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【禁断】Obsidianの第二の脳に「知の巨人」と呼ばれた師匠の脳をロードしてみた

 【禁断】Obsidianの第二の脳に「知の巨人」と呼ばれた師匠の脳をロードしてみた

LLM wikiを構築して、師匠である松岡正剛さんの脳を自分の第二の脳にロードしてみました。

https://note.com/kadobeya2002/n/na518f56802b2

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長津孝輔

May 24, 2026

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Transcript

  1. 禁 断 — F O R B I D D

    E N T E C H N I Q U E Obsidian の 第二の脳に、 「 」 と呼ばれた 師匠の脳を、 ロードしてみた。 LLM wiki × Obsidian × Claude Code — 故・松岡正剛の知性を、自分の第二の脳に住まわせる試み。 カ ド ベ ヤ A I 部 / 長 津 孝 輔 知の巨人 カドベヤ AI 部 01 / 30
  2. 00 INTRO いま、 LLM wiki という概念が流行している。 OpenAI の創設に関わった Andrej Karpathy

    が提唱した「LLM wiki」 。 メモ同士を相互にリンクさせる Obsidian を AI に操作させて、 知識を自己生成・自己整理する動的なシステムに変える、というコンセプト。 自分にとって最高の「第二の脳(second brain) 」をどう作るか。 みんながそれぞれ模索している。僕も、魅了されてしまった人間のひとり。 カドベヤ AI 部 03 / 30
  3. 00 ANDREJ KARPATHY 「自分専用の 知識ベースを、 LLM で育てる」 OpenAI 共同創業期メンバー。後に Tesla

    の AI 部門を率い、 近年は教育的な LLM 解説で著名。 先日 Anthropic にジョインしたことが話題になった。 彼が触っているコードのトークン量よりも、 個人ナレッジベースの構築に使うトークン量のほうが多くな っている—— と、本人が X で言及した。 カドベヤ AI 部 04 / 30
  4. 00 A FORBIDDEN IDEA そして、 禁断の秘技を思いついてしまった。 X を見ていると、1日に何度も転生モノのバナー漫画の広告 が流れてくる。 不遇な主人公に、覚えているはずもない別の時代の記憶が流

    れ込み、 ある日急に、隠されていた能力に目覚める——。 そうか。これだ…… 転生者みたいに、自分の脳に、誰かの声が聞こえて くる状態を作ってみよう。 カドベヤ AI 部 05 / 30
  5. 00 松岡正剛 / 1944 — 2024 「知の巨人」 と呼ばれた、 僕の師匠。 2024年8月12日、僕が勝手に師匠として尊敬していた松岡正

    剛さんが亡くなった。 享年 80歳。 メディアでは「知の巨人」と称されることが多く、 編集者として、文学から科学、芸術から哲学までの あらゆる知を対角線でつなげてしまう人だった。 私塾には、6年間通わせてもらった。 カドベヤ AI 部 06 / 30
  6. 00 THE BETWEEN 人は、 A から B へ飛ぶ時、 あいだの空間を通っている。 ボタンを押すとページがパカっと切り替わる。それが

    web のハイパーリンク。 でも、人間が A を思ってから B を思うまでの一瞬の間には、 いろんなコンセプトや人物が存在する空間を通ってきている——と師匠は言った。 その時は、人間が無意識で情報空間を移動するような仕組みを思いつけなくて、 悔しい思いをした。師匠が亡くなった今でも、それは僕の課題のまま残っている。 カドベヤ AI 部 08 / 30
  7. C H A P T E R 0 1 Obsidian

    で実現する、 「LLM wiki」 というコンセプト。 Karpathy の提唱した LLM wiki は、Obsidian という ノートアプリを AI が操作することで実現する。 カドベヤ AI 部 10 / 30
  8. 01 VAULT — 金庫 知識は、 自分の財産。 だから vault に収める。 Obsidian

    は、ノートを mdファイルとしてローカルに蓄積 する。 知識の所有権が、自分のものであり続ける。 そのフォルダのことを、Obsidian の世界では 「vault = 金庫」と呼ぶ。 知識が財産であることが、命名に暗示されている。 ノートの中の単語を [[ ]] で囲めば、新しいノートが自動で生 まれる。 カドベヤ AI 部 11 / 30
  9. 01 3 LAYERS vault を、 3つのレイヤーに分ける。 R A W 層

    人間がとったノート、 日記、 断片的なアイデア、 note の原稿—— 人間が作成したファイルを格納する層。 W I K I 層 AI が構造化した内容が格納される層。 ここが 「第二の脳」 の本体になる。 S C H E M A 層 AI と人間の間で決めたルールを格納。 命名規則・カテゴリ・ backlink 設計と、 何を選び・何を選ばなかったかの記録。 カドベヤ AI 部 12 / 30
  10. 01 WHAT I PUT INTO RAW raw 層に、 師匠の知を持ち込む。 僕の場合、raw

