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Takumi Kato
April 01, 2022
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Marketing
マーケティングは「販売を不要にする価値づくり」
Takumi Kato
April 01, 2022
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Transcript
マーケティングは「販売を不要にする価値づくり」 明治⼤学 商学部 加藤拓⺒ Marketing #01
位置付け 顧客管理と効果測定 戦略と実⾏ 価値づくりの考え⽅ 調査による客観的な状況把握 #01 マーケティング #02 ブランドマネジメント #04
市場調査 #07 科学的検証 #08 感性⼯学 #05 消費者⾏動 #03 ロイヤルティとCRM #10 クチコミ #09 戦略と組織能⼒ 仮説⽴案 具現化 検証 #06 知覚品質
位置付け 顧客管理と効果測定 戦略と実⾏ 価値づくりの考え⽅ 調査による客観的な状況把握 #01 マーケティング #02 ブランドマネジメント #04
市場調査 #07 科学的検証 #08 感性⼯学 #05 消費者⾏動 #03 ロイヤルティとCRM #10 クチコミ #09 戦略と組織能⼒ 仮説⽴案 具現化 検証 #06 知覚品質
1. 販売を不要にする価値づくり 2. 感性的価値の構成要素 3. コンセプトとは何か︖ 4. コンセプトとコピーの違い 5. まとめ
1. 販売を不要にする価値づくり 2. 感性的価値の構成要素 3. コンセプトとは何か︖ 4. コンセプトとコピーの違い 5. まとめ
マーケティングとは何か︖
マーケティングとは マーケティングとは,販売を不要にする価値づくり1 • 消費者がおのずと選択する価値をつくること • 消費者が欲しいと思う商品が「良い商品」 • ⾼いお⾦を払ってでも,何回でも購⼊したい商品を⽬指す 1: Drucker,
P. (1993). Management: Tasks, Responsibilities, Practices. Harper Business.
販売とは 1: ⽇経産業新聞. (2016). 平井改⾰の1500⽇. ⽇本経済新聞出版社. 販売の基本は,正しい商品を,正しい価格で,正しい販路に流し, 正しいお店の場所に,正しい状態で置く.ただそれだけ. そして,正しさを実現するために⽋かせないのがデータである.1
企業の”2つの仕事” 顧客の創造 マーケティング 販売を不要にする価値づくり イノベーション 新しい満⾜の創出 ビジネスの⽬的は顧客の想像であり,そのために企業がすべきことは マーケティングとイノベーションという2つの基本的な機能しか存在しない1 1: Drucker,
P. (1993). Management: Tasks, Responsibilities, Practices. Harper Business.
価値とは何か︖
どちらの価値が⾼いか︖ 600 Yen 100 Yen
価値とは コスト 販売価格 (付加)価値 価値とは「販売価格 コスト」 • 価値とは「価格の⾼さ」ではない •
価値とは「機能の多さ」ではない • 価値とは「技術の新しさ」ではない
600 Yen 100 Yen 「価値が⾼い≠価格が⾼い」であり,⾜せば⾜すほど良いわけでは断じてない < どちらの価値が⾼いか︖
価値は問題解決から⽣まれる
