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「街と地域を理解する人工知能」京都大学 工学部公開講座・オープンセミナー (2025年度)

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October 19, 2025
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「街と地域を理解する人工知能」京都大学 工学部公開講座・オープンセミナー (2025年度)

京都大学 工学部公開講座・オープンセミナー (2025年度 )「ひと・社会・工学-工学のいまを知る-」において行った講演「街と地域を理解する人工知能」のスライドです。
https://www.t.kyoto-u.ac.jp/ja/news-events/events/admg/2025kk

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Koh Takeuchi

October 19, 2025
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  1. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 渋滞は私たちの日々の困りごと。 イライラの種 3 渋滞に巻き込まれると、遅刻する/遊ぶ時間が減る

    ◦生活への影響 ◦人間関係への影響 渋滞前 渋滞後 ◦運輸への影響 渋滞に巻き込まれると、配達が遅れる(物流の困りごと) イライラは喧嘩の原因になる
  2. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 渋滞は私たちの社会に深刻な影響を与えています 4 ◦経済活動への影響 日本だけで1年間約10兆円の

    経済損失を起こすと試算 自動車が出す温室効果ガスは 約1.5倍に増加します ◦地球温暖化への影響 平均速度 [mph] CO 2 排出量 [g/mi] 渋滞で増加 世界の経済損失は…? (1) 国土交通省試算より (2) M. Barth and K. Boriboonsomsin, Real-World Carbon Dioxide Impacts of Traffic Congestion. Transportation Research Record 2058, 1 (2008). [Barth+, 2008]
  3. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ AIを使って、渋滞の少ない便利な交通は作れる? 5 ◦これまで:事後対応 ①渋滞の発生を確認する

    ② 渋滞を解消するよう対処する 信号の長さを調整する 空いている道へ誘導する ◦これから:AIによる事前予測 ① AIで渋滞の発生を予測する ② 渋滞を予防する 信号の長さを先に調整する 空いている道へ先に誘導する いつ・どこで 何メートル? 交通データを 蓄積中 交通管制センター
  4. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 明日の天気もAIが予測してる? • 衛星データから天気や台風経路を予測するAI1) •

    天気予報はスーパーコンピュータで大変な計算をしている • たった1台のパソコンに入ったAIがサクッと天気予報 • EUは、予測精度が高いので、AI型予報も使い始めているそうです 7 台風経路の予測 気象の予測 1) Lam+. Learning skillful medium-range global weather forecasting. Science 382,1416-1421(2023).
  5. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 明日の渋滞もAIが予測してる? • 交通データからパターンを学習し渋滞の発生を予測するAI2) •

    いつ・どこで・何メートルぐらい渋滞が起きるか予測する • 東京都を平均40mぐらいのズレで当てられそう 8 2) Shirakami+. QTNet: Theory-based Queue Length Prediction for Urban Traffic. KDD. 2024. ACM. 警視庁「AIとビッグデータを活用した交通管制システムの高度化プロジェクト」のイメージ 渋滞長m] 時刻 渋滞長[m] 実際の観測値 予測値 予測の例
  6. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 街の少し先を予測する様々なAIがある • 様々なデータの予測を行うための研究が行われている •

    天気予報 (気温・降水量・風などの短期/長期予測) • お店の混雑 (来店履歴や季節・時間帯による人流分析) • 道路の混雑 (カーナビや交通センサーによる渋滞予測) • 病気の流行 (感染症データや検索履歴からの早期検知) • イベントや観光地の人流予測 (観光シーズンにおける人出の見積もり) • エネルギー需要の予測 (気温や時間帯に基づく電力使用量の変動) 9
  7. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ クイズ① 次の言葉「〇〇」を当てよう! • 次の文の続きを考えてください

    • 「今日は天気が良いので、鴨川へ◦◦。」 • 「昨日の夜は少し涼しかったのでお鍋を◦◦。」 • どんな答えを考えましたか? • 正しい答えはありません! • 人もAIも、次に来る単語を予測している? • どんな話なのか文脈を読みとれる? 12 ChatGPT5の答え
  8. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ クイズ② 文の「◦◦」に入る言葉を考えよう! • 次の文の「◦◦」に入る言葉を考えてください

