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人工知能を使った R&D 業務効率化・生産性向上のシステム作り

人工知能を使った R&D 業務効率化・生産性向上のシステム作り

研究開発業務の効率化・生産性向上のために人工知能を活用する際の考え方や注意点を、最近の動向、技術的な特性、実際の活用事例などを踏まえて説明します。

人工知能の成果は過熱するブームに便乗して喧伝されることが多いため、「何がどこまで実現できるか」を正確に理解することは、事実を整理しても難しい状況と言えます。そのため、人工知能に対して過大な期待を寄せたまま、対象業務の特性や要素技術の得意・不得意を把握せずに企画を進め、導入に失敗するケースが見られます。

研究開発の現場に人工知能を導入する際の取り組み方や、現在の人工知能関連技術の特性に基づく導入検討ステップを順番に説明します。

・いま人工知能が注目されている理由
・人工知能=ビッグデータに対する機械学習の適用
・ハイプサイクルに沿った「人工知能」のフェーズ
・今回の「人工知能ブーム」の傾向と今後の動向
・現在の人工知能でいま何がどこまでできるのか
・人工知能の活用事例
・人工知能ビジネス業界におけるプレイヤー
・人工知能の導入のための注意点
・知財関連業務に対する人工知能のインパクト
・特許調査と人工知能

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Hajime Fujita

April 13, 2018
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Transcript

  1. 会社概要・代表紹介 藤⽥ 肇 株式会社リジー 代表取締役 / 博⼠(⼯学) AIコンサルタント・⾔語化プロフェッショナル l 「⼈⼯知能

    冬の時代」 に機械学習を専⾨に博⼠課程を修了 「データサイエンティスト」 という⾔葉がなかった時代に機械学習 を⽤いたデータ分析者として活躍 l その後 AI 関連企業の経営企画チームに参画し CTO 直下で 全社的な経営課題の解決に向けてプロジェクトを統率 l 現在はベンチャー企業を中⼼に 経営者の参謀役として課題の ⾔語化から その解決に向けたコンサルティングや 課題解決型コ ンテンツの企画・制作などに携わる 商号 株式会社リジー 設⽴ 2017年12⽉1⽇ 所在地 141-0022 東京都品川区東五反⽥ いちご東五反⽥ビル3F
  2. 弊社の役割 1. コンテンツ企画型の課題抽出コンサルティングサービス 2. 企業における AI 活⽤に向けたコンサルティング 企画・マネジメント(設計する) 実務・スペシャリスト(運⽤する) 営業・財務

    など 研究・技術開発 など 技術戦略・知的財産 など 経営・事業企画 など AIの技術に関する素養がある側 ビジネスの運⽤現場を熟知している側 ビジネス (具体的・社会的) 技術・研究 (抽象的・学術的) サポートします 両者を繋いで 現場の意思決定プロセスをAIで合理化したい
  3. 本⽇のセミナーにおけるメッセージ 「AI 導⼊プロジェクト」 をとおして 真の 「働き⽅改⾰」 を 実現するためのヒントを持ち帰ること メインメッセージ 1.

    現時点における技術⽔準では AI は⼈間の仕事を全部代替で きない 2. 現在の AI を正確に理解し 正しく導⼊に取り組めば業務の⽣ 産性を底上げすることはできる 3. 「AI を導⼊する」 という過程そのものが 「働き⽅改⾰」 を進める 取り組みになるだろう サブメッセージ
  4. 本セミナーの章⽴て l なぜ AI がブームになっているのか︖ l なぜ各企業は AI の導⼊を急いでいるのか︖ l

    先⾏してどのような取り組み事例があるのか︖ など 現在の AI 活⽤の潮流を俯瞰して 全体像を把握する 第1章︓AI のリアルを知る l 導⼊までにどのようなステップがあるのか l 各ステップにおいてどのようなハードルが考えられるか など 導⼊に向けた⼿順の概略を理解する 第2章︓AI を導⼊する⼿順を理解する l これから AI はどうなっていくのか l 真の 「AI」 は実現するのか︖ l ⼈間に求められることはどのように変化するのか︖ など ポスト 「⼈⼯知能ブーム」 の先にあるものを予測する 第3章︓AI の未来を予測する
  5. ⼈⼯知能ブームの要因1 空前のコンピュータ環境の実現 1⼈が1台の⾼性能コンピュータを持ち歩く⽣活に変化した 5 10 15 20 25 30 35

    0 20 40 60 80 ⽇本における スマートフォン 普及率(%) トランジスタ密度 (ユニット/nm) 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 (予測) 出所︓総務省情報通信⽩書,国際学会IDEMのシンポジウムにおけるインテル基調講演の資料 スマートフォンの普及率とCPU性能(トランジスタ密度)との関係
  6. ⼈⼯知能ブームの要因2 ビッグデータの出現 コンピュータネットワークの発達で社会からビッグデータが発⽣ 0 2000 4000 6000 8000 8000 8500

    9000 9500 10000 出所︓総務省情報通信⽩書 インターネット 利⽤⼈⼝ (万⼈) データトラヒック (Gbps) 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 インターネット利⽤⼈⼝とデータトラヒックとの関係 ADSLの普及期 スマートフォンの普及期 AI/IoT の黎明期
  7. ⼈⼯知能ブームの要因3 ディープラーニングの普及 ビッグデータ分析で意思決定のプロセスを合理化したい → 「ディープラーニング」 が⼈⼯知能に対する期待を背負ってブームに⽕を付けた 「ディープラーニング」 と 「⼈⼯知能」 とのGoogle検索回数の関係