    層に置いたのは 2つの巨大な知のかた まり。 松岡さんの読書録「千夜千冊」と、人類の知の年表 「情報の歴史」 。 wiki 層には、人物に関することを記載する People/ と 概念を記載する Object/ というフォルダを置いた。 この 2つの知のかたまりを接続して、wiki 化する—— それが、最初からの設計。 vault/ ├─ raw/ │ ├─ 千夜千冊/ # 1,857 記事 │ ├─ 情報の歴史/ # 224 ページ │ └─ memo/ # 自分のノート ├─ wiki/ │ ├─ People/ │ └─ Object/ └─ schema/ └─ rules.md カドベヤ AI 部 13 / 30
  11. C H A P T E R 0 2 師匠の脳を取り込む、

    準備をする。 千夜千冊エディションと、情報の歴史。 どえらい 2つの知のかたまりを、自分の vault に。 カドベヤ AI 部 14 / 30
  12. 02 SOURCE MATERIALS 2つの、 どえらい知のかたまり。 S O U R C

    E 0 1 千夜千冊 2000 — 2024 · 1,857 articles 松岡さんが連載していた読書録。 1記事に 1人の著者を取り上げる、本との交際録。書評と いうよりは「編集的な読み方」が凝縮された、特殊な記 事群。 S O U R C E 0 2 情報の歴史 編集工学研究所 · 224 pages 分厚い年表。本人いわく、 「高速道路の緑の看板の情報 版」 。 身の回りの文化やアートが、どんな経路でここまで来た のか——時系列で記載された怪書。 カドベヤ AI 部 15 / 30
  13. 02 INGESTION Claude Code × Defuddle で、 1,800 記事を一気に取り込む。 千夜千冊には

    web 版がある。手作業なら Obsidian Web Clipper が便利だけれど、 網羅するために、Claude Code から Defuddle CLI で全記事を md として取得した。 Defuddle は、Obsidian の CEO(Stephan Ango)が個人で作った、 web 記事をクリーンな md ファイルとして取得するサービス。 情報の歴史は PDF を 1ページずつバラして取り込み、224 ページの年表 md ができた。 これで、師匠の知のかたまりを 2つ、第二の脳に素材として引き入れた。 カドベヤ AI 部 16 / 30
  14. C H A P T E R 0 3 5つの

    STEP で、 師匠の脳に潜る。 抽出する。接続する。深掘る。チームを組む。寝てる間に自動で育てる。 AI を使って、博覧強記の知を自分の脳にぶちこんでいく旅。 カドベヤ AI 部 17 / 30
  15. 03 STEP 01 「情報の歴史」 から、 人物・概念・書籍を抽出する。 224ページ分の年表 PDF を NotebookLM

    に渡し、 登場する人物・概念・書籍を抽出。 Obsidian ノートのプロパティにタグのように記載する。 1900〜1909 のディケイドには「夏目漱石」 「キュビズム」 「相対性理論」 「みだれ髪」などが同時に並ぶ。 それぞれを [[ ]] で囲み、空の md を大量生成した。 Claude → NotebookLM 経由にしたのは、嘘をつかないから。 ハルシネーションが混ざることを嫌っての判断。 カドベヤ AI 部 18 / 30
  16. 03 STEP 02 「千夜千冊」 を 同じ方法で抽出 → 2つが繋がる。 時系列の知(情報の歴史)に対して、 読書録という自由形式の知(千夜千冊)を接続していく。

    同じく NotebookLM で抽出すると、新しい概念には新 規 md、 既存の「夏目漱石」 「キュビズム」には自動で backlink が 走る。 師匠が頭の中で繋いでいた仕事を、AI が擬似的に再現し始め た瞬間。 カドベヤ AI 部 19 / 30
  17. 03 STEP 03 deepen — 概念を、 師匠の主観で深掘る skill。 本来の LLM

    wiki は「事実に基づいた客観性」を重視する。 だが僕がほしいのは、師匠の主観を軸に、その概念を深く理解する方法だった。 そこで、Claude と相談してdeepenという独自 skill を作った。 人物.md / 概念.md の中身を、独自仕様で生成する skill。 notebookLM を介して、ハルシネーションを抑える設計にしてある。 カドベヤ AI 部 20 / 30
  18. 03 DEEPEN — SPECIFICATION deepen skill の、 5つの記述要件。 01 概念や人物の基本的な概要を調査して記載

