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Web開発者が知っておきたいメール技術の基礎

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 Web開発者が知っておきたいメール技術の基礎

社内学習会で使用したスライドです。

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Toshiki003

March 27, 2026

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Transcript

  1. アウトライン 1. なぜ学ぶ? ― 実務との接点 2. メールの使い方と送受信の全体像 3. プロトコルの詳細とポート番号 4.

    代表的なメールサーバー 5. 現代のメール運用とまとめ 6. 補足資料(時間次第) 2
  2. 1. なぜ学ぶ? ― このテーマを学ぶ意味 いまはGmail やMicrosoft 365 など便利なサービスがある そのため、メールの仕組みを意識せずに使えてしまう しかし、Web

    開発の実務ではメールに関する問題が普通に起こる → 仕組みを知っていると、設計・実装・障害調査がしやすくなる 4
  3. 2. メールの使い方は3 種類ある 1. メールソフトで使う 例: Outlook, Thunderbird, iPhone メール

    2. Web メールで使う 例: ブラウザで開く Gmail, Yahoo! メール 3. クラウドメールサービスを使う 例: Gmail, Microsoft 365 ※ Gmail のように「Web メール」かつ「クラウドメールサービス」に該当するものも あります これらは見た目や使い方の違いです。 裏側では共通してメールのプロトコルが使われています。 6
  4. 2. メールソフトがやること・プロトコルがやること メールソフトでできること(見た目の印象) 作成・編集・送信・閲覧・検索・削除・フォルダ分け … プロトコルが担っていること(実態) SMTP → メールを「送る」だけ POP3

    / IMAP → メールを「受信側からアクセスする」ためのもの 作成・編集などはメールソフト側の機能が中心です(※IMAP はサーバー上の検索・ フォルダ操作も可能) この違いを意識すると、このあとのプロトコル解説が理解しやすくなります! 7
  5. 2. Web (HTTP )と何が違うのか?② 観点 Web メール プロトコル数 1 つ(HTTP

    ) 2 つに分かれている 通信モデル リクエスト⇄レスポンス 送信→ 中継→ 保管→ 受信 サーバー 基本1 台で応答 送信側・受信側で別 Web は 1 つのプロトコルで双方向完結 するシンプルな構造 メールは 送りと受けで仕組みが分かれている のが特徴 この構造の違いが、メール特有の複雑さの根本原因 13
  6. 2. なぜサーバーが分かれているのか? Web (HTTP ) → 送り手と受け手が同時にオンライン。1 台で即座にやり取り メール →

    送り手と受け手が同時にオンラインとは限らない。中間で預かる仕組み が必要 郵便 メール 役割 ポストに投函 送信サーバーに渡す SMTP 郵便局が配送 サーバー間を中継 SMTP 届け先の郵便受けに届く 受信サーバーに保管 ― 郵便受けを開けて読む 取りに行く POP3/IMAP 「届ける」と「受け取る」はそもそも別の行為。だからサーバーも分かれている 14
  7. 3. POP3 と IMAP の違い 観点 POP3 IMAP 動作モデル 取得中心

    同期中心 複雑さ シンプル やや複雑 端末数 単一端末寄り 複数端末に向く 現代との相性 やや古い 現代の利用形態と相性がよい 受信プロトコルとしては、IMAP の考え方を優先して押さえるとよい 18
  8. 3. メール関連の主なポート番号 プロトコル ポート 用途 今の立ち位置 SMTP 25 サーバー間配送 サーバー間専用

    SMTP 587 送信(クライアント→ サーバー) 主流 SMTP 465 送信(implicit TLS ) 復権中 POP3 110 受信(平文) 非推奨 POP3 995 受信(暗号化) IMAP 推奨 IMAP 143 受信(STARTTLS ) 利用可 IMAP 993 受信(暗号化) 主流 まず覚えるべきは 587 (送信)と 993 (受信)の2 つ 19
  9. 4. 代表的なSMTP サーバー(送信側) 分類 名前 特徴 クラウド Amazon SES AWS

    連携◎ 大量配信・従量課金で低コスト クラウド SendGrid REST API が使いやすい。分析機能が充実 クラウド Mailgun 開発者向けAPI 重視。テスト環境が便利 オンプレ Postfix Linux 定番MTA 。設定シンプルで実績豊富 オンプレ Sendmail 最古のMTA 。設定は複雑だが柔軟 オンプレ Exchange Windows 環境の定番。AD 統合 開発用 Mailpit ダミーSMTP 。ローカルで動くOSS 版。Laravel 等で人気 開発用はメールの閲覧ができるが、SMTP で受けたメールをHTTP で表示するだけ 20
  10. 4. 代表的なPOP / IMAP サーバー(受信側) ソフトウェア 対応プロトコル 特徴 Dovecot POP3

    / IMAP Linux 環境で最も広く使われる。軽量で高速 Courier POP3 / IMAP Maildir 形式に強い。Dovecot と並ぶ選択肢 Cyrus IMAP IMAP 大規模環境向け。ISP などで採用実績あり Microsoft Exchange POP3 / IMAP / MAPI Windows 統合環境の定番。独自プロトコル MAPI も持つ ポイント Dovecot + Postfix の組み合わせがLinux メールサーバーの定番構成 クラウドメール(Gmail, Microsoft 365 )を使う場合これらを意識する機会は少ない 21
  11. 5. いまどきのメール運用 多くの現場では Gmail や Microsoft 365 を使う アプリからの通知メールは Amazon

    SES や SendGrid を使うことが多い 自前でメールサーバーを運用する機会は少ない 仕組みを知っていると何がよいか メールが届かない原因を切り分けやすい プロトコル / DNS / TLS の関係が分かる クラウドサービスの役割を正しく理解できる 実務でログや設定を見るときに怖くなくなる 22
  12. 5. Web 開発者として、どこまで理解すればよいか まずは次のレベルで十分: 3 つのプロトコルの役割の違いを説明できる メールの送受信の流れを説明できる メールソフト / Web

    メール / クラウドサービスの違いを説明できる 主なポート番号を見て、何の通信かだいたい分かる ここまで分かれば、実務でかなり役に立つ 23
  13. Q3. POP3 ではなくIMAP が現代の主流である最大の理由は? A. IMAP の方がプロトコルとしてシンプルだから B. POP3 は暗号化通信(POP3S

    )に対応していないから C. IMAP はサーバーにメールを残し、複数端末で同期できるから 31
  14. 補足: さらに学ぶなら 次のテーマにつなげやすい: DNS と MX レコード(メールの宛先解決の仕組み) SPF / DKIM

    / DMARC (なりすまし防止の認証技術) バウンスと配信レピュテーション(届かないメールの原因と対策) メール送信の非同期処理と再送設計(キューイング、リトライ戦略) SMTP とSFTP の違い(名前が似ているが全く別物) メール技術の歴史(後述) 34
  15. メール技術の歴史 ― Web より20 年先輩である 年 出来事 1971 ARPANET 上で最初のネットワークメール送信(

    @ 記号の誕生) 1982 SMTP が標準化(RFC 821 ) 1984 POP が登場 1986 IMAP の原型が Stanford で開発 1989 Tim Berners-Lee が WWW を提案(← ここでやっとWeb 登場) 1991 WWW 一般公開 / 1997 HTTP/1.1 標準化 メールが設計された時代は常時接続が当たり前ではなかった 「送る」と「溜めて取りに行く」を分けたのは、当時の環境では自然な設計だった 38