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高校で物理を教える教師の実践的PCKの定量的把握の試み
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夜野すてら
September 25, 2022
Education
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高校で物理を教える教師の実践的PCKの定量的把握の試み
高校で物理を教える教師の実践的PCKの定量的把握の試み
日本理科教育学会第72回全国大会(旭川大会)
2022年9月25日
オンライン発表
夜野すてら
September 25, 2022
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Transcript
高校で物理を教える教師の 実践的PCKの定量的把握の試み 日本理科教育学会 第72回全国大会 2022年9月25日(日)
研究目的 2 研究目的 科学教師の実践的なPCKを定量的に把握する仕組みを考案する 3つの研究手順 (1)科学教師のPCKの質問紙・インタビュー調査によるデータソース作成 (2)科学教師のPCKの質的分析による分析 (3)科学教師のPCKの定量的表示方法の検討
研究の学問的背景 3 教師が何を知っているのか、教えるという仕事を達成するために どのように知識を活用しているか 教育研究者、教師教育者、教育政策立案者に 重要視されてきた(Guerriero, 2017)
教師の知識ベース(Shulman, 1987) 研究の学問的背景 4 コンテンツ 知識 PCK 教育学的 知識 カリキュラム
知識 学習者の 知識 教育の目的の 知識 コンテクスト 知識 教師の知識 質の高い科学教育にはPCKが不可欠 (National Research Council, 1996; Kind,2009)
子供一人一人の特性や学習進度、学習到達度等に応じ、 指導方法・教材や学習時間等の柔軟な提供・設定を行うこと (文部科学省中央教育審議会, 2021) PCKの定義 生徒の概念理解を高めるために、 特定の生徒に特定の目的のために特定の方法で特定のトピックを 教えるための知識、計画、根拠 (Gess-Newsome, 2015)
に位置付けることができる 研究の学問的背景 5 「 」
「科学教育において、教師のPCKの育成が求められている」 「PCKの重要性から、今後はPCKの育成に関する研究が重要に」 本研究では 科学教育における教師のPCKに着目 研究の学問的背景 6
科学教師のPCKの一部の実態は明らかになっているものの… 一般的な「PCK」という概念 (Park & Oliver, 2008) 「科学を教えることに対する志向性」 「科学における生徒の理解に関する知識」 「科学カリキュラムに関する知識」 「指導戦略と表現に関する知識」
「科学学習の評価に関する知識」を含む広義の概念 各構成要素は相互に影響を及ぼし合う 研究の学問的背景 7 🐈構成要素の相互関係を踏まえた理論的・包括的な整理が必要。
実践的な知識 生徒の概念理解との 関係(?) 宣言的な知識 研究の学問的背景 8 Representation of the Refined
Consensus Model (RCM) of PCK (Hume et al., 2019)
科学におけるPCK研究 科学教師のPCKを文書化した事例研究 質問紙調査、インタビュー調査を用いて科学教師の考えを 文書化し、詳細な内容を表している。(Bertram, A., & Loughran, J., 2012) 科学教師のPCKの量的研究
PCKの評価尺度を開発し、それを用いて調査を行う研究 (たとえば、越智・磯崎, 2020)は 科学におけるPCKの量的研究として位置づけることができる。 研究の学問的背景 9 🐈科学教師のPCKの内容の詳細を考慮した上で量的な表示をする試みは管見の限り見当たらなかった。
研究目的 科学教師の実践的なPCKを定量的に把握する仕組みを考案する 3つの研究手順 (1)科学教師のPCKの質問紙・インタビュー調査によるデータソース作成 (2)科学教師のPCKの質的分析による分析 (3)科学教師のPCKの定量的表示方法の検討 研究対象:高等学校において物理を教えている教員4名 授業範囲:物理基礎の電気単元、第1時間目を想定 具体的研究計画・方法 10
⚫CoRes(Loughran et al., 2004) とPaP-eRs(Loughran et al., 2012) という2つの尺度を用いて、 特定のトピックの内容に関する科学教師の理解・推論・思考が
記述されたデータソースを作成する -PCKの構成要素である「科学を教えることに対する志向性」 「科学における生徒の理解に関する知識」 「科学カリキュラムに関する知識」「指導戦略と表現に関する知識」 「科学学習の評価に関する知識」を教師から引き出す手段となる ⚫その後質的分析による分析を実施 ⚫回答者である教師にすべてのデータとインタビュー記録を 提供することで、教師の意見が意図したとおりに 表現されているかどうかについて妥当性を得られるように分析を行う データソース作成 11
