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無自覚にメンバーの心理的安全性を奪っていた経験から得た学び
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Toshikazu Ohashi
December 11, 2024
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Transcript
© GO Inc. 無自覚にメンバーの心理的安全 性を奪っていた経験から得た学 び 2024.12.11 大橋平和(Ohashi Toshikazu) GO株式会社
© GO Inc. 2 自己紹介(GO株式会社) GO株式会社 バックオフィス基盤3G グループマネージャー 大橋平和 •
タクシーアプリ『GO』のタクシー事業者様向けの管理画 面「GO管理画面」を開発するグループのマネージャー • 最近の趣味はランニング(フルマラソン完走2回) @Lighttiger2505
© GO Inc. 本日のアジェンダ 1. 前提: GO株式会社のグループマネージャーの仕事と責任 2. 事例: 無自覚にメンバーの心理的安全性を奪う
a. 失敗に気づくまで b. 無自覚にやっていた失敗行動 3. なぜ私は失敗してしまったのか 4. 失敗に気付いた私は何をしたのか
© GO Inc. 4 前提: GO株式会社の グループマネージャーの 仕事と責任 01
© GO Inc. • グループマネージャー歴はおよそ1年と7ヶ月 • メンバーは自分を含めて6名(業務委託など被評価者以外を含め9名) • マネージャーという役職はキャリアではじめて グループマネージャー歴
© GO Inc. • 中・長期(2〜3年)におけるグループのビジョンと戦略の立案 • 半期(半年)ごとメンバーの目標設定支援と評価 • メンバーの成長を助けるための内省支援 ◦
2週間ごとの30分の1on1 ◦ 日々の仕事のフィードバック • 採用計画と面接 グループマネージャーの仕事
© GO Inc. グループマネージャーの仕事 おおよそこのあたり
© GO Inc. 8 事例: 無自覚にメンバーの 心理的安全性を奪う 02.a 失敗に気づくまで
© GO Inc. • 過去に経験がないため評価のしかたは重点的に学習 ◦ 『みんなのフィードバック大全』はかなりおすすめ • 4半期(3ヶ月)ごとにメンバーにフィードバック実施 ◦
直接フィードバックし、その後詳細なレポートを送付 ▪ ポジティブフィードバック • 前回の3カ月からよくなっていること ▪ ギャップフィードバック(ネガティブフィードバック) • 次のグレード昇格に対して現状のメンバーの能力に対してどんな ギャップがあるか マネージャーになってから頑張ってメンバーにフィードバック
© GO Inc. • 成長してくれたメンバーはいた • 一方で伸び悩んでいるメンバーもいた ◦ 任せた仕事の成果量が期待値に達していない ◦
設計や他チームとの調整など、抽象度の高い業務を任せ切れない • 伸び悩んでいるメンバーにさらに強いフィードバック。冷たい態度 これだけやったからきっとみんな成長してくれる?
© GO Inc. • チームの雰囲気を感じ取って上長が各メンバーにヒアリング • 「大橋さんチームは発言し辛い空気があるとメンバーから聞いています」 ◦ 誤った発言をすると大橋から責められるような空気があり発言し辛い ◦
ミスやスケジュール遅延をすると大橋から詰められるような雰囲気になる • 「改善が見られない場合、メンバー全員に直接謝罪をした上で、メンバーに改 善を協力してもらうように願い出てください」 上長から告げられる答え
© GO Inc. ことの顛末 実際にメンバー全員に謝罪をしました
© GO Inc. 以前の360度フィードバックで「言葉がきつい」という指摘を受け、改善を試みましたが、まだ 不十分で、厳しい表現が時折出てしまいます。私の目的はチームの成長と成果の達成であり、 叱責が目的ではありません。しかし、現状として、チームが「発言しづらい」「ミスを咎めら れる」と感じる雰囲気が生じており、私の言動が原因と認識しています。 この状況を改善したいと考え、自分の発言を引き続き見直し、チームの雰囲気を良くする努力 をしますが、自力では限界を感じています。そのため、もし私がチームに悪影響を与える発言 をした際は、直接止めていただければと思います。言いづらい場合は1on1や信頼できる第三者
に相談してください。チームの協力をお願い申し上げます。 13 謝罪のために作成した文章の要約(原文生々しかったのでAI要約)
© GO Inc. 14 事例: 無自覚にメンバーの 心理的安全性を奪う 02.b 無意識にやっていた 失敗行動
© GO Inc. • (加筆)以下のような露骨なアンチパターンをしていないことはメンバーに確 認済み ◦ ミスをした人を名指しで責めたり、怒鳴る ◦ 人格批判
▪ 「こんなに仕事ができない人は君が初めてだ。やる気がないんだ ね。」 ◦ 失敗に対し原因の改善ではなく、人の責任を追求 ◦ マイクロマネジメントを行い、メンバーの細かい行動に口を出す ◦ 正しいフィードバックを行わず、建設的なアドバイスがない 明確なマネジメントのアンチパターンは踏んでないはず
