計算機を用いた科学技術文書の読解には,数式内の1つ1つの記号の意味をグラウンディングできることが重要である.現実の科学技術文書においては数式内の記号の意味は必ずしも一定ではなく,同じ 記号が複数の意味で用いられるため,グラウンディングの際には記号間の共参照関係も明らかにする必要がある.本研究では arXiv.org から選んだ15本の科学論文を対象に,数式内の記号の共参照関係を明示的にアノテーションしたコーパスの構築を行った.その結果,数式内の記号の曖昧性は狭い範囲に絞っても存在するほど複雑だが,共参照関係は高いアノテータ間一致率を保ちながらラベル付け可能であることが示された.