2年かけてSONiCコミュニティにマージされた話

2年かけてSONiCコミュニティにマージされた話
NTTネットワークイノベーションセンタ
中野 寛二

SONiC Workshop Japan 2025
https://sonic.connpass.com/event/345182/

Transcript

1. 2年かけてSONiCコミュニティにマージされた話 日本電信電話株式会社 NTTネットワークイノベーションセンタ 中野 寛二
2. 1 Copyright 2025 NTT CORPORATION 目次 • SONiCについて • NTTの考えるSONiCの課題 • 提案したfpmsyncd拡張 • マージまでの流れ • まとめ
3. 2 Copyright 2023 NTT CORPORATION SONiCについて • SONiCはオープンなネットワークOSである。 • MicrosoftがOCP(Open Compute Project)に2016年に寄贈し、2022まではOCP Networking傘下、2022以降はLinux Foundationで管理されている。 • コンテナベースアーキテクチャ • Docker (標準) • Kubernetes • Redis DB集中管理システム • Pub/Subメッセージング(Redis) • SAIを用いたスイッチASIC制御 出展: https://github.com/sonic-net/SONiC/wiki/Architecture
4. 3 Copyright 2025 NTT CORPORATION SONiCの課題 プレーン 分類 コミュニティSONiCの状況/課題 検討したアプローチ マネジメント 設定変更コマンド体系 コマンド数が少ない。 KLISH CLI拡張 (Management Framework) L2/L3設定コマンド体系が異なる 外部制御プロトコル 設定項目が限定的 YANG拡張 (Management Framework) REST, gNMIのみ。旧来から利用するNETCONF に対応不可。相互接続性に難あり。 NETCONF拡張 (Management Framework) コントロール ルーティングプロトコル 標準ではBGPのみ利用可。OSPF等のIGPサポート 不可。 COPP関連の設定ファイル変更 ECMP経路処理 旧来の経路追加メッセージのみ利用可。Nexthop Group (netlinkメッセージ)が利用不可。 Fpmsyncd機能*拡張 *fpm形式のnetlinkメッセージの経路更新メッ セージをRedis DBに同期する機能 データ 伝送機能のサポート • Alibabaによる伝送機能のサポートの議論して いるが対応ハードウェアの入手性に難あり。 • 市中製品による伝送機能の実装 SAIのサポート • SAIサポートの対応状況がASIC毎に異なる。 • BroadcomはSAIフルスペックをサポート不可 • SAIの多くのAPIに準拠していた Intel Tofinoが開発中止。機能拡 張には他チップ検討要 • Broadcomはコミュニティ版 libsaiに意図的に制限があるため メーカとの連携検討要 • 2022年からSONiCの取り組みをしていく中で検討してきた課題
5. 4 Copyright 2025 NTT CORPORATION Nexthop Groupとは • Nexthop Groupは、nexthop情報をnexthop objectとroute objectで分離をしている。 • nexthop groupのメリットとして、「メモリ消費量の削減」、「追加・更新に必要な時間 の短縮」がある。 route prefix dev gateway route prefix nexthop nexthop dev(出力IF) gateway(転送先) route Prefix nexthop nexthop dev gateway nexthop dev gateway nexthop dev(出力IF) gateway(転送先) nexthop group nexthop[N] Nexthop Group機能 Nexthop Group機能なし 参考：https://zenn.dev/ebiken_sdn/articles/a2b05db7af8048
6. 5 Copyright 2025 NTT CORPORATION 提案したfpmsyncd拡張の概要 • 経路処理の効率化であるNext Hop GroupにDBからASICまでは対応している。 • FRRとAPPL_DB間のfpmsyncdはNext Hop Groupに非対応である。 • fpmsyncdをNext Hop Group対応を行い経路処理の効率化を目指す。 bgp container (FRR) staticd bgpd zabra [dplane_fpm_nl] [zebra.conf] fpmsyncd Tcp.port 2620 format: netlink database container (radis-server) CONFIG_DB APPL_DB ASIC_DB ①設定有効化 ② fpm use-nexthop-group オプションの有効化 ③ fpmメッセージ処理の有効化 ④ fpmメッセージ処理の実行 ⑤NEXTHOP_GROUP_TABLE エントリを作成 2 1 3 4 5
7. 6 Copyright 2025 NTT CORPORATION Fpmsyncd拡張の動作 • Next Hop Groupを使用しない場合は、zebraからRTM_NEWROUTEをfpmsyncdで ROUTE_TABLEに変換してAPPL_DBに送信する。 • Next Hop Groupを使用する場合は、zebraからRTM_NEWNEXTHOPをfpmsyncdで NEXT_HOP_GROUP_TABLEとROUTE_TABLEに変換して送信する。