    0 20 40 60 80 100 120 0 5 10 15 20 25 「⼈⼯知能」の 検索数(右軸) 2014年 9⽉ 2018年 3⽉ 2016年 5⽉15⽇ NHKスペシャル 「⽻⽣善治 ⼈⼯知能開発の 最前線を訪ねる」 2016年 3⽉20⽇ Google 「アルファ碁」 イ・セドルに勝利 出所︓Googleトレンド (万回)
  8. これまでの 「AI ブーム」 との違い これまでのブーム(第1,2次ブーム) l アカデミック界隈で盛り上がっていた l 研究資⾦は政府が提供していた 今回のブーム(第3次ブーム)

    1. ⺠間が巨額を投資し ブーム牽引の主体 l 「学術的な興味」 ではなく 「社会の要請」 l ⼤量のデータ・情報を知識・知恵に昇華することに 社会的なニー ズが⼤きく 「儲かる成⻑産業」 に成⻑ l 世界的な超低⾦利(特に ⻑期⾦利が低下) 2. 投資と技術の好サイクル l 技術が資⾦を呼び 資⾦が技術を加速させる l ⼿軽なプラットフォームがインターネット経由で普及し 参加者の 裾野が爆発的に広がる
  9. 各企業が AI の導⼊を急ぐ理由 「AI 導⼊」 をとおして 「働き⽅改⾰プロジェクト」 を成功させるため l 少⼦化による⼈⼿不⾜

    l 経営環境の急激な変化 l 市場のグローバル化と新興国企業の台頭 などが背景にあるため 組織の効率性・創造性・躍動性を向上させて 競争⼒強化に繋げたい 経営課題 そのためには 「組織のあり⽅」 「既存業務の進め⽅」 にメスを⼊れなければならない l エンゲージメントの強化(社員満⾜度・定着率・帰属意識の向上 など) l ⼈材の最適配置と業務プロセスの刷新による経営効率の向上 これらをとおして 最終的には 「イノベーションが⽣まれる創造的な組織」 に作り替えたい 「AI で何かできないのか︖」 翻訳︓最新技術の導⼊を1つの契機として イノベーティブな組織に⽣まれ変われないか︖ 最終的な問いかけ 検討の過程
  10. ⼈⼯知能の応⽤事例1 島津製作所 「質量分析計のピーク検出」 を⾃動化 検 出 強 度 時間 検出強度の波形ピークは

    どこからどこまでか︖ 判定基準を⼈間が決めていた l 複数の成分のピークが重なった l 出⼒波形に雑⾳が載った うまくピーク検出できずに⼈⼿で修正 従来の課題 ⼤量にある過去の分析データで AI を 学習させて⾃動判定 誤判定率︓29% → 7% (ほぼ⼈⼿を使う必要がなくなった) 解決 出所︓⽇経コンピュータ 「AI導⼊の失敗則」 2017年12⽉21⽇号
  11. ⼈⼯知能の応⽤事例2 三菱重⼯航空エンジン 「研削加⼯時に発⽣する補正作業」 を⽀援 製造ロット 加⼯位置のズレ量 加⼯1回のズレ量 (破線は AI の予測)

    運⽤上の 許容範囲 l 多数のブレードを加⼯するうちに 研削の位置ズレが⼤きくなる l 運⽤上の許容範囲を超えそうかど うかを作業者の経験に頼っていた 従来の課題 l 複数の予測モデルを次々と取り替 えながら許容範囲の超過を予測 l 超過が予測されたらアラート l 不良品率が半減した 解決 出所︓⽇経コンピュータ 「AI導⼊の失敗則」 2017年12⽉21⽇号
  12. ⼈⼯知能の応⽤事例3 検 出 強 度 時間 異常検出 正常時波形 (破線は測定値) ルネサスエレクトロニクス

    「半導体の加⼯⼯程における異常検出」 を⾃動化 出所︓⽇経コンピュータ 「AI導⼊の失敗則」 2017年12⽉21⽇号 l 半導体の製造⼯程においてセン サ波形から異常を検出したい l 波形の傾きなどの閾値を⼈間が 設定していた→虚報が多すぎた 従来の課題 l 異常検出に AI を⽤いたところ虚 報がほぼゼロに l 不良品が減り コストを1億円/⽉ 削減できた 解決
  13. 「⼈⼯知能」(AI; Artificial Intelligence)とは 「⼈⼯知能」 は もともと学術的な⽤語で 専⾨家でも定義がバラバラ 中島秀之 公⽴はこだて未来⼤学 学⻑

    ⼈⼯的につくられた知能を持つ実体 あるいは それをつくることに よって知能⾃体を研究する分野 ⻄⽥豊明 京都⼤学⼤学院情報学研究科 教授 「知能を持つメカ」 ないしは 「⼼を持つメカ」 溝⼝理⼀郎 北陸先端科学技術⼤学院⼤学 教授 ⼈⼯的につくった知的な振る舞いをするもの ⻑尾真 京都⼤学 名誉教授 ⼈間の頭脳活動を極限までシミュレートするシステム 掘浩⼀ 東京⼤学⼤学院⼯学系研究科 教授 ⼈⼯的につくる新しい知能の世界 浅⽥稔 ⼤阪⼤学⼤学院⼯学研究科 教授 知能の定義が明確でないので、⼈⼯知能を明確に定義できない ⼈⼯知能学会の歴代会⻑による 「⼈⼯知能」 の定義 出所︓「⼈⼯知能は⼈間を超えるか」(著者︓松尾豊,出版︓⾓川EPUB選書)
  14. ⼈間の知能の本質は 「⾒える化」 されていない ⼈間の知能を模倣するシステムは ブラックボックスとなる サイエンス 未知の事象を 「⾒える化」 すること 「⼈⼯知能」