    • 「AIは人間の ◦◦ として昔から暮らしてきた。」 • 「私は河原町へ出かけたついでに ◦◦ を飲んだ。」 • 「おでんは空を ◦◦ する乗り物だ。」 • どんな答えを考えましたか? • 正しい答えはありません! • 人間もAIも文脈に合わせて穴埋めできる? 13 ChatGPT5の答え 「AIは人間の として昔から暮らしてきた。」でもオッケー!
  9. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ クイズ③ どっちの文が「いい感じ」? • 次の文のどちらが良いか考えてください

    • A: 今日は涼しいから、冷たいジュースを飲み たい。 • B: 今日は涼しいから、暖かい飲み物が出ると ありがたい。 • あなたはどちらが自然だと思いましたか? • 正しい答えはありません! • あなたの選んだ答えでOKです 14 ChatGPT5の答え
  10. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ AIはクイズで賢くなる? • 今の3つのクイズ、実はAIが日々やっていることなんです。 •

    AIは、「たくさんのクイズの答え方を学んでいる」! 15 でもさ、それって 誰が何のために 作ったクイズ?
  11. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ AIは「クイズの復習」をして賢くなる • AIは、クイズを入力されると答えを予測します。 •

    AIは、予測が正解か調べて、間違いを減らすように改善していきます。 • たくさんの「問題集(データ)」を解いて、間違いを直すなかで賢くなる。 17 データ 予測 復習
  12. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 「理解する」=「次を予測できる」としていいの? • 人は経験から「次に起こること」を自然に予想しています。 •

    会話の流れを読める。 • 空を見て「雨が降りそう」と思う。 • 我々は、「理解」を「次を見通せる状態」と捉えます。 • AIはこの考え方をもとに「次に来るもの」を予測するように作られています。 18 人間 AI 使うもの 経験・記憶 データ・数値 予測の仕方 似ているものを思い出す 似ているデータを探す 得意なこと 柔軟に応じる 正確に繰り返す
  13. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ AIの3つの学び方 さっきのクイズ、実はAIの勉強法なのです • クイズ①

    「次の言葉を当てる」 → 教師あり学習 • 人間が“正解”を教える。正解を作るのが大変! • クイズ② 「穴埋め」→ 自己教師あり学習 • AIが“自分で正解”を作る。AIが自分で正解を作る • クイズ③ 「どっちが自然?」→ 人の選好学習 • 人間の好きな答え方を真似る。でも、どっちがいいかを教えるのが大変! • AIをつくるためには、私たちの協力が必要不可欠 20
  14. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ [豆知識] AIは地球一の読書家!? • 人間が一生で読む本は約千冊程度

    AIは、たった1日で何百万冊分の文章を読める • 本・ニュース・SNS・論文をすごい勢いで吸い込んでいく • AIは「すごく詳しい」けれど、「本当に理解しているか」は別問題。 21 AIが学習に使用する文章 一人が 一生に読める 文章 文章や記録に なっていない 人の体験や記憶
  15. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ [豆知識] AIに「価値観」を教えるのは誰? • 世界中の人がAIに「どっちが良いか」を教えている

    • 専門家が安全性や正確性を監督 • わたしもあなたも実はAIの先生になれるのかもしれない • あなたの街のAIも作れちゃうかも? (注意)実はChatGPTの開発も発展途上国の人々が手伝っていた。 その時のお賃金が安すぎでは?など注意が必要な議論も存在する。 22 TechScape: How cheap, outsourced labour in Africa is shaping AI English, The Guardian https://www.theguardian.com/technology/2024/apr /16/techscape-ai-gadgest-humane-ai-pin-chatgpt Exclusive: OpenAI Used Kenyan Workers on Less Than $2 Per Hour to Make ChatGPT Less Toxic https://time.com/6247678/openai-chatgpt-kenya- workers/
  16. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ [豆知識] AIが予測できたとしても理解しているとは 限らない •

    AIは「次のデータ」をうまく当てる仕組み。 • AIは理解しているように見えるけれど、実際はうまく予測しているだけかも。 • あいかわらず、予測が外れることも多い。 • AIは、人の思考を助ける道具である。 • 自分がどうしたいかをよく考えてみよう。 • 今も先も、未来を選ぶのは人間。 23
  17. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ [豆知識] いろんなAIがいる。大・中・小の適材適所 24 大きいAI

