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Top 4セキュリティ会議に一通り論文が採択されるまでの道のりと展望 / Top 4 Security Grand Slam

コンピュータセキュリティシンポジウム2026(CSS 2026),企画セッション「Top 4セキュリティ会議に論文を通すには?~グランドスラムへの道のりと展望~」

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Takao Murakami

October 27, 2026

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Transcript

  1. 自己紹介  略歴  2006-2014: 日立製作所  研究テーマ:生体認証  生体認証の難関国際会議BTAS、ICB、IJCB

    (CORE Rank = B相当)を目指して研究していた  2014-2023: 産総研  研究テーマ:プライバシー保護(主に差分プライバシー)  入所後、セキュリティトップ会議(Top 4会議)を意識するようになる  2016年にトップ会議に初投稿。ここから長い戦いが始まる( 産総研時代は計4本採択)  2023-現在: 統数研  研究テーマ:プライバシー保護(主に差分プライバシー)  引き続き、セキュリティトップ会議採択に向けて研究( 計4本採択) 3
  2. セキュリティトップ会議の採択論文  採択論文(S&P: 1件、CCS: 1件、USENIX Security: 4件、NDSS: 2件) 4 Takao

    Murakami, Yusuke Kawamoto, “Utility-Optimized Local Differential Privacy Mechanisms for Distribution Estimation,” USENIX Security 2019.  Jacob Imola*, Takao Murakami*, Kamalika Chaudhuri (*: equal contribution), “Locally Differentially Private Analysis of Graph Statistics,” USENIX Security 2021.  Jacob Imola*, Takao Murakami*, Kamalika Chaudhuri (*: equal contribution), “CommunicationEfficient Triangle Counting under Local Differential Privacy,” USENIX Security 2022.  Jacob Imola*, Takao Murakami*, Kamalika Chaudhuri (*: equal contribution), “Differentially Private Triangle and 4-Cycle Counting in the Shuffle Model,” CCS 2022.  Takao Murakami, Yuichi Sei, Reo Eriguchi, “Augmented Shuffle Protocols for Accurate and Robust Frequency Estimation under Differential Privacy,” S&P 2025.  Takao Murakami, Yuichi Sei, Reo Eriguchi, “Augmented Shuffle Differential Privacy Protocols for Large-Domain Categorical and Key-Value Data,” NDSS 2026.  グランドスラム達成  Takao Murakami, Yuichi Sei, Reo Eriguchi, “Fully Oblivious Differential Privacy for Frequency Estimation in the Augmented Shuffle Model with Trusted Processors,” USENIX Security 2026.  Ting-Wei Liao, Chih-Hsun Lin, Chia-Mu Yu, Yu-Lin Tsai, Jun Sakuma, Takao Murakami, ChunYing Huang, Hiroaki Kikuchi, “Data Poisoning Attacks to Locally Differentially Private Range Query Protocols”, NDSS 2027 (to appear).    (良くも悪くも)主筆論文が多い。主筆/co-first author: 7件、共著: 1件
  3. セキュリティトップ会議のプログラム委員  プログラム委員(S&P: 1年、CCS: 3年、USENIX Security: 4年) IEEE S&P Program

    Committee member (2027)  ACM CCS Program Committee member (2024, 2025, 2026)  USENIX Security Program Committee member (2021, 2022, 2024, 2025)    1年につき1-2つの会議のPC memberを担当 (年3つ以上は、査読の負担が大きすぎるため推奨されていない) 5
  4. 7 グランドスラム達成までの道のり  2014年度以降(生体認証時代は除く) トップ会議に1本目が採択されるまで(2014-2019)  グランドスラムを達成するまで(2019-2026)  達成後(2026-) 

    の3つの期間に分けられる  グランドスラム 年度 14 15 16 17 18 19 SEC 20 21 SEC 22 23 24 25 SEC 26 27 SEC CCS 採択 S&P NDSS NDSS トップ会議に1本目が採択されるまで グランドスラムを達成するまで 達成後
  5. 8 期間1: トップ会議に1本目が採択されるまで(2014-2019)  2014-2015: IEEE journalとの戦い トップ会議の論文を大量に調査し、憧れを持つようになる  一方、この頃はジャーナル成果が求められていたため、IEEE

    journalの採択を目指していた  2016年1月にIEEE TIFS (Trans. Information Forensics and Security) の採択通知が来る   2016-2019: トップ会議との戦い 2016年5月に初めてトップ会議(CCS)に投稿 → reject  暫くreject or 諦めてランクを落とす日々が続く(この間、準トップ会議PETSに2本採択)  2019年にようやくトップ会議(USENIX Security)に採択(3年かかった…)  年度 14 15 16 17 18 19 SEC IEEE journalとの戦い トップ会議との戦い
  6. 9 期間2: グランドスラムを達成するまで(2019-2026)  2019-2024: グランドスラムを意識する前  最初は、グランドスラムは意識せず、トップ会議の採択数を増やすことに興味があった 理由1: S&P、NDSSに通すのが困難だと思っていたから(後述)

