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業務改革がうまくいくかは、"誰がどこにいるか"でだいたい決まる、って話

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August 02, 2025
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 業務改革がうまくいくかは、"誰がどこにいるか"でだいたい決まる、って話

これまで、いくつかの業務改善のプロジェクトに立ち会ってきましたが、ふりかえってみると“どこに誰がいるか”で成否が決まったことが多かったように思います。 今日はそのポジショニングの話、また、”その人たちがどういう関係になってるとうまくいくか”って話をします。

本スライドは、2025年8月2日(土)に開催された、「ゆるOPS部#1」で発表したときのものです。
https://yuruops.connpass.com/event/360010/

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Kazuhiro Kawachi

August 02, 2025
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Transcript

  1. 理想の上司 • すぐに意図を察してくれる • やる前から「よく頑張ってるな」と褒めてくれ る • 言わなくても予算と人を確保してくれる • 外との調整は全部やってくれる

    • 失敗してもぜんぶ責任を取ってくれる • 「好きにやれ」と言いながら、 困ったときだけ手を差し伸べてくれる • Slackで変な絵文字使わない 理想の職場 • すぐに意図を察してくれる😊 • 「いいですね🎉」と秒で共感してくれる • 忙しくても改革の話にすぐ乗ってくる 😆 • 根回しなしで全員一致👏 • 全員、改善に意欲的で意識が高い 💪 • 課題とアイデアを自発的に出してくる • Slackが賞賛スタンプであふれかえる 🎊
  2. リエゾンとは 語源はフランス語 “liaison”(つなぐ・連結する・仲介する などの意味) 英語圏では以下のような意味で使われます: • 「部門・組織間の調整役」(liaison officer) • 「仲介・橋渡しの人」

    • 「軍事や外交における連絡将校」 ビジネス文脈では: • 「現場と本部をつなぐ担当者」 • 「ITと業務部門を橋渡しする存在」 • 「プロジェクト内外の利害関係者の調整役」
  3. リエゾン行動とその効果 シーン リエゾンの行動 効果 プロジェクト初期 関係者マップの作成。利害整理 想定外の利害対立を把握 仕様調整の局面 各部門の要求を噛み砕いて伝える 手戻り・炎上・目的のズレを防止

    部門間の衝突発生 双方の前提や制約を開示し、納得解 を設計 対立を対話に変える プロジェクト進行中 課題・状況を定期的に報告 問題の早期発見・早期解決 プロジェクト終盤 成果とナレッジの横展開 他プロジェクトへの波及。定着
  4. 関係者マップ(例) ステークホルダー 関心・懸念 影響すること 利用機能 主な利害 営業マネージャー 報告が面倒 進捗入力作業 案件入力・パイプライン

    工数削減したい 営業メンバー モバイルで遅い 外回りでの操作性 顧客管理・ToDo スマホで使いたい 情シス 管理コスト データ移行負担 運用管理・API連携 工数増やしたくない マーケティング リード分析 データ構造 ダッシュボード 分析指標を変えたくな い 経営層 KPI可視化 投資計画・KGI設計 経営ダッシュボード 投資回収したい
  5. リエゾンが行う"翻訳"① - 経営メンバーへの翻訳 • カスタマーサクセスからの声 ◦ 「今の人数じゃオンボーディングできずにチャーンされます。人増やしてください」 • 経営メンバーへの翻訳 ◦

    目的を抽出・変換する ▪ 「人を増やす」→手段 ▪ 本質は「解約率の抑制」「オンボード率の改善」 ◦ 経営言語への変換 ▪ 現場:「3人ほしい」→ 経営:「顧客1社あたりオンボード工数 12時間。現在CS比率は1人あた り30社、限界」 ▪ 現場:「チャーンが怖い」 → 経営:「1社あたり解約で失うMRRが◦円、過去3件で◦円。防げば ROIが出る」 ◦ 投資対効果で再構成 ▪ 追加1名の人件費400万円/年に対し、年間 MRR損失を◦件×◦円=◦万円防げる見込み。 ▪ 稼働改善では追いつかないため、人的リソース強化が妥当」
  6. リエゾンが行う"翻訳"② - 現場への翻訳 • 経営メンバーの考え ◦ 「人員追加は難しい。今のメンバーでなんとか回して欲しい」 • 現場への翻訳 ◦

    現場はこう受け取りがち ▪ 「ただ無理しろってこと?」 ◦ リエゾンの翻訳 ▪ 投資余力が限られていることを説明 ▪ 自動化など他の方法で工数削減の見通しを出すよう提案 ▪ それでも削減できなかったら人員追加要望を根拠を持って提案
  7. 営業と開発の戦い - リエゾンの翻訳 観点 営業 開発 リエゾンの翻訳 表現 至急機能を追加して欲しい 要件が曖昧、工数足りない

    要望背景 ビジネスインパクト 代替案に変換 目的 競合に勝ちたい。売上欲しい 品質とプロダクト思想守りたい 成果と実現性の接点を作 る 評価軸 商談成功、顧客満足 技術的妥当性、安定性 経営視点でのリスク、投資 対効果
  8. 翻訳の実務作業 • 視点変換 ◦ 「困ってる」→「数字にする」「代替案を確認」 • 情報変換 ◦ 会話の中で出てきたワードを KPI、コスト、ROIに置き換える

    • 期待値変換 ◦ 現場はサービスの質を上げたい。経営は投資対効果で判断する • 文脈の圧縮・展開 ◦ 経営には1枚の紙 ◦ 現場には経緯や背景を見せる
  9. リエゾンに必要な資質 • 違和感をスルーできない人 ◦ 「これ、なんかおかしくない?」に気づく感覚がある • 物事を対立軸で捉えない ◦ 上司 vs

    現場 ではなく、「両方がうまくいく道」を探せる • 他人の言いたいことを翻訳できる人 ◦ 「〇〇さんが言いたいのは、つまりこういうことだよね」と代弁できる • 怒りよりも問いが湧く人 ◦ →「なんでそうなってるの?」と落ち着いて掘り下げる • 関係性や構造に意識が向く人 ◦ 「誰がキーパーソンか」「自分がどう動けばいいか」を自然に気にする
  10. 規模 特徴 リエゾン必要度 説明 〜20人程度 フラットで全員の顔が見える 不要 誤解が起きてもすぐ直接会話で修 正できる 30〜50人規模

    チームが複数に分かれ、役割が縦割り化 必要性が出始める チーム間の暗黙の境界線が生ま れ、目的の齟齬が増える 50〜100人規模 「業務部門vs開発」「本部vs現場」など 構造的な断絶 必要 対話では埋まらない分断が常態化 し、翻訳役が必須になる 100人超 多層的な利害関係が絡み始める 必要 複数の利害調整を並行して行わな いと何も決まらなくなる 組織規模とリエゾンの必要性
  11. 現場リエゾンとリエゾン本部 • 現場リエゾン(各部門に配置) ◦ 現場に密着した信頼感 ◦ 継続的なサポート • リエゾン本部(社内横断の専任組織) ◦

    専門性 ◦ 全社横断プロジェクトで機能させやすい ◦ KPIレポーティングなど、投資対効果が見えやすい