Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

DevOpsDaysTokyo2025社内副業で他部門へ_越境_して見えた価値再定義最大1か...

 DevOpsDaysTokyo2025社内副業で他部門へ_越境_して見えた価値再定義最大1か月のリードタイムを10分に短縮したDevOps実践.pdf

susumutomita

April 14, 2025
Tweet

More Decks by susumutomita

Other Decks in Programming

Transcript

  1. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. Susumu

    Tomita 2025/4/15 社内副業で他部門へ“越境”して見えた価値再定義 最大1か月のリードタイムを10分に短縮したDevOps実践
  2. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    2 自己紹介 冨田 進 Susumu Tomita デンソークラウドサービス開発部 CCoE(Cloud Center of Excellence) 課 Software Engineer 2018年にデンソーへ入社 現在はWebサービスのソフトウェア開発と CCoE を担当 今回は社内副業制度を利用して自治体向けサービスのアプリケーション 開発にエンジニアとして参加
  3. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    3 株式会社デンソー - 自動車部品メーカー - 設立:1949年12月16日 - 従業員数:43,980人 ( 連結:162,029 人 ) - 売上収益:連結 7兆1,447 億円 会社紹介
  4. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    4 1. イントロダクション 2. 越境チャレンジと外部者目線 3. VSMを使ったプロダクト価値再定義 4. ほぼゼロメンテナンス・アーキテクチャ構築 5. リードタイム最大1か月→10分の秘訣と学び Agenda
  5. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. 5

    イントロダクション 他部署へ越境するきっかけ 1 DevOpsDaysTokyo2025
  6. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    6 • クラウドに関する課題を解決する部署横断の Terrakoya 活動 • Terrakoya は週5時間程度、クラウド活用に強い課題意識を持ったメンバーが、部署の垣根を越えて集ま る活動 • AWSのセキュリティガイドラインの整備、Terraformのトレーニング、コスト最適化、CI/CDトレーニングを提供 して成果を上げている 越境のきっかけとなるTerrakoya活動
  7. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    7 • CI/CDやコスト最適化トレーニングを通じ、成果を上げたチームのマネージャーからの質問 o パートナー企業の協力でプロダクトは成功したが、どうすれば自社内にエンジニアチームを作れるのか? o どのようにプロジェクトを進めるべきか?エンジニアカルチャーはどう醸成すればいいのか? • 現状の限界: o 限られたTerrakoya活動の時間では、これらの質問に十分な回答を出すのは難しい そんな中 • 新たに社内副業制度(越境チャレンジ)が整備された: o 業務時間の一部を他部署の業務に使える制度であり、実際にプロダクト開発に飛び込み、その体 験を通じて回答を示せる可能性を感じた 開発チームの作り方・進め方についての相談を受ける
  8. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. 8

    越境チャレンジと外部者目線 2 DevOpsDaysTokyo2025
  9. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    9 背景 • 自治体向けSaaS「ライフビジョン」を提供するデンソーは、利用開始や設定変更に非常に時間がかかってい る • 設定ファイルは手作業で作成され、記述ミスや見落としによる手戻りが頻発 • リリース作業は外部パートナーに依存しており、依頼・工数見積もり・実作業といったプロセスの複雑さから、 リリースサイクルは月1回 • 結果として、自治体担当者からの小さな変更依頼でも、最大で1か月程度のリードタイムが発生している 募集時のゴール • Webアプリケーションを構築して、上記プロセス全体を自動化・効率化すること • パートナー企業に依存していたリリース業務を自社でできるようにする。 越境チャレンジ募集時のゴール
  10. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    10 システム全体像がわからない • 既存システムと新規Webアプリの関係が不明瞭 • 既存システムには外部連携用のAPIがなく、どのように設定変更を行えばよいかが不透明 ステークホルダーの関わり方がわからない • 誰が、どの責任範囲を持つのかが明確でない スコープとリリースフローが決められない • どこまでがWebアプリで自動化すべき範囲か、どの機能の優先順位を高く設定すべきか判断がつかない • いつ、誰がリリースを実施し、承認・検証はどう行うのかが不明 チームがまだ「集まっただけ」の状態 • 越境者を含めたチームを機能させるため、現場全体の流れとプロセスの境界を明確にする必要がある 越境者が初めに感じたこと
  11. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    11 システムの全体像とステークホルダーを明らか にする • システムコンテキスト図を作成し、システムの 境界を明確化 • ステークホルダーや責任範囲を可視化し、 誰が何を担当するか整理 フィードバックサイクルの確立 • 機能の優先順位を決めるにはステークホル ダーの意見が重要 • 2週間ごとに場を設け、フィードバックを収集 • 機能の優先順位を都度見直し、継続的に 改善できるようにする システムコンテキスト図とフィードバックサイクル
  12. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    12 非同期コミュニケーションの工夫 • 分報で状況を共有 • 振り返りのネタとか気づいたことはスレッドに残す • 雑談も非同期でもやる 継続的な振り返り • レトロスペクティブで改善点を洗い出し、次スプリントに反映する チームとして機能させるための工夫
  13. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    13 動作するWebアプリケーションを作りデモを実 施したが以下の反応だった • 「おおっ!」という驚きや感動の反応は得ら れず • 画面や操作に関する指摘はあったが、ユー ザー体験そのものへのコメントは少なかった • 新しいツールができたのかといった反応でレ ビューが盛り上がらなかった デモをしてわかったこと
  14. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    14 • 単に作業をWebに置き換えただけでは、利用者の負担が軽減されないのでは? • ツールの新たな使い方を覚える必要が生じ、負担が増す可能性もあるのでは? • このままの開発を続けると一定の価値は出るものの、本当に愛されるプロダクトにはならないのではないか? そのため、プロダクトの価値向上のために、課題設定から再考することにした デモに対する考察
  15. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. 15

