(i) 𝐷(𝒂1 ,⋯ , 𝒂𝑖1 + 𝒂𝑖2 , ⋯ , 𝒂𝑛 ) = 𝐷(𝒂1 , ⋯, 𝒂𝑖1 , ⋯, 𝒂𝑛 ) + 𝐷(𝒂1 , ⋯ , 𝒂𝑖2 , ⋯ , 𝒂𝑛 ) (3 − 6 − 11) (ii) 𝐷(𝒂1 , ⋯, 𝑘𝒂𝑖 , ⋯ , 𝒂𝑛 ) = 𝑘𝐷(𝒂1 , ⋯, 𝒂𝒊 , ⋯ , 𝒂𝑛 ) (3 − 6 − 12) (iii) 𝐷(𝒂1 , ⋯ , 𝒂𝑖 , ⋯ , 𝒂𝑖 , ⋯ , 𝒂𝑛 ) = 0 ∴ 𝐷(𝒂1 , ⋯, 𝒂𝑗 , ⋯ , 𝒂𝑖 , ⋯ , 𝒂𝑛 ) = −𝐷(𝒂1 , ⋯ , 𝒂𝑖 , ⋯ , 𝒂𝑗 , ⋯, 𝒂𝑛 ) (3 − 6 − 13) (iv) 𝐷(𝒆1 , 𝒆2 , ⋯ , 𝒆𝑛 ) = 1 (3 − 6 − 14) これまでと同様にこの関数値はこの4つの性質で一意に定まり、 「n 次元体積」に相当する23。 3次と同様 𝐷(𝒆𝑖1 ,𝒆𝑖2 , ⋯ , 𝒆𝑖𝑛 ) は 性質(iii),(iv)より 𝒆1 , 𝒆2 , ⋯ , 𝒆𝑛 からの並び替えで値が決まり24、 𝐷(𝒆𝑖1 ,𝒆𝑖2 , ⋯ , 𝒆𝑖𝑛 ) = { +1 (𝑖1 , 𝑖2 , ⋯ , 𝑖𝑛 )が(1,2,⋯ , 𝑛)の偶置換 −1 (𝑖1 , 𝑖2 , ⋯ , 𝑖𝑛 )が(1,2,⋯ , 𝑛)の奇置換 0 𝑜𝑡ℎ𝑒𝑟 (3 − 6 − 15) となり、これは(3-7-6)式である拡張 Levi-Civita 記号 𝜀𝑖1𝑖2⋯𝑖𝑛 と全く同じとなる。 性質 (i),(ii) のことを多重線形性、性質 (iii) のことを交代性という。 性質 (i), (ii), (iii) を用いて、後に重要となる性質を2つ導く。 •あるベクトルのスカラー積を他のベクトルに加えても「関数」の値は変わらない 𝐷(𝒂1 ,⋯ , 𝒂𝑖−1 ,𝒂𝑖 + 𝑘𝒂𝑗 , ⋯, 𝒂𝑗 , ⋯ , 𝒂𝑛 ) = 𝐷(𝒂1 , ⋯, 𝒂𝑖−1 , 𝒂𝑖 , ⋯ , 𝒂𝑗 ⋯ , 𝒂𝑛 ) (3 − 6 − 16) 【証明】𝐷(𝒂1 ,⋯ , 𝒂𝑖 + 𝑘𝒂𝑗 , ⋯ , 𝒂𝑗 , ⋯, 𝒂𝑛 ) = 𝐷(𝒂1 , ⋯ , 𝒂𝑖 , ⋯ , 𝒂𝑗 ⋯ , 𝒂𝑛 ) + 𝑘𝐷(𝒂1 ,⋯ , 𝒂𝑗 , ⋯ , 𝒂𝑗 ⋯ , 𝒂𝑛 ) = 𝐷(𝒂1 , ⋯ , 𝒂𝑖 , ⋯ , 𝒂𝑗 ⋯ , 𝒂𝑛 ) ∎ •線形従属なベクトルの組に対しては0となる(張る体積は0) 𝒂1 , 𝒂2 , ⋯ , 𝒂𝑛 が線形従属 ⇒ 𝐷(𝒂1 , 𝒂2 , ⋯ , 𝒂𝑛 ) = 0 (3 − 6 − 17) 【証明】線形従属なので、あるベクトルは他の線形結合で書ける。 例えば 𝒂1 = 𝑘2 𝒂2 + ⋯ + 𝑘𝑛 𝒂𝑛 と書けたとすると(他の場合も同様) 𝐷(𝒂1 , 𝒂2 , ⋯ , 𝒂𝑛 ) = 𝑘2 𝐷(𝒂2 , 𝒂2 , ⋯, 𝒂𝑛 ) + ⋯ + 𝑘𝑛 𝐷(𝒂𝑛 , 𝒂2 , ⋯, 𝒂𝑛 ) = 0 ∎ またこの対偶として「𝐷(𝒂1 , 𝒂2 , ⋯, 𝒂𝑛 ) ≠ 0 ⇒ 𝒂1 , 𝒂2 , ⋯ , 𝒂𝑛 は線形独立」が直ちにいえる。 この「関数」には線形代数がいっぱい詰まっている。次講以降で活躍する。 23 数学的な厳密さよりも武器を作ることを目的としている。そもそも「n 次元体積」の定義すらしてい ないことに注意。 (これに踏み込むと話が進まないw 興味のある人は(将来)「Gram 行列式」 「微分形 式」とかで調べてみよう)次講で(n 次元目の高さ)×(n-1 次元体積)と解釈できる話をする。ここでは、 これを用いて「n 次元体積」としよう。どーしても論理体系が気になる人は(内積のように)この4つ の性質をこの「関数」の公理と位置づけて考え、別途「n 次元体積」となることを示す立場を取ろう。 24 偶置換、奇置換は、[3-7-2] 拡張 Levi-Civita 記号 および 付録3 参照