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形式手法特論:公平性制約の位相的特徴づけ #kernelvm / Kernel VM Stud...
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y_taka_23
May 30, 2026
Technology
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形式手法特論:公平性制約の位相的特徴づけ #kernelvm / Kernel VM Study Kansai 12th
Kernel/VM 探検隊@関西 12 回目で使用したスライドです。
y_taka_23
May 30, 2026
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Transcript
形式手法特論 公平性制約の 位相的特徴づけ #kernelvm チェシャ猫 (@y_taka_23) Kernel/VM 探検隊@関西 12 回目
(30th May. 2026)
夏に向けて今からダイエット つまりは痩せる話をしましょう
はじめに:定義と記述の時代 • 仕様を「記述すること」への重心の移動 ◦ AI はそれらしい実装を高速・大量に生成できる ◦ 明示されたコンテキスト外の事情は汲んでくれない • 今後は仕様の「検証可能性」がより問われる時代に
◦ ニュアンスを定式化し、厳密に記述する技術 ◦ 機械的・確実に検証できるモデル検査や定理証明
理解は全てに先立つ そして理解とは記述である
並行システムと仕様 • 安全性:悪いことが決して起こらない ◦ 例「在庫数は決してマイナスにならない」 • 活性:良いことがいつか起こる ◦ 例「リクエストの後、いつかレスポンスが返る」 •
安全性と活性は両方検査して初めて意味がある ◦ 安全性だけだと「何もしない」も OK になる
Defining Liveness B. Alpern, F. B. Schneider (IPL 1985) https://doi.org/10.1016/0020-0190(85)90056-0
実行列のなす位相空間 • 状態を並べた無限列を考える • 実行列(通過した状態の履歴)の間に距離を定義 ◦ 先頭から何ステップ目まで一致しているか見る ◦ 長く一致している列同士は「近い」と考える ◦
実数の小数点表示における「近さ」と似ている • この定義により、実行列は位相空間をなす
S A B S σ_1 = A S B S
A S σ_2 = A S A S A S σ_3 = A S B S B σ_1 と σ_2 は 3 ステップ目まで同じ σ_1 と σ_3 は 5 ステップ目まで同じなので σ_1 と σ_2 より距離が近い
安全性の位相的定義 • 定義:安全性とは閉集合である • 実行列の言葉で言うと、 条件違反がある場合には、有限ステップまで見れば それが違反であることが確定する ような性質 • 例「在庫数は決してマイナスにならない」
活性の位相的定義 • 定義:活性とは稠密集合である • 実行列の言葉で言うと、 今までの実行列がどうだろうと、そこから後を 好きに選んでいいなら全体としては成立させられる ような性質 • 例「リクエストの後、いつかレスポンスが返る」
安全性-活性分解定理 • 任意の仕様を安全性と活性に分解できる素敵な定理 • 位相の言葉を利用した上手い定式化が背景にある 任意の仕様 P が与えられたとき、ある安全性 S と活性
L が 存在して、P は「S かつ L」と表現できる 定理(Alpern-Schneider, 1985)
代表的な公平性制約 • 弱公平性(weak fairness) ある遷移が生じ得る条件が常に成り立ち続けるなら、 その遷移は実際に無限回生じる • 強公平性(strong fairness) ある遷移が生じ得る条件が無限回成り立つなら、
その遷移は実際に無限回生じる
「いつか何かが発生する」なら 公平性と活性は同じなのか?
公平性 != 活性(1) • 例「A と B が共に無限回生じる」 ◦ 公平性っぽく、活性でもある
◦ 先頭部分に関わらず、その後 ASBS… を着ければ成立 • 例「ある時点以降、決して A が生じない」 ◦ 公平性っぽくないが、活性ではある ◦ 先頭部分に関わらず、その後 BSBS… を着ければ成立 S A B
公平性 != 活性(2) • 例「冒頭からずっと A と B が交互に生じる」 ◦
公平性っぽいが、活性ではなく安全性 ◦ ASA か BSB が出現した時点で違反確定 • 公平性は連言(かつ)について閉じていて欲しい ◦ 「A の公平性かつ B の公平性」も公平性っぽい ◦ 一般には活性(稠密集合)は共通部分に閉じない S A B
では公平性をどう定式化すべきか?
Defining Fairness H. Völzer, D. Varacca, E. Kindler (CONCUR 2005)
https://doi.org/10.1007/11539452_35
公平性の位相的定義 • 定義:閉包の内部が空な集合を疎集合と呼ぶ • 定義:可算個の疎集合の和を痩集合(meager set)と呼ぶ 公平性とはその補集合が痩集合(co-meager)な集合である 定義(Völzer-Varacca-Kindler, 2005)
なぜ co-meager として定義したのか?
公平性の位置付け • 公平性は「検査の前提」となることが多い ◦ スケジューラの公平性を「仮定した上」で、 並行プロセス実行について何かを検査したい ◦ つまり「典型的な実行例」は公平でありたい ◦ 逆に言えば、補集合は「例外的なエッジケース」
• この「例外っぽさ」「珍しさ」が痩(meager)に対応
例:有理数の Meager 性 • 有理数と無理数は、実数の中でともに稠密 ◦ 実数は有理数で小数点以下、任意精度で近似可能 ◦ 稠密性という意味では有理数と無理数は対等 •
しかし有理数は可算集合で、実数の中では「少数派」 • 有理数は痩(meager)集合、無理数は co-meager ◦ 1 点集合が疎集合なので、可算集合は痩集合
Co-Meager 性の直感的理解(1) • 「0 ステップ目以降、一回でも A が発生」かつ • 「1 ステップ目以降、一回でも
A が発生」かつ • 「2 ステップ目以降、一回でも A が発生」かつ • 「3 ステップ目以降、一回でも A が発生」かつ …… • =「A が無限回発生」
Co-Meager 性の直感的理解(2) • 公平性(っぽい)F を「事象 A が無限回発生」と定義 • A_n を「n
ステップ目以降、一回でも A が発生」と定義 ◦ A_n の否定は閉集合、つまり A_n 自身は開集合 ◦ A_n は稠密集合 • F は全ての n に関する可算個の A_n の共通部分 ◦ F は G_δ 集合で、かつ Baire 空間なので稠密
Co-Meager 性の直感的理解(3) Baire 空間において、集合 F が co-meager であることと、 ある稠密 G_δ
集合 E が存在し E ⊆ F となることは同値 命題(Baire 空間の定義から従う) • co-meager 性と「無限回発生」との結び付けの正当化 • なお可算個の co-meager な集合の共通部分も co-meager
本日のまとめ • 位相を利用した安全性と活性の定義 ◦ クリアな分解定理が成り立つ、上手い定式化の例 • 公平性は活性の一部だが、それだけだと条件不足 ◦ 明らかに公平性ではないものまで含まれる •
Völzer らが公平性を co-meager 性として特徴づけ ◦ 「無限回発生する」というニュアンスとよく合致
One does not simply fold fairness into liveness! Presented By
チェシャ猫 (@y_taka_23)