    VSMを使ったプロダクト価値再定義 3 DevOpsDaysTokyo2025
  16. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    16 • 業務フロー全体をバリューストリームマップ(VSM)で可視化 • 承認者やマネージャーを含む、すべてのステークホルダーが一堂に会して、自治体からの依頼がどのように価 値を生み出しているかを議論 • 各工程の実作業時間、待ち時間、合計リードタイムを明記 • 手戻りの発生状況(逆流率)も記録し、改善ポイントを抽出 プロダクトの価値を明らかにするためにボトルネックに着目する
  17. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    17 • 巻物のような長いフローを経てリリースされていることがわかった • 対話を重ねることで業務フロー全体を参加したメンバー全員が理解できた • 待ち時間が1週間から2か月かかることがわかった 出来上がったバリューストリームマップ
  18. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    18 • 当初考えていた設定の更新については、ボトルネックとなっていたことが改めて確認できた • 承認プロセスや、作業チケットの作成、担当者の割り当ても、ボトルネックであること • 業務フロー全体で見ると、ほかの部分も改善していかないと、トータルのリードタイム短縮にはつながらないこ と • スコープを業務フロー全体の最適化にすることで、プロダクトの価値がより伝わるようになるのではないか、と 考えられるようになった バリューストリームマップを書いて明らかになったこと
  19. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    19 Eliminate, Combine, Rearrange, Simplify(ECRS) • 既存の業務フローをこの順序で見直し、不要な工程を排除、類似工程を結合、順序を交換、そして全体 を簡素化 理想の業務フローの反映 • バリューストリームマップを更新し、設定変更作業全体の最適化にスコープを拡大 エレベーターピッチの更新 • 業務全体の価値向上を反映した新たなエレベーターピッチを策定 ユーザーストーリーマップの見直し • VSMを基に、ユーザーストーリーマップをアップデート プロダクト価値を再定義した結果得られたもの • どの機能を実装するとどれだけリードタイムが短縮できるかが明確になり、インパクトの大きい機能の優先順 位を自信をもって決定可能になった プロダクト価値を再定義する
  20. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    20 • 理想のバリューストリームマップ書き、待ち時間を短縮するための最適化ポイントの洗い出し • これまでカバーされていなかった、自治体からの問い合わせ受付部分も含む全体フローの再構築 • エレベーターピッチも設定変更に必要な作業がすべて完了するとカバーする範囲が広がった 理想のバリューストリームマップとエレベーターピッチ
  21. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. 21

