『Firebase Dynamic Links終了に備える』 FlutterアプリでのAdjust導入とDeeplink最適化

概要
2025年8月にFirebase Dynamic Links（FDL）のサービスが終了することが発表され、多くのアプリ開発者がAdjust、AppsFlyer、Bitly、Branch、Kochavaなど代替ソリューションの選定を迫られています。
本セッションでは、実際のプロダクトで行ったFDLからAdjustへの移行作業を通じて、FDLの主要な機能をカバーしつつ、Adjustを用いたディープリンクの設定方法、ディープリンク機能の実装例、分析に不可欠なログの実装方法、およびパーソナライズされたユーザー体験を提供するための戦略とその制約を紹介します。
これにより、FDL終了後のアプリ開発において、どのようにスムーズな移行を実現し、必要な機能を維持するかについて、明確な指針を提供します。このセッションを通じて、ディープリンク技術がどのようにアプリの成長と成功を支えるかを理解し、実際の開発に役立つ知識を提供します。
想定視聴者
FDLを利用したプロダクトを運用しており、代替の移行先を検討している方
ユーザーエンゲージメントの向上やアプリの成長に関心があり、ディープリンク技術を活用したいと考えている方

Transcript

1. 『Firebase Dynamic Links終了に備える』 FlutterアプリでのAdjust導入と Deeplink最適化 2024/11/22 Hirokazu Tanaka
2. Hirokazu Tanaka 株式会社 サイバーエージェント 23年度入社 株式会社 WinTicket techiro appgrape 自己紹介
3. 2025年8月25日 3
4. Firebase Dynamic Links(FDL)廃止 4
5. FDLってなに? 🤔 5
6. Firebase Dynamic Links について Firebase Dynamic Links(以下FDL)は、ユーザーをスムーズにアプリ内コン テンツに誘導するためのリンク技術。ユーザーがリンクをクリックした際、アプリ のインストール状況に応じて最適な画面に誘導する 6
7. Firebase Dynamic Links について 大きく5つの使い方が出来る 7
8. 1. Deeplink (アプリがインストール済みの場合) • リンクをクリック時にアプリが起動し、指定された画面に直接アクセス 8 ユーザーはすぐに目的のコンテンツに到達できるため、体験がスムーズ
9. 2. Deferred Deeplink(アプリ未インストールの場合) • リンクのクリック時に、アプリストア（Google PlayやApp Store）に誘導 • ユーザーがアプリをインストールすると、初回起動時に指定されたコンテンツ画面 が開く 9 新規のユーザーに対しても目的のコンテンツに到達可能
10. 3. リンク プレビューを生成する タイトル: アミメキリン 説明: アミメキリンは別名ソマリアキリン 画像: 画像への URL 10 X・FacebookなどSNSサービスに渡すことができ、 OGP画像などに表示される https://firebase.google.com/docs/dynamic-links/link-previews?hl=ja リンクに画像情報や、説明を付与する事が可能
11. 4. クリックリンクの分析 11 UTMパラメーターを付与することで、 Google Analyticsで分析が可能
12. クリックリンクの分析 12 UTMパラメーターを付与することで、 Google Analyticsで分析が可能 https://example.page.link?utm_campaign=auth-email&utm_medium=e mail&utm_source=example 自ずと、リンクが長くなってしまうのでリンクを短くしたい
13. 5. ショートリンクの作成 短縮されたURLを生成する機能 13 主な特徴 • URLの見た目が簡潔で共有しやすい https://goo.gl/xyz https://example.page.link/lang%3Dja&apn=jp.example.app&amv&utm_campaign=auth-email&utm_medium =email&utm_source=example
14. Firebase Dynamic Linksの特徴 1. Deeplink (アプリがインストール済みの場合) 2. Deferred Deeplink(アプリ未インストールの場合) 3. リンク プレビュー 4. クリックリンクの分析 5. ショートリンクの作成 14 マーケティングに 活用 シームレスな ユーザー体験
15. Firebaseの声明 15 https://firebase.google.com/support/dynamic-links-faq?hl=ja
16. FDLが廃止される背景 16 技術的な進化と課題 • ネイティブAPIの進化により、FDLの安定性と機能がその進化 に追従しきれなくなった • 理想的でない体験の提供が課題となっていた
17. FDLが廃止した後はどうなるか？ • 提供されるすべてのDeeplinkは機能しなくなる • クリックされたすべてのリンクは、HTTP 404 (not found)になりアクセス ができなくなる 17 FDLから他の代替手段に移行を完了しないと、 ユーザーはコンテンツにアクセスができなくなる 2025年8月25日〆
18. どういうアプローチをするか？🤔 18
19. 今回のセッションの前提 19 techiroが向き合ったアプローチを紹介します 当時のtechiroの状態 • FDLちょっとわかる • どこでどの様に使われているか把握できていない 目的 今後のFDLから代替手段に移行を行うすべてのエンジニア向け
20. FDL廃止へのアプローチ 20 FDLの移行開始から完了までの具体的な流れ 1つ１つのステップを紹介する
