: Probability of Improvement) • 改善される確率が最も高い点の選択

    Ø改善度の大小は問わない 期待改善量 (EI: Expected Improvement) • 改善量の期待値が最大化される点の選択 信頼上限 (UCB: Upper Confidence Bound) それまでの時点での最高値 • PI, EIとも平均と分散から解析的に計算可(詳細省略) • PIは消極的な選択になりがち
  12. 無線システム設計における2つの実装方針 14 方針1: 配置と電力全てを一括で選択 Placement and Power Sampling Throughput Evaluation

    Acquisition Function Computation w/ GPR 通信路シミュ レーション Placement Sampling Throughput Evaluation Acquisition Function Computation w/ GPR 通信路シミュ レーション Power Optimization for the Fixed Placement 方針2: 配置のみ選択後、その配置に対し最適化された電力に対して評価 • 初段のサンプリングにおける次元数削減による収束性の改善が期待
  13. 平均スループット 15 • 送信局7台 Ø3[変数]×7=21 変数 • 1000m四方 • 初期データ数8

    • RBFカーネル • 相関距離200m • 標準偏差6dB • 帯域幅20MHz • 最大送信電力10mW • 試行回数100回 0 10 20 30 40 50 Iteration T 20 30 40 50 60 70 80 90 100 Average Throughput [Mbps/m2] Placement Opt. Pure BO Alg.2 (RBF) Random Search Regular w/ Power Opt. 方針2 • 限られた評価回数で高スループット Ø例:正則配置と比較して平均18.4%の改善 配置最適化+最大電力 方針1 ランダム探索 正則配置+ 電力最適化
  14. 0 2 4 6 8 10 Error Standard Deviation æ≤

    [dB] 50 60 70 80 90 100 110 Average Throughput [Mbps/m2] Placement Opt. Pure BO Random Search Regular Alg.2 (RBF) Alg.2 (Scaled RBF) Alg.2 (Mat´ ern 5/2) 平均スループット:シミュレーション誤差の影響 16 • 50シミュレーション後のスループットの平均を評価 Ø誤差があっても高スループット 方針2 (3種類のカーネルで評価) 配置最適化+最大電力 方針1 ランダム探索 正則配置+電力最適化
  15. 平均スループットの例 17 0 10 20 30 40 50 Iteration T

    20 30 40 50 60 70 80 90 100 Average Throughput [Mbps/m2] Placement Opt. Pure BO Alg.2 (RBF) Random Search Regular w/ Power Opt. 7台 • 台数を増やすと最適化対象が高次元に Ø次元数の影響で収束特性が若干劣化 (改善の余地) 0 10 20 30 40 50 Iteration T 20 30 40 50 60 70 80 90 100 Average Throughput [Mbps/m2] Placement Opt. Pure BO Alg.2 (RBF) Random Search Regular w/ Power Opt. 19台 配置最適化 方針1 方針2 ランダム 正則配置 配置最適化 方針1 方針2 ランダム 正則配置
  16. NOTE: 多チャネル対応するには? 18 今回使用した目的関数 (シングルチャネル) マルチチャネルの場合 チャネル間の直交性に着目し、目的関数を分割すればよい 1. 各チャネルの使用台数を決定 (例:

    等分) 2. i 番目のチャネルに対し前述の最適化を適用 3. i +1番目のチャネルに対し最適化 4. (繰り返し) 5. 各チャネルの最適化結果をまとめる →目的関数の加法性分解 [D] [D] P. Rolland et al., “High-Dimensional Bayesian Optimization via Additive Models with Overlapping Groups,” in Proc. AISTATS 2018, Lanzarote, Spain, Apr. 2018, pp. 298–307 ※場所ごとのスループットに偏 りが生じないよう、目的関数間 での結果の共有は別途必要
  17. NOTE: 適応的実験計画法に興味を持ったら 19 • Optuna: Preferred Networks社による自動最適化フレームワーク ØBoTorch (ベイズ最適化フレームワーク)のラッパーが実装済みで、 Optuna上からGPを活用できる

    Ø結果の可視化や記録、並列化といった機能も充実 • Optuna: https://optuna.org/ • BoTorch: https://botorch.org/ 書籍の例 • 今井秀明, 松井孝太, ベイズ最適化 -適応的実験計画の基礎と実践-, 近代科学社, 2023年 • 佐野正太郎 他, Optunaによるブラックボックス最適化, オーム社, 2023年
  18. おわりに 20 • 適応的実験計画法と伝搬シミュレーションに基づく基地局の事前設計フ レームワークを紹介した • ベイズ最適化により限られた評価回数で効率よくパラメータ設計 Ø正則配置と比較しても高い下りスループットを実現可能 • 拡張例:

    Øビーム形状 Øスケジューリング Ø… 問い合わせ • 電気通信大学 助教 佐藤光哉 • [email protected] 本成果の詳細 • ブラックボックス最適化のため導入自体は容易 • ただし次元数が増大するため、問題の分割・ 近似等が重要になると予想される [A] K. Sato and K. Suto, "Bayesian Optimization Framework for Channel Simulation-Based Base Station Placement and Transmission Power Design," IEEE Netw. Lett., 2024 (Early Access).