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UX/UI改善に貢献するユーザーテストとは? 基礎知識から実施のプロセスまで解説

NCDC
November 29, 2023

UX/UI改善に貢献するユーザーテストとは? 基礎知識から実施のプロセスまで解説

ユーザーテストとは、開発中のプロトタイプをユーザーに体験してもらい、デザインや要件についてのフィードバックを得る手法です。

ユーザーテストにより、サービスやプロダクトに潜在する操作性・視認性・効果性のリスクをリリース前に発見できるため、新規サービス検討段階のプロトタイプや、既存プロダクトの改善プロトタイプなど、さまざまなケースで有効な手法です。

一方で、事前に適切な計画を立てずに、何を検証するのか、得られた結果をどう改善に取り入れるのかが考えられないままユーザーテストを実施しても効果は得られません。テストにかかる時間や予算を浪費しないために、十分な準備とノウハウが必要です。

本セミナーでは、人間中心設計スペシャリスト資格を保有するUX/UIデザイナーが、ユーザーテストのメリット・デメリット、実施のプロセス、テスト結果の有効な活用方法などを解説します。

NCDC

November 29, 2023
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Transcript

  1. 自己紹介 2 建設業向けアプリのUX/UIデザイン、業務システムのUI改善などのプロジェ クトのほか、NCDCのUXデザイン方法論の策定メンバーとしても活躍。複雑 な機能を持つ業務システムのUI設計では、業務フローの理解からユーザーヒ アリングまで多くの情報をインプットして分析を行うなど、ユーザーに寄 り添って考える情報設計を得意としている。 経歴 東京造形大学 絵画専攻卒業

    東京デザインプレックス研究所 UI/UXコース修了 数年間にわたり現代アート事業や広告制作プロダクションに従事し、クリエイティブデ ザインやイラスト制作に携わる。 その後、関心を抱いたUX/UIデザインや人間中心設計(HCD)などを学び、 NCDCにUX/UI デザイナーとして入社。 UXデザイナー 伊藤 玄哉
  2. Business 事業領域の推進 Design ユーザ視点での設計 Technology 技術による課題解決 Innovation • コンサルティング •

    新規サービス企画 • PoC⽀援 • デザイン思考 • UX/UIデザイン • モバイル・Web先端技術 • IoT / AI / AR • クラウドインテグレーション 4 NCDCのサービス体系
  3. 本セミナーについて l 受講対象 l サービスやプロダクトの要件定義・設計・開発の担当者の方 l サービスやプロダクトの要件定義・設計・開発を推進する意思決定を行う方 l 概要 l

    ユーザーテストに関する以下の内容について解説します。 l 基礎知識 l 実施プロセスの流れと内容のポイント l その他リサーチプロセス l まとめ 5
  4. 一般的なソフトウェア開発プロジェクトにおけるユーザーテストのタイミング 14 要件定義 基本設計 詳細設計 製造 テスト ユーザーテストが有効 ソフトウェア開発の基本設計までに実施することで ⼿戻りなくリリース後のUX/UIに関するリスクを軽減できます。

    ユーザーテストを行うには遅い • リリース後の改修フェーズでもユーザーテストは有効です。 • アジャイル型開発の場合は同じ考え方をスプリント(デザインから開発までの周期単 位)計画・イテレーションに適用できます。 • 一般的なウェブサイトについては企画戦略やKPI計画の要請に基づき常時実施可能です。
  5. l ユーザーテストは以下の要素から構成されます テスト会場 • オンライン会議室を含む、テ ストを実施する空間 記録デバイス • Web会議室の録画や、モバイ ルデバイス用書画カメラなど

    テストシナリオ • 参加者に依頼するプロトタイ プの操作内容 プロトタイプ • サービスやプロダクトを体験 できる試作品 モデレーター • テスト進行担当者。通常は テスト設計者が兼任 ユーザーテストの構成要素 16 参加者(被験者) • プロトタイプを体験する人物 • ユーザーと同じ属性
  6. l プロブレムマトリクス l 画面とその操作タスクごとに成否を一覧化して問題箇所を明示する資料 l 事象・発言一覧 l 画面とその操作タスクごとに得られた出来事やユーザーの発言を整理し、問題 内容を示唆する資料 l

    事後アンケート・インタビュー l 内容について理解してもらった上で直接意見を収集した資料 ユーザーテストの成果物について 18 画面と操作タスクごとに成否を一覧化して明示するプロブレムマトリクス
  7. l ユーザーテストは以下のプロセスから実施されます。 ユーザーテスト実施の流れ 20 プランニング プロトタイプ作成 参加者の確定 テストシナリオ・タスク準備 パイロットテスト テスト実施

    分析・改善内容の導出 プロジェクトごとの状況・制約に応じた計画を立てます。 テストに必要なプロトタイプを作成します。 テストの参加者の属性を定義し、スケジュールします。 参加者に依頼するテスト内容の文章を作成します。 プロトタイプやシナリオに問題がないか内部テストします。 思考発話法を用いてテストを実施します。 得られた情報を分析し、改善内容を導出します。
  8. l ユーザーテストを実施する上で一番肝要となる2点について解説します。 テスト実施の一番のポイント 21 思考発話法 • 参加者の方がプロトタイプを操作しな がら思った事・感じた事を漏らさず発 話してもらい記録することで、改善内 容を検討する際のフィードバックとす

