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経営から紐解くデータマネジメント

 経営から紐解くデータマネジメント

primeNumber社主催のData Summit 2025 #pNdatasummit に登壇した際の資料です。

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Jun Ernesto Okumura

November 26, 2025
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Transcript

  1. 奥村 純 / Jun Ernesto Okumura @pacocat
 データアナリスト
 機械学習エンジニア(強化学習) 


    AI PdM
 2014 2019 執行役員 / Data Director
 • データ組織(BI/AI/Data Management)
 包括的なマネジメント 
 2024 執行役員 / Chief Data Officer / Marketing本部長
 • 経営戦略・データ戦略 策定と推進 
 • マーケティング戦略 推進 
 DeNA
 Eureka (Match Group)
 GA technologies Group
 • toCビジネス
 • データ分析
 • ML(推薦・強化学習)
 • データ基盤技術
 好きな領域 趣味 • 登山(日本百名山挑戦中) 
 • 茶道(最近始めました) 

  2. 情報発信など 
 出版・翻訳 note SpeakerDeck 取材記事 データ組織マネジメントについて 発信 
 推薦技術・因果推論・強化学習など

    勉強会登壇 
 「経験とカン」をデータで再現できるか。二人 博士が語る、変革 本質( NewsPicks. 2025) CDOが語る - 求められるデータ人材像と、それを生かす組織風土と ( TECH+,2025)
 「データ 力で、GAグループ全体 意思決定 精度とスピードを加 させる」新執行役員・奥村純就任インタビュー( GAグループ公式note, 2024) 「マッチングアプリ婚」を後押しする、陰 立役者ペアーズ 「質」 、ど ように作り出されるか(東洋経済 , 2024) Pairs マッチングでAIが果たす役割と ? Pairs Data Director奥村純に聞く、感情感覚領域にある「 AIにしかできないこと」(レバテック LAB, 2023) YouTube 驚異 リコメンド力 強化学習 避けて 通れない(日経クロストレンド , 2020) …
  3. 5 本講演 アウトライン 
 GA technologies 紹介
 不動産領域におけるデータ活動・事例について 
 


    
 データマネジメントが目指すべき方向性 
 経営から見たデータマネジメント・データ活用 
 
 
 「経営 x データ」 将来 
 データ活動をプロフィットセンターへ 
 01
 02
 03

  4. データ組織:プラットフォームからアプリケーションまで 
 Data Management 高品質で安全なデータ提供 Data Analytics 意思決定 ため データサポート

    Applied ML AI開発・運用 ML基盤 開発・運用 プラットフォーム アプリケーション AISC R&D DX促進 各テック機能 バックエンド フロント SRE QA ... CDO:データ組織 テクノロジーインキュベーション室 テクノロジー全般 戦略策定、組織開発、プロジェクト管理
  5. 14 不動産領域におけるデータ活動 特徴 
 ① サイロ化されたデータ • 事業主体や目的 らつき •

    データソース・仕様 多さ ② 多様なデータ • 非構 化データ • 構 化データ ③ 未発掘 ユースケース • 不動産xデータに関わる プレイヤー 少なさ データを標準化すること、 つながることで価値が生まれる 生成AI技術などで一足飛びに 活用フェーズが広がっている 新しい標準を作る面白さ 事業貢献余地 高さ
  6. 15 上流から下流まで データ接点 
 物件保有者 (toC, toB) 集客 (PULL, PUSH)

    投資 CP 実需 戸建 一棟 海外 セグ1 セグ2 セグ3 物件売却 (仕入) RENOSY オーナー 営業 (人, Tech) 集客 (PULL) 物件購入 (販売) 賃借人 Asset Management Property Management 物件調達 販売 物件マネジメント 物件売却(Buyer→Seller転換)
  7. 16 データがつながることで生まれるアプリケーション・価値 
 投資 CP 実需 戸建 一棟 海外 セグ1