8. 7 Copyright 2025 NTT CORPORATION Fpmsyncd拡張の動作 • 測定には仮想版(sonic-vs)で1万経路~50万経路までBGP経路の印加を行い切り替え時 間の測定を行った。 • 測定した結果、NexthopGroup対応により性能向上が見えた。 Spine1 (sonic-vs) Spine2 (sonic-vs) Leaf1 (sonic-vs) Leaf2 (sonic-vs) 試験機
9. 8 Copyright 2025 NTT CORPORATION SONiCへのアップストリーム方法 • SONiCに機能提案を行う際に次の開発サイクルを行う。 • 当該ブランチのリリース日までに完成しなかった機能が次 のリリース以降に実装される。 https://github.com/sonic-net/SONiC/wiki/release_train Plan : 次回リリースのロードマップに追加するように、コミュニティに機 能提案する。 また、HLDの概要を提案するのとレビューの日付 を決定する。 Design review : HLDには詳細なデザインとSONiCアーキテクチャへの適合性 を記載することが必要になる。HLDはコミュニティからレビュー が行われる。 Coding & Test : HLDに従ってコーディングとテスト行う。HLDレビュー結果に よってコード修正が必要となる。 Release : 機能を実装したブランチがリリース日に提供される。ブランチの 動作検証/コード修正期間(1-2ヶ月)が設けてあり、その間に当 該機能の検証/修正作業を行う。 Plan Design Coding & Test Release
10. 9 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり https://lists.sonicfoundation.dev/g/sonic- dev/message/317?p=%2C%2C%2C20%2C0%2C0%2C0%3A%3Acreated%2C0%2C202311%2C20%2C2%2C40%2C99214915 2023年 2024年 2025 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 HLD PR HLDの公開 & 機能提案 HLDレビュー Routing WG HLDレビュー SONiC community Meeting Code PR HLDレビュー日の打診 HLD 修正 Code 修正 & Test 機能提案期間 HLDレビュー期間 Code PR作成 release コミュニティのマイルストーン NTTの状況
11. 10 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり https://lists.sonicfoundation.dev/g/sonic- dev/message/317?p=%2C%2C%2C20%2C0%2C0%2C0%3A%3Acreated%2C0%2C202311%2C20%2C2%2C40%2C99214915 2023年 2024年 2025 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 HLD PR HLDの公開 & 機能提案 HLDレビュー Routing WG HLDレビュー SONiC community Meeting Code PR HLDレビュー日の打診 HLD 修正 Code 修正 & Test 機能提案期間 HLDレビュー期間 Code PR作成 release コミュニティのマイルストーン NTTの状況
12. 11 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり HLDの作成 • SONiCのGithubに記載しているテンプレートに従いHLDの作成する
13. 12 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり HLDの作成 • SONiCのGithubに記載しているテンプレートに従いHLDの作成する テンプレートがあるので記載するだけ
14. 13 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり https://lists.sonicfoundation.dev/g/sonic- dev/message/317?p=%2C%2C%2C20%2C0%2C0%2C0%3A%3Acreated%2C0%2C202311%2C20%2C2%2C40%2C99214915 2023年 2024年 2025 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 HLD PR HLDの公開 & 機能提案 HLDレビュー Routing WG HLDレビュー SONiC community Meeting Code PR HLDレビュー日の打診 HLD 修正 Code 修正 & Test 機能提案期間 HLDレビュー期間 Code PR作成 release コミュニティのマイルストーン NTTの状況
15. 14 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり PRしたfpmsyncd拡張のHLDはコミュニティミーティング及び Routing WGでのレビューにて、Next Hop Group機能の必要性が 認められ機能追加が承認された HLDレビューでは、次の確認があり対応を行った • デフォルトはDisable動作が必要 • Enable/Disableの追加するため修正