© GO Inc. • ①自分の物差しの絶対視 • ②優秀さの誇示 • ③自分でコードを書きすぎる 無意識に失敗していた
参考『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』の「20の悪い癖」
© GO Inc. • エンジニアべき論を振りかざす ◦ 「エンジニアは、仕事で使う言語の仕様を余裕あるときに調べておくべき」 ▪ このべき論はメンバーにそのまま当てはめられるものではない •
抽象度の高い指示を出して、メンバーの悟り力に丸投げ ◦ 「あなたにこのプロジェクトを任せます」の一言で具体的な期待値をすり合わせない ▪ このくらいわかるだろうはメンバーによって異なる • 自分にとってやって当たり前のことに対して、感謝を伝えない ◦ 「顧客問い合わせに対して自分から率先して取り組むのは当たり前だ」 ▪ メンバーは頑張ってやっているかもしれない。やってもらってありがたいこと に対して感謝するべき ①自分の物差しの絶対視
© GO Inc. • レビューのとき不必要に誇張した表現で指摘する ◦ 「その実装は[普通に考えて]こう書いたほうがいいです」 • 人の意見に対してまず否定から入る ◦
「[いえ、]その設計はこのパターンを考慮できていないので筋が悪いです」 • 人の意見に対して上被せして手柄を奪う ◦ 自分の経験を引っ張って「こういう方法もありますね。こっちのほうが良 いかも」 • そもそも人の話を聞かない ◦ すでに知っていると認識していることに対し「それならもう知っていま す。その先は言わなくていいです」 ②優秀さの誇示
© GO Inc. • チームで一番コード書いてる人間 にチーム改善の時間はあるか ◦ さらにメンバーのコードを書 く機会を奪っている •
弁明すると作業にかけている時間 は全体の3,40%程度(平均会議時間 が週25時間のため) ◦ このくらいの時間でも大量の コードを書けると内心ほくそ 笑む ③自分でコードを書きすぎる 直近6ヶ月のチームコンディション(By Findy Team+)
© GO Inc. 20 なぜ私は 失敗してしまったのか 03
© GO Inc. • 謝罪文を泣きながら書いて、本当に情けない気持ちになった • 私なりにマネージャーになろうとした • もっとスマートにマネージャーという仕事ができると思っていた •
周りからうまくマネージャーをやれていないと思われることが怖い • 自分はマネージャーに向いていないんじゃないか • 何をやってもうまくいかない。どうしたらいいんだ 謝罪文を送ったその日から悩んだ
© GO Inc. ここまでやって気付いた 大橋に評価されていないメンバーも こんな気持ちじゃないのか
© GO Inc. 「認知再構成法」を用いて自分の思考のクセを見つける 認知再構成法は、多くの精神疾患に共通する認知の歪みの、白か黒かの思考(分 裂)、呪術的思考、過度の一般化、拡大解釈、および感情的推論などとして知られ る非合理的または非適応的な思考を特定し、反論することを学ぶ心理療法 なぜ失敗をしてしまったのか自己分析
© GO Inc. • ①固定観念の特定 ◦ 問題を引き起こしている状況や、自分の感情に影響を与えている自動思考(瞬間的に 浮かぶ考え)を特定 ◦ 「課題が明確なのに、それを改善しようとしない人が許せない。」
• ②固定観念の俯瞰 ◦ その自動思考が現実的または建設的か、実際に役に立つかどうかを検討 ◦ 「ノーアクションの人に冷たい態度を取る」 • ③固定観念の更新 ◦ 非現実的または非建設的な思考を、より現実的で柔軟な考えに置き換え ◦ 「メンバーへ圧をかけて効率が下がるのが私がしたいことではない」 自己分析のサマリ
© GO Inc. 「課題が明確なのに、それを改善しようとしない人が許せない。」 • 私はプログラミング以外の苦手なことも、仕事のためと割り切ってやってきた • 一つのだけやるよりも、物事がうまくいく実感があり、自分の成長の重要な ファクターであると信じている ①固定観念の特定
© GO Inc. 「ノーアクションの人に冷たい態度を取る」 • FBで課題提示したあとメンバーに改善アクションをしている様子がないと、こ の人はダメな人とレッテルを貼る • 改善した様子がなければより強い刺激を与える or
見切りをつけて放置 ▪ より強い刺激は改善には繋がらず逆にマイナス ▪ 見切りをつけても、その人が辞職するまで気まずい関係は続く • 結果、自分とメンバーは気まずいし、周りもその空気を感じて雰 囲気は悪くなる ②固定観念の俯瞰
© GO Inc. 「メンバーへ圧をかけて効率が下がるのが私がしたいことではない」 • メンバーに貼ったレッテルに従って、表面だけで評価していないか • メンバーの成果が20点が40点に増えてるのに100点じゃないとできていないと判 断していないか •
メンバーにやってほしいことを、その人がわかる言葉で納得出来るよう伝えて いるか ③固定観念の更新
© GO Inc. 1. メンバーの成長を願って、フィードバックしたが、主観ではあまり課題を改善 しているように見えなかった 2. 自分にとって重要なファクター(課題改善)をないがしろにされているように 感じた結果、冷たい態度につながる 3.