    セグ2 セグ3 物件売却 (仕入) RENOSY オーナー 営業 (人, Tech) 集客 (PULL) 物件購入 (販売) 賃借人 Asset Management Property Management 物件売却(Buyer→Seller転換) 集客最適化
 集客最適化
 仕入れ戦略最適化
 物件営利 透明化
 マッチング最適化
 ・物件⇔顧客
 ・プランナー⇔顧客
 ・プランナー⇔物件
 Sales Enablement
 ・商談データ分析
 ・ナレッジマネジメント 
 ・ダッシュボード
 ・…
 入退去予測
 運用予想
 実績可視化
 物件レコメンド
 テックナーチャリング 
 BI提供(KPIマネジメント、As-Is見える化による精度 高い施策立案、 ARPA改善)、ガバナンス
 多様な物件・顧客基盤 データ蓄積による新規ビジネス 可能性 
 各種推薦
 ※ 素朴に思いつきそうなアイディア 一部 
  実際 、これ以外 施策含め経営戦略から優先度立てて推進しています 
 物件保有者 (toC, toB) 集客 (PULL, PUSH)
  8. 17 事例1:マーケティング効率 最適化 → 数億円 利益貢献 
 広告宣伝費を6億円 削減しても、事業利益に 与える影響

    プラスと分析 (億円) 大量 データと 分析技術に支えられた 精緻なコストシミュレーション 広告宣伝 費 削減額 2億円 4億円 10億円 8億円 6億円 事業利益 へ 影響 広告宣伝費削減額に応じた事業利益に対する影響分析 - 通期ベース 顧客獲得モデル 精緻化で、 利益と バランスを取った広告宣伝費削減額 シミュレーションが可能に
  9. 18 • 数万〜数千万 幅広いベネフィット
 • グループ会社にまたがる 幅広い事業部
 • 営業・HR・バックオフィス等 様々な部署


    会社全体で 利用が進んでおりインフラサービス 1つに 事例2:Difyを中心とした生成 AI活用支援 → 1億円以上 利益貢献 
 ※ 一部 み切り出して紹介 

  10. 19 生成AIによって解決した課題例:面談 キーアクション分析 
 ご成約
 Field Sales
 オンライン面談 
 Inside

    Sales
 電話面談 
 Web
 問い合わせ 
 こ 範囲 人が多く関わる領域で定量的な 分析や施策 実施に課題があった • お客様 問い合わせから物件 購入に至るまで、人が関わるプロセスが多く存在 • フローが分断しやすく、ナレッジが属人化しやすい課題があった
  11. 20 面談 キーアクション分析:アーキテクチャ 
 内製SFA KPIs Table Streamlit データソース BIツール

    ETL Snowflake Task APIで データ取得 営業活動 記録 
 Streamlitアプリを用いた 
 キーアクション実施有無 確認 
 アクション実施有無と KPI 相 関から インサイト獲得 
 Transcript Check Result
  12. 面談 キーアクション分析:アーキテクチャ 
 Streamlit 
 アプリ 個人やチームで PDCA 回せて
 いるが、事業部全体で

    難しい 
 Before 横断的に面談を振り返る仕組みを 構築、得られたインサイトを次 面 談に活かす
 After チームA チームB チームC • 特定アクション 有無がど 程度 KPIに影響しているかを検証可能に • 事業横断でナレッジが共有され、業務生産性が向上(効果が 150%を超えるも も)
  13. 22 GA technologies データ組織 活動内容 出版@技術書典 18
 目次
 1. GA

    technologies データ活用 全体像 
 2. GA technologies データ基盤 これまでと今後 
 3. 不動産領域 データモデリング 進め方 
 4. 不動産オープンデータ 活用 
 5. GA データ民主化 歩み 
 6. データアカデミー 事業部 データ活用人材育成プログラム 
 7. The Modern MLOps Platform
 8. CAPIを通じた広告効率最適化 
 9. GA technologiesで 生成AI活用
 10. Streamlit in Snowflakeで加 する不動産テック企業 データ活用 
 11. GA technologiesにおけるデータ周辺領域で キャリア形成について 

  14. 24 データ基盤でどう事業貢献していく か 
 データプラットフォーム データアプリ ケーション データアプリ ケーション データアプリ

    ケーション • データ基盤 ただ プラットフォームでそれ自体で価値が出せる訳で ない • 基盤上に「何を載せるか」「どう下支えするか」が大切 • それによって、取得するデータや管理方法も変わってくる
  15. 25 データ基盤でどう事業貢献していく か 
 データプラットフォーム データアプリ ケーション データアプリ ケーション データアプリ

    ケーション Peter Aiken’s Framework Data Management Framework • データ基盤 ただ プラットフォームでそれ自体で価値が出せる訳で ない • 基盤上に「何を載せるか」「どう下支えするか」 が大切 • それによって、取得するデータや管理方法も変わってくる
  16. 26 データ基盤でどう事業貢献していく か 
 データプラットフォーム データアプリ ケーション データアプリ ケーション データアプリ