     理由2: グランドスラムより、採択数の方が重要だと思っていたから   2020年にUCSDに留学し共同研究を開始( 3本採択)。2022年度は出向により研究中断  2024-2026: グランドスラムを意識してから 2024年6月に(S&Pしか〆切がなかったためダメもとで)S&Pに投稿  採択  残すはNDSSのみとなり、少し意識するように…    2024年12月: S&P共著者との懇親会にて「これは来年NDSSに通すしかないですね!」と盛り上がる 丁度、NDSSのscopeに入りそうな研究をしていたため、2025年4月にNDSSに投稿  採択 グランドスラム 年度 19 SEC 20 21 22 SEC SEC CCS グランドスラム意識前 23 24 25 26 S&P 意識後 NDSS
  7. 私(プライバシー保護研究者)から見たTop 4会議の特徴 11  S&P  新規性は、Top 4の中でも一番問われる印象 根拠1: 単純に採択率が低い(12%程度)。“Top

    of the top”, “most prestigious”と言われることもある  根拠2: S&Pでreject後、NDSSで採択されたことあり(個人的な経験)   NDSS  スコープ的にはdistributed system寄りなため、プライバシー研究者は注意が必要   根拠: 過去に「スコープがややずれている」と言われて落ちた経験あり(その後、PETSに採択) ただ、スコープさえ合えば、4つの中では狙いやすい?  CCS, USENIX Security 新規性 (or インパクト) 新規性・スコープ共に丁度良い印象 (ただ、査読が厳しいこともある…)  USENIX Securityは、最近はAIプライバシー、 差分プライバシーの論文が結構出ている  S&P CCS, SEC NDSS スコープ(プライバシーから離れている度合い)
  8. トップ会議採択のための(私の)戦略 13  注意点 ここでのお話は主筆でトップ会議を目指すための戦略がメイン(主に若手・中堅向け)  分野や状況によって個々の戦略は大きく変わり得るので、ここでの話は参考程度のものと 考えてください(取捨選択しつつ、ぜひご自身にとって最適な戦略を見つけてください)  

    主筆論文について 良い面: 最大の貢献者, 深い知識が得られる, 評価に繋がる, 国際的認知度が高まる, etc.  悪い面: 1本の論文を仕上げるのに時間がかかる(スケールしない), 精神的負担, etc.   特に以下の疑問に(私なりに)お答えします 1. 2. トップ会議に論文を通すにはどうすれば良いか?何が必要か? ホームラン(トップ会議)ばかり狙っていると、ヒット(論文)が1本も出なくなるのでは?
  9. トップ会議採択のための(私の)戦略 14  戦略1: 研究遂行力(玄人実行力*)を鍛える 我流の論文はまず採択されない  研究遂行力: 専門知識(基礎理論・先行研究)、緻密で網羅的な解析・実験、論文執筆力 

    効率的に鍛える方法: 良き指導者に出会う、質の高い会議で良い査読コメントをもらう、etc.   その上で、立ちはだかる壁は新規性(素人発想力*)  戦略2: 良き共著者を見つける  あまり単著にこだわらない   特に学際性の高い分野では、各分野の専門家と組んで、うまく仕事を分担することが重要   単著も良い面があるが、効率性が低く、気づかず間違った方向に突き進むリスクがある 私の分野の場合: 暗号理論、統計数学、機械学習、etc. 定期的に打合せを実施し、アイデアや意見をぶつけ合う  新規性の創出 *金出武雄,独創はひらめかない:「素人発想、玄人実行」の法則,日本経済進運出版社,2012
  10. トップ会議採択のための(私の)戦略  戦略3:「準トップ⇒トップ」戦略 まずは準トップ会議に論文を通す(質の高いジャーナルでも可)  準トップ会議はトップ会議よりは狙いやすく、かつ査読の質が高いことも多い  年1-2本など、constantに準トップ会議に通せるようになれば、 「トップ会議に論文が通せる日が来るのは時間の問題」(個人的見解) 

     戦略4: 「トップ⇒準トップ」戦略 「行けそうかな?」と思う論文はトップ会議に出して、ダメだったら (大きな欠点があると分かったら)コメントを反映し、準トップに出す  準トップに通ればそれも大きな成果。また、通れば次の研究に移れる   戦略5: 複数の研究を同時に走らせる ヒットを着実に出しつつ、ホームランを狙う(準トップは三塁打くらい?)  ただ、あまりに多くの研究を走らせると、リソース配分が難しくなるため注意。ある期間は 一つの研究に集中する、同時に走らせる研究の数を2つくらいにするなど、工夫が必要。  準トップ会議(CORE Rank A) PETS, EuroS&P, FC, AsiaCCS, ACSAC, ESORICS, CSF, … 戦略3 戦略4 トップ会議(CORE Rank A*) S&P, CCS, USENIX Security, NDSS 15
  11. 18 国内コミュニティにとっての展望  ここ数年の状況  日本人の採択数は増えてきているが、組織単位で見て採択数はまだまだ多くない 2022~2026年におけるTop4会議の採択数(大学別) 件数 電通大 東大

    12 10 東京 横浜 兵庫 東京 早稲田 慶応大 東北大 京都大 東海大 金沢大 科学大 大 国立大 県立大 都立大 7 4 4 3 3 2 1 1 1 1 (早稲田大学 森先生が ChatGPT-6 Astra Ultra を用いて集計し、2026/9/7にX上で公開されていた情報)  個人的見解 これは、個人の成果が目立ちやすい(組織に匹敵する成果を出すことが可能)という ことでもあるため、高いモチベーションが得られやすい、という側面もあるのでは?  トップ会議は長距離マラソンのようなもの。時間はかかるが走り続ければ、必ずゴールに 辿り着く。まずスタート地点に立つ(高いモチベーションを持つ)ことが重要ではないか   個人にとっても組織にとってもプラスになるはず。皆さんでこの業界を盛り上げていきましょう!