16. 15 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり https://lists.sonicfoundation.dev/g/sonic- dev/message/317?p=%2C%2C%2C20%2C0%2C0%2C0%3A%3Acreated%2C0%2C202311%2C20%2C2%2C40%2C99214915 2023年 2024年 2025 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 HLD PR HLDの公開 & 機能提案 HLDレビュー Routing WG HLDレビュー SONiC community Meeting Code PR HLDレビュー日の打診 HLD 修正 Code 修正 & Test 機能提案期間 HLDレビュー期間 Code PR作成 release コミュニティのマイルストーン NTTの状況
17. 16 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり Code PRの実施 • HLDのPRに関連するコードを記載する
18. 17 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり https://lists.sonicfoundation.dev/g/sonic- dev/message/317?p=%2C%2C%2C20%2C0%2C0%2C0%3A%3Acreated%2C0%2C202311%2C20%2C2%2C40%2C99214915 2023年 2024年 2025 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 HLD PR HLDの公開 & 機能提案 HLDレビュー Routing WG HLDレビュー SONiC community Meeting Code PR HLDレビュー日の打診 HLD 修正 Code 修正 & Test 機能提案期間 HLDレビュー期間 Code PR作成 release コミュニティのマイルストーン NTTの状況
19. 18 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり コードの修正例 ・他の実装に合わせて実装を修正してほしいとコミュニティメン バからリクエストがあり対応
20. 19 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり https://lists.sonicfoundation.dev/g/sonic- dev/message/317?p=%2C%2C%2C20%2C0%2C0%2C0%3A%3Acreated%2C0%2C202311%2C20%2C2%2C40%2C99214915 2023年 2024年 2025 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 HLD PR HLDの公開 & 機能提案 HLDレビュー Routing WG HLDレビュー SONiC community Meeting Code PR HLDレビュー日の打診 HLD 修正 Code 修正 & Test 機能提案期間 HLDレビュー期間 Code PR作成 release コミュニティのマイルストーン NTTの状況
21. 20 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり パフォーマンスについてコミュニティメンバから懸念点のコメント対応 FRRのパフォーマンス問題でNextHop Groupに必 要なメッセージは無効化することになった 中野 Nexthop GroupはSONiCのパフォーマンス向 上に必要だ パフォーマンス調査をしたら関係なかった
22. 21 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり https://lists.sonicfoundation.dev/g/sonic- dev/message/317?p=%2C%2C%2C20%2C0%2C0%2C0%3A%3Acreated%2C0%2C202311%2C20%2C2%2C40%2C99214915 2023年 2024年 2025 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 HLD PR HLDの公開 & 機能提案 HLDレビュー Routing WG HLDレビュー SONiC community Meeting Code PR HLDレビュー日の打診 HLD 修正 Code 修正 & Test 機能提案期間 HLDレビュー期間 Code PR作成 release コミュニティのマイルストーン NTTの状況
23. 22 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり • PR承認者から連絡がなくSONiCコミュニティのプロマネに連絡しても 進まない状況でありキーマンへの働きかけが難しい状況 • テキストベースでの議論では限界があるので、マージに向けてキーマ ンとF2F議論
24. 23 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり https://lists.sonicfoundation.dev/g/sonic- dev/message/317?p=%2C%2C%2C20%2C0%2C0%2C0%3A%3Acreated%2C0%2C202311%2C20%2C2%2C40%2C99214915 2023年 2024年 2025 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 HLD PR HLDの公開 & 機能提案 HLDレビュー Routing WG HLDレビュー SONiC community Meeting Code PR HLDレビュー日の打診 HLD 修正 Code 修正 & Test 機能提案期間 HLDレビュー期間 Code PR作成 release コミュニティのマイルストーン NTTの状況
