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2年前に削除したPHPクラスが、 ある日突然決済をエラーにした

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July 20, 2026

2年前に削除したPHPクラスが、 ある日突然決済をエラーにした

2026/7/20 PHPカンファレンス2026 発表資料

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July 20, 2026

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Transcript

  1. 2 © 2012-2026 BASE, Inc. 氏名:加賀野 祐(ykagano) 所属:BASE株式会社    BASE Department Product

    Division 役割:シニアエンジニア(バックエンド) 趣味:お酒、旅行、キャンプ 2024年8月にBASE株式会社に入社 その前は以下の開発を経験してきました - 2009年〜:NET CASH - 2012年〜:WebMoney - 2017年〜:Yahoo!ウォレット、PayPay ykagano 自己紹介
  2. 6 © 2012-2026 BASE, Inc. 購入失敗は2件だけだった BASEはECなので、購入失敗は少ない件数でもサービスの根幹に関わる 絶対にケアが必要 → インシデント扱い

    同じ原因で何度もエラーが起こるかもしれないので、Slackのインシデントチャンネルを立てて共有 何が起きていたのか エラーはどこで起きていたのか DBに保存された 詳細データ をPHPのクラスに復元する処理 クラスの存在チェックに失敗して LogicException → 決済フローが停止
  3. 7 © 2012-2026 BASE, Inc. MukashinoDetail 犯人は「2年前に削除したクラス」 2024 昔のコードの一掃 クラス削除

    2年間の沈黙 エラーなし ・ 誰も気づかない ! 2026 突然の発火 決済エラー LogicException 削除したとき問題は何もなかった • grepで参照ゼロを確認 ✓ • テストはすべて通過 ✓ • コードレビューも通過 ✓ • リリース後もエラーなし ✓ それでも「時限装置」は仕掛けられていた
  4. 9 © 2012-2026 BASE, Inc. 決済が失敗した pending と同じ keyである failed

    の行には、クラス名がシリアライズされたまま残っていた DBには「遺物」が眠っていた key status detail 753190E46D820159 2023年・昔の決済 failed {"class": "MukashinoDetail"...} ← クラスは削除済み・復元できない 753190E46D820159 2026年・新規の決済 pending {"class": "ShinkinoDetail"...} 同じキーなのに並存できる (key は非UNIQUE) DBの中に眠る「遺物」 コードを消してもデータは残る 新規の key は作成時に以下の仕様で作られていた • 完了した決済なら key は重複しない • 失敗した決済は key の重複を許容する ← 今回はこのパターン
  5. 10 © 2012-2026 BASE, Inc. これまで新規の key 作成時に、削除済みのクラスと同じ key を引き当てることはなかった

    今回が初めての事象 単独では誰も悪くない実装が時間差で噛み合って「時限装置」になった 発火の瞬間に対象のkeyの検索が「壊れた行」まで一緒にロードしてしまった 2年越しのキー衝突 1 決済処理 keyで検索 2 同一 key の 全行をロード 3 クラスに 復元を試みる 4 クラス存在 チェック → 失敗 5 決済エラー ⚠ 削除済みクラスを参照 する行も混入 購入失敗    
  6. 11 © 2012-2026 BASE, Inc. key の生成には str_shuffle() を使用している エラーが発生する8日前のリリースで、key

    生成より前に mt_rand() を消費するコードが購入経路に入り、 乱数消費位置の分布が過去と重なった(テープの同じ位置から key を引き始めた) これにより衝突確率が跳ね上がったと想定される(不具合ではなく、DBでの key の重複は仕様通り) キーの衝突がなぜ突然起きたか 過去のリクエスト 83 17 52 96 41 08 75 29 63 34 90 12 57 … リリース前 83 17 52 96 41 08 75 29 63 34 90 12 57 … リリース後(今回) 83 17 52 96 41 08 75 29 63 34 90 12 57 … 事前に消費 key生成に使用(str_shuffle) key生成に使用 → 開始位置がズレていて衝突しない 新コードが消費(mt_rand) key生成に使用 str_shuffle() と mt_rand() は同じ seed(初期値) なら毎回同じ乱数列(=同じテープ)を返す テープの同じ位置から同じ並びを引く → 同じ key が生成される(衝突) 同じ seed
  7. 14 © 2012-2026 BASE, Inc. status でDBにフィルタをかけるようにした 壊れた行をそもそもロードしない Before DBから全行を取得

     PHP側で除外 ⚠壊れた行もロードされて爆発 $details = $this->detailMapper->find(key: $key); $unfailedDetails = array_values(array_filter($details, function (Detail $detail) { return $detail->getStatus()->includedIn(Status::unfailed()); })); After DBクエリの段階で failed を除外  必要な行だけ取得 ✓壊れた行はそもそもロードしない $details = $this->detailMapper->find( key: $key, statuses: Status::unfailed(), );
  8. 15 © 2012-2026 BASE, Inc. 今回の事象は、2年前に削除したクラスが、DBにシリアライズされて残っており、 新規の決済が同じ key を引き当てたことで、過去データの復元に失敗し、決済がエラーになったものです 「もう使われていない」をgrepだけで判断していませんか

    コードを消してもDBのデータは残る クラス名をシリアライズして保存する設計は時限装置になりうる 削除するときは「コードの参照」だけでなく「データの参照」も確認しましょう 皆さんの現場でも、同じ時限装置が眠っているかもしれません まとめ