    大規模言語モデル 視覚言語モデル 生成AI 長所 喋べれる! 画像を読んで喋れる! 画像を作れる! 短所 学習がすごく大変 電気をすごい使う 計算の理屈が謎 小さいAI 線形モデル 決定木モデル 長所 すぐに作れる! 計算の理屈が明解 電気をあまり使わない 短所 複雑なことは苦手 しゃべれない 中くらいのAI 深層学習モデル アンサンブルモデル 非線形モデル 長所 すぐに作れる! 画像や地図も読める! 電気をあまり使わない 短所 喋れない 計算の理屈が謎
  18. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ クイズ④ いま行っていない場所を思い浮かべよう • 昨日訪れた場所を思い出してください

    • 昨日行った場所、今日はどんな感じ? • 晴れてる? 雨? • 混んでる? 空いてる? • 私たちは「今いない場所の様子を予 想」できる。 26
  19. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ クイズ⑤ 明日の街は、どんな様子だろう? • 昨日→今日→明日

    … 街の状態は少しずつ変わる • 明日は、どんな様子になっていると思いますか? • 晴れてる? 雨? • 混んでる? 空いてる? • みんなはどこに集まってる? • 「過去の様子」を参考に未来を想像していそう。 • それって実は、AIが得意なことかも? 27
  20. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 予想は、私たちの行動の道しるべになる • 予想は私たちが、「次にどう動くか」を決めるヒント。 •

    晴れるなら、出かけたくなる • 空いてるなら、買い物に行きたくなる • 混んでいるなら、避けたくなる • 予想を「予測する」に置き換えたら? • AIの予測をヒントにする? 28
  21. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 地図を使うAI(近いものは似ている) • 人間は、まわりの状況から、ある場所 の様子を予想できる

    • 近くにあるものほど似ているかも • 地理学の第一法則 • クイズ②「穴埋め」でAIに街を教える! • 街の中に穴を作って、周りの様子から 穴埋めできるように学習する • 知らない場所も当てられるようになる? 29 ③ 改善! ② 予測! ① 入力! 近くの府県の混雑度 京都の混雑度 ④ 当てる地域を順番に変えていく
  22. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 時間の流れを読むAI(過去→現在→未来) • 人間は、これまでの変化から、将来の 様子を予想できる

    • クイズ①「次の言葉を当てる」でAIに 流れを教える! • 過去のデータから、少し先のデータを 予測させる • 天気予報 、病気予報 、渋滞予測 • ちょっと未来も当てられるようになる? 30 12ヶ月のデータ 2月 12ヶ月のデータ 3月 12ヶ月前までのデータ 1月 ③ 改善! ② 予測! ① 入力! ④ 当てる時期を順番に変えていく
  23. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ AIに地図と時間を同時に予測させる • 人間は、まわりの状況とこれまでの変化か ら、ある場所の未来を予想できる?

    • 周りの過去のデータ → どこかの未来を予測 • クイズ①「次の言葉を当てる」とクイズ② 「穴埋め」でAIに街の変化を教える! • 時間的パターン+空間的パターンの絡み合い を同時に学習する AIの強み 時空間データを統合して予測できる 人間が読みきれないデータを読み込める 31 例: 気象 (複数地点・複数時間のデータ) → (明日の気温分布) 交通 (都市全体の過去の交通量) → (未来の渋滞マップ) 生き物の分布 (生き物が過去に見つかった場所) → (未来の生き物の発見マップ)
  24. 研究事例① 鉄道新駅の需要を予測 使い方を見てみよう 32 Yohei Kodama, Yuki Akeyama, Yusuke Miyazaki,

    and Koh Takeuchi. “Travel Demand Prediction with Application to Commuter Demand Estimation on Urban Railways.” In Companion Proceedings of the ACM Web Conference 2024 (WWW '24). 元新幹線運転手のデータサイエンティストさんとの研究!
  25. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 新しい駅をどこに作ると便利? • 駅の開設前のデータから、駅開設後の需要を予測したい •

    需要を最大化する地点の選択、需要に合わせた駅の設計に活用 33 開設前の郵便番号ごとの定期登録数最大駅の分布 開設1年後の郵便番号ごとの定期登録数最大駅の分布
  26. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ どこに住んでる人はどの駅を使う? • 鉄道会社ではコンパスで割った勢力図が長年使用されている •

    コンパスだけでは人の選び方とズレる 34 人の駅の選び方は複雑 コンパスで割った勢力図(ボロノイ図) 駅の選択は地点と駅の距離に従うと仮定
  27. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 郵便番号から鉄道駅を利用する人数を ②穴埋めする問題にしてしまう • AIを使って実データから“勢力図”を自動で描く方法を提案