21. 1. FDLのリンクの特定を行う 21 どこで何を使っているのかを把握する
22. FDLはどんなときに使われる？ 22 FDLは柔軟なリンク生成が可能で、様々なユースケースで利用される 例: - データ分析 - キャンペーン計測 - ショートリンク - シンプルなURL - シェア機能 - 動的なリンクが必要なユースケース - ログイン機能
23. FDLが使われる用途の例(WINTICKETの場合) 23 - マーケティング - 新規ユーザー獲得キャンペーン流入の計測 - 広告 - キャンペーン記事の閲覧計測 - 機能的要件 - メールリンク認証 - ログイン、メール通知
24. FDLは4つの方法でリンクを作成可能 24 4つの方法からFDLのリンクを生成できる • Firebase Console • Dynamic Link Builder API • REST API • 手動 https://firebase.google.com/docs/dynamic-links/create-links
25. Firebase Console上で発行 25 キャンペーンリンクをコンソール上で簡単に発行が可能 クリック数や、アプリ インストール数などのメトリクスを見れる https://firebase.google.com/docs/dynamic-links/analytics?hl=ja
26. カスタムドメインに注意 26 基本的にFDLのリンクは page.link で構成されるが、 自由にカスタム ドメインを設定する事が可能 firebase.json Firebase Console上
27. Dynamic Link Builder APIで発行 27 FlutterSDKなどクライアントから リンクを生成する方法 - 即時リンク生成 - ショートリンク機能 クライアントでリンク生成したい場合に利 用 https://github.com/firebase/flutterfire/blob/main/docs/dynamic-links/create.md
28. REST API で発行 28 Builder API を使用できないプラットフォームで利用可能 例: IoT環境、SDK導入に制限がある場合など https://firebase.google.com/docs/dynamic-links/analytics?hl=ja
29. 手動で発行 29 リンクを自分で組み立てて、 柔軟なリンク生成が可能 注意点 - クリックデータを追跡出来な い - リンクが長くなる https://firebase.google.com/docs/dynamic-links/analytics?hl=ja
30. FDLの発行場所のおさらい 30 FDLの発行場所は以下の 4つ - Firebase Console - Dynamic Link Builder API - REST API - 手動 これらの発行場所を確認するとFDLのリンクを特定できる
31. 実はFDLの廃止は例外が存在 Firebase メールリンク認証 を行っている場合 引き続きがpage.linkのホストのURL が発行され、そのまま利用することが 可能 31 利用していない場合は、 FDLの考慮は不要 https://www.google.com/url?q=https://firebase.g oogle.com/support/dynamic-links-faq?hl%3Dja% 23i_need_to_onboard_onto_firebase_dynamic_lin ks_to_enable_email_link_auth_in_firebase_authe ntication_what_should_i_do&sa=D&source=editor s&ust=1732164972379634&usg=AOvVaw2MFF4IF0 EIJpyQSZhJzUFn
32. リンクの整理 リンクの特定が出来たら、 次は、洗い出したFDLのリンクがどのよう な目的で利用されているか整理 32
33. 大きく2つの考え方でリンクを整理する • ユーザー体験 ◦ どんな体験をさせたいか？ • マーケティング ◦ どの程度まで計測したいか？ リンクの整理 33 各リンクの目的を明確にすることで、 適切な打ち手を見つける
34. リンクの目的から対応方針を決める 34 以下の3つのケースに分ける • FDLの機能が必要ない場合 • インストール済みのアプリに対する Deeplinkのみが必要な場合 • FDLのすべての機能が必要な場合 洗い出したリンクの目的をFDLの利用に照らし合わせる
35. 1. FDLの機能が必要ない 35 アプリからFirebase Dynamic Links SDK を削除する そもそも、FDLのリンクが運用されていない
36. 2. インストール済みのアプリに対するDeeplink のみが必要な場合 36 アプリリンク/ユニバーサルリンクを利用する
37. FDL vs アプリリンク/ユニバーサルリンク 37 https://firebase.google.com/support/guides/app-links-universal-links?hl=ja
38. アプリリンク/ユニバーサルリンクに乗り換え 出来ること出来ないことの表 38 https://firebase.google.com/support/guides/app-links-universal-links?hl=ja アプリリンク /ユニバーサルリンクは アプリインストール後のシンプルな画面遷移の みを提供
39. 任意のアプリの任意の画面に遷移させるURL、またはそれを扱う仕組みの総称 Firebase Dynamic Links ⛔2025/8/25 廃止 カスタムURL スキーム 🤖 アプリリンク 🍎 ユニバーサルリンク Deep Linkについて 39
40. インストール済みのアプリに対するDeeplinkの みが必要な場合 40 🚛 引っ越し Firebase Dynamic Links ⛔2025/8/25 廃止 🤖 アプリリンク 🍎 ユニバーサルリンク
