結局QUICで通信は速くなるの？

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1. 結局QUICで通信は速くなるの？？ ⼋⾕航太（やたがい こうた）
2. ⾃⼰紹介 ⼋⾕航太（ヤタガイ コウタ） • 慶應義塾⼤学環境情報学部3年 • インターネットではkota-yata • 研究をやっていたりやらなかったりしている 2
3. QUICとは 3 • UDPの上に乗り，ユーザー空間で実装される通信プロトコル • always 暗号化（TLS1.3） • TCPと同じような機能を持ち，TCPが多くの場合⽐較対象になる ◦ 輻輳制御，フロー制御，再送制御，順序制御 etc.
4. で，速いの？？ 4 このLTでの定義：速い=スループットが⼤きい
5. QUICで通信は速くなるのか 5 時と場合による 時と場合によるおじさん
6. QUICで通信は速くなるのか 6 時と場合による 時と場合によるおじさん 時と場合による
7. ⾼帯域環境ではTCPにスループットで劣る 7 • ⾼帯域かつパケロスが起きない環境ではTCPがより ⾼いスループットを発揮する[1] • QUICがユーザースペース実装であることに起因 ◦ パケット処理の度にシステムコールが発⽣ ◦ カーネルへのオフロードに制約がある
8. QUICではなぜオフロード（GSO）が難しいのか 8 • GSOとは，複数のメッセージをまとめてソケットに送ること ◦ sendmmsgのやつ ◦ システムコールが減って嬉しい • TCPはバイトストリームなので，カーネルが勝⼿に切り分けて良い • UDPはメッセージ指向であり，メッセージの境界が決まっている ◦ オフロード時にはセグメントサイズを指定する必要がある • QUICはACKとデータなど複数の「フレーム」を⼀つのパケットにまとめる ◦ より固定サイズでの分割が難しくなる
9. パケロスが頻発する環境ではQUICのスループットが勝る 9 • パケロス率が2%の時に2倍以上のスループット を発揮[2] • TCPは順序制御のせいでパケットがロスすると 後続のパケットを処理できなくなる • QUICはこれを仮想的なストリームを複数持つ ことにより解決する ◦ あるストリームでパケットが詰まっても他のス トリームではパケットを処理し続けられる
10. QUICとはどういうプロトコル 10 • QUICは，パケロスが起きうるような不安定なネットワークでもよく動く ◦ モバイルネットワークなど．． • OSのアップデートを待たない頻繁な開発が念頭に置かれている ◦ だからユーザースペース実装 ◦ アプリケーション以外のコンポーネントに勝⼿に切断/返信されたくないというの もある • Webと相性が良い[3] ◦ ハンドシェイクが⾼速なのでGETのような短いリクエストにおいて優位性を持つ
11. 宣伝 11 • QUICまだよくわからん！ • カーネルスペースでQUICを実装すれば良いのでは？ • お前が参照しているその論⽂の評価⼿法は怪しい！ • 普通のロードバランサーはQUIC捌けるの？ • QUICがNATテーブルを溢れさせるってホント？ Y2ゼミで話しましょう！
12. 参考⽂献 12 [1] Xumiao Zhang, Shuowei Jin, Yi He, Ahmad Hassan, Z. Morley Mao, Feng Qian, and Zhi-Li Zhang. 2024. QUIC is not Quick Enough over Fast Internet. In Proceedings of the ACM Web Conference 2024 (WWW '24). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 2713‒2722. https://doi.org/10.1145/3589334.3645323 [2] Prasenjeet Biswal and Omprakash Gnawali. 2016. Does QUIC Make the Web Faster? In 2016 IEEE Global Communications Conference (GLOBECOM). IEEE Press, 1‒6. https://doi.org/10.1109/GLOCOM.2016.7841749 [3] Adam Langley, Alistair Riddoch, Alyssa Wilk, Antonio Vicente, Charles Krasic, Dan Zhang, Fan Yang, Fedor Kouranov, Ian Swett, Janardhan Iyengar, Jeff Bailey, Jeremy Dorfman, Jim Roskind, Joanna Kulik, Patrik Westin, Raman Tenneti, Robbie Shade, Ryan Hamilton, Victor Vasiliev, Wan-Teh Chang, and Zhongyi Shi. 2017. The QUIC Transport Protocol: Design and Internet-Scale Deployment. In Proceedings of the Conference of the ACM Special Interest Group on Data Communication (SIGCOMM '17). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 183‒196. https://doi.org/10.1145/3098822.3098842