    ケーション • データ基盤 ただ プラットフォームでそれ自体で価値が出せる訳で ない • 基盤上に「何を載せるか」「どう下支えするか」が大切 • それによって、取得するデータや管理方法も変わってくる
  17. 29 1 売上を改善する方向性 売上 顧客数 顧客単価 見込み顧客数 購入率 データ施策 例

    ターゲティング最適によるリード数 最大化 LPサイト CVR最適、A/Bテスト レコメンドによる購入率改善 導線 最適化、A/Bテスト 顧客ニーズに合わせた商品提案 アップセル・クロスセル 分析 • 売上やGMV ようなトップライン指標を分解して、データ施策によって改善する活動 • 型も存在し、着手しやすいも が多い
  18. 30 2 (営業)利益を改善する方向性 売上 粗利 原価 営業 利益 販管費 経常

    利益 営業外 損益 純利益 特別損益 +税金 サプライチェーン管理による在庫最適 調達元 最適化 マーケティング ROAS運用 オペレーション 自動化・工数削減 • 売上から削られる原価や販管費を抑えることで、会社 利益効率を高めていく活動 • コスト削減など結果が数値化しやすい で、説明がしやすい
  19. 31 3 ROE/ROICを改善する方向性 売上 粗利 原価 営業 利益 販管費 経常

    利益 営業外 損益 純利益 特別損益 +税金 損益計算書( P/L) 貸借対照表( B/S) 資産 負債 株主 資本 有利子 負債 • 投下した資本に対する利益効率を追求する活動 • 会社に投資するべきか 判断軸に影響し、会社価値をより本質的に上げられる ROE = ROIC = 株主資本(純資産) 純利益 株主資本+有利子負 債 純利益
  20. 32 データマネジメントが目指すべき方向性 
 投資 1 利益 X倍 投資効率 高い経営 データ

    利益 投資効率 高いデータ基盤 1 投資が、他 投資利回りを上回る利益を 生み出し、さらに再投資が加 する 仕組み データが貯まったら、アプリケーションが利益を 生み、さらに良質なデータに還元される 仕組み
  21. 33 データによるマッチングを中心に据えた「仕組み」 例 
 物件・顧客・対応 データ • 上流から下流まで • 標準化された形式

    適切に加工・利用される基盤 • マッチング精度 改善 顧客体験と事業指標 改善 • CPA・成約率・LTV・CCC... • 良い体験 拡散 さらに集まるデータ、強化されるマッチング精度、体験 改善 多様なデータを標準化して 集める取得戦略 精度が改善し続ける マッチング 仕組み 体験 フィードバック、 事業モニタリング
  22. 36 データマネジメントが目指すべき方向性 
 利益 X倍 人がスケールする経営 理想 人が2倍になったら、2倍以上 売上・利益が生まれる構 現実

    • 複雑化する事業・コミュニケーション • 進む業務 細分化、属人化 • 共通認識 作りづらさと組織 重さ
  23. 正しい事業理解を妨げる課題 
 正しい指標が取れていない • 指標 定義が曖昧 • 不正確な手入力データ 意思決定 人依存が強くなる(スケールしない)

    意思決定 精度が低くなる(経営効率が悪くなる) データが取得できていない • DB化されていない情報 属人化された管理 • 把握しきれないスプシ • 伝達されないノウハウ 37
  24. 38 GA technologiesで アプローチ① 主要指標 コードレベルで 管理 
 10月 売上

    • 集計対象 ? ◦ 10月に成約した売上 vs 10月 見込み顧客から生まれた売上 • 売上 発生条件 ? ◦ 申込 vs 成約 vs 決済 • 事業部 範囲 どこまで? ◦ 同じ見込み顧客を共有する複数事業 vs 特定事業 • 扱うタイムゾーン ? ◦ 現地時間 vs 日本時間 vs UTC ・・・
  25. 40 GA technologiesで アプローチ② データモデリングによる負債 解消 
 課題 • 参照元

    データが多岐にわたり複雑化 • 中間テーブル 責務が曖昧で似たテーブルが乱立 • 不整合がど テーブルにあるかが分かりづらい • 検算など本質的な分析作業以外 工数が肥大化 対策 • レイヤー 責務明確化 • dbtを用いた変換 コード管理 • 半年以上かけた作り直し • 品質テスト 導入
  26. 42 LLM(大規模言語モデル)を中心とした AI活用 流れ 
 LLM 急 な進化と API化 複雑なタスク