    • →駅の場所や改札数の作戦に使える • JR西日本の4つの新駅のIC交通カードデータ実験から性能改善を確認 35 郵便番号と駅の空間情報から 教師あり学習で予測 AIがコンパスになって勢力図を引くと うまく当たるようになる
  28. 研究事例② 渋滞を先回り 使い方を見てみよう 36 Ryu Shirakami, Toshiya Kitahara, Koh Takeuchi,

    and Hisashi Kashima. “QTNet: Theory-based Queue Length Prediction for Urban Traffic” In Proceedings of the 29th ACM SIGKDD Conference on Knowledge Discovery and Data Mining (KDD '23).
  29. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 渋滞は私たちの日々の困りごと。 イライラの種 37 渋滞に巻き込まれると、遅刻する/遊ぶ時間が減る

    ◦生活への影響 ◦人間関係への影響 渋滞前 渋滞後 ◦運輸への影響 渋滞に巻き込まれると、配達が遅れる(物流の困りごと) イライラは喧嘩の原因になる
  30. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 渋滞の長さを当てる①と②の問題にしてしまう。 地図とつながったAI x 交通の知識

    38 地図のつながり(道路網)を入力する →交通の地理空間的な関係を反映する 長さ 解釈可能性 時間 場所 AIで交通データの空間的に複雑なパ ターンを学習できるか? ②交通の知識を使うAI ① 地図を使うAI AIに 入力 地理的に 妥当な予測 東京の道路網 AIの渋滞長の予測は解釈しにくい 交通の知識と大きく乖離することも (1) Spatio-Temporal Graph Neural Network (STGNN) (2) S. Takaba et al., Estimation and measurement of travel time by vehicle detectors and license plate readers. In Vehicle Navigation and Information Systems Conference, 1991, Vol. 2. 257–267. 交通の知識2を活用する →交通工学の型に合わせることで、 予測の頑健性を向上させる →解釈不可能な予測を除外する (渋滞長500mだが速度80km/hなど)
  31. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 東京都1098箇所の一般道における「1時間先の渋 滞長を予測する実験」で、平均誤差40m以下を達成 39 東京都の構造改革の取り組み「シン・トセイ」において、警視庁による「AI

    とビッグデータを活用した交通管制 システムの高度化プロジェクト」が進められています 渋滞長m] 時刻 渋滞長[m] 実際の観測値 予測値 予測結果の解釈も可能 交通量が急激に増加するため、大きな渋滞の発生する可能性がある 予測誤差を40m以下に低減 ① QTNNは最先端のAIと比べて1時間 先の誤差を12.6%改善しました 12.6% 最先端の深層学習技術:DCRNN, ARGCN, GWNT, MegaCRN ② 変数間の挙動に矛盾がないため、渋 滞長を交通状況から説明可能 LLMと比較して軽量なモデルで GPU1枚で学習と推論が可能
  32. 研究事例③ 避難のwhat-if 因果を用いた時空間予測 40 Koh Takeuchi, Ryo Nishida, Hisashi Kashima,

    and Masaki Onishi. “Causal Effect Estimation on Hierarchical Spatial Graph Data.” In Proceedings of the 29th ACM SIGKDD Conference on Knowledge Discovery and Data Mining (KDD '23).
  33. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ “誘導員をここに置く”計画で、何分早くなる? • 意思決定による結果の変化を予測するAIの研究 41

    時空間因果推論AI 状況 X どこに何人 いる? 計画 A どこで誘導 する? 空間情報 G どんな場所で 避難する? 掛かっ た時間 Y 皆さんが避難するまで N分かかりました
  34. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 避難訓練を行ったチームの作った 避難シミュレータを使用したデータを学習 42 避難シミュレータの例

    山下 倫央, 野田 五十樹, 荻野 光司, 高田 和幸, 大原 美保, 歩行者シミュレーションを用いた二段階 避難による混雑軽減の分析, 人工知能学会論文誌, 2016, 31 巻, 6 号, p. AG-I_1-10, 2017 北九州芸術劇場で570人が参加した実働避難訓練でシミュレータのパラメータは調整 済み。全員の避難時間の実測とシミュレーションの誤差は5%以下。 経路誘導無しの場合 経路誘導有りの場合
  35. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ どんな予測も、たまに外れることがある • 私たちの社会に予測と予報は大きな影響を与える •