25. 24 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり テストコード実装 • テストコードは、80%以上のcoverageが必要
26. 25 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり https://lists.sonicfoundation.dev/g/sonic- dev/message/317?p=%2C%2C%2C20%2C0%2C0%2C0%3A%3Acreated%2C0%2C202311%2C20%2C2%2C40%2C99214915 2023年 2024年 2025 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 HLD PR HLDの公開 & 機能提案 HLDレビュー Routing WG HLDレビュー SONiC community Meeting Code PR HLDレビュー日の打診 HLD 修正 Code 修正 & Test 機能提案期間 HLDレビュー期間 Code PR作成 release コミュニティのマイルストーン NTTの状況
27. 26 Copyright 2025 NTT CORPORATION マージまでの道のり コミュニティからのコメント対して対応を行いコード修正&足りないコー ドの追加をすることで無事にマージ
28. 27 Copyright 2025 NTT CORPORATION fpmsyncd以外の改善 プレーン 分類 コミュニティSONiCの状況/課題 検討したアプローチ マネジメント 設定変更コマンド体系 コマンド数が少ない。 KLISH CLI拡張 (Management Framework) L2/L3設定コマンド体系が異なる 外部制御プロトコル 設定項目が限定的 YANG拡張 (Management Framework) REST, gNMIのみ。旧来から利用するNETCONF に対応不可。相互接続性に難あり。 NETCONF拡張 (Management Framework) コントロール ルーティングプロトコル 標準ではBGPのみ利用可。OSPF等のIGPサポート 不可。 COPP関連の設定ファイル変更 ECMP経路処理 旧来の経路追加メッセージのみ利用可。Nexthop Group (netlinkメッセージ)が利用不可。 Fpmsyncd機能*拡張 *fpm形式のnetlinkメッセージの経路更新メッ セージをRedis DBに同期する機能 データ 伝送機能のサポート • Alibabaによる伝送機能のサポートの議論して いるが対応ハードウェアの入手性に難あり。 • 市中製品による伝送機能の実装 SAIのサポート • SAIサポートの対応状況がASIC毎に異なる。 • BroadcomはSAIフルスペックをサポート不可 • SAIの多くのAPIに準拠していた Intel Tofinoが開発中止。機能拡 張には他チップ検討要 • Broadcomはコミュニティ版 libsaiに意図的に制限があるため メーカとの連携検討要
29. 28 Copyright 2025 NTT CORPORATION fpmsyncd以外の改善 • OpenConfig support for Ethernet interfaces HLDによると OpenConfigでInterfaceカウンタの取得できないらしい • 実機で動作確認した結果、取得できた ⇒ HLDの修正PR実施 ./gnmi_get -notls -xpath "/openconfig- interfaces:interfaces/interface[name="Ethernet16"]" -target_addr "counters": { "in-broadcast-pkts": "0", "in-discards": "2", "in-errors": "0", "in-multicast-pkts": "6389", "in-octets": "1597018", "in-pkts": "6389", "in-unicast-pkts": "0", "out-broadcast-pkts": "0", "out-discards": "0", "out-errors": "0", "out-multicast-pkts": "6391", "out-octets": "1641995", "out-pkts": "6391", "out-unicast-pkts": "0" },
30. 29 Copyright 2025 NTT CORPORATION fpmsyncd以外の改善 • トランシーバ情報の取得するためにopenconfig-platform- transceiver.yangサポートの提案
31. 30 Copyright 2025 NTT CORPORATION まとめ • 2年をかけて、SONiCコミュニティに対して提案してきた機能がマージされた。 • 本提案では、NextHop Groupの機能に対応するために必要な拡張を行った。 • マージに向けて、提案機能の必要性や有用性について、コミュニティメンバー への説明・議論を重ねながら進めた。また、コミュニティからのフィードバッ クを受けてHLDおよびコードの修正を継続的に実施した。 • アップストリームは、新機能提案以外にもHLD修正やバグ修正など幅広くコ ミュニティに貢献することができる。
32. Your Value Partner 本研究成果は、国立研究開発法人情報通信研究機構（NICT）の 助成事業（JPJ012368G60401）により得られたものです。