    は 「⾒える化」 されていない 各学問領域で ⼈間の知能の本質は依然として⾒える化されていない → 「⼈⼯知能」 も⾒える化されていない → ⼈間の知能を模倣するシステムは ブラックボックスとなる ※⾒える化︓⾔語・数式などの客観的な形式で表現すること ⼊⼒ 出⼒ どのような過程を経ているかは不明 ⼊出⼒の関係のみを模倣する
  15. 従来の情報処理との違い 「ルールの書き出し」 から 「データを⽤いたモデルの最適化」 に変化 ⼊出⼒の対応関係を あらかじめプログラミングしておく → 想定外(プログラムしていない場⾯)の⼊⼒に対して何もできない 第2次

    AI ブーム︓エキスパートシステム(ルールベース) ⼊⼒データ 出⼒データ ⼊出⼒の対応関係(規則性)を獲得し 未知の状況にも応⽤する → 想定外の⼊⼒に対しても汎化性能を発揮できる 機械学習の発展 ⼊⼒データ 出⼒データ 1970年代後半〜 1980年代後半 1990年代前半〜 2010年代前半 出所︓情報機構 「初めてからの⼈⼯知能⼊⾨」 ⽴命館⼤学 ⾕⼝忠⼤先⽣による資料
  16. 「⼈⼯知能」 と 「機械学習」 との関係 ⼈⼯知能 ⼊⼒に対する出⼒が 「⼈間っぽい」 印象を与える情報処理の総体 機械学習 データを⽤いて学習モデルを最適化することにより

    有⽤となる情報処理の結果を得るための枠組み 下位概念 ニューラルネットワーク 機械学習における学習モデルの⼀種 ネットワーク構造を持ち ネットワーク間の重みを最適化する 下位概念 ディープラーニング ニューラルネットワーク(多層パーセプトロン)において 複数の中間層を持つもの 下位概念 ※藤⽥による定義です
  17. 機械学習は 「逆問題」 を解くための⼿段 順問題 原因から演繹的に結果を導く問題 逆問題 結果(データ)から帰納的に原因を推定する問題 無秩序なデータ 原因を推定して秩序化 未知のデータを処理

    どっちだろう…︖ 推測統計学(スプーン⼀匙で鍋全体の味を推測する)を中⼼とする 数理科学が学問的な基礎となる ※機械学習の話が全体的に⼩難しいのはそのせい
  18. 「⼈⼯知能」 と他の⽤語との関係 IoT センシングで環境から情報を取得 ネットワークで情報共有 AI 「⼈間っぽい」 印象を与える 情報処理を実⾏ ロボット・⾃動⾞

    など AIによる情報処理の結果として 制御される対象 ビッグデータ 巨⼤なデータの集合体 クラウドに置かれることが多い 出所︓決定版AI(著者︓樋⼝晋也,城塚 ⾳也,出版︓東洋経済新報社)
  19. ⼊出⼒の対応関係を獲得する ⼊⼒ 出⼒ この⼊⼒に 対しては この出⼒ 教師データ (⼊出⼒ペア) この⼊⼒に 対しては

    この出⼒ 教師データ (⼊出⼒ペア) この⼊⼒に 対しては この出⼒ 教師データ (⼊出⼒ペア) ディープラーニングは ⼊出⼒の関係(=関数)をデータから学習・近似する (関数近似,システム同定,回帰)
  20. ディープラーニングで何が変わったか ⼈間の仕事︓⼊出⼒の対応関係を あらかじめプログラミングしておく 第2次 AI ブーム︓エキスパートシステム(ルールベース) ⼊⼒データ 出⼒データ ⼈間の仕事︓出⼒が最適となる⼊⼒データの特徴を作り込む ⼈⼯知能冬の時代︓機械学習の発展

    ⼊⼒データ 出⼒データ 特徴 機械学習 ⼈間の仕事︓⼤量の学習データを集める 第3次 AI ブーム︓ディープラーニングの出現 ⼊⼒データ 出⼒データ ディープラーニング ⼈間が特徴を 作り込まなくても 規則性の精度が ⾶躍的に向上 (ただし⼤量の データが必要) 出所︓情報機構 「初めてからの⼈⼯知能⼊⾨」 ⽴命館⼤学 ⾕⼝忠⼤教授による資料
  21. 認識・分類のトップランナー l 中国のユニコーン企業 (⾮上場で時価総額1,000億円以上) l 数億件のデータでディープラーニングし 顔認識の精度は 99.5% で世界⼀※ l

    ⽇本法⼈センスタイムジャパンは ホンダと共同開発契約を締結し ⾃動運転の実現に向けて開発を進める l 「SNOW」 の顔認識技術は センスタイム製 ※ImageNet 主催の ILSVRC2016 の3部⾨で1位を獲得
  22. ディープラーニングが解ける問題 ー 予測 「⽻⽣さんは 過去この局⾯ではこう指した」 という関係を 棋譜からモデルを学習させ このモデルを⽤いて 未知の局⾯において 「⽻⽣名⼈はどう指すか︖」

    を予測する ▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △4四歩 ▲2五歩 △3三⾓ 次どう指す︖ ▲6⼋⾶ 確率︓0.324 ▲7⼋⾦ 確率︓0.134 ▲2四歩 確率︓0.082 ・・・
  23. 予測・制御のトップランナー l イギリス発の⼈⼯知能企業 2014年に Google に買収された l 「深層強化学習」 を開発し 2016年に囲碁