41. リンクからアプリのページが開かれるまでの流れ 41 https://speakerdeck.com/cyberagentdevelopers/guard-todeep-link-wohuo-yong-sita-nabigesiyonguan-li
42. リンクをクリックしてアプリを開く 42 Deeplinkをアプリが 受け取れる必要がある
43. Deeplinkのハンドリングについて 43
44. Deeplinkのハンドリングについて Deeplinkのナビゲーション方法について詳しく知りたい方は、こちらの資料を ご覧ください。 44 https://speakerdeck.com/cyberagentdevelopers/guard-todeep-link-wohuo-yong-sita-nabigesiyonguan-li
45. Deeplink実現に使用したパッケージ 45 Deeplinkを扱えるパッケージは多数存在するが、 今回はapp_linksを利用
46. app_linksパッケージ • FlutterでDeeplinkを扱えるようにするパッケージ • アプリリンク/ユニバーサルリンク カスタムURLスキームなどに対応 • ほとんどのPlatformに対応 46 https://github.com/llfbandit/app_links
47. app_linksパッケージ uriLinkStreamを呼ぶと、Flutterの世界にリンクを持ち出すことが可能 47 https://github.com/llfbandit/app_links
48. app_linksパッケージ利用の注意点 Flutter 3.24.0〜 Flutter ios/Runner/Info.plist android/app/src/main/AndroidManifest.xml 48 https://github.com/llfbandit/app_links
49. アプリリンク/ユニバーサルリンクを有効化する ための必要手順 • iOS ◦ apple-app-site-association(AASA)ファイルのホスティング • Android ◦ digital asset linkファイルのホスティング 49 app_linksパッケージに加え、 Nativeの実装や、ホスティングの設定が必要
50. ユニバーサルリンクを使うために iOSのネイティブ側に必要な設定 50
51. Associated Domainの設定 Xcode > Signing & Capabilities > Associated Domains 51
52. apple-app-site-association(AASA)ファイル 52 teamID bundleID ファイル形式: Content-Type: application/json
53. AASAファイルをApple CDNと連携 53 アプリとウェブサイトの関連付けを Appleに認識させる必要がある 1. AASAファイルを準備する 2. .well-knownディレクトリにHTTPSでホスト 3. ユニバーサルリンクのテスト https://developer.apple.com/documentation/technotes/tn3155-debugging-universal-links#Understand-Apples-CDN
54. AASAファイルを配置しても iOSでリンクが開かないときのトラブルシュート 手順1: iPhone > 開発者モード>ユニバーサルリンクをON 54 手順2: Xcode > Associated Domainsの設定で applinks:sample.com?mode=developerを指定
55. AASAファイルを配置しても iOSでリンクが開かないときのトラブルシュート 手順3: iPhone > 開発者モード>ユニバーサルリンク>診断 55 ✅が付けばAASAファイルが認識されたことになる
56. Androidのネイティブ側に必要な 設定について 56
57. Androidの設定 android/app/src/main/AndroidManifest.xml 57 パッケージの設定 に従う
58. assetlinks.json ファイルのホスティング 58 package_name: Androidアプリのパッケージ名を指定 sha256_cert_fingerprints: アプリの署名証明書のSHA256フィンガープ リントを設定 SHA256の作成 keytool -list -v -keystore <keystore_file_path> -alias <alias_name>
59. Deeplinkのデバッグ方法 59
60. FlutterのDevToolsを使ってDeeplinkを試す DeepLink Validator Flutter SDK 3.19 の DevTools に追加 Deeplinkのセットアップにおけるエラー の特定とトラブルシューティングを支援 ※ iOSは今後追加予定 60 https://docs.flutter.dev/tools/devtools/deep-links
61. AndroidStudio: App Links Assistant Android Studioでも Devtools のDeeplink Validatorと同様の機 能が使える 61
62. App Links Assistant 設定したいURLを入れる とintent-filterを自動で 修正 62
63. Deeplinkの検証をするときの便利コマンド Android adb shell am start -a android.intent.action.VIEW -c android.intent.category.BROWSABLE -d “https://example.com/detail” iOS xcrun simctl openurl booted “https://example.com/detail” 63 ※のちほど資料展開します
