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ビットコインと現代美術はなぜあれほど高値で取引されるのか?

 ビットコインと現代美術はなぜあれほど高値で取引されるのか?

ESPlab 3rd Project "The Consensus" で話した内容です。
https://the-consensus.info/

ビットコインをまったく知らない方が多かった関係から、あえて技術の話はほとんどしていません。

Masahiko Hyuga

July 20, 2019
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Transcript

  1. ビットコインと現代美術はなぜあれほど高値で取引されるのか? 2019年7月18日 @AI KOKO GALLERY 自己紹介 日向 理彦 (ひゅうが まさひこ)

    一般社団法人 日本仮想通貨交換業協会 (JVCEA) 技術委員会 専門委員(※金融庁公認の自主規制団体) 一般社団法人 日本仮想通貨ビジネス協会 (JCBA) セキュリティー部会 部会長 2008年4月に東京大学理科一類に現役合格。 2012年3月、同大理学部物理学科を卒業。同大総合文化研究科修士課程へ進学し、長距離相互作用のある系の 熱力学・統計力学的性質の研究により修士号を取得。同大博士課程在学中にビットコインと出会い、その理論的斬新さや革新性に惹かれ次第にのめり込んでい く。 2014年1月から開始された国内初のビットコイン・クローン (オルトコイン)である「Monacoin」の取引所の開発・運営を行い、それを皮切りに採掘プール、ウォレット など様々なサービスの設計・開発を一人で行う。その後、事業規模の拡大に伴い合同会社ジャノムを立ち上げ代表として就任。暗号通貨を中心とした技術コンサ ルティング・システム開発・技術提供などを行っている。主なサービスおよび活動は以下の通り。 • コインギフト ... ビットコイン決済のできる ECサービス。各種ギフト券やビットコイン関連グッズ (ハードウェアウォレット、ステッカー )の販売などを手がけてい る。 • CoinTip (コインチップ) ... Twitter 上でビットコインを送金できるサービス。有名人に小額のチップを送ったり、友達との割り勘の支払いなどに利用できる。 (※株式会社セレス様との共同開発プロジェクト ) • ブロックチェーン大学校 (株) 講師 ... ビットコイン・ブロックチェーン人材の育成を行っている。 • Sobit (ソビット) ... プリペイドチャージ式携帯電話にビットコインでチャージできるサービス。世界 137ヶ国に対応し、金融インフラが未整備な途上国などに 対しても実質的に送金が行えるようになる。 (※株式会社セレスとの共同開発プロジェクト ) • 暗号通貨読書会 ... ビットコイン関連の技術系の勉強会を創設・運営。 (月二回開催)
  2. ビットコインと現代美術はなぜあれほど高値で取引されるのか? 2019年7月18日 @AI KOKO GALLERY 従来の電子マネー 現在一般的に用いられている “電子的な おカネ (電子マネー)”

    (銀行の口座残高、 Suica、Edy、nanaco、各種ポイントなど)は必ずこれを管理する信頼のおける中央集権 的な組織が存在する。 そのため、何か不正な取引が行われた場合には、これを調査し、必要に応じて一度確 定した送金をキャンセルさせる必要がある。これには人的コストがかかるため、送金額 にこのコストを上乗せしなければならず、送金手数料が高くつく(国内銀行送金 200〜 400円、国際送金 3,000円〜6,000円、クレカ 3〜7%)。 そもそも銀行口座を持てない人々が発展途上国を中心に多数存在する。
  3. ビットコインと現代美術はなぜあれほど高値で取引されるのか? 2019年7月18日 @AI KOKO GALLERY ビットコインの現在 2009年にビットコインの公式クライアント (Bitcoin Core) がリリースされてから約

