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AIカンパニーへの転換を支えた、エンジニアの仕事の再定義

 AIカンパニーへの転換を支えた、エンジニアの仕事の再定義

木村 秀夫(株式会社ナレッジワーク 上級執行役員 SVP ソフトウェアエンジニア)

※2026/10/16開催「AI×開発組織Summit 2026」での登壇資料です
https://ai-dev-org-summit.findy-tools.io/2026

<概要>
ナレッジワークはSaaSからAIカンパニーへと大きく舵を切りました。その事業転換を支えたのは、Agentic Codingを起点とする開発組織の変化です。実装がボトルネックでなくなり、エンジニアの役割と組織構成を再設計。この変化が事業の求めるFDEチームの迅速な立ち上げにつながりました。本セッションでは1年半の意思決定を、意図した設計・偶然の接続・未解決の課題に分けて解説。事業と組織の変化が結びついた過程をひもとき、AI導入の先にあるエンジニアの役割と組織設計、事業へのインパクトを共有します。

<プロフィール>
1996年、現GMOインターネットグループ株式会社入社。開発業務に従事。2009年、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。 2013年から執行役員に就任、システム&デザイン本部長を務める。2018年、株式会社メルペイ入社。VP of Engineering に就任。事業立ち上げ時からエンジニア組織マネジメント業務に従事。2023年、株式会社ナレッジワーク入社。

https://x.com/hidek

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Transcript

  1. About Me 木村 秀夫 | ナレッジワーク 上級執行役員 SVP of Engineering

    略歴 1996年 現GMOインターネットグループ株式会社入社、開発業務に従事 2002年 有限会社コアソリューション立ち上げ、受託開発事業を運営 2008年 株式会社 KDDIウェブコミュニケーションズ入社、開発業務に従事 2009年 株式会社ディー・エヌ・エー入社、開発業務に従事 2013年 同社執行役員に就任、システム &デザイン本部長を務める 2018年 株式会社メルペイ入社、執行役員 VP of Engineering に就任、エンジニア組織のマネジメント業務に従事 2021年 株式会社メルコイン 執行役員 VP of Engineering を兼任、エンジニア組織のマネジメント業務に従事 2023年 株式会社ナレッジワーク入社、上級執行役員 VP of Engineering に就任、エンジニア組織のマネジメント業務に従事 © Knowledge Work Inc. 2
  2. AIを導入しても、企業レベルの成果実感ができない 80% 37% 6% AI利用により 個人の生産性は向上している AI利用がEBITに影響したと 回答した企業は去年と同水準 AIの活用で高い企業成果を 上げている企業はごくわずか

    出典:McKinsey「The state of AI in 2026: On the road to ROI」(2026年8月、1,719名・97カ国) AIの利用により個人の生産性は上がっても、 企業利益に貢献できている組織は 4割に届いていません © Knowledge Work Inc. kwslide-external-260814-fc28d311 4
  3. ナレッジワークの場合 — 生産性が動いた後に、開発組織で起きたこと 「6%側に入れたか」という話ではありません SaaSからAIカンパニーへ転換した会社の VP of Engineering として、 この1年半を話します

    私たちも開発生産性が上がり、仕事のやり方も、事業も大きく変わりました その間、開発組織で何が起きたのか 成功談ではなく、「設計できたこと」 「偶然だったこと」「道半ばのこと」に分けて話します © Knowledge Work Inc. kwslide-external-260814-fc28d311 6
  4. ナレッジワークとは — 事業を広げ、 AIカンパニーへ Before(2020年〜2025年) After(2026年〜) セールスイネーブルメントクラウド セールス AIエージェント ▶

    単一のSaaS事業を3つの事業へ広げ、 AIカンパニーへ変貌を遂げました © Knowledge Work Inc. kwslide-external-260814-fc28d311 8
  5. 2024年末の開発組織 — 当時の4つの前提 成長の前提 速さは人数で買う 開発プロセス 手戻りは要件定義で防ぐ 開発組織 品質は分業で守る AIの段階

    AIは一部の人が試験的に使うもので、開発全体では使っていなかった 速さは人数で、手戻りは要件定義で、品質は分業で守る ごく普通の SaaS開発組織でした © Knowledge Work Inc. kwslide-external-260814-fc28d311 9
  6. 三つの変更で、 4つの前提を入れ替えた 2024年末の前提 2026年の前提 ① 個人の生産性 AIは一部の人が試験的に使うもの 全員がAIで書く ② 開発プロセス

    手戻りは要件定義で防ぐ 作って確認する ③ 開発組織 品質は分業で守る 分業ではなく少人数が 領域をまたいで作る 結果 速さは人数で買う 同じ速度を少人数で回す まず全員が AIで書く状態にし、次にプロセスと組織を 同時に変えて、同じ速度を少人数で回せるようになりました © Knowledge Work Inc. kwslide-external-260814-fc28d311 11
  7. ① 個人の生産性の向上 — まずは使うこと自体を目的にした 狙い 使うか使わないかの議論を終わらせ、全員がツールとして使い始める状態に する やったこと 2025年4月に1人10PR/月をAIで生成、という目標を立てた 指標の移行

