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KDD2025への業務成果投稿チャレンジについてと、現地聴講してみた所感

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October 06, 2025

 KDD2025への業務成果投稿チャレンジについてと、現地聴講してみた所感

KDD2025 論文読み会 (2025/10/09)
https://lycorptech-jp.connpass.com/event/367452/

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Shinya Yaku

October 06, 2025
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  1. X: @sh1n_89 (スライドへのリンクあり) 自己紹介: 夜久真也 (Yaku Shinya) 趣味 クラフトビール (主に

    Hazy IPA) KDD開催地トロントで飲んだものの一部→ 経歴 2013年 東京大学 工学部 計数工学科 システム情報工学コース 卒業 2015年 東京大学大学院 情報理工学系研究科 システム情報学専攻 修了 2015年 ヤフー株式会社 入社 (現職、2023年10月よりLINEヤフー株式会社) 業務歴 2015 ~2021: ビ ッグデー タ・機械学 習エン ジニア サジェスト ・関連検索ワード ・一 発回答意図解釈 etc. Yah oo!検索 etc. 2021~現在: データサイエンティスト 中央組織で プロ ダクト や人事施策の 効果検証・分析アル ゴリ ズム開 発 etc. LINE 公式 アカウント、PayPay ギフト( Yah oo!セールス プロ モーシ ョン) 、
 Yah oo!しごとカタロ グ etc.
  2. 人事多面評価のバイアス除去とKDD 企業内で行われる多面評価(360度評価)の評価者の甘辛を補正した評点を
 算出するアルゴリズムを開発中。
 評点をそのまま使うのではなく、評価者ごとの相対的な勝敗を
 Bradley-Terryモデルでスコア化することで実現している。
 「Digital HR Competition 2024」 ピープルアナリティクス部門グランプリ[2]、


    「第10回 HRテクノロジー大賞」 アナリティクス部門優秀賞受賞[3]。 The 6th International Workshop on 
 Talent and Management Computing (Workshop) Machine Learning Drift and Bias Detection Data Science for Business Processes Algorithmic Fairness HR 関連の受賞もインパクトがあるが、
 アカデミックからの技術の評価も得られるとなお素晴らしい! せっかくなのでトップカンファレンス論文投稿にトライしたい! 本案件のコアメンバーは、社会人時代に論文投稿経験はない 論文投稿に慣れているLINEヤフー研究所の方からのサポートは得られそう 以下のようなセッション・ワークショップが
 あるため、KDDに投稿できそう! もっとこの取り組みのビジビリティを出したい… [1] 360度評価における評価者ごとのバイアスを除去する新手法を開発―LINEヤフー https://project.nikkeibp.co.jp/HumanCapital/atcl/column/00066/121600014/ [2] LINEヤフー「360度評価におけるバイアス除去 技術」 がグ ランプリ―Digital HR Competition https://project.nikkeibp.co.jp/HumanCapital/atcl/column/00014/110800053/ [3] 第10回 HRテクノロジー大賞 https://www.hrpro.co.jp/award/technology/ プロジェクト説明記事 [1] より引用 X: @sh1n_89 (スライドへのリンクあり)
  3. KDD投稿トラック Research Track 目的と範囲 知識発見とデータサイエンスのあらゆる側面における革 新的な研究 理論的基盤から新しいモデル・アルゴリズムまで幅広く 対象 新興トピックに関するビジョナリーな論文も歓迎 主要トピック

    データサイエンス手法(ソーシャルネットワーク、時系 列、テキスト、グラフ分析等) ビッグデータ(大規模システム、並列・分散処理、フェ デレーテッドラーニング等) 基礎理論(深層学習、転移学習、強化学習、公平性、解 釈可能性等) Applied Data Science (ADS) Track 目的と範囲 実際にデプロイされたデータサイエンスアプリケーショ ンの記述が必須 実世界での展開における課題解決や理解の進展に重点 ポストローンチのパフォーマンスの定量化が厳格に要求 される 主要な応用領域 広告・マーケティング・Eコマース 金融アプリケーション 地理空間アプリケーション 産業・科学アプリケーション … アカデミック寄り? インダストリアル寄り? こちらに投稿 ※2025年2月〆切からは “Datasets and Benchmarks Track” が新設 X: @sh1n_89 (スライドへのリンクあり)
  4. 執筆から採択通知まで 執筆 たくさんの苦労があった… サーベイが十分できているか? 手法の評価をどうするか? 論文の構成はわかりやすいか? 英語の表現は大丈夫か? etc... 査読 4名から査読を受けた

