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三越伊勢丹において「DXとモダナイズと内製化」を同時に推進する取り組みについて

 三越伊勢丹において「DXとモダナイズと内製化」を同時に推進する取り組みについて

2025年4月9−10日に開催されたITモダナイゼーションSummit Web Live 2025における講演「三越伊勢丹において「DXとモダナイズと内製化」を同時に推進する取り組みについて」の資料です。

三越伊勢丹では2020年からDevOpsの実現を目指して「ビジネスプラットフォーム(BPF)」と呼ばれる基盤を整備してきました。この整備を進めていく中で、DXとレガシーモダナイズと内製化を同時に推進しており、2030年に向けた変革を進めています。講演では、三越伊勢丹が整備しているビジネスプラットフォームの構造や、構築するための組織体制を解説し、具体的にどういった成果を上げることができたのか事例を交えて紹介します。

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Transcript

  1. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. 三越伊勢丹において 「DXとモダナイズと内製化」を

    同時に推進する取り組みについて 三越伊勢丹グループ アイムデジタルラボ 鈴木雄介
  2. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. 講演者 鈴木雄介

    • アイムデジタルラボ(三越伊勢丹グループ) • 取締役 • Graat(グラーツ) • グロース・アーキテクチャ&チームス(株) • 代表取締役社長 • 日本Javaユーザーグループ • サブリーダー/CCC運営委員長 • その他 • @yusuke_arclamp • http://arclamp.hatenablog.com/
  3. 3

  4. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. 三越伊勢丹グループ 4

    本日のお話 百貨店業 首都圏を中心に、 国内外に43店舗を展開 不動産事業 国内保有不動産の再開発と 国内外の商業不動産事業を強化 金融事業 カード会員数269万人 年収1,000万円以上の会員シェア 22.6% 2023年度 総額売上高 1兆2,246億円 (うち百貨店業売上高) 1兆1,373億円
  5. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. アイムデジタルラボとは (株)アイムデジタルラボ

    • DX推進機能子会社 • 三越伊勢丹ホールディングス100%出資 • 創業:2019年10月 • https://www.imd-lab.co.jp/ • https://note.com/imd_lab ミッション 仕組みを変えて お買い物を楽しくする 5
  6. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. アジェンダ 1.

    ビジネスプラットフォームの紹介 2. 3つの効果 3. 今後に向けて 6
  7. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. ビジネスプラットフォームの紹介 クラウドネイティブな基盤

    • 新規のDXサービスやレガシーモダナイズに利用 • マネージド/サーバレス/コンテナのみ、インフラ構築の自動化 必須などで開発期間の短縮と保守体制の縮小を実現 • 現在、約200サービスが稼働中 • あえてレガシーシステムのクラウド基盤とは切り離し DevOps基盤 ・レガシーブリッジAPI ・基幹モダナイズシステム ・共有データ… DX サービスA DX サービスB ... 基幹クラウド基盤 (IaaS/SaaS) レガシーシステム 開発ツール GitHub/Jira… CI/CD GitHub/New Relic… PaaS AWS Fargate/RDS…
  8. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. ビジネスプラットフォームの紹介 いつから、なぜ整備し始めたのか

    • 2025年の崖に向けて • 2019年に社内外の有識者を集めて議論 • 三越伊勢丹にも大量のレガシーシステムが存在するが、短期的な解決は 困難。では、どうすべきか? • 2019年に先行プロジェクトでDevOpsやマネージドサービスを検証 • プラットフォームを整備し、段階的にモダナイズを推進する方針を設定 • 全面再構築による刷新は、かなり難しいという判断 • 2020年から組織的に取り組みを開始 • 「ビジネスプラットフォーム(BPF)」として整備開始 • 組織を組み替えながら、継続的に整備中 9
  9. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. ビジネスプラットフォームの紹介 3部門の協業体制

    • 情報システム統括部は全体視点での統制を実施 • IMSはDevOps基盤/BPF整備、レガシーシステムの開発・保 守・運用の全般を担当 • IMDLはDXサービス開発、IMSの基盤整備を支援 三越伊勢丹 ホールディングス 三越伊勢丹 <百貨店事業> IMDL(アイムデジタルラボ) <DX推進> IMS(三越伊勢丹システム・ソリューションズ) <IT開発保守運用> 情報システム統括部 <統制> BPF/ DevOps基盤 協業 整備 利用 レガシー システム 保守 DXサービス 利用 開発
  10. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. ビジネスプラットフォームの紹介 よく聞かれること

    • 現行と新規の二重メンテでは? • YES。でも、新規側は自動化によって保守体制が縮小されているので2倍 にはならない • 構築スケジュールは? • 様々な変化があるため、毎年、見直しながら段階的に継続中。レガシー の塩漬けもあるので100%移行はしない前提 • どうやって予算を組んでいるの? • BPFそのものではなく、ビジネス要件に予算をつけ、その中で段階的に 整備をしていっている 11
  11. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. 3つの効果 取り組むことで見えてきた3つの効果

    • ①DXが推進される • DXサービスの構築スピードが向上 • ②段階的なレガシーモダナイズが推進される • 段階的にレガシーの機能をクラウドシフトできる • ③内製化が推進される • 新たな人材が核となって構築を進められる 13
  12. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. ① DXが推進される