価値は問題解決から⽣まれる 顧客はなんらかの問題を解決するために商品を買っている1 1: Christensen, C. M., Cook, S., & Hall,
T. (2005). Marketing malpractice. Harvard business review, 83(12), 74-83. 消費者⾃⾝も⾔われないと気づかない 潜在的な困りごと(実⽤的+⼼理的)を発⾒する 価値づくりに最も重要な仕事 この仕事をおろそかにすると,顧客にとってなんの役にも⽴たない商品を 頑張って売る仕事(≠マーケティング)に追われることになる
顧客の困りごとを解決する価値の例 パンパース (P&G) ファブリーズ (P&G) ハロウィン ホラーナイト (USJ) 困っている⼈ ⾚ちゃんの睡眠が不規則で睡眠不⾜の親
洗濯機で洗えないものをキレイにしたい⼈ ストレスを⼗分発散できていない働く⼥性 ⽇々の掃除が⾯倒な⼈ 価値 10時間吸収のオムツでぐっすり寝られる スプレーをかけるだけで除菌・消臭が可能 思い切り叫んでストレスを発散できる 「掃除」という作業を不要に ルンバ (iRobot)
競争⼒のある製品 ≠ 儲かる製品
価値を⾼める2つの視点 コスト 販売価格 (付加)価値 価値とは「販売価格 コスト」 • 消費者の⽀払意思額を⾼める(ブランドを⾼める) •
コストを下げる (固定費をマネジメントする)
製造業は「固定費回収モデル」 北⼭⼀真. (2015). プロフィタブル・デザイン.⽇経BP. 定義 事業リスク 収益 ⽣産量に応じて増減 - 材料費
- ライン直接労務費 - 変動製造経費 - 物流費 変動費 リスク︓⼩ 計画より販売数が 少なくても損失は少 収益⼒︓⼩ 購⼊品のため ほとんどが外部⽀払 ⽣産量に関係なく⼀定 - 技術獲得費⽤ - 設備費 - ⼈件費 - ⼟地・建物 固定費 リスク︓⼤ 計画より販売数が 少ないと設備がムダ 収益⼒︓⼤ 設備等の稼働率向上 で投資を回収 価値を⽣み出すのは,固定費で投資する⼈・技術・設備
固定費マネジメントによる儲かるものづくり スマートフォンの画⾯サイズ数 Appleの思想 切削加⼯機に⼤規模投資しているからこそ 安易な設計変更をせずに価値向上に努める ⽇系メーカーの思想 個別機種ごとのコスト管理のため 調達部⾨がその時の最安値で⼊⼿ 北⼭⼀真. (2015).
プロフィタブル・デザイン.⽇経BP.
「垂直統合は儲からない」のウソ 北⼭⼀真. (2015). プロフィタブル・デザイン.⽇経BP. Apple ⽇系メーカー OS 商品 製造 パッケージング
販売店 サービス基盤 パッケージ特許 切削加⼯技術 OS 商品 製造 パッケージング 販売店 サービス基盤 他社まかせ 領域 Image from Apple
Appleの強み 感性的価値による 商品競争⼒ 垂直統合による 模倣しにくさ 固定費マネジメントによる 儲かる設計 OS 商品 製造
パッケージング 販売店 サービス基盤 Image from Apple
価値づくりの基盤
散⾒される第⼀声 • それって部⾨⽅針に沿ってるの︖(プロジェクトリーダー) • それって儲かるの︖(営業) • それって競合他社に勝ってるの︖(R&D) • それってクラウド使ってるの︖(IT) •
それってどこが⽬新しいの︖(広報) • それって顧客は困っているの︖ • それって解決したら,顧客は喜んでお⾦を払うの︖
価値づくりの基盤 個⼈の あり⽅ 理論に基づき,ひたすらに考え・⼿を動かしてつくり, 顧客の知覚による検証を⾏い,それをもとに説得する 組織の あり⽅ どんな事情であれ,顧客に価値がないものは切り捨て, 科学的な検証結果に基づき,オープンに意思決定を⾏う ⼈事の