    10年が経過。 2014年の Mt. Gox 事件で世間から注目を(悪い 意味で)浴びた。日本では 2017年4月にいわゆる 「仮想通貨法」が施行され、金融事業者が法律の お墨付きのもとで交換所を運用できるようになっ た。2017年末〜2018年初頭に仮想通貨バブルが 起き、多数の個人投資家が参入。いわゆる「出川 組」。2020年には名称を仮想通貨⇨暗号資産とし、 交換業者だけではなく、顧客コインを預かる事業者 全てが規制対象に。 ビットコインを技術的に改良した「オルトコイン」が 多数(数千種類)登場している。 【イーサリアム (Ethereum)】ブロックチェーン上に契約情報をプロ グラムする(スマートコントラクト)ことで、信頼でき る第三者を必要とせずに契約が実行できるプラット フォーム。【リップル (Ripple)】基軸通貨「XRP」を 媒介することで、様々な通貨やアセットを高速かつ 安全に送金できる支払いシステム。 https://coinmarketcap.com/ ブロックチェーンをおカネ以外へ応用しようとする 動きもある。ゲーム、著作権管理、生産者情報管 理などなど。
  4. ビットコインと現代美術はなぜあれほど高値で取引されるのか? 2019年7月18日 @AI KOKO GALLERY 「デジタル」ゴールド ビットコインの新の革新性は「256ビット長の整数に無限の価値を溜め込むことができ る」というところにあると考えられている (Store of

    Value; SoV)。 「発行量が限られている」「偽造がほぼ不可能」「劣化しない」などの性質を持つことから デジタルゴールドなどと言われることもある。 国家などの第三者機関を必要とせず※、直接価値を溜め込むことができるものはゴール ドやプラチナなどの貴金属くらいだが、これ以外の資産としてビットコインが仲間入りし た、と捉えることができる。 ※株は裏付けをする企業が存在し、土地も国家権力による保証(土地登記)が必要。
  5. ビットコインと現代美術はなぜあれほど高値で取引されるのか? 2019年7月18日 @AI KOKO GALLERY 社会的有用性 • 基本的な原理については数学(暗号理論)によって裏付けされており、数学的に攻 撃が難しいことを証明できる ◦

    貴金属のように真贋鑑定は必要ない ◦ 国家レベルのハッカーでも攻撃は事実的に不可能 • 銀行口座のように審査という概念はなく、誰でも利用可能 ◦ 特に後進国では銀行口座を持てない人 (unbanked) が大量におり、金融へのアクセスの唯一の手 段となり得る • 海外送金と比較すると…… ◦ 送金が速い(10〜60分) ◦ 手数料が安い(100〜400円程度) • デフレ型コインのため、価値が下がりにくい(≒上がりやすい)
  6. ビットコインと現代美術はなぜあれほど高値で取引されるのか? 2019年7月18日 @AI KOKO GALLERY ブロックチェーン 非中央集権型電子マネーを実現するためにビットコインの一要素技術として発明された「ブロックチェーン」だ が、ビットコインを飛び出し、金融以外の分野でブロックチェーンを活用できないか模索されている。 ブロックチェーンを利用することで、データの改ざんが事実的に不可能なデータベースを構築することができる。 ⇨

    所有権や著作権の管理、生産者情報の管理、荷物のトラッキング情報の管理、土地や株券などの所有者情 報の管理 (Security Token Offering; STO) しかしながら、ブロックチェーン上のデータとブロックチェーン外部のデータの辻褄を合わせる部分(オラクル) ※ がどうしてもある程度中央集権的になってしまう、という課題を抱えている。 ※例えば、アートの所有権をブロックチェーン上で管理しようとした場合、ブロックチェーンは誰でも書き込みできるため、勝手に他人 の所有しているアートを登録できないように監視する仕組み(会社や団体)が必要。
  7. ビットコインと現代美術はなぜあれほど高値で取引されるのか? 2019年7月18日 @AI KOKO GALLERY 二大技術課題 【スケーラビリティ】 すべての取引データは全ノードにコピーされ保持さ れるため、取引量が多くなるとネットワーク帯域や ハードディスクが耐えきれなくなってしまう。