    開発チームがインフラも運用も • 開発から他部門へ依頼→自動化ツールを利用 • 従来:開発チームからインフラ・運用部門に依頼が必要 • BPF:開発チームが自動化を推進、他部門が支援 • 従来のインフラ・運用部門はCCoEやSREチームに再編 15 従来 BPF インフラ 構築 アプリ 開発 運用監視 インフラ チーム 開発 チーム 運用監視 チーム 既存 環境 利用 整備 監視 開発 チーム 運用監視 チーム DevOps 環境 利用 利用 通知 CCoE チーム コア 監視 全体 整備 支援
  13. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. ① DXが推進される

    事例:海外顧客向けアプリ • MITSUKOSHI ISETAN JAPAN • 中計で掲げた「個客業化」に向けた施 策の1つ「識別化」の推進 • 2025/3/26配信開始 • インフラ構築は最後の1ヶ月 • BPF基盤のAPIを利用する形で必要な機 能を見極め • 最後に必要最小限のインフラや運用を 整備する進め方 16
  14. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. 基幹システム ②段階的なレガシーモダナイズが推進される

    ストラングラーパターンによる段階的再構成 • 必要な部分だけを段階的にモダナイズして置き換え 1. 最初はブリッジAPIを用意する(既存はそのまま) 2. 必要な機能だけをモダナイズし、部分的に置き換え 3. 不要な部分は、すべて廃止(もしくは塩漬け) • 既存システムに改修費をかけないことが重要 18 基幹システム 現状 業務 システム 基幹システム 業務 システム ブリッジAPI DX サービス 業務 システム レガシー モダナイズ DX サービス 基幹システム 業務 システム レガシー モダナイズ DX サービス 1.ブリッジAPI 2.部分モダン化 3.レガシー廃止
  15. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. ②段階的なレガシーモダナイズが推進される 事例:会員基盤再構築

    • Web会員からデジタル会員へ • Web会員から店頭でも使えるデジタル会員に変更していく • 新規で追加される機能をレガシー改修ではなく、BPF上でのクラウドシ フト再構築で対応。レガシー連携先は保全しながら改修費を低減 • 顧客や業務への影響を下げて実現していく • 以下のステップで実施中 1. 認証機能の分離(SSO対応など) 2. セキュリティ機能の分離(権限管理など) 3. 会員管理機能の分離(会員属性など) ←イマココ 4. 会員関連機能の再構築 19
  16. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. ③内製化が推進される 部分的に若手に任せる

    • 経験するのが一番良い学び • システムをサービスに分割することでリスクを低減 • 大規模部分や技術難易度が高い部分はベンダーに依頼 • 業務コア部分はグループ社員チームに対応してもらう • 運用も若手中心に考えて、自動化を推進してもらう • 支援体制を上手に作って、学びを深めてもらう • エキスパート人材の採用/参画 or 外部企業との契約など • (許容できる)小さな失敗をして、学びに変えていってもらう • 作業としてのプログラミングを目的にしすぎない 21
  17. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. ③内製化が推進される 事例:決済金額計算

    • OMO推進のための決済手段 • きっかけはコロナ禍 • デジタル会員IDを利用し、リモートか らの決済を可能に。電話、チャット、 在宅訪問時などに利用可能 • 金額計算にルールエンジンを利用し、 社員だけで再構築 • 値引き/優待/ポイント/税などで複雑化した ルールを整理、テストの自動化を達成 • 実績としてインボイス対応も低コストで完了 • 今後、POSやECへも展開予定 22
  18. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. 今後に向けて 2030年までに28テーマ

    • 中経:館業から個客業へ • 2030年までに準備を進めて いくフェーズ • 段階的に対応推進中 • 長期的に計画すべきもの、 段階的に見直せばいいもの、 アジャイルに進めていくも のを見分ける • 経営戦略の状況に合わせて 優先順を変えていく 24 アジャイル ウォーター フォール サイクル 提案 要件定義 要求整理 案件の解き方 案件の 進め方 ←定期的に見直し ←継続開発で都度、 見直し(大小あり) ←最初にやるべきことを 決め、一気に作りきる 要件 定義 要件 定義 要件 定義 開発 開発 3ヶ月 3ヶ月 3ヶ月 要件 定義 開発 Xヶ月 Xヶ月 要件定義 開発 対象業務は明確。 要件定義から ↓ 業務改革必要。 要求の整理から ↓ 何をするか、 IT側の提案から ↓
  19. Copyright© IM Digital Lab, Inc. All rights reserved. さいごに プラットフォームへの取り組みが重要な理由

    • ①個別システム管理→全社サービス群管理への変化 • 「個別システムを管理し、連携させる」から「全社視点でサー ビスやデータを配置していく」という管理視点の変化 • ②学びながら組織や人材を変えていく • 自分たちで手を動かし、課題を解決するためにも「小さく進め る方法」が確立されているのは重要 • ③経営方針の変化に対応する • 百貨店はコロナを経て「やるべきこと」が劇的に変化。プラッ トフォームによって足回りを整備していく 25