    全員が使い始めた後に、 AI支援PR比率へ指標を移した 個人の成果 2026年7月時点で、一人当たり PR数は約3倍〜4倍、 AIとの共著率は 70〜80%に個人の生産性は確かに上がった 見えた限界 個人のPRは増えたが、待ち・引き継ぎ・手戻りに吸収され、 チームの速さにならなかった 本質的でない指標が、ツールとして使い始めるきっかけを作りました © Knowledge Work Inc. kwslide-external-260814-fc28d311 13
  8. ② 開発プロセスの変更 — 作って確認する方が早い AI Coding Agent以前 AI Coding Agent以後

    前提 開発に時間がかかるので 手戻りがないよう 要件定義を厚くする 多少の手戻りがあっても 作って確認する方が早い 仕様の主語 PdMとの仕様合意から開発を始める Engの仕様主導・プロトタイプから POの仕様承認へ デイリー ミーティング 仕様合意の場 成果物確認の場 個人の速さをチームの速さに変えるには、 プロセスの前提を変える必要がありました © Knowledge Work Inc. kwslide-external-260814-fc28d311 14
  9. ③ 開発組織の変更 — 分業から領域をまたぐ少人数チームへ 分業で1機能を回す 少人数で同じ速度を回す ・1チーム7名:BE4+FE2+QA1 ・BE→FE→QAと工程を渡して作る ・引き継ぎの待ちが速さを吸収 ・1チームはエンジニア

    1〜3名 ・1人が領域をまたいで作る ・新しい役割を担える人が生まれる 同じ速度を、より少人数で回せる組織になりました © Knowledge Work Inc. kwslide-external-260814-fc28d311 15
  10. 意図した設計の到達点 — 仕事は再定義されたが PLはまだ動いていない 到達した状態 ・全員が AIで書く ・作って確認する開発プロセス ・同じ速度を少人数で回せる組織 仕事の再定義

    ・仕様を実装する人から、自分で仕様を決め、作って確認し、 顧客の現場まで届ける人へ 起きていないこと ・PLには何も起きていない ・少人数で回せるようになった分の、挑戦の場がなかった 設計で作れたのは「動ける状態」までです その先は、開発組織の中からは出てきませんでした © Knowledge Work Inc. kwslide-external-260814-fc28d311 16
  11. 接続の瞬間 — 何が起きたか( 2026年1月) 事業側 ・AXコンサルティング事業を発表 ・顧客ごとに実装する FDEが必要に ・採用で集める時間はなかった 開発組織側

    ・プロセスと組織を変えていた ・同じ速度を少人数で回せていた ・新しい役割を担える人員が生まれていた ・B2B事業ということもあり もともと顧客との距離が近かった 事業の要求と開発組織の準備が、同じ四半期に揃いました © Knowledge Work Inc. kwslide-external-260814-fc28d311 18
  12. 分かれ道 — 少人数で回せるようになった分を、どこに向けるか 既存事業の積み残し PLインパクトの 大きい新規事業 ・やりたかったが後回しだったこと ・自然に任せるとここに流れる ・PLにはインパクトしない ・AXコンサル事業の担い手

    = FDE ・社内のエンジニアで立ち上げた ・新しい売上ラインに直結する 既存事業の積み残しではなく、 PLインパクトの大きい挑戦の場に向けました © Knowledge Work Inc. kwslide-external-260814-fc28d311 19
  13. 道半ばのこと — 生産性と仕事の再定義の、まだできていない部分 何が起きているか いま試していること 生産性 実装以外が ボトルネックに 実装は短くなったが、 レビュー・検証など

    人に依存する工程で 全体が間延びしている AIレビューの導入と 新しいQAプロセスの導入 仕事の再定義 アンラーンへの躊躇 働き方が変わる中で、 積み上げた専門性を手放す挑戦に 躊躇し、挑戦できている 実感を持てない人が一定いる 今期OKRに「チャレンジ前進率」 一人ひとり挑戦を一つ決め、 1on1で振り返る 仕事の再定義 AIを前提にした育成 ジュニアが実装で鍛えられる経路が 細くなり、仕様を決める力・ 顧客を知る力をどう育てるかが未設計 今のところ、解がない 生産性も、仕事の再定義も、まだ途中です 結果が出たらまた話します © Knowledge Work Inc. kwslide-external-260814-fc28d311 22
  14. 1年半を振り返って — 個人の生産性から、企業の成果まで 個人の生産性が 上がった 動ける状態を 作った 挑戦の場に 向けた 企業の成果に

    届いた 一人当たりPR数 約3倍〜4倍 AI共著率70〜80% プロセスと組織を 同時に変えた 既存事業の 積み残しではなく FDEという新たな挑戦へ AXコンサルティング 事業が立ち上がった 〜個人の生産性向上を実感したのは 80%、企業の成果に届いたのは 37%〜 私たちの1年半は、この二つの数字の間を埋める期間でした 個人の生産性は上がりました 企業の成果に届いたのは、向上した生産性を 挑戦の場に向けたときでした © Knowledge Work Inc. kwslide-external-260814-fc28d311 24