Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

PHPライセンス変更の議論を通じて学ぶOSSライセンスの基礎

 PHPライセンス変更の議論を通じて学ぶOSSライセンスの基礎

2025-11-08 PHPカンファレンス福岡2025 レギュラートーク資料
https://fortee.jp/phpcon-fukuoka-2025

Avatar for Atsushi Matsuo

Atsushi Matsuo

November 08, 2025
Tweet

More Decks by Atsushi Matsuo

Other Decks in Programming

Transcript

  1. PHPライセンス変更の議論を通じて学ぶOSSライセンスの基礎 自己紹介 はじめに 松尾篤 • PHP使用歴:約20年 • PHPを使った開発歴は約17年 • 2023年4月にGaroon開発チームに加入

    • 過去にコントリビュートしたことがあるPHP関連のOSS(抜粋) • Phan • phpDocumentor • PHP Debug Bar • Smarty • Windows版PHP用libxml2 6
  2. PHPライセンス変更の議論を通じて学ぶOSSライセンスの基礎 PHP License 3.01 PHP 9.0で変わるかもしれないPHPのライセンス • Open Source Initiative(OSI)に承認されたライセンス

    • 派生物の名称を「PHP」とすることや、 「〜 for PHP」を除いて「PHP」 を名称に含めることを制限する条項を含む独自ライセンス 12 The OSI logo trademark is the trademark of Open Source Initiative.
  3. PHPライセンス変更の議論を通じて学ぶOSSライセンスの基礎 現状の課題や背景 PHP 9.0で変わるかもしれないPHPのライセンス • 名称制限に関する条項を含むためPHP LicenseとZend Engine Licenseは GNU

    General Public License(GPL)と両立しない • Zend Engine LicenseはOSIから承認を受けていない • 独立した製品として同梱したZend Engineを分離して使用することは今や実質 不可能なほど両者が複雑に絡み合っている状況 • PHP License 3.01の承認は“レガシー承認”プロセスを経たもの • 当時の経緯が不明であるがPHP License 3.0が20年以上前にOSIからの承認を 受けていたので条件付きで2020年に承認された • PHP License 3.0をPHP License 3.01に置き換える前提での承認 • PHP License 3.01はNon-Reusable(再利用不可)カテゴリーでの承認 14
  4. PHPライセンス変更の議論を通じて学ぶOSSライセンスの基礎 現在提案されているライセンス変更案の影響 PHP 9.0で変わるかもしれないPHPのライセンス • PHPのコントリビューターやユーザーに付与される権利に変更はない • 理由として挙げられている内容 • PHP

    License, version 3.01ならびにZend Engine License, Version 2.00は 修正BSDライセンスにPHP GroupおよびZend Technologies(現在は Perforce社の子会社)に固有の特別条項を組み合わせたもの • それらの特別条項を除外した場合のライセンス内容は修正BSDライセンスと (ほぼ)同一である 15
  5. PHPライセンス変更の議論を通じて学ぶOSSライセンスの基礎 変更案で長年の課題が解決する見込み PHP 9.0で変わるかもしれないPHPのライセンス • GPLとの両立性に関する問題が解決 • 修正BSDライセンスはFree Software Foundation(FSF)からGPLと両立性

    のあるフリーソフトウェアのライセンスとして承認されている • https://directory.fsf.org/wiki/License:BSD-3-Clause • Zend Engine LicenseがOSIから承認を受けていない状況やPHP License がレガシー承認プロセスを経て承認を得た状況を解消 • 修正BSDライセンスはOpen Source Initiative(OSI)からオープンソースの ライセンスとして承認されている • https://opensource.org/license/BSD-3-Clause 16
  6. PHPライセンス変更の議論を通じて学ぶOSSライセンスの基礎 オープンソースの定義 オープンソースの定義とオープンソースライセンス • 非営利団体であるOpen Source Initiative(OSI)によって策定 • https://opensource.org/ •

