Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

中間管理職をなくしたら何が起きたか 〜AI時代の組織変革と3つの失敗〜

Avatar for staka staka PRO
September 19, 2025

中間管理職をなくしたら何が起きたか 〜AI時代の組織変革と3つの失敗〜

Avatar for staka

staka PRO

September 19, 2025
Tweet

More Decks by staka

Other Decks in Technology

Transcript

  1. 会社紹介 2 序章 会社名 設立日 所在地 従業員数 代表取締役 株式会社TOKIUM 2012年

    6月 26日 東京都中央区銀座6-18-2 野村不動産銀座ビル 12F 約240名 (2025年5月、正社員のみ) 黒﨑 賢一 TOKIUMの志 未来へつながる時を生む
  2. サービス紹介 3 序章 創業以来、10年以上一貫して支出にまつわるサービスを提供。 TOKIUMシリーズは直近5年間で導入社数が6倍以上増加し、2024年7月に2,500社を超える。 2012年6月 創業 2016年2月 「TOKIUM経費精算」リリース 2020年9月

    「TOKIUMインボイス」リリース 2022年1月 「TOKIUM電子帳簿保存」リリース 2024年6月 「TOKIUM契約管理」リリース 2025年1月 「TOKIUM請求書発行」リリース 累計導入社数 2,500社を突破 ※24/07末時点
  3. フラット化の実施と成果 5 序章 主に実施したこと ・一部EMについて現場復帰を依頼  管理業務巻き取って現場業務に専念 ・開発チームを大きく再編成  AI Agent の開発を行うチームと

     AI の基礎開発を行うチームを組成 得られた成果 ・6, 7月に新卒 9名 を受け入れ完了! ・わずか 3ヶ月 で 5体 の  AIエージェント立ち上げに成功!
  4. フラット化の実施と失敗 6 序章 一方、この成果の裏にはフラット化にともなう失敗や苦悩があった... 管理業務の負荷と単一障害点 横断的な意思決定 今回話すのはこれらの失敗と経験 全部巻き取ったら 業務負荷的にヤバい。 それに俺が倒れたら終わるぞ!

    あれ?さては1日中 Slackの返信しかしてないな? スッコココ...スッコココ... キャリアへの支援不足 エンゲージメント下がってる。 早急に支援しなきゃ! でも、どういった支援が必要?
  5. 自己紹介 7 序章 経歴 in TOKIUM 2017年 WebエンジニアとしてTOKIUM に入社(社員14人) 2019年 データ連携基盤チームをリーダーとして立ち上げ 2020年 改善チーム(SRE

    + CRE)へ異動 2021年 CREチームをリーダーとして立ち上げ 2023年 TOKIUM 初のEMとして複数チームのマネジメントを経験 2024年 開発部長としてエンジニアリング組織の成長を牽引 @xi_kax | いかねこ 橘高 俊 Kittaka Shun
  6. これまで(〜2025.06)の組織体制 10 これまでの組織と環境変化 ソリューショントレイン プロダクト ART BSMコア ART オペレーション ART

    プラットフォーム ART 各プロダクトの 開発チーム群 オペレーションに 関連する 開発チーム群 共通機能の 開発チーム群 プラットフォーム エンジニアを 行うチーム群 ARTバックログ チームバックログ ソリューションインテント フィードバック フロー フィードバック フロー 意思決定の流れ 組織体制
  7. 「TOKIUM AI Agent」構想 〜PoCの構築、DONE 🚀〜 12 これまでの組織と環境変化 ※画像はPoC段階のキャプチャです PJ 発足! エージェント開発が決まる

    1日目 PoC用アプリの開発が始まる 2日目 SSEでのWeb検索エージェント実装完了 3日目 チャットUIについて大枠が完成 4日目 概ねPoC用のアプリが完成 5日目 メンバー増強、本格的に開発を開始 DEMO 2025年6月23日、AIエージェントの開発ロードマップを公開 支出管理領域に関連するAIエージェントの複数体提供を予定!
  8. うん、ちょっと待って? 13 これまでの組織と環境変化 今の体制を維持して、期待に沿った成果は出せるんだっけ? この速度感を満たせるような組織体制の変化が必要? SAFe 多数の少数精鋭チーム 統率の容易さ ◎ フローがはっきりしている

    △ 連絡先が複雑になりやすい 開発のアジリティ ✕ 統一のために時間がかかる ◎ その場で決まる マネジメントコスト ◯ 最初しんどいけど後が楽 ◯ 最初楽だけど後がしんどい 組織全体の一貫性 ◯ 全体最適が狙える △ チームごとにサイロ化しやすい スケールしやすさ ◎ プロセスやツールの標準が定まる ✕ 多くのものが01スタート 「開発のアジリティ」を最重要視し、多数の少数精鋭チームになる方法を模索 効率性向上を目的とした Great flattening の道へ進むことを選択
  9. Great flattening とは? 15 Great flattening Great flattening スピードと効率性を追求し、管理職の階層を削減するアプローチ。 組織をよりスリムに、チームをより権限委譲された状態にするような組織的戦略。