    の世界チャンピオンを破って⼀躍有名に l Google のデータセンターの冷却稼働を AI で最適化し 消費電⼒を最⼩化することによ り 40%以上のコスト削減を達成
  24. 「明確」 かつ 「評価容易」 なタスクに強い 結果が評価困難 結果が評価容易 規則性が明確 (説明可能・形式知) 規則性が不明確 (説明不可能・暗黙知)

    規則性は不明確・評価困難 (⾃然会話, 芸術) 規則性が明確・評価容易 (ゲーム, 物体認識, 制御) 規則性は不明確だが 結果は評価容易 (専⾨性の⾼い良否判断) 規則性は明確だが 結果は評価困難 (⽂書要約, 翻訳) パフォーマンス 出しやすい パフォーマンス 出しにくい データ 集めやすい データ 集めにくい
  25. 置き換わるのは 「ジョブ」 ではなく 「タスク」 ⼈⼯知能に対する⼀般の理解はその実態から⼤きく乖離している ディープラーニングが 全部よろしくやってくれる ⼀般の 理解 結果

    出⼒ データ ⼊⼒ 実態 データ ⼊⼒ 評価 分析 判断 ⾏動 結果 出⼒ ⼈⼯知能が 担える機能 (ここのみ︕) 判断・⾏動して 成果を出すのは⼈間 (当然ですが︕) 参考︓Mckinsey Global Institute「A future that works: Automation, Employment, and Productivity」
  26. 特許調査の例 特許調査のプロセス 業 務 ' 負 荷 * 難 易

    度 ' 累 積 発明の 把握 調査 ポイント の抽出 予備 検索 検索式 の策定 ⽬視 確認 特許 公報の 抽出 内容の 理解 判断 対策 脚注︓専⾨知識・経験に基づく藤⽥の主観的な印象による 「特許を調査する」 というジョブにおいて ⼈⼯知能が代替すべきタスクは2つ このタスクを軽減できれば 全体の負荷が⼤幅に軽減される → AI と相性もよいので代替が進んでいる
  27. AI 導⼊のメリット 第2のメリット 適材適所でうまく使えば ⽣産性を向上させる(意思決定の質・スピードを 向上させる)ことができる l 「データに基づく意思決定が重要だ」 という認識を広げることができる 第1のメリット

    業務プロセスの⾒える化が進む(プロセスエンジニアリング) l 属⼈的な暗黙知のまま運⽤されていた業務が 形式知化される l タスクの⾒直し(統廃合・最適化)が進む → 全社的に 「働き⽅を再考する」 という気運を醸成する ※ 最終的に 「AI を導⼊しない」 ということになってもOK
  28. 第1章のまとめ 第1のポイント l 「⼈⼯知能(AI)」 とは 単なる 「情報処理」 です 現時点における技術⽔準では AI

    は ⼈間の仕事を全部代替できません l AI の特性を理解し 「道具」 の正しい使い⽅を考えるのは⼈間です l うまく使えば 業務の⽣産性を⾼めることができます l 要するに 業務プロセスとのインテグレーションが重要です 第2のポイント l AI は 「魔法の杖」 ではありません(「⻘い⿃」 でもありません) メディアは ⼀握りしかない他社の成功事例を盛って煽るので 注意が必要です l ⼤量のデータがなければ 学習できません 「規則性が明確」 かつ 「パフォーマンスの評価が容易」 なタスクを特定しましょう
  29. AI の導⼊ステップ 次の5ステップで AI を導⼊する → 意思決定のプロセスを改善する(「⼈⼯知能を導⼊すること」 は⼿段) 課題化 (企画)

    設計 構築 運⽤ 1. プロセス全体を明確に定義 (プロセスエンジニアリングの発想) 2. AI 導⼊可能なタスクを特定 3. AI 導⼊の効果を評価・検証 (損益分岐点は事前に分からない,意思決定への寄与×重要度で評価) 5. 導⼊・運⽤ 4. プロトタイプ制作・実験・評価
  30. 他社におけるAI導⼊の標準ステップ 三菱UFJフィナンシャルグループが策定したAI導⼊プロセスの概要 出所︓⽇経コンピュータ 「AI導⼊の失敗則」 2017年12⽉21⽇号 AI活⽤を提案 課題・要件を 整理 実証実験の 要件定義

    実証実験と 評価 本格導⼊の 可否を判断 利⽤ 部⾨ AI ラボ AIが使える業務 を掘り起こし AI適⽤の妥当 性を⼀次評価 AI 活⽤計画プロセス AIラボの⽀援を受けて利⽤部⾨が進める 標準化したプロセスで現場とAIラボが計画・検証する 課題化(企画) 設計・構築 運⽤ l AI ラボが現場に⼊って AI が使える業務を掘り起こす(課題化が重要) l AI 適⽤の妥当性を⼀次評価し Go/Not Go を早めに判断する
  31. 課題化(企画)の段階 第1のステップ︓業務プロセスの解剖 既存の業務プロセスは l ベテランの暗黙知で全体が無意識に運⽤されている l 業務全体が⼤きな 「塊」 となっており タスクとして細分化されていない

    まずは 「塊」 を解きほぐし 業務プロセスを⾒える化(形式知化)する ※業務を⾒える化する取り組みが 「働き⽅改⾰」 の第⼀歩となる 第2のステップ︓タスクを特定する 「規則性が明確」 かつ 「パフォーマンスの評価が容易」 なタスクを特定 第3のステップ︓改善幅を評価する 何をどれだけ改善できそうか(改善幅)を評価する ※ただし、投資対効果(ペイするかしないか)は 正確には分からない 企画 設計 構築 運⽤
  32. 業務プロセスを解剖する ⼀万円以下の購⼊申請の決裁を⾃動化したい 担当 上⻑ 経理 購⼊申請 購⼊申請書 購⼊申請書 (承認済) 購⼊処理

