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You Have Agency(サンキュー、Ruby)

You Have Agency(サンキュー、Ruby)

Rubyセミナー大阪での登壇資料です #raosaka2026

https://rubyassociation.doorkeeper.jp/events/197460

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Koji SHIMADA PRO

October 29, 2026

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Transcript

  1. Dave Thomasの11年ぶりの新作『シンプリシティ』 • 現場開発者に向けた考え方が書かれている • 原書の刊行は2025年 - AIによる変化が本格化する直前 - AIへの直接的な言及などはない

    → AI時代において読む価値は失われてしまったか? 訳者(本書を日本で一番読み込んだ人間)としては本書の核となるメッ セージは、AI時代だからこそ受け取るべきものだと考えています
  2. The AI Impact Report 2026 - LeadDev • 対象:エンジニアリングリーダー層が中心 •

    質問:AI開発ツールの導入は、チームのエンジニアリング能力にどう影響したか • 半数近く(42%)がチームの「AIなしでデバッグする力」が低下していると感じ ていると回答 AIを使った開発で、なぜ開発者のデバッグする力が低下するのか
  3. 認知的降伏(cognitive surrender) • 人による判断を残していても、AIの出力をそのまま受け入れ、自覚のないまま判断を 預けてしまう傾向 • 流暢で、自信ありげで、摩擦なく出力が届けられるときに起きやすい • AIを使わなかった人よりも、AIを使った人の方が自信が上がる Steven

    D. Shaw & Gideon Nave ”Thinking̶Fast, Slow, and Arti cial: How AI is Reshaping Human Reasoning and the Rise of Cognitive Surrender” (2026) fi 判断の形は残っているのに中身がない状態。認知的降伏は、そのときに人の内で起きていることに付いた名前。外から見た 姿に付いた名前が「ミート・プロキシ(meat proxy、生成AIの出力を、検証・理解せずにそのまま他者に中継する人)」
  4. なぜ『シンプリシティ』のメッセージがAI時代に響くのか Daveの課題意識 AI時代の課題 導入される制度やプラクティスとして「アジャイル」 が使われる 生成する役割としてAIが使われるようになっていく → 外側からやり方が与えられ、そこに作用できない ことで、仕事の進め方が、働きかけるものから、従う ものになってしまう

    → 内側で手を動かす機会が失われることで、仕事す る対象が、働きかけるものから、受け取るものにな ってしまう 仕事の進め方を支援・改善するために導入されたものが人と仕事の間に入り込み、 人が自分たちの仕事を動かしていく力を弱めてしまう
  5. Dance of Agency Andrew Pickering『The Mangle of Practice』 •人が世界に働きかけ、世界が返してくるものに応じて、人がまた働きかける。人の 行為主体性(agency)は、その往復の中で形を得ていくという考え方

    •ダンス…抵抗と調整の往復 抵抗(Resistance) 調整(Accommodation) 人は対象に働きかけるが、対象は必ずしも期待通りに は応じない 人はその結果を受けて、方法を変え、ときには目標 や意図も変えていく 人の行為主体性とは、与えられるものでも、元から持っている素質でもなく、 世界との相互作用の中で発揮され、育まれていく
  6. Railsとのダンス • Webについての知識・理解がまだ十分でなくても、最初はリードしてもらう所から ダンスを始められ…… • rails g や「設定より規約」、ARなどを通じて、できないことをやってくれる相手 • Railsが用意してくれたコードをいじり、自分でも書いてみて、rails

    c でアプリケー ションの状態を確認するという往復から、知識や理解を深めていき、気がついた ら、こちらがリードする側にも回れる関係に…… • 「できないこと」をやってもらっていた相手から、「できること」を任せる相手へ
  7. 手がかり https://www.geo reylitt.com/ 2 0 7 0 6 2 0

    2 ff 理解のために、AIとやり取りする / / /understanding-is-the-new-bottleneck.html
  8. できることを増やしていく 新しいダンスをAIとこれから • AIの方には人に選択や判断を放棄させるほうに向かうフォースがある • けれど、僕らは、何も持たずにAI時代に放り出されたわけではない • 道具に助けてもらいながら、自分で考えることも手放さない踊り方はすでに知っている • Rubyと同じようにはいかないもしれないけれど……

    RubyやRailsと踊った記憶も、その根源にあるMatzの哲学も、そして、Daveをはじめとする先輩たちが示してくれている踊 り方のヒント、そして先輩たちがコミュニティの中で踊ってきた“さま”も全て、全部私たちの中にあるから、私たちは大丈夫
  9. 参考文献 映画『サンキュー、チャック』(The Life of Chuck)マイク・フラナガン監督, 原作 スティーヴン・キング, 2024 Dave Thomas『Simplicity:

    Sustainable, Humane, and E ective Software Development』Pragmatic Bookshelf, 2025(邦訳『シンプリシティ― 持続可能かつ人間的で効果的なソ フトウェア開発』) David Thomas, Andrew Hunt 『The Pragmatic Programmer 20th Anniversary Edition』(邦訳『達人プログラマー 第2版』) Dave Thomas「Agile is Dead (Long Live Agility)」2014 GOTO Book Club「Simplicity」2025-06 JetBrains「How Much Code Do Developers Really Let Agents Write?」JetBrains Research Blog, 2026-08-26(Developer Ecosystem Survey 2026) Gregor Ojstersek「Good Culture is the Biggest Productivity Hack, Not AI」Engineering Leadership, 2026-08-24 DHH「Rails World 2026 Opening Keynote」2026 LeadDev「The AI Impact Report 2026」 Steven D. Shaw & Gideon Nave「Thinking̶Fast, Slow, and Arti cial: How AI is Reshaping Human Reasoning and the Rise of Cognitive Surrender」PsyArXiv preprint, 2026 Niklas Gruhn「Don't be a meat proxy」2026-08-03 Geo rey Litt「Understanding is the new bottleneck」2026-07-02 Andrew Pickering『The Mangle of Practice: Time, Agency, and Science』University of Chicago Press, 1995 島田浩二「A Ruby Programming Episode: Ruby is my glasses, my stationery, and my language」福岡Ruby会議02, 2017-11-25 ポール・グレアム『ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち』川合史朗 訳, オーム社, 2005 Dave Thomas, David Heinemeier Hansson ほか『RailsによるアジャイルWebアプリケーション開発』オーム社, 2006 Bill Venners「The Philosophy of Ruby: A Conversation with Yukihiro Matsumoto, Part I」Artima, 2003-09-29 David Heinemeier Hansson「The Rails Doctrine」 fi ff ff 角征典「サンキュー、XP」