あり⽅ 最重要リソースである「価値づくりをしている⼈」に 適切な環境・権限・報酬を⽀払う⼈事制度を整備する 価値の 考え⽅ 顧客の ”潜在的な” 困りごとを解決するコンセプトを ⾼い知覚品質(デザイン・UX)で,⼀貫して具現化する
(参考)課題は解決するものではない 問題を解決するために⾏うべきタスクが課題であり,「問題は解決」・「課題は遂⾏」 あるべき姿 現状 乖離 問題 (problem, issue) 課題1 (task)
・・・ 課題N 「問題を解決する」 「課題を遂⾏する」
1. 販売を不要にする価値づくり 2. 感性的価値の構成要素 3. コンセプトとは何か︖ 4. コンセプトとコピーの違い 5. まとめ
実⽤的問題の解決 < ⼼理的問題の解決
モノがない時代 消費者の⼿の届く価格での提供が求められる モノが普及する時代 性能や品質の⾼さが求められる (機能的価値) モノが満遍なく普及した時代 ⾃分らしさの表現や⼼地よさが求められる (感性的価値) 消費者ニーズの変遷
モノがない時代 とにもかくにもマスク モノが普及する時代 ウイルスを⾼い性能で 除去してくれるマスク モノが満遍なく普及した時代 ⼩顔に⾒えるマスク 肌荒れしにくいマスク ⻑時間つけても疲れないマスク マスクの例だと
価値の源泉の変化 機能的価値 画素数 持続時間 燃費 感性的価値 ブランド デザイン ⼼地よさ 機能的価値は絶対的な正解がある世界,感性的価値は正解のない世界
時代は「価格競争」or「感性的価値競争」へ 1: 延岡健太郎. (2006). 意味的価値の創造: コモディティ化を回避するものづくり. 國⺠經濟雜誌, 194(6), 1-14. 技術発展のSカーブと競争領域1
時間 顧客ニーズ 性能 技術 技術競争 価格競争 感性的価値競争へ移⾏
あるべき視座 美しい⼥性を⼝説こうと思った時, ライバルの男がバラの花を10本贈ったら,君は15本贈るかい︖ そう思った時点で君の負けだ. ライバルが何をしようと関係ない. その⼥性が何を本当に望んでいるのかを,⾒極めることが重要なんだ. Steve Jobs
本⽥宗⼀郎が考える価値づくり 事業の根本は,まず時代の⼤衆の要求を知ることである. 商品として現代の⼤衆に喜び迎えられるためには, 実⽤的価値に加えて,美的要求を具備しなければならない. 実⽤価値を卒業して美しさにまで到達したときに商品と⾔われる. 科学と芸術が調和した製品で,初めて⼤衆に喜び迎えられる. 本⽥宗⼀郎. (2005). やりたいことをやれ. PHP研究所.
機能的価値と⼼理的価値 機能的価値 客観的 モノ 現状の改善 個別機能の積み上げ 専⾨家の評価 物理指標 感性的価値 主観的
モノ+コト 新しい満⾜ 総合体 消費者の評価 消費者の知覚
感性的価値の源泉 Design User eXperience (UX) Concept 本質的な価値の定義 機能の数百倍⾼い 価値を有する要素 消費者が最も接し
競争⼒に直結する要素
感性的価値の例 スターバックス 「第三の場所」で安らぎを Apple ⾰新的でクリエイティブに 情緒的価値 (使っていて⼼地よくいられる) ⾃⼰表現価値 (⾃分を良く⾒せられる) 外部貢献価値
(世の中に貢献できる) Coca-Cola いろはす おいしく環境に貢献
商品・サービスの価値づくり 価値 = 機能的価値 (⼟台) 感性的価値 (差別化) これなしに感性的価値 などありえない これなしに価格競争を
脱することは難しい
アジェンダ 1. 販売を不要にする価値づくり 2. 感性的価値の構成要素 3. コンセプトとは何か︖ 4. コンセプトとコピーの違い 5.