    領収書 決裁 経理処理 従来の業務プロセス AI導⼊後の業務プロセス 担当 上⻑ 経理 購⼊申請 購⼊申請書 購⼊申請書 (承認済) 決裁 AI 1万円以下︖ 議事録と 照合 承認OK︖ 承認 承認 不可 購⼊処理 領収書 承認 NO YES YES 承認 不可 経理処理 参考︓⼈⼯知能システムを外注する前に読む本(著︓坂本俊之,出版︓C&R研究所) 企画 設計 構築 運⽤
  33. 解くべき課題を特定するフロー システム化 されているか︖ 業務全体の標準化を進めて コンピュータシステムを導⼊する されていない されている 定型か︖ ⾮定型か︖ 古典的なルールベース処理や

    洗練されたインターフェースで 解決可能 定型 ⾮定型 基本的に難しい (運⽤次第で可能性あり) 再現性がデータで 蓄積されているか︖ 機械学習アルゴリズムで 対応可能 ある ない 以下のフローに沿って解くべき課題を特定する 企画 設計 構築 運⽤ 購⼊申請を 上げるための 決裁システムがある 議事録に 記載されているかの 確認は⾮定型 (場合による) 議事録データが 蓄積されている
  34. 現在の AI の限界 限界1 100%の精度で正解することは技術的に不可能 ⼈⼯知能を⽤いても結果責任を果たせない場合がある 限界2 ⼈⼯知能が出した結果は基本的に説明できない (⼈⼿によるルールの書き出し から

    データに基づく学習 に変化したため) ⼈⼯知能が間違った場合に説明責任を果たせない 「結果責任・説明責任を果たせない」 という2つの限界がある 出所︓最強のデータ分析組織(著者︓河本薫,出版︓⽇経BP社) 企画 設計 構築 運⽤
  35. 2つの責任のバランス 結果責任の 果たしやすさ 説明責任の 果たしやすさ ⼯場における異常検出に AI を応⽤する場合 検知精度 60%

    80% l 検知精度が60%では 誤検出時に説明責任を果たせない l 現場に動いてもらえない l 結果責任も果たせない (60%の精度は0%と同じ) l 検知精度が80%あれば 誤検出があっても現場は動いてくれる (説明責任を果たす必要がない) l ⾼い確率で結果責任が果たせる 出所︓最強のデータ分析組織(著者︓河本薫,出版︓⽇経BP社) 企画 設計 構築 運⽤
  36. 投資対効果の予測は困難 以下の3点は 導⼊検討時には把握できない l 実際にどれくらいの精度が出せそうか l その精度を出すために どれくらいの学習データが必要となるか l 検討・試作・検証・再検討のフローを

    どれくらい繰り返す必要があるか ⾔い換えれば l ⽬標精度を設定しても それに根拠が伴わない l その精度を出すために必要となる⼯数の⾒積もりに信憑性がない 結局どうすればいいか l PDCA を⼩さく・早く回して 理想と現実との距離を常に測り続ける l 予算枠を超過することが分かった時点で 問答無⽤で損切りする l ⼈件費が⾼く 実は作業の積み上げでしかない業務を狙う 企画 設計 構築 運⽤
  37. AI を導⼊しやすいタスク(まとめ) 観点 条件 パフォーマンス (技術的可能 性の観点) 学習データを⼤量に収集可能 AI の出⼒結果の評価が容易

    責任の所在 説明責任と結果責任のバランスを取ることができる 経済的効果 (投資対効果 が出やすいかど うかの観点) ⼈件費の単価が⾼い 形式知化できる作業の積み上げが⼤半を占める その他 古い業務システムを使い続けている AI を導⼊しやすいタスクは 以下の条件のうち できるだけ多くを満たすもの 企画 設計 構築 運⽤
  38. ⼈⼯知能の応⽤事例1(再掲) 島津製作所 「質量分析計のピーク検出」 を⾃動化 検 出 強 度 時間 検出強度の波形ピークは

    どこからどこまでか︖ 判定基準を⼈間が決めていた l 複数の成分のピークが重なった l 出⼒波形に雑⾳が載った うまくピーク検出できずに⼈⼿で修正 従来の課題 ⼤量にある過去の分析データで AI を 学習させて⾃動判定 誤判定率︓29% → 7% (ほぼ⼈⼿を使う必要がなくなった) 解決 出所︓⽇経コンピュータ 「AI導⼊の失敗則」 2017年12⽉21⽇号 観点 条件 評価 パフォー マンス 学習データを⼤量に収集可能 ◎ AI の出⼒結果の評価が容易 △ 責任の 所在 説明責任と結果責任のバランスを取ることができる ◎ 経済的 効果 ⼈件費の単価が⾼い ◦ 形式知化できる作業の積み上げが⼤半を占める ◦ その他 古い業務システムを使い続けている × 企画 設計 構築 運⽤
  39. 設計の段階 第1のステップ︓アルゴリズムを選択する ターゲットとなるタスクを処理できる最適なアルゴリズムを選択する l 説明責任が重い場合(医療⽬的など)は 選択できるアルゴリズムの 幅は相当狭い l ディープラーニングにこだわらず あらゆる可能性を広く検討する

    ※ディープラーニングでなければならない課題は 全体の数パーセントに過ぎないと考えられる 第2のステップ︓学習データを集める AI の性能は データの質・量に左右される (データの作成も AI 開発の⼀部) 第3のステップ︓試作・試⽤する ⼩さくプロトタイプ化し すぐに現場で試⽤する ※結局 AI 導⼊は 「やってみないと分からない」 ことが多すぎるので まずは 「⼩さく試す」 ことが重要 企画 設計 構築 運⽤
  40. ⼈⼯知能の応⽤事例2(再掲) 三菱重⼯航空エンジン 「研削加⼯時に発⽣する補正作業」 を⽀援 製造ロット 加⼯位置のズレ量 加⼯1回のズレ量 (破線は AI の予測)