    ほぼゼロメンテナンス・アーキテクチャ構築 4 DevOpsDaysTokyo2025
  22. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    22 • バリューストリームマップを用いて、最もリードタイム削減効果の大きい機能を特定 • 過去の自治体からの依頼内容を詳細に分析し、どの設定を変更すればよいか、作業手順をステップバイス テップで記述したHTMLページを1枚作成 • 従来のWebアプリは、ライフビジョンの機能の設定変更のみを提供していたが、今回、自治体の具体的な 要望と各機能の関連性を整理し、自治体の要望に合わせてライフビジョンのどの機能のどの設定を変更す ればいいのかを明確にした • ステークホルダーにデモを体験していただいた結果、設定変更が自社内で完結し、全体の作業が約10分で 完了するという、大きな短縮効果が示された 1日で作ったアプリで大きな手ごたえを得る
  23. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    23 • URLのクエリパラメータを解析し、ドキュメン ト内のプレースホルダーに実際の値を動的に 埋め込む仕組み • ページ上の値が自動更新され、作業者が 必要な情報を一目で把握可能 • ページに記載された手順通りに実行すれば、 設定変更が完了する 実際にデモで見せた一枚のページ
  24. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    24 • プロダクトの方針を変える • HTML一枚の体験で大きな手ごたえを得たのでその成果をもとに、プロダクトの方針を変更 • アーキテクチャ概要: • Googleフォーム: • 設定変更依頼の入力フォーム • Google Apps Script (GAS) + CLASP: • フォーム送信をトリガーとして、バックエンド処理を自動呼び出し • Amazon API Gateway + AWS Lambda: • 設定変更に必要なパラメータと手順を実装、リクエスト受領後に作業チケットを自動作成 • AWS CDKを使いIaCを実現 • サーバーレスのメリット: • リクエストがない場合はコストが発生せず • 従来のWebアプリに比べ、データベースや専用サーバーが不要で、メンテナンスも格段に楽 • ソフトウエアエンジニアが少なくてもメンテができるように負担を減らす シンプルな構成で実現する
  25. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    25 事前準備としての台本作成 • 今回の目玉機能と、バリューストリームマップ 上でどこが改善されるのかを明確にする台 本を用意 ナラティブ形式の台本の共有 • 台本はナラティブ形式で記載し、全員がア クセス可能な場所に配置 • これにより、デモで紹介される機能とその価 値が誰にでも一目で理解できるようにした フィードバックディスカッションの促進 • 狙いを明らかにすることで、実際の業務に 照らし合わせた具体的な改善提案が出や すくなり、フィードバックの質が向上 効果的なフィードバックをもらうための工夫
  26. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    26 • HTMLページではなく、チケットに対して作 業手順が自動で作成される仕組みを実 装 工夫したこと • Copilot を活用し、手順や細かいパラメータ を自動生成 • Clineを導入し、AIを活用した開発環境を 構築 • Clasp と AWS CDK を採用し、全コードを TypeScript で記述 • テストコードに期待する振る舞いを詳細に記 述し、テスト結果から仕様が容易に把握で きるようにした 最終的にできあがったもの
  27. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    27 テストコード 実行結果 • 各テストコード内で、どのリソースがいくつ作られ るかを詳細に記述 • 開発者全員が日本語を理解するため、テストタ イトルやコメントも日本語で記述 • テストを実行すると、期待するリソースがどの程 度作成されるかが一目で分かる • GitHub Actionsを利用して自動テストを実行 し、結果をすぐに確認可能 テストコードの例
  28. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. 28

    リードタイム最大1か月→10分の秘訣と学び 5 DevOpsDaysTokyo2025
  29. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    29 改善前のプロセス: • 依頼受付(電話、メール、口頭) → (営業が内容ヒアリング) → (チケット起票) → (外部パートナーへ依頼、 承認・リリース待ち) → 本番反映 • 合計:約1週間から1か月程度 改善後のプロセス: • 依頼者がフォーム入力 → 自動ワークフローが即時に作業手順を作成 → 作業手順が書かれた作業チケッ トを自動で作成->手順に従って作業を実施->本番反映 • 合計:約10分 効果: • 手作業や待ち時間の大幅削減 • プロセスのステップ数を劇的に圧縮 リードタイム1か月→10分の劇的短縮
  30. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    30 • 全体最適の視点: 部分最適ではなくプロセス全体での最適化を考えることの大切さを再認識 (VSMは強 力な武器) • ソフトウエアの知識が全くないメンバーが実務を行っているわけではない、ただ、知識として知っているが実践 をしてみて初めてわかったといわれることが多々あった。 • 知っているからできるにつなげる活動をすることでエンジニアリング文化を作れるのではと感じた 越境して見えたこと
  31. CONFIDENTIAL CONFIDENTIAL PUBLIC © DENSO CORPORATION All Rights Reserved. DevOpsDaysTokyo2025

    31 • 技術面だけでなく、課題解決を行うためのソフトスキルを部内に蓄積できたと考え、これは非常に大きな成 果だと考えます • テスト駆動開発・CI/CD・IaCなどの開発を加速するための方法論について、概念としては知っていましたが、 開発を通して、具体的にはどのように適用するのかを肌感覚で知ることができました。また、適切なI/F設計 についても、オブジェクト指向の概念は知っていても実際に実装してみると失敗するもので、実践から会得で きるものがありました • 越境チャレンジを通じて学んだことは、「サービス構想スキル」と「技術スキル」の2つである。 越境チャレンジ開始前に構想していたサービスは、その時は気づいていなかったが、既存業務フローのある一 部を改善するにとどまっており、業務全体で見るとユーザの負担が増え、価値が向上したといえるものでは なかった 越境先のメンバーの意見