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AI駆動開発で仕様はどこまで書くべきか? ― 人とAIの責務境界から考える開発プロセスの実践

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September 26, 2026

AI駆動開発で仕様はどこまで書くべきか? ― 人とAIの責務境界から考える開発プロセスの実践

AIエージェントに設計・実装を任せるため、詳細な仕様を先に定義する「仕様駆動開発」が注目されています。一方で、AIの出力を安定させようとするほど、設計判断や実装方針まで人が仕様に書く必要が生じ、仕様の作成・レビュー負荷が増えてしまいます。 本セッションでは、人が合意・管理すべき範囲を「境界仕様」として定め、その境界内での設計判断や実装をAIエージェントに委譲する開発プロセス「BSDD」を紹介します。20件の実案件への適用結果をもとに、責務境界の定め方、AIの自律実行を支える開発ハーネス、人が確認すべきポイント、導入によって得られた効果と実践上の課題を共有します。

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Transcript

  1. 自己紹介 • • • 松井 高宏|合同会社DMM.com プラットフォーム開発本部 ユーザーレビュー基盤のバックエンド開発リーダー それと並走し、AI駆動開発の実践・改善・研究に取り組んでいます 業務の取り組み

    研究・発表 ユーザーレビュー基盤: 開発・運用 ・人とAIの合意領域に関する研究(優秀論文賞) プロセス改善: AI駆動開発の導入 ・人とAIの責務境界モデルにおける提案(BSDD) © DMM
  2. SQiP シンポジウム 課題:仕様範囲の拡大 • SDDは設計意図を明示できる一方,期待どおり実装させると仕様が詳細化しやすい • 具体的には, 内部設計・実装方針まで人の記述範囲が広がる • 結果,

    軽量な変更でも仕様が1,000行規模となり, 仕様作成・レビュー負荷が増大した 仕様 AIが実装 背景:人とAIでは前提や解釈を 完全には共有しきれず、その 差を埋めようとする側面がある 再実装 仕様を追記 © DMM 期待と異なる 11
  3. SQiP シンポジウム 課題の本質:人とAIの責務境界の曖昧さ • 仕様を定めない開発:人が決めるべき設計までAIに任せ, 意図しない実装を招く • SDD:AIに任せられる事項まで人が仕様を書き, 作成・レビュー負担が増える 仕様を定めない開発

    (Vibe Coding等) SDD(仕様駆動開発) AIに任せすぎる 人が書きすぎる 意図しない実装 作成・レビュー負担 共通原因:人とAIの責務境界が曖昧である では,人は何を決め,どこからAIに任せるべきか? © DMM 12
  4. 補足2: BSDDの新規性 • • SQiP シンポジウム SDD • 合意事項に加えて, 内部設計・実装方針まで人が仕様として記載

    • そのため, 仕様作成・レビュー範囲が広がりやすい BSDD • 人とAIの責務境界を「サービス間合意が必要か」で判断 • 合意が必要な事項 → 人が決定 • 合意不要な内部設計・実装方針 → AIに委譲 → 人の仕様作成・レビュー範囲を縮小 © DMM 15
  5. SQiP シンポジウム 境界仕様の判断基準 • AIが案件の目的・要求から仕様候補を抽出し、2つの基準で記載範囲を判断する 1 2 判定例(API改修案件) この案件で定義すべき対象か? NO:記載しない

    サービス間で合意が必要か? YES:境界仕様 NO:実行層へ委譲 候補 ①定義 ②合意 判定 画面構成 NO − 記載しない API I/F YES YES 境界仕様 内部設計 YES NO 実行層 境界仕様に限定することで, 仕様作成の負荷・レビュー対象を縮小させる © DMM 19
  6. SQiP シンポジウム AIに自律実行させる仕組み • 実行層では、既存のハーネス及びループエンジニアリングの仕組みを採用 • 境界仕様と実行コンテキストを与え、AIはこれらをもとに設計・実装を具体化する 境界仕様 既存コード API/DB定義

