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匠MethodとU理論におけるプレゼンシング/ Presencing in the Ta...

匠MethodとU理論におけるプレゼンシング/ Presencing in the Takumi-Method and Theory-U

匠Method User Group Meetup#8〜U理論で匠Methodのモデリングを深めよう( https://takumi-method-ug.connpass.com/event/331591/ ) のパネルディスカッションに参加した匠Method User Group 幹事の山崎仁さんの気づきをまとめた資料です。

匠Method User Group

October 07, 2024
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Transcript

  1. 目次 ◼ U理論とは ◼ U理論の7つのプロセス ◼ U理論と匠Methodの関係 ◼ U理論から見る匠Methodの課題 ◼

    プレゼンシングのプロセス ◼ プレゼンシングの意義 ◼ プレゼンシングの実践方法 ◼ U理論から見る匠Methodの課題は本当に課題なのか? ◼ プレゼンシングのモデルはなぜ匠Methodになくてもよいのか ◼ まとめ ©Actier, Inc. All rights reserved.
  2. U理論とは ©Actier, Inc. All rights reserved. 概要 U理論はオットー・シャーマーによって提唱された理論で、個人や組織が変革を遂げるプロセスを説明するフレーム ワークです。U理論は、問題解決や変革のために「U字型のプロセス」をたどることが重要であると説いています。これ は単に過去の経験に基づくのではなく、未来の可能性に開かれた心で状況に向き合い、新しい洞察を得て行動する

    という流れになります。 特徴 ◼ 内面的な変革 外的な変革だけでなく、内面的な洞察や意識の変化が鍵となります。U理論は、変革のためにはリーダー自身や組織 の構成員が、個々の内面的なブロックを解消し、より深いレベルでのつながりを持つことが不可欠であると説いていま す。 ◼ 未来を創造する U理論では、従来の過去のデータや経験に基づいた予測ではなく、未来の可能性を引き出し、創造することが重要で す。これにより、従来の枠組みを超えたイノベーションが促進されます。
  3. U理論の7つのプロセス ©Actier, Inc. All rights reserved. Level1 Level2 Level3 Level4

    ダウンローディング Downloading 見る Seeing 感じ取る Sensing プレゼンシング Presencing 結晶化 Crystallizing プロトタイピング Prototyping 実践 Performing 課題にアクセス 開かれた思考 開かれた心 開かれた意志 U理論では問題解決のプロセスを下記の図のようなU字型のプロセスとして表現しています。最初の4プロセスが意識変容を起こすプロ セス、残りの3つのプロセスを行動変容を起こすプロセスとなります。 意識変容 行動変容 保留する 見方を転換する 手放す 迎え入れる 具体化する 実体化する プロセス 行動 レベル
  4. U理論の7つのプロセス解説 ©Actier, Inc. All rights reserved. ダウンローディング Downloading 課題に対して過去の経験によって形成された枠組みの中で思考が再現され、それに意識が集中している状態です。 見る

    Seeing 偏見や思い込みを外して、目の前の事象や情報に集中している状態です。 感じ取る Sensing 過去の経験によって形成された枠組みが崩れ、新しい視点から自分や状況を捉えられる状態です。これにより、対人 関係や話し合いの場面で共感性が高まり、内省的な対話が可能になります。 プレゼンシング Presencing 自分自身や組織がどの方向に進むべきか、全体的な視野から将来像をイメージしている状態です。このプレゼンシン グは、Presence(存在)とSensing(感知する)を組み合わせた造語で未来の可能性を体感するという意味です。 結晶化 Crystallizing プレゼンシングの状態から未来の可能性をビジョンと意図に結晶化し、具体化します。 プロトタイピング Prototyping 結晶化で得たビジョンを具体的な施策に落とし込んでいきます。 実践 Performing プロトタイピングで落とし込まれた施策を実践に移します。 意識変容 行動変容 U理論の7つのプロセスはそれぞれ以下のようになります。
  5. U理論と匠Methodの関係 ©Actier, Inc. All rights reserved. 下図はU理論に匠Methodのモデルを対応付けた図です。知の思考領域である「要求分析ツリー」が「プロトタイピング」、情の思考領域で ある「ステークホルダーモデル」と「価値分析モデル」がそれぞれ「見る」と「感じ取る」、意の思考領域である「価値デザインモデル」と「結 晶化」を対応付けることができます。 Level1