    いい感じに評価していただけた人 が2名、厳しく評価された人が2名 査読文章に対する反論を書くこと ができる 頑張って反論した結果、1人か ら評価を少し上げてもらった が、ほとんどの方からは反応な しだった(むしろこれが普通かも) 採択通知 主に以下の理由でRejectとなった 論文の構成がわかりづらい 評価データセット (シミュレーショ ン・LINEヤフー社内評価結果) と 評価手法が十分とはいえない LINEヤフー研究所の方からも
 サポートいただけた 採択率は20% (*) (*) Fr equ en tly Ask ed Qu es tions – KDD 20 25 https://kdd2025.kdd.org/frequently-asked-questions/ > For KDD’25 August Cycle, (中略) The ADS Track has an acceptance rate of 20% for all papers X: @sh 1n_89 (スラ イドへ のリ ンクあ り)
  5. KDD現地で聴講した所感 (1) Workshop: The 6th International Workshop on Talent and

    Management Computing 前身のOBT A2018から数えるとKDDで7回目に開催された、人事データ活用関連のワークショップ この分野のコミュニティでは中心的な役割を担っていると思われる Web Pageに掲載されているトピックは非常に多岐にわたっている 経営科学のためのAI、インテリジェントな経営情報システム、マルチエージェントシステム、求人推薦とインテリジェントな採用、個人と仕 事の適合性と仕事の満足度、キャリア開発とパスモデリング、プロフェッショナルソーシャルネットワーク、才能行動モデリング、才能、個 性、リーダーシップ、人材パフォーマンス評価、人材の維持とインセンティブ、チーム編成とタスク割り当て、グループベースの意思決定、 組織の変化と安定性、組織文化とコミュニケーション、組織競争分析、労働市場情報、戦略的管理と計画、人材と管理コンピューティングに おける公平性、LLMベースの人材管理システム、科学ビッグデータと技術的才能 論文発表は4件 (No Show 1件) LinkedInデータの大学・企業のキャリア変遷グラフから大学の影響力を評価 (ラトガース大学, BOSS Zhipin 他) 人事関連PDFの画像やテキストからLLMで情報抽出 (Amazon) 企業内の専門家の知識を統一的なオントロジー (概念同士の関係性) にLLMで変換 (Amazon) 求職者のプロフィール写真の服装と採用可否の関連性の分析 (中国科学技術大学) 参加者は10~20人程度の規模で、他のワークショップやセッションと比較すると少なめ Web Page: https://tmcworkshop.github.io/2025/ X: @sh1n_89 (スライドへのリンクあり)
  6. KDD現地で聴講した所感 (1) Workshop: The 6th International Workshop on Talent and