    運⽤上の 許容範囲 l 多数のブレードを加⼯するうちに 研削の位置ズレが⼤きくなる l 運⽤上の許容範囲を超えそうかど うかを作業者の経験に頼っていた 従来の課題 l 複数の予測モデルを次々と取り替 えながら許容範囲の超過を予測 l 超過が予測されたらアラート l 不良品率が半減した 解決 出所︓⽇経コンピュータ 「AI導⼊の失敗則」 2017年12⽉21⽇号 複数の機械学習アルゴリズム (線形回帰, SVR, 状態空間モデルなど)を 状況に応じて切り替えながら使⽤している 企画 設計 構築 運⽤
  41. データの作成 データマネジメントの課題が AI 導⼊の障壁となる場合がある 1. データの把握・⾒える化 l 必要なデータがどこにあるか分からない l 似て異なるデータが複数存在する

    l データの意味(定義)が分からない 2. データ統合 l マスタが整備されていない l トランザクションデータと関連付けられて いない l データの更新頻度が遅い 3. データの品質 l 部⾨・管轄によって 同じ意味でもID・ 名称・定義が異なる l データ・数値・型桁が正しくない l 現場の集計値と数値が異なる 4. データセキュリティ・ガバナンス l 個々業務・分析⽬的でバラバラ・個別 にデータを取得し、管理されていない l 個⼈情報等の取り扱いに不安がある 企画 設計 構築 運⽤
  42. 秘密情報なので外部に出せない AI の⼊⼒となるデータが秘密情報(顧客のデータなど)である l ⼊⼒データを社内で加⼯して開発会社に渡す l 開発会社のスタッフを社内に常駐させて開発を進める 企画 設計 構築

    運⽤ ⼊⼒データを社内で加⼯する場合 データベース ツールで加⼯ 教師データ 社内 開発会社 本開発 l 要件抽出 l 仕様策定 l 業務フロー作成 機械学習 ⼈⼯知能 システム作成 システム インテグレーション 業務改⾰に伴って外部からコンサルタントが⼊る場合や 開発会社が複数にまたがる ⼤型のシステム開発になると データの受け渡しの段階から困難が予想される 参考︓⼈⼯知能システムを外注する前に読む本(著︓坂本俊之,出版︓C&R研究所)
  43. 学習させてみるまで分からない 企画 設計 構築 運⽤ どこまで精度を出せるかは 実際にモデルを学習させるまで分からない 学習量 精度 当初の予想

    実際の精度 教師データを必死でかき集め 巨⼤な インフラを使って学習させたのに 運⽤ 可能な精度まで達しないことが 学習 させて初めて分かった… ウォーターフォールの開発は困難 ⼩さくプロトタイプ化し すぐに現場で試⽤する 計画 試作 試⽤ 設計 ⼩さく作って現場で試し そのデータを フィードバックして計画を⽴て直し 再 設計する……という PDCA のループを 細かく何度も繰り返す アジャイル形式の開発で進める
  44. 構築の段階 第1のステップ︓システムの実装・構築を依頼する l 「学習済みの AI システム」 を納品してもらう場合 1. ⽬標精度について 受発注の両者で合意する

    2. システム開発側に精度向上のインセンティブを持たせる l 未学習のシステムを納品してもらう場合(学習は⾃前で進める) 1. 納品後のテストから学習の進捗まで きちんとフォローが必要 2. バグと許容可能な動作とを 適切に切り分ける 第2のステップ︓テスト・検収する l テストの⽅法を⼯夫する 1. 適合率・再現率を⽤いた統計的な精度評価 l 検収の条件を⼯夫する 1. 成功保証(◦◦%の精度達成)を検収条件とするのは⾮現 実的 企画 設計 構築 運⽤
  45. 精度は検収条件にできない 企画 設計 構築 運⽤ どこまで精度を出せるかは 実際にモデルを学習させるまで分からないから l 精度を 「⽬標値」

    とする l ⽬標値に向けた精度向上に対してインセンティブを与える l 開発ステージごとに契約を分ける ⼀⽅で l インターネットで公開されているネットワークモデルを使う l 受け取ったデータを そのまま⼊⼒して 短時間学習させた l とりあえず 結果は出⼒されるので それを納品(精度は出ない) という事態を防げない 参考︓⼈⼯知能システムを外注する前に読む本(著︓坂本俊之,出版︓C&R研究所)
  46. 運⽤の段階 定着・フォロー・改善を徹底する 「AI システムが完成しました」 は 「スタート地点に⽴った」 だけ → 現場に使わせなければ 成果は出ない

    l 意⾒をよく聞いてボトルネックとなりがちな点を明らかにする l 導⼊⽬的や期待効果に対するユーザの理解を深める l ユーザのスキルに応じた丁寧な導⼊研修を⾏う など 地道な努⼒を継続する必要がある 企画 設計 構築 運⽤ 参考1︓最強のデータ分析組織(著者︓河本薫,出版︓⽇経BP社) 参考2︓チェンジ・ワーキング(著者︓平⼭信彦,出版︓翔泳社)
  47. 各段階の重要度 最初の 「企画(課題化)」 が 最重要 企画 (何を解くか︖) 設計 (どう解くか︖) 構築