    Level2 Level3 Level4 ダウンローディング Downloading 見る Seeing 感じ取る Sensing プレゼンシング Presencing 結晶化 Crystallizing プロトタイピング Prototyping 実践 Performing U理論 ステークホルダーモデル 価値分析モデル 価値デザインモデル 要求分析ツリー 匠Method 知 意 情 情
  6. U理論から見る匠Methodの課題 ©Actier, Inc. All rights reserved. Level1 Level2 Level3 Level4

    ダウンローディング Downloading 見る Seeing 感じ取る Sensing プレゼンシング Presencing 結晶化 Crystallizing プロトタイピング Prototyping 実践 Performing U理論 ステークホルダーモデル 価値分析モデル 価値デザインモデル 要求分析ツリー 匠Method 知 意 情 情 前ページの図を再掲しています。匠MethodにはU理論における「プレゼンシング」に対応するモデルがありません。匠Methodのワーク ショップを開催すると参加者の発言が止まりやすいのが「価値デザインモデル」のところです。モデルという手段がなく、尚且つワーク ショップをやるために提示された、参加者にとって馴染みの薄い題材による実践であるため「プレゼンシング」をクリアすることが難しくなっ ていそうです。題材に知見のある人が参加者にいると価値デザインモデルが描きやすくなることが多いのですが、これは「プレゼンシン グ」をクリアしているもしくは、クリアしやすい状態にいる人が参加しているためと考えると説明できます。
  7. プレゼンシングのプロセス ©Actier, Inc. All rights reserved. 手放す Letting Go 経験や慣れたパターンを手放す必要があります。これにより、思い込みやバイアスを排除し、現実に対して新しい視点を

    持てる状態を目指します。過去のパターンを手放すことにより、従来の方法では解決できない複雑な問題に対しても柔軟 にアプローチできるようになります。 つながる Connecting with the Source 自分自身や周囲の状況を深く観察するプロセスです。偏見を排除し、目の前の現実や周囲の環境、関係者間にある「全 体的なつながり」を感じ取ります。通常の意識の枠を超えた直感や感覚が重要で、頭で考えるだけではなく、心で状況を 「感知」し、全体の流れや兆しに対して開かれた状態を保つことが求められます。 迎え入れる Letting Come U理論における最も深い内的プロセスの一つであり、新たな未来や可能性が生まれる鍵となる瞬間です。この瞬間は、 従来の思考や固定観念から解放され、未来の潜在的な可能性が自然に現れる状態です。 課題への解決方法を考える前に、プレゼンシングについて深く知る必要があります。まずはプレゼンシングのプロセスを見ていきます。プ レゼンシングはU理論の中で最も重要かつ核心となる概念です。いくつかの未来の可能性を感じ取り、それを現時点に引き寄せるための 内面的な体験となります。
  8. プレゼンシングの意義 ©Actier, Inc. All rights reserved. プレゼンシングにどのような意義があるのかを考えていきます。問題解決型のアプローチでは、過去の経験やデータに基づいて未来を予 測し、それに応じて行動計画を立てることが一般的ですが、プレゼンシングでは未来の可能性を現時点で感知し、それを基に新たな行動 を創造していきます。この未来志向のアプローチは、従来の手法で解決できない課題に効果的です。 過去の制約からの解放

    手放すことで過去に縛られた判断や固定観念から解放され、新しい視点で現状や未来を見つめる準備が整います。 未来への解放 プレゼンシングでは、過去ではなく未来の可能性に心を開き、その未来の兆しを感じ取ることが重要です。未来の可能性 を受け入れることで、過去の延長線上にない、新たなビジョンやインスピレーションが浮かび上がってきます。 直感と洞察 プレゼンシングの過程では、論理的な分析や過去のデータに基づくものではなく、直感や洞察によるものです。日々の喧 騒やストレスから離れ、静かな内面的なスペースを持つことがプレゼンシングには必要となります。この段階では、頭で 考えるのではなく、感じることが重要で、未来の方向性や解決策が自然と浮かび上がってきます。 問題解決型のアプローチより未来志向のアプローチのどちらが優れているかではなく、使用する領域が違うというイメージを持つと理解しやすいと思いま す。現実に発生する様々な課題を解決するには両方のアプローチを上手く使い分けていく必要があると思います。
  9. プレゼンシングの実践方法 ©Actier, Inc. All rights reserved. プレゼンシングをより深く理解するためプレゼンシングの実践方法を調べました。以下のような方法が一般的に行われているようです。 静かな環境 日常の忙しさや外部からのノイズに影響されない環境を作り、心と身体をリラックスさせるためのスペースを整えます。ま た、普段とは異なる場所に移動することも有効です。