    オープンソースを名乗るソフトウェアが満たすべき条件として10の要件が 次のページで挙げられている • https://opensource.org/osd • Debian Free Software Guidelines(DFSG)から派生 • https://www.debian.org/social_contract#guidelines 18
  7. PHPライセンス変更の議論を通じて学ぶOSSライセンスの基礎 オープンソースを名乗るソフトウェアが満たすべき条件 オープンソースの定義とオープンソースライセンス • https://opensource.org/osd • オープンソースを名乗るソフトウェアが満たすべき条件として挙げられて いる要件 • Free

    Redistribution • Source Code • Derived Works • Integrity of The Author’s Source Code • No Discrimination Against Persons or Groups • No Discrimination Against Fields of Endeavor • Distribution of License • License Must Not Be Specific to a Product • License Must Not Restrict Other Software • License Must Be Technology-Neutral 19
  8. PHPライセンス変更の議論を通じて学ぶOSSライセンスの基礎 GNU General Public License(GPL) 代表的なオープンソースライセンス • コピーレフト型 • 再配布および改変した派生物を再配布する場合にはGPLを維持する義務がある

    • プログラムのあらゆるバージョンを共有し変更する自由を保証することでソフ トウェアを自由たらしめることを目的としている • 追加制限の禁止 • プログラムの複製や再配布、変更に関する自由を狭める追加条件は課せない 25
  9. PHPライセンス変更の議論を通じて学ぶOSSライセンスの基礎 GPLバージョン2とバージョン3の主な違い 代表的なオープンソースライセンス • GPLv3では特許条項が追加されている • 対象ソフトウェアを使う場合に限り対象ソフトウェアに含まれる特許を自由に 利用できる • GPLv2には特許に関する条項が明文化されていないためApache

    License, Version 2.0と両立しない • GPLv3では「Tivoization」が禁止されている • Tivoization:ハードウェアが変更不可能になっているコピーレフトのソフト ウェアを含んでいることを示す用語 • ビジネスや組織での利用だけを想定した製品のTivoizationは許容 26
  10. PHPライセンス変更の議論を通じて学ぶOSSライセンスの基礎 GNU Affero General Public License version 3(AGPLv3) 代表的なオープンソースライセンス •

    GPLv3と似たライセンス • ネットワーク経由でサービス提供される場合でもコピーレフト条項が適用 される 27
  11. PHPライセンス変更の議論を通じて学ぶOSSライセンスの基礎 BSDライセンスの種類 代表的なオープンソースライセンス • 旧BSDライセンス(四条項BSDライセンス) • 開発者情報の記載義務に関する宣伝条項があるためGPLと両立しない • 修正BSDライセンス(三条項BSDライセンス) •

    旧BSDライセンスから宣伝条項が削除されたライセンス • 二条項BSDライセンス • 修正BSDライセンスから事前の書面による許可なく開発者の名称を派生物の推 奨や宣伝に使用しないという条項が削除されたライセンス • 0条項BSDライセンス • ISCライセンスの改変版(BSDライセンスの派生ではない) • 著作権表示・ライセンス条項・免責事項を含める要求が削除されたライセンス 29
  12. PHPライセンス変更の議論を通じて学ぶOSSライセンスの基礎 Apache License, Version 2.0 代表的なオープンソースライセンス • 非コピーレフト型(パーミッシブ型) • OSSに改変を加えて配布する際に改変を加えた事実を分かりやすく告知す

    る義務がある • OSSを配布する際に著作権、特許、商標、帰属表示についての告知を添付 する義務がある • オリジナルOSSのNOTICEファイルに帰属表示の告知が含まれている場合 には配布するOSSに同告知を含める義務がある • OSSの原作者を含むコントリビューターが持つ特許かつ当該OSSまたは当 該OSSとの組み合わせで実現できる特許ライセンスを利用者に付与 • 受領者が誰かを特許侵害で訴えた場合は付与されていた特許ライセンスが失効 30