    ▪解決策 サイドチェーンやライトニングネットワークなどの、 いわゆる「セカンドレイヤー技術」が期待されてお り、ブロックチェーン本体への書き込み回数を大幅 に削減できる。他にも MimbleWimble や Schnorr 署名といった技術が期待されている 【プライバシー】 ブロックチェーン上のデータはすべて公開されてい るため、送金履歴などが全世界に筒抜けになって しまうため、商品購入履歴や給与情報などが推測 できてしまう。 ▪解決策 CoinJoin、Confidential Transaction、TumbleBit、 ゼロ知識証明関連の最新の研究成果 (e.g. zk-SNARK) の応用 (ZCash等) 。「受送金先」「コ イン枚数」の二つ(またはどちらか一方)を隠すた めに考えられた技術が多い。
  8. ビットコインと現代美術はなぜあれほど高値で取引されるのか? 2019年7月18日 @AI KOKO GALLERY 政治的リスク ビットコイン公式クライアント (Bitcoin Core) は

    Bitcoin Core Developers (通称、コアデ ブ) によりメンテナンスされている。しかし2017年ごろ開発やマーケティング方針などに 関して対立が起き「のれん分け」がなされ、Bitcoin (Core) と Bitcoin Cash の二つに分 裂。Bitcoin Cash はさらに Bitcoin Cash と Bitcoin SV に分裂。 また、ブロックチェーンのコンセンサスルールを変えるような変更を行うには、開発者間 での合意のみならず、マイナー(採掘者)の合意も得る必要があり、開発スピードに対す る大きな足枷となっている。(cf. SegWit)
  9. ビットコインと現代美術はなぜあれほど高値で取引されるのか? 2019年7月18日 @AI KOKO GALLERY レピュテーションリスク 【取引所からの盗難】 coincheck、Zaif、ビットポイントなどの取引所から 数十億円〜数百億円分もの暗号資産がハッキン グにより盗まれてしまうという事件が相次いでい

    る。 暗号資産のシステム自体の欠陥ではないものの、 ファンダメンタルズに重要な影響を及ぼす。 また、こうして盗まれた暗号資産が反社会的組織 へ流れ、その資金源となってしまう危険性がある。 【資金洗浄】 脱税や非合法活動によって作り出された資金を、 国外に退避させたり、資金洗浄を行うのに暗号資 産が利用されている。 暗号資産自体のイメージ低下により、ファンダメン タルズに重要な影響を及ぼす。 金融活動作業部会 (FATF) と呼ばれる国際組織 から警告が出されており、各国は暗号資産を利用 した資金洗浄対策に追われている。日本ではいわ ゆる「暗号資産法」が世界に先駆けて制定され、金 融庁による規制のもとで仕組みづくりが行われて いる。
  10. ビットコインと現代美術はなぜあれほど高値で取引されるのか? 2019年7月18日 @AI KOKO GALLERY 2020年以降のビットコイン(10歳〜) • スケーラビリティやプライバシーの問題につ いては、世界中の暗号研究者によって改善 案が研究されている。

    • ボラティリティについては、マージンや先物、 ETFなどにより流動性が上がっていけば小さ くなっていくと予想される。 • ハッキングなどによるレピュテーションリスク については、各国政府によるルール作りによ り逓減していくと考えられる。特に日本では 金融庁および金融庁認定自主規制団体によ り世界で最も厳しい規制が敷かれている。 こうした改善策が浸透していくにつれて投資家が 安心して暗号資産取引を行える環境が整ってい き、より多くの個人投資家や機関投資家の参入が 期待される。 発明からちょうど10年が経過したビットコインだが、 今後10年の間に、インターネットやスマートフォン が爆発的に普及していったように人々の生活に浸 透していき、ビットコインが「あたり前」の世界にな る可能性は否定し得ない。