Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
『理科系の作文技術』から学ぶ技術文書の書き方
Search
abekoh
February 18, 2024
Technology
0
530
『理科系の作文技術』から学ぶ技術文書の書き方
2024/02/06に社内LTで発表したスライドです。
abekoh
February 18, 2024
Tweet
Share
More Decks by abekoh
See All by abekoh
Table-driven testing に縛られないGoのテストパターン
abekoh
7
2.6k
GAN -Generative Adversarial Networks- (2019-09-26)
abekoh
1
52
WSL2 (2020-10-30)
abekoh
1
55
自作キーボードつくってみた (2019-02-26)
abekoh
1
22
Other Decks in Technology
See All in Technology
インフラとバックエンドとフロントエンドをくまなく調べて遅いアプリを早くした件
tubone24
1
370
Engineering at LY Corporation
lycorp_recruit_jp
0
560
OCI Data Integration技術情報 / ocidi_technical_jp
oracle4engineer
PRO
1
2.6k
テストコード品質を高めるためにMutation Testingライブラリ・Strykerを実戦導入してみた話
ysknsid25
5
1.5k
SREによる隣接領域への越境とその先の信頼性
shonansurvivors
2
450
Team Dynamicsを目指すウイングアーク1stのQAチーム
sadonosake
1
290
SREの組織類型に応じた リーダシップの考察
kenta_hi
PRO
1
640
Microsoft MVPになる前、なってから/Fukuoka_Tech_Women_Community_1_baba
nina01
0
180
2024年グライダー曲技世界選手権参加報告/2024 WGAC report
jscseminar
0
290
"君は見ているが観察していない"で考えるインシデントマネジメント
grimoh
4
1.1k
Platform Engineering for Software Developers and Architects
syntasso
1
440
Going down the RAT hole: Deep dive into the Vuln-derland of APT-class RAT Tools
nttcom
0
280
Featured
See All Featured
Product Roadmaps are Hard
iamctodd
PRO
49
11k
Teambox: Starting and Learning
jrom
133
8.8k
A designer walks into a library…
pauljervisheath
202
24k
Gamification - CAS2011
davidbonilla
80
5k
Distributed Sagas: A Protocol for Coordinating Microservices
caitiem20
329
21k
Typedesign – Prime Four
hannesfritz
40
2.4k
Rails Girls Zürich Keynote
gr2m
93
13k
Refactoring Trust on Your Teams (GOTO; Chicago 2020)
rmw
31
2.7k
Cheating the UX When There Is Nothing More to Optimize - PixelPioneers
stephaniewalter
280
13k
The Pragmatic Product Professional
lauravandoore
31
6.3k
CoffeeScript is Beautiful & I Never Want to Write Plain JavaScript Again
sstephenson
159
15k
Producing Creativity
orderedlist
PRO
341
39k
Transcript