    02 千夜千冊における松岡さんの読みを記載 03 deep research を行い、 松岡さん以外の5人の専門家の解釈を併 記 04 リサーチ結果から導かれる新たな問いを記載 05 新しく出てきた人物や概念を、 自動でwiki リンクで接続 あぁ。これは「知らない自分の声」を聞ける設計になりそうだ。 カドベヤ AI 部 21 / 30
  19. 03 STEP 04 知のダンジョンに挑む、 冒険のパーティを組む。 師匠の知という底なし沼のようなダンジョンを攻略するには、 一人では無理だ。Claude Code の agent

    team(β)を呼び出した。 sub-agent は、それぞれが役割と性格を持った「スタンド」のような存在。 名前は機能名ではなく、職業名にした。 今後、性格や独自 skill を持たせていくと、もっと面白くなる予感がする。 カドベヤ AI 部 22 / 30
  20. 03 THE PARTY 長津の、 agent team。 C O N N

    E C T O R gardener 庭師 新しいノートと既存ノートを wiki link で接続する人。 E X P L O R E R · N E W florist 花屋 新しい md ファイルから、人物や概 念を深掘りする人。 E X P L O R E R · O L D archaeologist 考古学者 古い md ファイルから、人物や概念 を深掘りする人。 D I S T I L L E R composer 発酵者 調査によって抽出された「問い」 を、新しいアイデアに変える人。 S C O U T scout 探索者 他のリポジトリやプロジェクトを横 断し、関係性を発見する人。 カドベヤ AI 部 23 / 30
  21. 03 STEP 05 寝ている間に、 知識と知識が、 繋がっていく。 LLM wiki の議論の中核は、 人間が

    AI の前にいない時間でも wiki link が自動で接続 されていくこと。 確かに、寝ている間に知識が繋がっていく世界観にはロ マンがある。 agent team を Routines で深夜に走らせている。 florist と archaeologist が 5件ずつ deepen し、 gardener が 10件を wiki link で接続する。 overnight job · 03:00 — 06:00 SCAN 未 deepen の md を取得 RUN florist · 5件を deepen RUN archaeologist · 5件を deepen LINK gardener · 10件を接続 DONE 朝起きると、知の世界に溺れている 自分なら絶対に接続しない概念同士がリンクされていて、 「これは誰の発想なんだ?」と、少し怖くなる。 カドベヤ AI 部 24 / 30
  22. C H A P T E R 0 4 これは、

    師匠が言っていた 「編集」 と、 同じものなのか? かくして仕組みは完成した。けれど、立ち止まって自問しなければならない。 AI が生成した知の連鎖は、果たして「編集」と呼べるのか。 カドベヤ AI 部 25 / 30
  23. 04 SELF-QUESTION それは、 編集的ではある。 けれど、 たぶん 「同じ」 ではない。 僕の vault

    で起きている知的連鎖は、編集的な行為ではある。 本と本が繋がり、概念と人物が繋がり、年表と概念が繋がる。 でもそれは当然、 「松岡さんが選び取った接続」ではなく、 アーキテクチャとアルゴリズムによって生成された結果。 めちゃくちゃ面白いけれど、これが何を意味しているのかは、わからない。 もう少し時間が経ったら、何かわかるかもしれない——と、積極的に判断を保留している。 カドベヤ AI 部 26 / 30
  24. 04 THE BIAS 思想的な、 かたよりについて。 wikipedia が客観的事実を民主的に記述する方法なのだとす ると、 僕の「師匠ベースの LLM

    wiki」には、かたよりがめちゃくち ゃある。 でも僕は転生者なので、生成された「師匠の考え方の、よう なもの」を 一度全部受け取った上で、自分の思想にとって本当に大事な ものを選べる立場。 かたよっていても、問題ない。なにせ師匠の考え方だから。 まぁでも、 「客観的な事実」って、本当にあるんでしょ うか? 松岡さんのオフィスで話す、若かりし頃の長津 カドベヤ AI 部 27 / 30
  25. 05 NEW QUESTIONS 残された、 3つの問い。 Q · 01 AI が自動的に知識を接続することは、「編集」と言えるのか?

    Q · 02 人間の主観を模倣した知の接続は、「創造」なのか? Q · 03 故人の知性を AI で利用することは、「継承」なのか、「盗用」なのか? カドベヤ AI 部 29 / 30
  26. 06 CLOSING 「web のハイパーリンクって、 面白くないよ」 へ、 少しだけ、 近づけた気がする。 技術やデザインだけでは解決策が思いつかなかった、 難解な問いたち。

    AI が、その答えを新しく作れる時代になってきた。 師匠に、見せてみたかった。 きっと「おおいに、やれ」と、面白がってくださったと 思う。 カドベヤ AI 部 30 / 30