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AI対話に何を挟むか ― 高回転対話・デジタル摘録・手書き記録による創造体験の違い|日本創造学...

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October 24, 2026

AI対話に何を挟むか ― 高回転対話・デジタル摘録・手書き記録による創造体験の違い|日本創造学会2026

AIとアイデアを考えていると、「これは面白い」と思った着想が、次々と現れるAIの出力に押し流されてしまうことがあります。

本研究では、AIとのアイデア創出において、AIの出力と次の思考の間に「何を挟むか」に着目しました。

大学生89名による15分間の発想課題「2030年の自動販売機」を通じて、次の3方式を比較しました。

① 高回転対話:記録を挟まず、AIとの対話を高速に続ける

② デジタル摘録:AI出力をコピーし、重要箇所にマーカーを付け、自分の考えをコメントする

③ 手書き記録:気になる情報を紙に書き取り、そこから生じる着想も手書きする

結果として、創造性の高まり、思考の飛躍度、翌日語れる自信の3指標について、方式間の統計的に有意な差は確認されませんでした。

一方、自己評価の平均値では、思考の飛躍度はデジタル摘録群、翌日語れる自信は手書き記録群が最も高く、自由記述にも方式ごとに異なる創造体験が表れました。

本研究は、方式を参加者が自己選択した探索的研究であり、因果的な効果を示すものではありません。

AI時代の創造で重要なのは、AIの出力量だけではなく、人間がどこで立ち止まり、何を拾い、どう考えを育てるかという「介在の設計」なのかもしれません。

本資料では、実験の概要、結果、自由記述、研究の限界、今後の研究課題と実践的な示唆を紹介しています。

【発表情報】
日本創造学会 第48回研究大会(2026年)
2026年10月25日/秋田県立大学
発表者:石井力重(アイデアプラント)
資料:全49ページ

※研究発表時のスライドを公開したものです。

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石井力重

October 24, 2026

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Transcript

  1. 先行研究❶: ワディナンビアラッチら(2024)[CHI 2024] ※CHI:人とテクノロジーの関わり(HCI)を扱う、分野内最高峰(Nature級)の国際学会 The Effects of Generative AI on

    Design Fixation and Divergent Thinking 生成型AIがデザインへの固執と発散的思考に及ぼす影響 概要) 実験: 60名が20分間でチャットボットのアバターを発想。 全員に同じ作例を提示し、「追加支援なし」「画像検索」「画像生成AI」の3条件を比較。 結果: 画像生成AI群は、追加支援なし群よりも初期作例への固着が強く、 案数・多様性・独創性が低かった。 著者らの示唆: AIが刺激を生成するだけでなく、プロンプトの作り方や、生成画像を 模倣にとどまらず発想へつなげる方法を支援することが重要。 要約) 生成AI画像を用いた発想で初期例への固着が強まる。 案の数・多様性・独創性が低下する。 AI出力への応答戦略の重要性を論じた。 9
  2. 先行研究❷: ヘイマンら(2024)[Collective Intelligence] Supermind Ideator: How scaffolding Human-AI collaboration can

    increase creativity 人間とAIの協働を構造化することで創造性を高める 概要) 実験:152名が、偽ニュースの判別やワークライフバランスの改善策を発想。 「専用AI(Supermind Ideator)」「ChatGPT」「AIなし」の3条件を比較。 専用AIは、創造技法・プロンプト・操作画面を組み合わせ、発想を段階的に支援。 結果:第三者によるアイデアの革新性評価(5点満点)は、専用AI 3.21、ChatGPT 2.96、AIなし 2.81。 3条件の各組み合わせで有意差があった。一方、提出アイデア数には有意差がなかった。 著者らの示唆:生成AIの能力だけでなく、創造技法や思考の手順を組み込んだ「足場かけ」の設計が、創造的成果を高め得る。 要約) 創造技法・専用プロンプト・UI による足場を備えたシステムが、 通常のChatGPT利用等より革新的な案を生んだ。 10
  3. 先行研究❸: 井上ら(2007)[IEICE Transactions] ※ 『IEICE Transactions on Information and Systems』(電子情報通信学会の英文論文誌)