    (参考: www.betterworks.com/magazine/the-great-flattening/ ) 語られるメリット 語られる懸念 意思決定を迅速にできる 間接コストを最適化できる スリムで効率的な体制を構築できる 戦略と具体化の結びつきが弱まる キャリアが消失する フィードバックの頻度が落ちる ポイントは「リーダーシップ」を発揮できる環境かどうか 「育成へのフォローアップ」が失われないかどうか
  10. サプライズなしで組織を変える 16 Great flattening 何かを「壊す・削る」のではなく「再定義する」ことでフラット化を進める 無くなるロールを責務ごとに分解し、既存ロールにアタッチする ソリューショントレイン ART 開発チーム群 今まで

    これから 本部会 必要最小限の定例 開発チーム群 開発 技術スタック 投資先の決定 ビジョン 開発アイテム 技術スタック 開発アイテム 開発 育成計画 投資先の決定 ビジョン 育成計画 中長期戦略系 短中期戦略系 委譲 巻取
  11. 巻き取って、巻き取って! 20 フラットな組織の落とし穴 管理業務のうち、定常業務はAIで徐々になくなっていた これで定常的でない業務も問題なく処理できる仕組みを用意! 組織運営 ポテンヒットな 管理業務 プロダクト開発 技術スタック

    開発アイテム 開発 投資先の決定 ビジョン 育成計画 中長期戦略系 短中期戦略系 監査対応 レポーティング 承認作業 … やってることを言語化! 実施のために必要な処理には スクリプトを用意する オレオレ AIエージェント 登録 登録された定常業務は AIエージェントが いい感じに処理してくれる!
  12. 徐々に首が回らなくなっていく... 21 フラットな組織の落とし穴 組織運営 ポテンヒットな 管理業務 プロダクト開発 技術スタック 開発アイテム 開発

    投資先の決定 ビジョン 育成計画 中長期戦略系 短中期戦略系 オレオレ AIエージェント 登録 自動化を増やす速さ < 管理業務の増える速さ 例外対応 1度きりの作業 初見業務 … 例外的な対応が多いフェーズ。 自律的に実施していた業務が 想定よりも多く発生した! 言語化がボトルネックとなり、 TODOが徐々に肥大化... パワーでねじ伏せよう🦍 (NG: 継続性がない)
  13. 「なんとかする覚悟」は段階的に 22 フラットな組織の落とし穴 何がダメだったのか 権限移譲と責任分散の設計不足:  中間管理職が担っていた「例外判断」や「調整業務」の  解像度が低く、業務を十分に設計できていなかった 認知負荷の限界突破:  キャパシティを超える業務負荷が新たなボトルネックを作ってしまった 何が良かったのか

    大幅な業務効率化:  オレオレAIエージェントの取り組みは成功!  実は軽く見積もって 2,000時間 の業務時間を削減していた どう活かすか 何に注意すべきか 覚悟形成:  最終的な管理者へ、一時的な業務増加の現実を正直に伝えておく 段階的移行の設計:  管理業務を少しずつ移管して、フラット化は段階的に推し進める
  14. 体制を整えて意思決定を任せる! 24 フラットな組織の落とし穴 技術的な支援体制を準備したうえで 具体的なアプローチについては各チームに決定権を委譲! 開発チーム A 開発チーム B 開発チーム

    C 研究開発チーム 新技術の導入をサポート 横断支援チーム 技術的なケイパ不足を フォロー X-as-a-Service ファシリテーション MVPは早くリリースして お客様の反応を見たい! とりあえずVercelはどう? 将来的な拡張を考えて Flutterはどうだろう? ナレッジがあるReact? 要件はっきりしないかも。 まずはノーコードツールで 動くものを作ってみる?
  15. 「リーダーシップ」だけでは進まない 25 フラットな組織の落とし穴 共通で使われる機能について統一的に進めたいニーズが生まれ、 散発的なファシリテーションが多くなり横断的に動くチームの負荷も増加 開発チーム A 開発チーム B 開発チーム

    C 研究開発チーム 新技術の導入をサポート 横断支援チーム 技術的なケイパ不足を フォロー X-as-a-Service ファシリテーション 「「「横断的に使う機能 何にするんですか?」」」 パワーでねじ伏せよう🦍 (NG: 継続性がない)
  16. 成功の80%は「準備作業」 26 フラットな組織の落とし穴 どう活かすか 何に注意すべきか チームのヘルススコアを事前に定義:  状況を定量的に確認できる指標を定め、怪しい空気 (予兆) を掴む 意思決定レイヤーを明確化:

     想定される意思決定を洗い出し、いつ、誰が、何を決定するのか明確化  判断に迷う時間が最小限になるように準備する 何がダメだったのか サイロ化リスクの再評価:  マスタ情報や認証認可などで統一的意思決定機関の必要性が再浮上  散発的対応も相まって全体最適を進めにくくなった 散発的対応への陥り:  横断的フォローの必要性が高まったことで、  組織的・体系的対応ではなく場当たり的な対応が多くなった 何が良かったのか 技術的意思決定の権限移譲:  現場の迅速な意思決定が可能になったことで新技術が取り入れられ、  短期間で5つのAI Agentプロダクト立ち上げに成功!
  17. 目標の抽象度は大きく 28 フラットな組織の落とし穴 アプローチを任せるならば、やることは途中で変わる 目標は「TODO」ではなく「目指すべきアウトカム」で定義 実績 Performance 成果 Product Output

    Outcome Impact 過程 Process 制度 System 体制 Actor 運営 Management Ref: www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/hyouka/haihu65/sanko5-1.pdf プロダクト開発において どういった状態を目指すか定義し、 達成度合いに対して段階的に評価する アプローチに依存しない評価が可能 ベストなアプローチを自ら考え お客様の要望に対しても 柔軟な手段がとれるようになる!
  18. あれ?評価が厳しすぎでは? 29 フラットな組織の落とし穴 実績 Performance 成果 Product Output Outcome Impact

    過程 Process 制度 System 体制 Actor 運営 Management proxy outcome proxy output proxy impact Ref: www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/hyouka/haihu65/sanko5-1.pdf 「自由」には「責任」も伴うが、個人にグラデーションがあり 実績には「成果」だけでなく「過程」にもアウトカムは存在する めっちゃ頑張った!! けど、駄目ですか...? ☀ 見れてる! 🌧 漏れてる...
  19. 「目標と評価」に向き合う 30 フラットな組織の落とし穴 どう活かすか 何に注意すべきか 成果と過程のバランス:  アウトカムが重要ならば「成果」だけでなく「過程」も追いかける 個人のキャリアに向き合う:  何が起こっているかを把握し、適切なフィードバックを実施する 何がダメだったのか

    評価基準と実態のギャップ:  「自由」と「責任」を与えたが、評価プロセスが追いついておらず、  個人のグラデーション(能力・経験差)の表現ができていない 見えない努力の評価漏れリスク:  「めっちゃ頑張った」過程が適切に評価されないリスクがある 何が良かったのか 目標設定の抽象化:  「目指すべきアウトカム」への転換によって、  アプローチに依存しない柔軟な手段が選択される環境を醸成できた!
  20. フラット化をやると決めたら「これ」をやろう! 32 まとめ 現状の管理職は何をしているのか 新規/既存の業務割合はどの様になっているのか 情報を集める 情報の流れを掴む 問題が起こったとき、情報はどう伝わるのか 問題を未然に掴むことができるようになっているか フラットな組織では「フォロワーシップ」がますます重要!

    AIによる効率化によって生まれた時で「信頼関係」を生んでいこう! 情報を分析する 「組織目線」でやるべきこと 評価対象に変更はあるか、ある場合はどう評価するか 得た情報を元に分析し、フィードバックする仕組みはあるか
  21. 株式会社TOKIUM 東 京 本 社 | 〒104-0061 東京都中央区銀座 6 丁目18-2 野村不動産銀座ビル12階

    西日本営業所 | 〒550-0015 大阪府大阪市西区南堀江 1 丁目 1 番14号 四ツ橋中埜ビル 7 階 34 corp.tokium.jp
  22. 35 Appendix • Update on Meta’s Year of Efficiency (2023-03-14)

    about.fb.com/news/2023/03/mark-zuckerberg-meta-year-of-efficiency • How to Successfully Scale a Flat Organization (2021-06-07) hbr.org/2021/06/how-to-successfully-scale-a-flat-organization • The Great Flatting Experiment (2025-03-26) www.kornferry.com/insights/briefings-magazine/issue-68/the-great-flattening-experiment • The Great Flattening: What Happens When Middle Management Disappears? (2025-06-06) www.betterworks.com/magazine/the-great-flattening/ • As Big Tech Cuts Management Roles, Leadership Gaps Threaten Productivity And Engagement (2025-05-27) www.forbes.com/sites/lizelting/2025/05/27/as-big-tech-cuts-management-roles-leadership-gaps-threaten-productivity -and-engagement/ • Big Tech is crushing middle managers. Some fear the great flattening has gone too far. (2025-05) www.businessinsider.com/microsoft-amazon-google-embrace-flatter-structure-fewer-managers-boost-efficiency-2025-5 • AIエージェントの採用で、企業の組織図はなくなるかもしれない (2025-09-17) www.businessinsider.jp/article/2509-agents-kill-org-chart-microsoft-ai-product-lead-hierarchy-structure/ • 平成17年度科学技術振興調整費報告書 「研究開発のアウトカム・インパクト評価体系」第1章 www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/hyouka/haihu65/sanko5-1.pdf