64. 以上で、Deeplinkの設定方法は終了 64
65. 3. FDLの機能がすべて必要な場合 65 リンクプロバイダサービスにリプレイスする
66. リンクの特定 66 Deeplinkを提供しているリンクプロバイダサービス 今回は抜粋して 4つ紹介します
67. 以下の3つの指標で比較 • 料金 • 機能 • Flutterとの親和性 67 ※2024年11月22日時点
68. 68 Adjust • 料金 ◦ アトリビューション数に応じた課金 • 機能 ◦ 詳細な分析でキャンペーンを最大化 ◦ Deferred Deep Link実現可能 • Flutterとの親和性 ◦ 日本向けのドキュメントが豊富 ◦ FlutterSDK 57likes https://www.adjust.com/ja/solutions/deep-linking/ https://dev.adjust.com/en/sdk/flutter/?version=v5
69. 69 KOCHAVA • 料金 ◦ 月間1万回のコンバージョンまで無料 ◦ それ以上は要問い合わせ • 機能 ◦ SmartLinks™ ◦ トラッキングと分析機能 • Flutterとの親和性 ◦ 英語ドキュメント ◦ Flutter SDK 1likes https://www.kochava.com/product/deep-linking/?int -link=menu-dynamic-deep-linking https://support.kochava.com/sdk-integration/flutter- sdk-integration/
70. 70 AppsFlyer • 料金 ◦ 無料プランあり ◦ Enterpriseプランは要問い合わせ • 機能 ◦ Deferred Deep Link実現可能 ◦ トラッキングと分析機能 • Flutterとの親和性 ◦ 日本向けのドキュメントが豊富 ◦ Flutter SDK 129likes https://www.appsflyer.com/ja/products/customer-exp erience-deep-linking/ https://github.com/AppsFlyerSDK/appsflyer-flutter-plugin
71. 71 branch.io • 料金 ◦ 価格は要問い合わせ • 機能 ◦ Deferred Deep Link実現可能 ◦ 広告キャンペーン効果測定 • Flutterとの親和性 ◦ 英語ドキュメント ◦ Flutter SDK 191likes https://www.branch.io/deep-linking/ https://pub.dev/packages/flutter_branch_sdk
72. Deeplink技術のメリット • シームレスなUX • トラフィックの増加 • パーソナライズされたアプリ体験 • エンゲージメントを向上 72 用途や状況に応じた技術選定が重要
73. WINTICKET では 73 リンクプロバイダサービスへの乗り換え先はAdjustを利用 Adjustに乗り換えた理由 もともとキャンペーン運用などでAdjustを導 入しており新規導入の手間やコストを最小 限に抑えるため
74. Adjustで出来ることの簡単な紹介 74
75. 中間ページにとどまらずに画面遷移する FDL Deeplink画面遷移時に、中間ページを挟んでいた Adjust 中間ページを挟まずに直接リンク先に誘導できる 75 ※FDL
76. Adjustソーシャルメディア共有プレビュー XやFaceBookなどSNSに投稿する 際のOGPの設定、Previewが可能 76
77. 77 Adjustによるキャンペーンデータのトラッキング Adjustでは、UTMパラメータと同じようにキャンペーンURLを生成可能 ◦ キャンペーン名（campaign） ◦ 広告ソース（source） ◦ 広告の種類（medium） ◦ クリエイティブ情報（creative） 細かいターゲットURLを生成可能
78. Adjustで出来るマーケティング例 • 成果報酬型のキャンペーンの実施したい ◦ アフィリエイトキャンペーンで新規ユーザーの獲得 78 一気通貫でユーザーの行動をトラッキング可能
79. FDLの移行完了までの最後のステップ FDLリンクの利用箇所の確認 • FDLの利用が減っているか？ • リンクプロバイダサービスの利用が増えているか？ 79
80. FDLの利用箇所が 0になったか？ Google Analyticsで自動で、計測しているログを出力する 80 https://firebase.google.com/docs/dynamic-links/analytics?hl=ja
81. 簡単な確認方法 Firebase Console > Analyticsで利用状況を確認する 81 これらのイベントが0に収束しているかの確認
82. BigQueryからデータを確認 GA4とBigQueryを連携している場合はクエリを書くことで抽出も可能 82 これらのイベントが0に収束しているかの確認
83. Adjustの利用状況が 増えているか？ Adjust > レポート 83 アクセス数の確認 FDLから乗り換えたリンクのアクセス数の確認
84. これらのすべてのステップを完了す ることで 移行完了🎉 84 ※ クライアントでのFDLのリンクのハンドリングは 既存のユーザーに影響が出ないように2025年8月25日までは残す
85. まとめ 85 • 2025年8月25日にFDLが廃止される ◦ まだ対応していない方は早めの計画を • FDLの移行の移行完了までをステップバイステップで紹介 ◦ リンクの洗い出し、整理方法の共有 ◦ アプリリンク/ユニバーサルリンクの利用の説明 ◦ WINTICKETで採用しているAdjustの一例を紹介 ◦ FDLのアクセスが減っていること ◦ Adjustのアクセスが増えていること
86. ご清聴ありがとうございました 86