    Effect of Rearrangement and Annotation in Digitized Note on Remembrance デジタルノートの再配置・注釈が記憶に及ぼす効果 概要) 実験:大学院生8名が講義映像を視聴し、タブレットPCでノートを作成。 「ノートに注釈・再配置を加えて復習する」「閲覧のみで復習する」の2条件を比較。 結果:2日後の記憶テストでは、初日と比べて、再配置ありの条件で得点が平均0.625点上昇、なしの条件で平均1.625点低下。 一方、注釈・再配置を行う初回の復習には、より多くの時間を要した。 著者らの示唆:ノートの注釈・再配置には、情報を読みやすくするだけでなく、内容を考え直させ、記憶を強める働きがあると考えられる。 要約) デジタルノートに注釈を加えたり、情報を再配置したりする能動的な加工は、 単に情報を記録・閲覧するだけの場合と比べて、 内容の記憶を高める効果があることが示された。 11
  4. 先行研究❹:フラニガンら(2024)[Educational Psychology Review] ※ Nature系の出版元による学術誌 Typed Versus Handwritten Lecture Notes

    and College Student Achievement: A Meta-Analysis タイピングと手書きの講義ノートが大学生の学習成績に与える影響:メタ分析 概要) 分析:大学生3,005名を含む24研究を統合し、講義ノートの「タイピング」と「手書き」を比較。 ノートの記録量と、内容の理解・記憶を含む学習成績への影響を分析。 結果:記録量はタイピングが優位(効果量 g=0.919)。 一方、学習成績は手書きが優位(g=0.248)。いずれも統計的に有意(p<.001)。 また、ノートを復習する機会があると、手書きの学習成績上の優位性が強まった。 著者らの示唆:記録量の多さが、そのまま学習成果の高さにつながるわけではない。 手書きでの言い換えや図示などが、理解や記憶を助ける可能性がある。 要約) タイピングは手書きよりも多くの情報を記録できる一方、 学習成績では手書きが優位であり、記録量の多さが必ずしも 学習成果の高さにつながらないことが、メタ分析によって示された。 12
  5. 授業内の15分発想課題で比較 ⚫ 大学生 89名 (東北工業大学、長町キャンパス) ⚫ 2026年4月23日|15分 ⚫ 発想のお題:「2030年の自動販売機」 ⚫

    3方式は自己選択 幸運にも、大まかに1/3ぐらいずつになった。 ⚫ 利用するAIモデルは 各自が使い慣れたもの 18
  6. 「創造性が高まった」という実感に、3方式の有意差はなかった 5件法による自己評価(平均値) • • 高回転対話 3.47 • デジタル摘録 3.75 •

    手書き記録 3.71 • p = .472 3群間に統計的な有意差なし (p = .472) ※ Kruskal–Wallis検定、有意水準5% 21
  7. 「思考の飛躍度」の自己評価は、デジタル摘録群が最も高かった 5件法による自己評価(平均値) • 高回転対話 3.71 • デジタル摘録 4.17 • 手書き記録

    3.45 • p = . 087(5%有意水準にあと一歩届かず) • 観察事実: 3群の平均値は異なり、デジタル摘録群が最も高かった。 • 統計的判断: その違いについて、5%水準の有意差は確認されなかった。(3群比較:p = .087) • 解釈: 今後の研究で検証する価値のある探索的な結果である。 22
  8. 「翌日語れる自信」の自己評価は、手書き記録群が最も高かった 5件法による自己評価(平均値) • 高回転対話 2.65 • デジタル摘録 2.79 • 手書き記録

    3.26 • p = .090 (5%有意水準にあと一歩届かず) • 観察事実: 3群の平均値は異なり、手書き記録群が最も高かった。 • 統計的判断: その違いについて、5%水準の有意差は確認されなかった。(3群比較:p = .090) • 解釈: 今後の研究で検証する価値のある探索的な結果である。 今回は【翌日実際に記憶していたか】ではなく、【「語れる自信」の自己評価】である。 25
  9. 約20名への口頭確認でよく現れた値。 非系統的な補足観察。統計データではない A 画面でラリー B コピペ&マーカー C 紙へ手書き 画面内で、そのまま AIとの対話を続ける

    人間が「拾う、塗る、打つ」 ひと手間を入れる 出力を眺め、 単語や着想を自分の手で書く 15往復 12往復 2~3往復 15分間の アイデア出しで: 27
  10. (C)「狙う効果」で、スタイルを使い分けるべきかも ⚫ 高速に刺激を得る ⚫ 発想が飛躍する ⚫ かすかな光を見失わない ⚫ 熱量をもって語れる ⚫

    (今回の実験では計測していない、精緻化系も) ― 今後、AIアイデアワークのスタイルごとに、メリットがある。 (デメリットもある)。 40
  11. AI → 摘録 → 人間の思考 → 再びAI AI ↓ デジタル摘録

    ↓ 人間の判断・連想・派生案 ↓ 再びAIへ ― 一方向の保存ではなく、思考の循環 50