    る手法です。 • モデレーターは操作中の参加者に発話 を適宜促し、できるだけ多くの情報を 得られるように働きかけます。 ラポール(⼼理的信頼関係)形成 • 思考発話法を促進するための考え方で す。 • テストの内容や趣旨について丁寧に説 明したり、参加人数を絞ることで緊張 感を緩和します。
  9. l 以下の観点でユーザーテスト計画を立てます。 ユーザーテストのプランニング 22 テスト回数 基本的には2回行って問題点の洗い出しとその改善検証をすることを推奨します。 テスト時期 実施自体は1〜2日程度が基本。設計修正期間を含めるのを忘れずに計画します。 参加者人数 基本は5人にテストを行うのが有効ですが、1〜2名でも充分な効果が見込めます。

    プロトタイプ精度 テスト実施時に実現するプロトタイプの精度を事前に決めます。 テスト場所 こちらから訪問する/参加者に訪問してもらう場合に応じて対応します。 テスト範囲 機能が多い場合は優先順位をつけてテスト範囲を策定します。
  10. ソフトウェア開発にユーザーテストを取り入れた要件定義のスケジュール例 23 1st Month 2nd Month 3rd Month 1 2

    3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 Kick Off ワイヤーフレーム作成 ビジュアルデザイン作成 機能一覧作成 テスト2 分析 調整 ユ " ザ " テ ス ト 1 WF プ ロ ト タ イ プ 作 成 ユ " ザ " テ ス ト 2 ヴ . ジ 0 ア ル プ ロ ト タ イ プ 作 成 ユーザーテストプランニング テスト1 分析 l 一般的なソフトウェア開発に改善内容の抽出と、その改善の検証を行う 2回のユーザーテストを取り入れたスケジュールの一例になります。 l 開発の規模やスコープによりますが、最短3ヶ月でUX/UIに関するリスクを 最小化した要件定義が可能です。 要件整理
  11. l 参加者にプロトタイプの操作を依頼する上で必要な、仮の状況設定である シナリオと、操作の内容であるタスクの文章を作成します。 l 以下は「大型ホームセンターの商品発注アプリ」のテストシナリオと操作 タスク例です。 テストシナリオ・タスク作成 27 シナリオ(仮の状況設定) ホームセンターのマネージャーであるあなたは日常的にたくさんの

    商品を発注しています。 今までエクセルによる発注票で商品発注を行っていたところ、新し く商品発注アプリが導入されました。 このアプリを使って次の業務を行ってください。 操作タスク1 今まで取扱のなかった商品を 新しく発注して下さい。 操作タスク2 在庫切れになった商品の追加発 注を行なって下さい。
  12. l テストは以下のプロセスに沿って実施します。 テスト実施の流れ 30 環境セッティング 事前説明 オープニング 事前インタビュー テスト 事後インタビュー

    エンディング テストするソフトウェアのデバイスに応じて行います。 録画する旨やテストの趣旨、思考発話の依頼を伝えます。 参加者の方を迎えます。 関連する業務や日常行動についてインタビューします。 シナリオとタスクを提示し、操作してもらいます。 サービスの内容についてインタビューします。 疑問点があれば解消し内容をまとめます。
  13. l モバイルアプリのユーザーテストを実施する際の環境セッティング例 テスト実施のセッティング例 31 8 投影 撮影 Web会議ツールで 画⾯共有 録画・録⾳

    1 3 2 4 5 10 9 7 6 # 名称 用途 1 参加者 テスト参加者 2 モデレーター 進行 3 シナリオ・タスク文章 操作の依頼 4 プロトタイプ用デバイス 操作実施 5 書画カメラ 手元の撮影 6 録画共有用デバイス 録画と画面共有 7 机 8 椅子 9 オーディエンス 10 共有用デバイス プロジェクター等
  14. l 用意したシナリオやタスクは印刷して提示し、いつでも確認してもらえる ようにします。 l 事前説明では、以下の内容を丁寧に説明して参加者の不安・緊張感を取り 除きます。 l あくまでサービス・プロダクトのテストであり、参加者を試すテストではない l 収録する音声や映像はプロジェクトに関係する限られた人数のみ視聴する

    l 思考発話の依頼と共に、独力でタスク達成可能かどうかを確認したいため、途 中質問には応えられない旨 l 事前インタビューでは、サービスやプロダクトに関係する普段の行動につ いて軽く会話を行い、シナリオやタスクへの導入をスムーズにします。 l 事後インタビューでは事前に質問を設計し、要件の内容について詳細な フィードバックを収集してもよいです。 テスト実施のポイント 32
  15. l 独力でタスクを達成できなかった箇所の改善を最優先にして、発話や事象 の内容から改善内容を列挙し、画面設計や機能要件一覧に反映します。 分析・改善内容の導出 34 言葉の意味がわか らなかった もっとこういった 情報が表示されて ほしい

    間違えて隣のボタ ンを押した 改善内容1 表示する文言の内容 を修正する。 改善内容3 データベースに項目 を追加し、より詳細 な情報を表示できる ようにする。 改善内容2 ボタンの色 or 配置間 隔 or サイズを修正す る。 機能要件一覧
  16. 補足 40 l ユーザーテストは大量のサンプルによる定量評価ではありません。 l ユーザーテスト実施のための社内合意形成の際は本日解説したユーザーテスト の性質を踏まえて企画してみてください。 l A/Bテスト、ヒートマップ解析、アクセス解析、パフォーマンス測定、アン ケート調査といった定量評価の手法とは親和性があり組み合わせが有効です。

    l ユーザーテストで得られる情報はあくまで参考情報であり、ユーザーが 「こんな機能は必要ない」と言ったとしても「ではやめましょう」という 話ではありません。 l 得られた発話や事象から、「なぜこの機能が有用じゃないと言ったのか?」 「何が足りないのか?」「どうすればよいのか?」を考えることが重要です。