まとめ
実⽤的+⼼理的な問題を解決する,時代によらない価値の定義 コンセプトとは 流⾏ 性能・技術 デザイン・UX 本質的な 価値 Who What How
どんな困っている⼈に? どんな価値を︖ どうやって提供するか︖ 狙いどころ
チームにおけるコンセプトの2つの役割 実現したい価値は何か︖ コンセプト どの案に決定すべきか︖ どうすれば具現化できるか︖ 評価基準
あるべきコンセプト 良いコンセプト 困っている消費者の顔が明確 チームが実現したい世界 時代に依存しない価値を⽬指す 誰にでもわかる⾔葉 チーム全員が常に意識 悪いコンセプト 誰が喜ぶのか不明 実現したい気持ちの⽋如
ひたすらトレンドの追従 伝わらない妙な英語 忘れられた存在
細かすぎるコンセプトは組織の思考を⽌める • 細かい指⽰までしてしまうと,指⽰待ち⼈間が増殖してしまう • メンバーの⽬線が消費者ではなく評価者に向き,内向き開発に • あるべきコンセプトは明確な⽅向性のもと,アイディアの起点となる コンセプトは「指⽰の明確化」ではなく「⽅向の明確化」
消費者が価値を判断する「真実の瞬間」 商品・広告・販売店を分断せず,コンセプトを⼀貫して具現化することが重要 Concept ZMOT (Zero Moment of Truth) Webサイトや⼝コミを⾒たとき FMOT
(First Moment of Truth) 店頭で商品を⾒たとき SMOT (Second Moment of Truth) 商品・サービスを利⽤したとき Moment of Truth (真実の瞬間)
アップデート時のコンセプト策定プロセス 問題認識 時代洞察 今のお客様の 潜在的な問題 ⾼い確率で想定される 技術進化・社会変化が 新たに⽣み出す問題 Step1 Step2
本質的な価値の決定 Step3 コンセプト策定 Step4 input output 守るべき価値 + 変えるべき価値 誰に・何を・どのように
コンセプトを策定するプロセス
コンセプトの策定・具現化プロセス お⾦を払ってでも解決して欲しい困りごとは,消費者に聞くものではな く, データと理論をもとに考え抜いた仮説を何度も検証しながら創造する 客観的な 状況の把握 仮説づくり 価値づくり 仮説⽴証 客観的な
状況の把握 主観的な 仮説⽴案 仮説の 具現化 科学的な 仮説検証 • 認知 • 購⼊意向 • ⽀払意思額 • 推奨意向 • ブランドイメージ • 困りごとの発⾒ • コンセプト策定 - 何に困っている⼈に - 何を - どのように • コンセプト具現化 • ⾼い知覚品質 • プロトタイピング による繰り返し • 科学的根拠に 基づく意思決定
アジェンダ 1. 販売を不要にする価値づくり 2. 感性的価値の構成要素 3. コンセプトとは何か︖ 4. コンセプトとコピーの違い 5.
まとめ
コンセプトとコピー コンセプトは「価値の定義(Who/What/How)」であり, コピーは「コンセプトを簡潔に伝えるメッセージ」 コピー コンセプトを簡潔に伝え, 消費者の⼼を捉えるメッセージ “1,000曲をポケットに” (iPod) 商品・サービス コンセプト
実⽤的+⼼理的な問題を解決する 時代によらない価値の定義 Who What How 楽曲の⼊れ替えに不便を感じている⼈ 全ての楽曲をポケットに⼊れて聴くことができる ポケットサイズで1,000曲⼊る記憶媒体
散⾒される悪い例 あいまいな コンセプト 解決したい問題が定まっておらず,困っている消費者の顔がなく, 機能を詰め込んだ商品・サービス • いい感じの⾔葉による”お化粧”のコピー ü 表⾯だけ取り繕って聞き⼼地の良い⾔葉を並べる (例︓洗練,
厳選, 究極, プレミアム, ⾰新, 変化, DNA) ü 内容がないまま,コピーやクリエイティブに頼ろうとする • 搭載した機能をひたすら列挙したコピー ü 機能的価値から脱却できぬまま,機能を羅列 ü 「技術の新しさ」や「機能の多さ」を訴求
1. 販売を不要にする価値づくり 2. 感性的価値の構成要素 3. コンセプトとは何か︖ 4. コンセプトとコピーの違い 5. まとめ
まとめ • マーケティングは販売を不要にする価値づくり。消費者が⾃ら選択する商品をつくることが仕事 • 基本的に,価値は問題解決から⽣まれるため,困りごとの発⾒が第⼀歩となる • コンセプトは「誰に(どんな困っている⼈に)・何を・どのように」を定義すること
END