    Management Computing 前 身のOBTA2018から数えるとKDDで7回目に開催された、人事データ活用関連のワークショップ この分野のコミュニティでは中心的な役割を担っていると思われる Web Pageに掲載されているトピックは非常に多岐にわたっている 経営科学のためのAI、インテリジェントな経営情報システム、マルチエージェントシステム、求人推薦とインテリジェントな採用、個人と仕 事の適合性と仕事の満足度、キャリア開発とパスモデリング、プロフェッショナルソーシャルネットワーク、才能行動モデリング、才能、個 性、リーダーシップ、人材パフォーマンス評価、人材の維持とインセンティブ、チーム編成とタスク割り当て、グループベースの意思決定、 組織の変化と安定性、組織文化とコミュニケーション、組織競争分析、労働市場情報、戦略的管理と計画、人材と管理コンピューティングに おける公平性、LLMベースの人材管理システム、科学ビッグデータと技術的才能 論文発表は4件 (No Show 1件) LinkedInデータの大学・企業のキャリア変遷グラフから大学の影響力を評価 (ラトガース大学, BOSS Zhipin 他) 人事関連PDFの画像やテキストからLLMで情報抽出 (Amazon) 企業内の専門家の知識を統一的なオントロジー (概念同士の関係性) にLLMで変換 (Amazon) 求職者のプロフィール写真の服装と採用可否の関連性の分析 (中国科学技術大学) 参加者は10~20人程度の規模で、他のワークショップやセッションと比較すると少なめ Ye, Yuyang, et al. "University evaluation through graduate employment prediction: An influence based graph autoencoder approach." IEEE Transactions on Knowledge and Data Engineering 36.11 (2024): 7255-7267. Web Page: https://tmcworkshop.github.io/2025/ X: @sh1n_89 (スライドへのリンクあり)
  7. KDD現地で聴講した所感 (1) Workshop: The 6th International Workshop on Talent and

    Management Computing 前 身のOBTA2018から数えるとKDDで7回目に開催された、人事データ活用関連のワークショップ この分野のコミュニティでは中心的な役割を担っていると思われる Web Pageに掲載されているトピックは非常に多岐にわたっている 経営科学のためのAI、インテリジェントな経営情報システム、マルチエージェントシステム、求人推薦とインテリジェントな採用、個人と仕 事の適合性と仕事の満足度、キャリア開発とパスモデリング、プロフェッショナルソーシャルネットワーク、才能行動モデリング、才能、個 性、リーダーシップ、人材パフォーマンス評価、人材の維持とインセンティブ、チーム編成とタスク割り当て、グループベースの意思決定、 組織の変化と安定性、組織文化とコミュニケーション、組織競争分析、労働市場情報、戦略的管理と計画、人材と管理コンピューティングに おける公平性、LLMベースの人材管理システム、科学ビッグデータと技術的才能 論文発表は4件 (No Show 1件) LinkedInデータの大学・企業のキャリア変遷グラフから大学の影響力を評価 (ラトガース大学, BOSS Zhipin 他) 人事関連PDFの画像やテキストからLLMで情報抽出 (Amazon) 企業内の専門家の知識を統一的なオントロジー (概念同士の関係性) にLLMで変換 (Amazon) 求職者のプロフィール写真の服装と採用可否の関連性の分析 (中国科学技術大学) 参加者は10~20人程度の規模で、他のワークショップやセッションと比較すると少なめ Web Page: https://tmcworkshop.github.io/2025/ 思っていたより参加者が少なかった… 人事データ活用(タレントマネジメント)の領域が広すぎて研究者間で問題意識を共有しづらい? ドメインドリブンではなく、技術ドリブンの集まりのほうがお互い分かりあいやすい? BOSS Zhipin(人材マッチングサービス)のように人事ドメインでビジネスをする企業も参画しているのは特徴的 X: @ sh1n_ 89 (スライドへ のリンクあり)
  8. KDD現地で聴講した所感 (2) Session: Data Science for Business Processes 自分が投稿した論文がもし採択されていたら、ここで発表していたかも? 発表は6件

    A/Bテスト前にKPIに及ぼす影響を、ログデータから数理最適化することでオフライン推定 (Spotify) 金融リスクガバナンスのための、企業のステークホルダーグラフから実質的支配者を推定 (武漢大学) 機械学習プロダクトの成熟度レベルの提案と、一部の指標測定の自動化 (Booking.com) バスケットボールチームの崩壊を、精神的な潜在状態の推定をもとに分析 (ボストン大学 他) クラウドサービスのインシデントで、LLMでトラブルシューティングワークフローを自動生成 (南開大学、Huawei Cloud 他) クラウドインフラのメモリエラーを、メモリアーキテクチャの階層構造を考慮しながら予測 (中国科学技術大学、Huawei 他) 参加者は30~40人程度 X: @sh1n_89 (スライドへのリンクあり)
  9. KDD現地で聴講した所感 (2) Session: Data Science for Business Processes 自分が投稿した論文がもし採択されていたら、ここで発表していたかも? 発表は6件