    (どう作るか︖) 運⽤ (どう使わせるか︖) 重要度が⾼い プロジェクトの進捗 各段階で細かく PDCA を回す必要あり 脚注︓専⾨知識・経験に基づく藤⽥の主観的な印象による
  48. AI 導⼊失敗の典型パターン 企画 構築 設計 導⼊対象の業務が⼈⼯知能に適してい るか否かを⼗分に検討せずに企画を進め てしまった ⼈⼯知能の特性を理解した上で適否 検討のフローを標準化する

    失敗パターン 解決策 求められている要件に合っていない要素 技術を選択してしまった 各要素技術の得意・不得意を理解する ベンダーにデータだけ提供してシステム構 築を丸投げしてしまった 導⼊対象の業務とAI技術に精通した担 当者をユーザ側に⽴てる 運⽤ 導⼊して満⾜し、運⽤に⼗分な⼿間・コ ストをかけなかった 将来の運⽤を踏まえて全体設計を進め る 出所︓⽇経コンピュータ 「AI導⼊の失敗則」 2017年12⽉21⽇号
  49. AI と知的財産 クラウドの⽣データは保護されない プラットフォームを介してクラウドに⾃動集積される⽣データには 「創作性」 が 認められないため 「著作物」 としての要件を満たさず 著作権法で保護され

    ない AI で利⽤可能に編集されたデータベースは保護される 例えば 画像認識しやすいように エッジを抽出し 正解ラベルを付与するなどの 編集作業を介したデータは 著作権法で保護される 他社データで学習したモデルを他⽤途に転⽤できる 例えば A社から得たデータを⽤いてモデルを学習させ この学習済みモデルを A社の競合となる B社に販売しても 法律違反ではない
  50. 第2章のまとめ 第1のポイント l 最初の 「企画(課題化)」 が最も重要です l AI を 「適材適所の道具」

    として 「どこに使うか」 を ⼈間が正しく判断する必 要があります l 「どこに使うか」 に関しては 技術的可能性や経済合理性など いくつかの条件 を満たす必要があります 第2のポイント l 最後の 「運⽤」 が次に重要です l ⾼精度の AI を作れたとしても 現場で使ってもらえなければ意味がないため l 「新しいやり⽅」 を定着させる難しさは 普通のシステムを運⽤に乗せる場合 と変わりません
  51. 結局 「AI」 とは何なのか︖ 哲学的な回答 変化が激しく 不確実な社会において これからの最適な組織のあり⽅を 再考する1つのきっかけ AI の導⼊

    = 従来の仕事の進め⽅を覆すインパクトがある l 不確実な変化を受け⼊れる⼟壌が 組織に根付いているか︖ l AI を歓迎する⾵⼟が ⽇頃から醸成されているか︖ l 抵抗勢⼒と戦う気概のあるメンバーは多数揃っているか︖ l そもそも最初から導⼊の検討すらしない(ジリ貧パターン) l 中途半端に⼿を出してプロジェクトが座礁した(再チャレンジのハード ルが上がって やはりジリ貧パターン) ダメなパターン
  52. 今回のブームは本物か︖ 「有⽤な情報処理」 に対する需要はなくならない ⽇⽶でブームに対する違いが⾒られる l ⽶国︓ハイプサイクルの幻滅期を抜けて産業化する可能性 l ⽇本︓幻滅期を抜けられずバブルに終わるおそれ 出所︓林晋(著)「AIブームは本物か︖」2016年11⽉16⽇版 http://www.shayashi.jp/20161115tokyoVer20161116.pdf

    l 極端な意⾒に反応しない(メディアはいろいろと盛ってます) l あと数年で⼈間の仕事の⼤半は消滅する l AI って実はたいしたことないよね l 「AI」 という技術に過剰な期待を寄せることなく 「ツール」 として 適材適所に使うことが重要 l 「AI 導⼊」 をとおして 「働き⽅改⾰」 「組織変⾰」 を実現する l 技術的なブレークスルーであることは間違いないので 正しく理解し 正しく使えば 次の時代を迎えられる
  53. 真の⼈⼯知能は実現するのか︖ 理論 こうすればうまくいくはずだ︕ 理論的にはきっとこうだ︕ 実験 それは分かるんだけど 実際どうやって計算するの︖ ディープ ラーニング 突如彗星のように現れた

    「理論を実現する強⼒な武器」 それがディープラーニング︕ これさえあれば、今まで計算できなかった ことも計算できるし、結果もぶっちぎり ディープラーニングよりも汎⽤性・実現能⼒の⾼い アプローチは今のところ提案されていない 画像認識・⾳声認識・化合物の活性予測 などで従来を⼤きく上回る精度(2012) → ディープラーニングの席捲が続く ⾃然科学は 「理論」 と 「実験」 のイタチごっこ
  54. ⾛り始めた 「Beyond 100%」 の世界 実験 理論 実験 より⼈間らしい情報処理︕ より⾼度な実現︕ ディープ

    ラーニング 2018 Beyond 100% 2020〜 2030︖ 2035〜 2045︖ 第3次AIブーム終焉 第4次 AIブーム︖ 「認識率100%」 に意味はないことは 全員が理解している 学術界では 「ディープラーニングを超えた先」 としてどのようなパラダイムが 考えられるのかに関⼼が集まっている …が、スローガンだけ先⾏している状況で誰も答えに⾄る⽅向性すら⾒いだせていない × 「シンギュラリティ」 の予測に意味はない
  55. ⼈間に求められることは変化するか︖ ⼈間に求められることの質が急速に変化する l 「問題を解く」 より 「課題を発⾒する」 l 「答えを⾒つける」 より 「問いかけを作る」

