セロ弾きのゴーシュ 吾輩は猫である。名前はまだ無い。 どこで生れたかとんと見当がつかぬ。 何でも薄暗いじめじめした所でニャー ニャー泣いていた事だけは記憶してい る。吾輩はここで始めて人間というも のを見た。しかもあとで聞くとそれは 書生という人間中で一番獰悪な種族で あったそうだ。 この書生というのは時々我々を捕えて 煮て食うという話である。 ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾 く係りでした。けれどもあんまり上手 でないという評判でした。上手でない どころではなく実は仲間の楽手のなか ではいちばん下手でしたから、いつで も楽長にいじめられるのでした。 ひるすぎみんなは楽屋に円くならんで 今度の町の音楽会へ出す第六交響曲の 練習をしていました。トランペットは 一生けん命歌っています。 走れメロス 蜘蛛の糸 メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴 虐の王を除かなければならぬと決意し た。メロスには政治がわからぬ。メロ スは、村の牧人である。笛を吹き、羊 と遊んで暮して来た。けれども邪悪に 対しては、人一倍に敏感であった。きょ う未明メロスは村を出発し、野を越え 山越え、十里はなれた此このシラクス の市にやって来た。メロスには父も、 母も無い。女房も無い。十六の、内気 ある日の事でございます。御釈迦様は 極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら 御歩きになっていらっしゃいました。 池の中に咲いている蓮の花は、みんな 玉のようにまっ白で、そのまん中にあ る金色の蕊は、何とも云えない好匂が、 絶間あたりへ溢て居ります。極楽は丁 度朝なのでございましょう。 やがて御釈迦様はその池のふちに御 佇になって、水の面を蔽っている蓮の D E R A - D E S I G N T o y a m a D e s i g n S t u d y G r o u p