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データ記録媒体の紹介と展望 / AboutStorageMedia

データ記録媒体の紹介と展望 / AboutStorageMedia

Takuya Utsunomiya

October 22, 2018
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  1. 自己紹介 • 宇都宮 卓也 (うつのみや たくや) ◦ 大阪生まれ、大阪育ち ◦ 今週末に37歳になります ◦ 阪神ファン(実は西武ファン) •

    2017/02 ~ レッドハット株式会社 ◦ 2007/04 ~ 2017/02 外資系IT総合ベンダーでストレージのプリセールス ◦ 2017/10からストレージSAやってます • 基本的にはずっとストレージの人間です。今後もそのつもりです。
  2. HDD (ハードディスクドライブ) • 60年以上前に開発された超枯れた技術 ◦ 硬い素材 (ガラス, アルミ合金)に磁性体を塗 布した円盤(プラッタ)が回転 ◦

    ヘッドでプラッタの磁性体の磁界の向きを入 れ替えることで0/1を表現 • プラッタは表裏両面使う。 HDD内に複数枚あって、 ヘッドも複数ある • プラッタが回転している時、ヘッドの間はほんの僅 か浮いている ◦ 10ナノメートル。ほんの少しの塵でも影響を受 ける ◦ 回転が止まっている時はくっついている
  3. HDDの歴史は小型化と大容量化の歴史 • 最初の商用HDD ◦ 1956年 IBM RAMAC ◦ 重量 1トン

    ◦ 容量 4.4MB ◦ 当時最速の補助記憶装置 • 2018年最新の大容量HDD ◦ Seagate Ultrastar DC HC620 ◦ 重量 660グラム ◦ 容量 14TB 記録密度(1インチ四方辺りのデータ量 )   2000 bit → 1T bit 5億倍以上に
  4. HDDの展望 • 更なる大容量化を目指す。 40TBくらいまでは行くようだ。 • HDDを大容量化する方法は 2通り ◦ プラッタの数を増やす ▪

    ガラスプラッタ 剛性を保って薄く加工できるガラスはプラッタ数増加に向く ▪ ヘリウム充填 気体の抵抗が減るのでヘッドやプラッタのふらつきを抑える ◦ 記録密度を増やす ▪ 瓦書き方式 (SMR : Shingled Magnetic Recording) トラックを重ねて記録することで密度を上げる。 ただし上書きが大変になるのでアーカイブ専用などで利用 ▪ 熱補助磁気記録方式(HAMR) / マイクロ波補助磁気記録方式(MAMR) 磁気ビットを小さくするために強い磁性体を使う必要があるが、これだと従来方 式では帯磁できないためアシストをする ▪ 3次元磁気記録方式(MAMR) 磁気ビットを多層にする
  5. ちなみにHDDの性能は ... • これ以上飛躍的に性能が伸びることはない ◦ 回転数の限界 ◦ シークタイムの限界 (アーム制御の限界) •

    マルチアクチュエータ (アームをバラバラに動かす )など性能を高める技術は存在するが、 Flashデバイスの 性能には勝てない • これからのHDDは容量指向
  6. SSD (ソリッド・ステート・ドライブ • 1986年に東芝が開発した NAND型フラッシュメモリを、 サンディスクが商用モジュール化 • フラッシュメモリはセルという記憶素子の集合 • セルのフローティングゲートに電子を出し入れして

    0/1 を表現 ◦ 電圧を掛けることでトンネル酸化膜を通して ゲートへ電子を出し入れする (トンネル効果) • トンネル酸化膜は何度も電子が通ると劣化する。 ◦ 劣化するとゲートから電子が漏れてしまうことが ある。 ◦ データロスにならないような仕組み ▪ オーバーサブスクリプション ▪ ウェアレベリング ▪ ECC, CRC ▪ etc...
  7. SSDの種類 • インターフェース ◦ SAS, SATA : HDDをエミュレート。一時点で一つしか I/Oできない ◦

    NVMe (PCIe) : 一時点で複数データに並列 I/O • セルにいくつの電子 (bit)を保存するかによって SLC, MLT, TLC, QLCの4種類 ◦ bitが少ないほど長寿命で性能が優れる。ただし容 量は少なく、コスト高 ◦ bitが多い程大容量でコスト安。ただし寿命は短く性 能は低い。 ◦ 今の所エンタープライズで使われているのは SLC, (e)MLC
  8. SSDの展望 : 3D NAND • セルを多層化して配置したフラッシュメモリ • フローティングゲートからチャージトラップへ • 単純にセルの数が多くなるので、

    2D NANDと比べて ◦ 書き込み寿命が長くなる ◦ I/Oの並列度が上がり性能が向上 ◦ 容量密度が上がり大容量化が可能 • 今日時点では東芝XG6が96階層をエンタープライズ向け で商用化。容量は最大 1TB • 3D NANDはまだ技術的にこなれていないこともあり、 2Dと 比べてちょいと歩留まりが悪い。 • 将来的には階層が増えて、 TLCやQLCと組み合わせること で512TB SSDとか途方もない物ができる予測
  9. 磁気テープ • HDDと同様に、フィルムに磁性体を塗布した媒体 ◦ 磁性体(BaFe)の磁界の方向で0/1を表現 • 固定された磁気ヘッドが高速で送られるテープを走査し、 磁気を操って読み書きする ◦ ヘッドは同時に複数のトラックを読み書きできるので

    HDDよりもシーケンシャル I/Oは速い ◦ 一方でテープの戻し /送りが必要になるランダム I/Oは 遅い • データの寿命が長い (10年は持つ) • 安価 (1巻 数万円) • 大量のテープを扱う場合は手で管理できないので、テープ ライブラリが使われる
  10. 磁気テープの展望 • 進化するLTO (Linear Tape-Open) ◦ 業界標準のテープの規格 ◦ 最新はLTO8 ▪

    1巻 非圧縮で12TB, 圧縮で30TB ▪ 非圧縮で360MB/s ◦ LTO12までロードマップあり ▪ 1巻 圧縮で480TB ! • 一度は死んだ技術と見られていたが、安価に大容量を 記録できることから再度注目を浴びている ◦ 大量のCold Dataを扱うところで利用されている • 今後全世界データの半分以上はテープに記録されるん じゃないかな Google DC CERN DC
  11. 近未来的な媒体 : DNAストレージ • DNAを媒体として情報を記録しようとする試み ◦ 4種の塩基(A, C, T, G)をそれぞれ

    00, 01, 10, 11 と 対応させてバイナリデータを記録 • DNAは従来の媒体と比べて、 ◦ 遥かに記録密度が高くできる ◦ 安定である(長持ちする) ◦ 電力が要らない • 2016年にMicrosoftが200MBのデータの記録に成功 • とはいえまだ実験研究段階で実用化への課題 ◦ 数百Bytes/secの記録速度 ◦ ランダムアクセスへの対応 ◦ 専用機器と情報を記録できる条件が揃った DNA媒体のコスト • 10年後くらいには実用化されているかも