    なぜなら 解く・⾒つけるは コンピュータが⼈間より圧倒的に速くできるから ⼈間が活躍する場は 「上流側」 に移動すると考えられる データ ⼊⼒ 評価 分析 判断 ⾏動 結果 出⼒ ⼈⼯知能が 担える機能 (今はここのみ︕) 技術が下流側を侵⾷する 参考︓ハーバードビジネスレビュー 2018年2⽉号 「課題設定の⼒」 「そもそも何を解く必要があるか︖」 を考える⼒(クリエイティブマインド)が問われる
  56. ⼈間に求められることが変化する例 1. 特許調査 2. 特許翻訳 3. ディスカバリ(⽶国における知財訴訟) 原⽂と翻訳⽂とのペアデータの⼊⼿が容易で研究開発しやすい ⽇韓はもちろん、⽇英ですら実⽤に堪える精度を発揮 リーガルテックの広がりにより訴訟コストが3分の1に低減

    「情報発⾒」は⼈⼯知能が最も得意とする分野の1つ 圧倒的な抽出精度で従来の調査フローを刷新する 4. 契約書の作成・チェック ライセンス契約などの複雑な契約書を⾃動で⽣成・チェック 次の4つの知財関連業務は AI の影響が⼤きい
  57. 特許調査の例(再掲) 特許調査のプロセス 業 務 ' 負 荷 * 難 易

    度 ' 累 積 発明の 把握 調査 ポイント の抽出 予備 検索 検索式 の策定 ⽬視 確認 特許 公報の 抽出 内容の 理解 判断 対策 「特許を調査する」 というジョブにおける⼈間のタスクは 上流(把握)・最下流(判断)に流れる このタスクを軽減できれば 全体の負荷が⼤幅に軽減される → AI と相性もよいので代替が進んでいる
  58. 真に取り組むべき課題 「AI の導⼊」 を⼀つのきっかけとして 「スクラップ・アンド・ビルド」 する組織変⾰に 対する⾵⼟醸成の重要性を 経営陣に理解してもらうこと l イノベーションの芽となるアイデアを⽣み出す⼈と

    そのアイデアに資源を注ぎこんで育てるという意 思決定権限を持つ権⼒者との間には 組織内で⼤きな距離が存在している l ⽇本の組織においては 何かイノベーティブなアイデアを思いついたとしても それを組織内で提案した り意⾒したりしにくい 「空気」 があるということです l 今現在の⽇本で起こっているのは 「スキルやノウハウの不良資産化」 だと⾔えます バブル期⼊社より上の世代が培ってきたスキルやノウハウのほとんどは 今後 10 年程度で無価値にな り 対処を怠れば間違いなく不良資産化することになります l 改善のためにフォーカスすべきポイントは 「組織⾵⼟」 しかないということです ポイントは 組織構成員の⾔動を変えられるかどうかという その⼀点にかかっています 上下間での情報流通がなかなか起こらないというのが問題の本質ですから 対処法はシ ンプルに⾔えば 組織の下層の⼈間は上層部に対してモノを申し 上層部の⼈間は 下 層の⼈間のモノ⾔いに対して⽿を傾けることができればいいということになります 「AI で何かできないのか︖」 翻訳︓最新技術の導⼊を1つの契機として イノベーティブな組織に⽣まれ変われないか︖ 最終的な問いかけ
  59. 本⽇のセミナーにおけるメッセージ(再掲) 「AI 導⼊プロジェクト」 をとおして 真の 「働き⽅改⾰」 を 実現するためのヒントを持ち帰ること メインメッセージ 1.

    現時点における技術⽔準では AI は⼈間の仕事を全部代替で きない 2. 現在の AI を正確に理解し 正しく導⼊に取り組めば業務の⽣ 産性を底上げすることはできる 3. 「AI を導⼊する」 という過程そのものが 「働き⽅改⾰」 を進める 取り組みになるだろう サブメッセージ
  60. 推薦図書(1) ⽇経コンピュータ(2017年12⽉21⽇号) AI 導⼊の失敗則 実験ばかり繰り返す 「AI 無限ループ」 の罠 専⾨知識のある記者が ⼊念な取材を⾏って

    書いたと感じられる渾⾝の導⼊事例が多い ハーバードビジネスレビュー(2015年11⽉号) ⼈⼯知能 機械といかに向き合うか 2年以上前の記事だが ヤフーCSO 安宅⽒の 記事が AI の本質を突いた普遍的な内容を含む 全体感を把握するために適した書籍
  61. 推薦図書(2) 最強のデータ分析組織(著︓河本薫) なぜ⼤阪ガスは成功したのか ⼤阪ガスの 「情報通信部ビジネスアナリシスセン ター所⻑」 がデータ分析の現場を描く 「AI 導⼊」 のリアルな現場を知ることができる

    最強の AI 活⽤術(著︓野村直之) 導⼊効果を最⼤化する AI ビジネスの書 AI の導⼊が必要となる理由から 実際に導⼊に 向けたプロセスまで リアルな実態を技術的な内 容に踏み込んで解説している 現場に 「AI を導⼊する」 ときのリアルを知るための書籍
  62. 推薦図書(3) 決定版 AI ⼈⼯知能(著︓樋⼝晋也, 城塚⾳也) AI を制する者が ビジネスを制する コンサルタントとして NTT

    データで 400 以上の導 ⼊プロジェクトに携わってきた著者が AI 導⼊の 実態と 業界の全体像を解説している ⼈⼯知能システムを外注する前に読む本 (著︓坂本俊之) ディープラーニングビジネスのすべて ⼈⼯知能システムの開発を外注する場合の特 殊性を解説している 現場に 「AI を導⼊する」 ときのリアルを知るための書籍