    構 化と実行が可能に ツール等エコシステム 発展 外部ツールを使う仕組み(LangChain等) 自律的エージェント 登場(CrewAI等) PoC 急増とユースケース 明確化 非定型業務 自動化等 活用事例が急増 社内システムと連動したアシスタントがPoC を超えて導入され始めている Singla, A., Sukharevsky, A., Yee, L., Chui, M., Hall, B., & Balakrishnan, T. (2025, November 5). The state of AI in 2025: Agents, innovation, and transformation. McKinsey & Company. Retrieved from https://www.mckinsey.com/capabilities/quantumblack/our-insights/the-state-of-ai
  27. 43 LLMで広がるAI ユースケース 
 ナレッジベース トランザクション (OLTP / DWH) 外部データ

    ツール群 LLM AIエージェント A タスクをして欲しい Bについて分析して欲しい Cについて教えて欲しい …
  28. 44 同時に顕在化する論点たち 
 ナレッジベース トランザクション (OLTP / DWH) 外部データ ツール群

    LLM AIエージェント ① 社内ナレッジをど データ管理する か ② AIがアクセスし易いデータ基盤 • ”AI向け” データ管理 • データカタログ ③ AIエージェント ガバナンス • AI アクセスコントロール • ハルシネーションなど 監視 • 個人情報・著作権等 法令順守 ④ ガイドライン、民主化 • 活用推進体制 • 出力 品質管理 ⑤ 複雑化するシステムと組織 • 開発、運用体制 • 戦略策定機能 今 「とりあえずやってみる」で OK。 徐々に向き合うことになる。
  29. AI-Centric / AI-Agent Readyな基盤に向けて考えること 例 
 • 品質 監視とフィードバック ◦

    人間による精度検証やフィードバックへ 参加 ◦ LLM バージョニングやテスト機構 • SLO/SLI 策定 ◦ 確率的な挙動を踏まえた運用 LLM出力を人間チェックで運用している事例 人間向けで ない”AI向け” データ管理 • AI向け”One Big Table” ◦ 情報を一箇所に集めた横長 テーブル。 JOINが減ることで精度が上がる。 ◦ パイプライン 複雑化・責務 肥大化による品質管理とトレードオフ • メタデータ管理 ◦ 分析コンテクストやサンプル( e.g. 対応履歴、組織図、過去 SQL、...) ◦ ビジネスメタデータ( e.g. “販管費” 意味、enum 値、...) 出力 管理
  30. 48 あるべき姿 
 経営戦略
 データ取得戦略
 データマネジメント
 戦略
 データ
 活用戦略
 データ活用による利益増・効率化・顧客基盤構築が

    
 エンジンとして周り、強い障壁が形成される世界 
 経営戦略実現 ためにあるべきデータ 定義 
 (M&Aなども含む)
 取得したデータを適切に管理・活用するマネジメント方針 
 (データガバナンス戦略含む) 
 構築されたデータ基盤上で、何をするか 定義 
 分析/MLを使った出口 戦略 
 作る順番
 データ部門長が経営戦略策定にも関わり、一気通貫でデータ活用戦略を策定 

  31. 49 データ活動・データ基盤 未来に対する想い 
 企業で データ活動 、経営視点で 強力な旗振りが必要 • ボトムアップだけで

    単発 売上や利益改善に留まりやすく、長期的なROIを説明しづらい • データ基盤が本当に企業価値を作るために 、投資効率を意識した「仕組み作り」が必要 データ取得からデータ活用までを包含したデータ戦略が競争資源になる • データ人材・データ活用 未来 ためにも「経営xデータ」 文脈で 語りを増やしたい • 今こそ経営者がデータを語ろう、データ人材が経営を目指そう
  32. 50 まとめ
 データ基盤 方向性 「どう下支えするか」だけで ない「何を載せるか」へ 意識 1. 売上→利益→投資効率を目指した、データが中心となるビジネスモデル 構築

    2. 意思決定 スケールに向き合い続けること 3. AI時代を意識したデータ基盤 追求 「経営xデータ」 将来 • 取得から活用まで一貫したデータ戦略が競争資源になる • 今こそ経営者がデータを語ろう、データ人材が経営を目指そう