    自己観察 ジャーナリングなどを通じて自分の思考、感情、身体の感覚に対して深い気づきを得ます。 対話 共感的な対話や深い質問を通じて、自分の中にある潜在的な感覚や直感を引き出します。 実験 アイデアを小規模にプロトタイピングしてみることで気づきを得ます。 他にも様々な方法があるようですが、総じて言えるのはひらめきを得やすい環境を作り出すということのようです。情報を集め、深く検討した後で、その場 を離れたときや、ふとした瞬間にひらめきを得るといった体験は多くの人があると思います。こうした体験を意図的に導き出すのは難しいものですが、環境 を整えることでより導き出しやすくするというのがプレゼンシングの実践方法のように思われます。
  10. U理論から見る匠Methodの課題は本当に課題なのか? ©Actier, Inc. All rights reserved. 7枚目のスライドで匠MethodにはU理論における「プレゼンシング」に対応するモデルがないという課題を立てています。では、モデルが 存在しないことは本当に課題なのでしょうか? プレゼンシングのプロセス プレゼンシングでは手放す、つながる、迎え入れるというプロセスを得て、従来の思考や固定観念から解放され、未来の

    潜在的な可能性が自然に現れる状態を目指すことになります。 プレゼンシングの意義 プレゼンシングでは過去からの経験やデータの積み重ねよりも直感や洞察を重要視し、未来志向のアプローチで問題解 決にあたることができます。 ここまで、プレゼンシングへの理解を深めてきて上記のようなことが分かってきました。 プレゼンシングの実践方法 情報を集め、深く検討した後で、その場を離れたときなどのふとした瞬間にひらめきを得るといった、ひらめきを生みやす い環境づくりや行動を行うことがプレゼンシングの実践となります。 これらを考察した結果、U理論における「プレゼンシング」に対応するモデルが匠Methodに存在しないのは課題ではない、 モデルはなくてもよいと考えています。
  11. プレゼンシングのモデルはなぜ匠Methodになくてもよいのか ©Actier, Inc. All rights reserved. 前ページでプレゼンシングのモデルが匠Methodになくてもよいと結論付けました。モデルを描くという定型化したアプローチがプレゼンシ ングにそぐわないと考えているためです。それは、以下の理由によるものです。 直感と洞察主導 プレゼンシングは直感と洞察が主導します。直感や洞察は個人の経験や背景、また組織の文化などに大きく依存します。

    個々の状況に応じてその場の感覚や洞察に基づいた行動が求められるため、あらかじめ決まったアプローチや手順が 存在すると、その枠組みによって創造的な洞察が制限される危険があります。 環境が重要 未来の可能性が自然に訪れるひらめきを重視するプレゼンシングでは、ひらめきの訪れやすい静かな環境などを重視し ています。こうした環境はモデルを描くというアプローチで実現することが困難です。 未来を予測できない プレゼンシングは、匠Methodにおける新意識、過去の延長線上にある未来ではなく、全く新しい可能性に目を向けるプ ロセスです。モデルをどのように描くかといった定型化したアプローチがあることで未来の創造が抑制されてしまう恐れが あります。 モデルがない方がよいとまでは言いませんが、モデルがあることによってモデルを無理に描き上げ、プレゼンシングを無理矢理終えてしまう危険があリます。 モデルを描くという定型化されたアプローチではなく、柔軟で即興的なプロセスを尊重することがより重要であると結論付 けました。
  12. まとめ ©Actier, Inc. All rights reserved. U理論とは 最初にU理論について学びました。U理論は、問題解決のためにU字型のプロセスをたどるものです。そして、過去の経 験に基づくのではなく、未来の可能性に開かれた心で状況に向き合い、新しい洞察を得て行動することが大切です。 U理論と匠Methodの関係

    見るとステークホルダーモデル、感じ取ると価値分析モデル、結晶化と価値デザインモデル、プロトタイピングと要求分析 ツリーが対応づけられることが分かりました。また、匠Methodにはプレゼンシングを実現するためのモデルが存在しない ことが分かりました。 プレゼンシングのモデルは 匠Methodになくてもよい 直感や洞察が主導し、ひらめきを生む環境を重要視するプレゼンシングにはモデルを描くという定型化されたアプローチ はあまり合っていません。それよりも、もっと柔軟で即興的なプロセスを尊重することがより重要であると結論付けました。