    例:台風の進路予測、地震臨時情報、など • AIの予想も、外れる時がある。それでも、AIの予測を信じて行動する? 45 南海トラフ地震臨時情報 まもなく1か月 課題踏まえ どう対応?: 「あいまいな情報をもとにどう被害を減 らすか、正解の無い答えを探している。国民全体が 当事者となって一緒に解決策を考えるのが望まし い。」「これらのデータに基づいて南海トラフ地震 を予知するには、克服すべき課題が多い。将来、予 知できるよう、今の世代が観測データを蓄積する必 要がある。」 AIやシミュレータの進路予測 地震に備えるための情報
  36. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 私たちの生活のサイクル • 例えば、天文学は正確な暦を作ることで農業の発展に貢献してきた •

    天体を観測し、移動の変化を観察し解析することで、未来を予測するモデル を立て農業を支援する技術(とも言える?) 46 航海術で も活用
  37. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 計測→予測→意思決定の時代の意思決定 • センサーやスマホが街の情報を集め、AIが未来を予測する。 •

    その予測をもとに、人がどう動くかを決める時代※がまもなくやってくる。 • AIは「考えるヒント」、選ぶのは人間でありつづけるのだろうか。 47 ※EBPM(Evidence-based Policy Making)や 証拠に基づく政策立案とも言う 観測 → 予測 → 判断 → 実行 → 新しい観測のサイクル
  38. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ AIの言うこと、どこまで信じていい? AIは人間の用意したデータから作ると思い出そう! • AIに関係する人たち

    • AIを作る人(研究者・開発者)→ 「AIが正しく動くように作りたい」 • AIを使う人(市民・職員)→ 「AIの提案を信じていいのか迷う」 • AIを使って決められる人 (市民・社会)→ 「結果が妥当か知りたい」 48 Vereschak et al. “Trust in AI-assisted Decision Making: Perspectives from Those Behind the System and Those for Whom the Decision is Made.” CHI. 2024. ACM. AI実務者 AI利用者 意思決定対象 意思決定 ④選択と実行 ②意見の入力 ①開発と運用 ⑤結果 ③予測に基づく 意思決定案の推薦 人間とAIの関係図
  39. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 信頼は、人と人の間でつくられる • AIへの信頼は、AIを作る人、使う人、使われる人の関係から作られる •

    AIと人の対話や信頼だけでは不十分かも • もちろん、AIそのものもチェックしないといけない • そのAIは、どんなデータから作った? • そのAIは、どんな人の好みに合わせた? • そのAIは、どんな計算で予測している? • そのAIは、どれぐらい予測が当たっている? • 誰かの正解があなたの正解とは限らないよね。 49
  40. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ その渋滞対策は本当にみんなに優しい? • AIが渋滞を予測して、渋滞を減らせそうな信号の制御をおすすめする。 •

    でも、どこかの道だけいつも遠回りになるかもしれない。 • みんなの納得とAIの活動をどう両立するか? • AIに任せるではなく、AIと一緒に考える時代へ。 50 AI実務者 AI利用者 意思決定対象 意思決定 ④選択と実行 ②目的地の入力 ①開発と運用 ⑤結果 ③信号制御や 移動経路のプラン
  41. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ AIと街、そして私たち • AIは街の未来を予測する道具 •

    予測は、未来を変えるきっかけになる • でも、どう使うかを決めるのは人間 • 街を理解するAIは、人の想像力を広げ るお手伝いになるかも? 52
  42. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ AIは「社会と環境を知るための道具」かもしれない • 遠くを知るために →

    望遠鏡 (天文学の発展) • 近くを知るために → 顕微鏡 (生物学の発展) • 水の中を知るために → ソナー (水中音響学の発展) • 街や地球を知るために → AI (情報学の発展だ け?) 53
  43. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 世界を知るために道具が作られ、役立てられてきた • 社会で計測されるデータは膨大すぎて人間には読みきれない •

    社会を知るためのツールとして人工知能を活用する • AIで街や人の動きを予測することは、社会を知るための新たな試み • 社会を知り、社会で役立てる情報を得るための新しい挑戦かも? 54
  44. 導入 AIと学び 地図と時間 研究事例 AIの信頼 まとめ 今日の宿題 • ちょっとだけ考えてみよう。 •

    あなたなら、AIに何を予測させてみたい? • あなたの街に、どんなAIがあったらいい? • そのためにはどんなデータがいる? • あなたの周りをワクワクさせるアイディアが見つかるかも? 55