    A/Bテスト前にKPIに及ぼす影響を、ログデータから数理最適化することでオフライン推定 (Spotify) 金融リスクガバナンスのための、企業のステークホルダーグラフから実質的支配者を推定 (武漢大学) 機械学習プロダクトの成熟度レベルの提案と、一部の指標測定の自動化 (Booking.com) バスケットボールチームの崩壊を、精神的な潜在状態の推定をもとに分析 (ボストン大学 他) クラウドサービスのインシデントで、LLMでトラブルシューティングワークフローを自動生成 (南開大学、Huawei Cloud 他) クラウドインフラのメモリエラーを、メモリアーキテクチャの階層構造を考慮しながら予測 (中国科学技術大学、Huawei 他) 参加者は30~40人程度 Dupret, Georges, et al. "ForTune: Running Offline Scenarios to Estimate Impact on Business Metrics." Proceedings of the 31st ACM SIGKDD Conference on Knowledge Discovery and Data Mining V. 1. 2025. 「もし新ロジックである値がXpt改善したら、
 ビジネスメトリクスはYpt改善するだろう」 といったシミュレーションを提供するもの プレゼン・論文において
 理論説明:実験検証 = 1:1 ぐらいの割合で説明されていた X: @sh1n_89 (スライドへのリンクあり)
  10. KDD現地で聴講した所感 (2) Session: Data Science for Business Processes 自分が投稿した論文がもし採択されていたら、ここで発表していたかも? 発表は6件

    A/Bテスト前にKPIに及ぼす影響を、ログデータから数理最適化することでオフライン推定 (Spotify) 金融リスクガバナンスのための、企業のステークホルダーグラフから実質的支配者を推定 (武漢大学) 機械学習プロダクトの成熟度レベルの提案と、一部の指標測定の自動化 (Booking.com) バスケットボールチームの崩壊を、精神的な潜在状態の推定をもとに分析 (ボストン大学 他) クラウドサービスのインシデントで、LLMでトラブルシューティングワークフローを自動生成 (南開大学、Huawei Cloud 他) クラウドインフラのメモリエラーを、メモリアーキテクチャの階層構造を考慮しながら予測 (中国科学技術大学、Huawei 他) 参加者は30~40人程度 やはり、直接プロダクトに技術投資をしていることが多い 人 事データ 関連の 研究は、 今回のK DD本会議では 他セッシ ョンでも ほぼ 見当たらなか った Applied Data Scienceセッションでは、やはり実世界へのデプロイが重視されている傾向が強い 論文でもプレ ゼンでも、実 世界へのデプロイイン パクトを 重点的に 述べていることが 多い しかし、 社内人 事施策はA/Bテスト ・因果推論では 評価し づら く、 他社データ やオープンデータもアク セスし づら い では Researchセッシ ョンに 出す べきだったか …?(こ ちらに投稿しているのはア カデ ミック 中心だが …?) X: @sh1n_89 (スライド へのリンク あり)
  11. まとめ KDDへの投稿チャレンジ 残念ながらRejectとなったが、得られるものもあった シミュレーションデータでの実験により、提案手法の挙動の理解が深まった 深くサーベイすることで、世界でもあまり前例のないことがわかってきた etc. 現地聴講した所感 タレントマネジメントのワークショップはドメインが多岐に渡るため、近い問題意識の仲間を見つけるのは難しいかも 本会議での人事領域の研究も、目立ったものは見つけられなかった とはいえ、我々の研究もKDDの領域内ではあるといえそう

    総じて… どのような研究が採択されているかの肌感が得られた 技術的な内容はもちろんだが、論文の構成がトラックに合っているかも同じぐらいに重要 投稿経験によって、論文やプレゼンを観る視点も変わったのを感じる 現在は時機を伺っている状況ではあるが、再投稿のチャンスがあればまた挑戦したい 質問はお気軽にどうぞ!! X: @sh1n_89
 LinkedIn: shinya-yaku