    開発ルール ① 実行計画 (=何を実現するか) ② 実装エージェント群 実行コンテキスト (=守るべき前提・制約) 修正・再検証 ③ CI・AIレビュー PR作成 OK © DMM 25
  7. SQiP シンポジウム BSDD適用例:一括削除機能の実行フロー • 一括削除機能を例に、境界仕様からPR作成までの流れを示す 実行計画 境界仕様 PR 作業内容 エージェント

    一括削除機能 PR1 API契約 • Open API • 削除上限 • 画面:結果・履歴 • API入出力 PR2 データ層 • DB・Domain PR3 BE機能 • Use Case・Handler PR4 FE実装 • Storybook PR5 API接続 • API Connect PR3の実行例 Use Case・Handler 実装・テスト CI ・AIレビュー + 実行コンテキスト 人が確認 © DMM PR作成 人が確認 26
  8. SQiP シンポジウム c.評価結果(定量) • 仕様を境界仕様に絞った結果、仕様量・策定時間・実装時間はいずれも縮小した 観点 結果(従来SDDと比較) 仕様範囲 • 1,213行

    → 228行(84.5%削減) 仕様策定 • 4h → 1h(75%短縮) 実装時間 • 8h → 6h(25%短縮) 運用(6ヶ月) • 重大事象(※):観測0件 ※評価対象:仕様20案件/時間比較各8案件/運用8案件×6ヶ月 ※重大事象:本番障害・RB・再合意を要する仕様手戻り © DMM 30
  9. SQiP シンポジウム 結論 • • BSDDでは, サービス間合意が必要な事項を「境界仕様」として人が確定する • 内部設計・実装方針は、実行層でAIが具体化する •

    結果として、人が確認する仕様範囲を絞ることができた 本質は仕様を減らすことではなく、 人が決める範囲とAIに任せる範囲を分離することにある • 今後は適用範囲を広げ、他の開発形態でも有効性を検証する © DMM 32
  10. 現在、大規模案件でもBSDDを適用しています 案件 • 画面:約10画面 • API :約12本 • 関係者:約10名 仕様策定〜関係者合意

    約 6 時間 成果物ベースでは 約1人月相当の仕様作成規模 現在:開発進捗 約50%、大きな手戻りなく進行中 © DMM
  11. 補足:Q&A Q. 境界仕様は外部設計と違うのですか? • 外部設計の簡略版ではなく、 サービス間合意の要否で仕様範囲を再構成する点が特徴です。 Q. なぜ仕様を減らしても開発が成立した のですか? •

    必要な情報を削ったのではなく、合意事項だけを人が確定し、内部設 計・実装方針は実行層でAIが具体化したためです。 Q. 仕様を実行コンテキストへ移しただけ では? • 単純な移管ではなく、既存コード・開発ルール・ドメイン知識を再利 用してAIが具体化します。 Q.なぜサービス間合意を境界にするのです か? • 複数サービスに影響する事項は、人が事前に合意する必要があるため です。 Q.境界判断は主観的になりませんか? • サービス間合意が必要かを判断基準としています。 Q.境界仕様が不足した場合は? • 合意事項への影響を確認し、境界仕様を見直します。 Q.仕様を減らして品質は問題ないのです か? • 初期評価では重大事象は観測されませんでした。 • 詳細な品質評価は今後の課題です。 Q. BSDDとハーネスの違いは? • BSDDは人とAIの責務境界を決める考え方、 ハーネスはAIの実行を支える仕組みです。 © DMM 40
  12. 補足:Q&A Q.どの開発に適用できますか? • 本研究ではマイクロサービスの既存改修で評価しました。新規 開発やモノリスは今後の検証対象です。 Q. 品質評価は十分ですか? • 現時点では初期評価です。本番障害・RB・仕様不足を確認し, 内部品質や保守性などは今後評価します。

    Q.境界仕様が不足していた場合は? • 合意事項に影響する場合は,境界定義層に戻して確認・修正し ます。 Q.実行計画は詳細設計ではないのですか? • 詳細設計ではなく,AIが実装を進める単位・順序・担当を示す 実装計画です。 Q.ハーネスが未成熟でも使えますか? • 適用は可能ですが,効果は限定的です。 • AIの安定した実行にはハーネス整備も重要です。 © DMM 41