冷たい態度を取っている人にもともとの私の悪癖である「自分の物差しの絶対 視」と「優秀さの誇示」が発動 i. 若干の罪悪感はあるが、そうする必要がある人と認識しているので態 度が正当化 ii. 「優秀さの誇示」は私とあなたにはこのくらいの差分があるから、 もっと頑張って的な形で発動 考えた結論
© GO Inc. 29 気付いた私は 何をしたのか 04
© GO Inc. • 前章の分析が終わった時点で自分のメンタル面に変化 ◦ 以前より無意識の失敗行動に対してかなり自覚的に ◦ 怒りのポイントの理解により、以前ならイラッとするメンバーの同じふる まいに対してもフラットに見れるように
▪ 詰めずにヒアリングをする余白ができた 分析の効果
© GO Inc. • マネージャーは時間ががない ◦ マネージャーが改善のアクションをする=改善以外の何かをしない ◦ 忙しいマネージャーにメンバーは相談をしようと思わない •
会議ブロック時間を作るだけでも案外効果はある ◦ 以下の時間はアジェンダなし会議をすべてブロック ▪ 昼食12:00〜13:00 ▪ 作業集中時間16:00〜19:00 とにかく時間を作る
© GO Inc. • メンバーに明確にやってほしいことを伝える&仕事を任せてマネージャー業務 を増やす • いま自分がしている仕事をすべてリストに書き出す • リストに書き出した仕事を以下の種類に分類する
◦ ①自分が本来やるべき仕事 ◦ ②自分がいまやっているが、他の人に任せるべき仕事 ◦ ③他の人に任せている仕事 • 「②自分がいまやっているが、他の人に任せるべき仕事」を任せられそうなひ とがいたらその人の名前を書き、その人にその仕事を任せたい旨を伝える • 逆に任せられる人がいないと思ったときは、任せたい候補を挙げその人に将来 的に任せたいこと、任せるためにどのようなスキルが必要であるかを伝える サクセッションプランニング(後継者育成計画)
© GO Inc. • 月に一回程度、メンバーが行った良い振る舞い、成長した点などを全員に公開 する形で送付する ◦ メンバーのレッテル剥がしの一貫。褒めるためには興味と観察が必要なの で、送ろうと思ったら、メンバーの動きをよく見る必要がある ◦
ポジティブフィードバックは良いと思ったタイミングで即送ったほうが良 いが、こっちのほうが私の性にあってる オープンレター施策
© GO Inc. • 自分が苦手、フォローが必要と感じていることを伝えると期待値をコントロー ルできる ◦ 私の場合はレビュー中の言葉づかいなど • 勉強中や全然詳しくない事柄などがあればそれは伝える
◦ 「私はマネージャーの達人です」より「マネージャーのことは全然勉強中 です」という人のほうが他の人はフィードバックしやすい • 実は前述の謝罪はこれにあたる 苦手なことは苦手という
© GO Inc. • 1年7ヶ月かかってやっと気づいた問題が改善アクションの2,3では治らない • まずは10点から20点になっていることを感じて、成長を実感する • 逆に悪化している可能性はある ◦
1on1のネタの一つに「最近の私ってうまくやれてる?」と聞く いきなり100点取ろうと思わない
© GO Inc. 36 宣伝 xx
© GO Inc. 37 タクシーアプリ『GO』の開発を一緒にしませんか https://hrmos.co/pages/ goinc/jobs
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