授業計画の質問紙調査とインタビューからデータソースを作成 データソース作成 12 質問紙調査 │CoRes インタビュー│PaP-eRs
高校物理教師への調査 ①CoResのフレームワークに沿って8つの質問に記入 ②記述をもとに口頭でインタビューを行い、発言を記録 ③①・②をもとにPaP-eRsを作成 データソース作成 13 質問項目 概念① 概念② この概念に関して何を生徒に学ばせようと思いますか。
なぜこの概念を知ることが生徒にとって重要なのか、考えを記述してください。 この概念に関係していることで、意図的に生徒に教えない内容はありますか。 この概念を教えることの難しさ、限界について教えてください。 この概念を教えるときに、影響を及ぼす生徒の考え方で何か知っていることはありますか。 この概念を教えるときに影響を及ぼす要素で何か知っていることはありますか。 この概念をどのような順序で教えますか。またその理由を書いてください。 この概念について生徒の理解状況をどのように確認しますか。
質的分析による分析 ④データソースを基に、PCKの4つの下位要素 「科学における生徒の理解に関する知識」「科学カリキュラムに関する知識」 「指導戦略と表現に関する知識」「科学学習の評価に関する知識」 にあたるものをカテゴリー毎に分類し、概念数を記録する。 定量的表示方法の検討 ⑤PCKの下位要素の大カテゴリ、大カテゴリが含む小カテゴリごとに レーダーチャートに表示し、妥当性を検討。 分析・定量的表示方法の検討 14
結果:各概念数 15 「特定のカリキュラム・プログラムに関する知識」…特定の分野のためのプログラム 「科目別戦略の知識」…学習サイクルなど、科学教育実施の一般的アプローチ 大カテゴリ 小カテゴリ PCK 001 PCK 002
PCK 004 PCK 005 平均 科学カリキュラムの知識 目標と目的に関する知識 16 10 9 3 9.5 特定のカリキュラム・プログラムに関する知識 0 0 0 0 0.0 学生の科学理解に関する知識 学習のための条件に関する知識 4 4 1 3 3.0 生徒が苦手とする分野に関する知識 10 11 10 3 8.5 科学における評価の知識 評価することが重要な科学学習の側面に関する 知識 3 1 3 4 2.8 評価の方法に関する知識 2 4 2 3 2.8 教育戦略の知識 科目別戦略の知識 0 0 0 0 0.0 トピック別戦略の知識 9 10 16 12 11.8 合計 44 40 41 28 38.25
レーダーチャート(小カテゴリ) 16 0 5 10 15 20 目標と目的に関する知識 特定のカリキュラム・プ… 学習のための条件に関す…
生徒が苦手とする分野に… 評価することが重要な科… 評価の方法に関する知識 科目別戦略の知識 トピック別戦略の知識 PCK001 0 5 10 15 20 目標と目的に関する知識 特定のカリキュラム・プ… 学習のための条件に関す… 生徒が苦手とする分野に… 評価することが重要な科… 評価の方法に関する知識 科目別戦略の知識 トピック別戦略の知識 PCK002 0 5 10 15 20 目標と目的に関する知識 特定のカリキュラム・プロ グラムに関する知識 学習のための条件に関する 知識 生徒が苦手とする分野に関 する知識 評価することが重要な科学 評価の方法に関する知識 科目別戦略の知識 トピック別戦略の知識 PCK004 0 5 10 15 20 目標と目的に関する知識 特定のカリキュラム・プロ グラムに関する知識 学習のための条件に関する 知識 生徒が苦手とする分野に関 する知識 評価することが重要な科学 評価の方法に関する知識 科目別戦略の知識 トピック別戦略の知識 PCK005
レーダーチャート(大カテゴリ) 17 0 5 10 15 20 科学カリキュラムの知識 学生の科学理解に関する知 識
科学における評価の知識 教育戦略の知識 PCK001 0 5 10 15 20 科学カリキュラムの知識 学生の科学理解に関する知 識 科学における評価の知識 教育戦略の知識 PCK002 0 5 10 15 20 科学カリキュラムの知識 学生の科学理解に関する知 識 科学における評価の知識 教育戦略の知識 PCK004 0 5 10 15 20 科学カリキュラムの知識 学生の科学理解に関する知 識 科学における評価の知識 教育戦略の知識 PCK005
考察 18 1.詳細なPCKを客観的に測る仕組みを考案できた レーダーチャートによって、定量的に教師のPCKを把握できる 視認性が高く、相対的な知識の把握、比較がしやすい 2.科学における評価の知識が低い傾向にあることが確認できた 「科学における評価の知識」が少ない、 または授業を作る際に活用できていない可能性 →本研究ではまだデータ量が少ない、一般的な特徴というには不十分
本研究の限界・課題 18 1.バランスが取れていない、低い項目がある場合の解釈 授業に関わる様々な要素があるため、レーダーチャートが 教師の力量を直接に表しているとは言えないことに留意する必要がある 2.重みづけや補正の必要性 インタビュー調査にかかった時間、発言数 単元・何時間目であるかによる影響 調査項目への答えやすさによる影響 →これらを補正できるようになることで、より精度の高い把握ができるようになる