『理科系の作⽂技術』から学ぶ 技術⽂書の書き⽅ 2024/02/06 abekoh@MICIN LTゆる会
はじめに • 対象読者に読んでもらい、かつ理解してもらえる技術⽂書の書き⽅のテク ニックを『理科系の作⽂技術』を引⽤しながら紹介する ◦ 技術⽂書: ここではエンジニア向けのブログ記事や社内ドキュメントなど • ⾊々な記事をレビューしたり、ドキュメントを読んでいて、結局伝えたかっ たことが何なのかわからないことがある
• きちんと伝わるブログ記事やドキュメントの書き⽅‧テクニックについて、 『理科系の作⽂技術』と持論をもとに解説し、皆の⽂章⼒向上に役⽴てたい ◦ 持論は💡マークを付けている • 論⽂向けテクニックという側⾯もあるので、あくまで⼀つのスタイルとして 受け取ること ◦ ブログ記事にすべて適⽤すると堅苦しくなってしまうが、 守破離の「守」として念頭に⼊れておくとよい
『理科系の作⽂技術』 • 物理学者の⽊下是雄の著作 • 出版は1981年。現在でも毎年重版されているロングセラー • 学⽣や社会⼈が授業や仕事の上で必要とされる、レポート、報告書、論⽂、 説明書、マニュアルなどの表現技術とプレゼンテーションのコツを、まとめ たもの •
漫画版もある • 次スライド以降、ことわりなくこの書籍を 引⽤する
⽬次 • ⼼得 • ⼀⽂書⼀主題、ターゲットを明確に • 「重点先⾏主義」を忘れない • ⽂章の構成>>>⽂のうまさ •
段落の「⼀⽂⽬」に魂をこめる • 修飾語を刈り落とす • はっきり⾔い切る姿勢 • 図表‧参考⽂献を⼤いに使う • わかりやすく簡潔な表現
⼼得 理科系の仕事の⽂書を書くときの⼼得は 1. 主題について述べるべき事実と意⾒を⼗分に精選し、 2. それらを、事実と意⾒とを峻別しながら、順序よく、明快‧簡潔に記述する ことであると要約できる。 (p.6) • 必要なことは漏れなく書く、必要ないことは⼀つも書かない
• 情報と意⾒の伝達だけを使命とし、感想を混⼊しないこと ◦ 💡ブログ記事の場合感想中⼼でも良いが、事実‧意⾒と混同しないように注意す べき
⼀⽂書⼀主題、ターゲットを明確に • ⼀つの⽂書は⼀つの主題に集中すべきもの ◦ 別の主題が混⼊すると、読者に与える印象が散漫‧説得⼒が低下 • 主題を決めたら次に、⾃分は何を⽬標としているか、何を主張しているかを 熟考‧⼀⽂にしてみるとよい(⽬標規定⽂) ◦ 💡「誰に」「何を」伝えたいか、具体名も含めて作ってみるもあり
◦ 💡⽬標規定⽂をそのまま序論の最初に持ってくるのもあり
「重点先⾏主義」を忘れない • 表題(タイトル)、あるいは書き出しの⽂を読めば最も重要なポイントがわか るようにすべき ◦ 読んでもらえるかどうかはここに懸かっている • 表題は、的確に内容を⽰す具体的なものでなければならない ◦ 💡本⽂書いてるとズレてくることも多いので、最後に考えるもよい
⽂章の構成>>>⽂のうまさ • ⽂章の死命を制するのは、⽂章の構成。以下が⼤切 ◦ 何がどんな順序に書いてあるか ◦ その並べ⽅が論理の流れに乗っているか ◦ 各部分がきちんと連結されているか •
語句のえらび⽅、⼝調のよさといった「⽂のうまさ」は⼆の次三の次 • 全体構成の基本は「序論」→「本論」→「結び」 ◦ 起承転結でなくてよい。特に「転」は不要 • 💡箇条書きで最初に⾒出しだけ洗い出してみるとよい
段落の「⼀⽂⽬」に魂をこめる • 各段落の1⽂⽬に重点を置き、そこだけ読み進めても 理解できる⽂章にすること(トピックセンテンス) ◦ 右図の⻩⾊の箇所だけ読むだけで内容が理解できるよ うにすべし ◦ ⽇本語の場合難しいので意識が必要 ◦
流れを意識すると、やむを得ず2,3⽂⽬にくることも ◦ 💡2,3⽂⽬になったときは思い切って太字にするのもあ り • トピックセンテンス以降でその具体化を⾏う ―――――――――――――――――――― ―――――――。 ―――――――――――――――――――― ―。 ―――――――――――――――――――― ―――――――――――――。 ―――――――――――――――――――― ――――――――――。 ――――――――――――――――。 ―――――――――――――――――――― ―――――――――――――。 ―――――――――――――――――――― ―――――――――――――――――。 ―――――――――――――――――――― ――――――――――。 ―――――――――――。 ―――――――――――――――――――― ――――――――。
修飾語を刈り落とす • ⽇本語は修飾句‧修飾節はかならず前置されるため、 逆茂⽊(さかもぎ)型の⽂章になりがち(右図の(A)) ◦ パラグラフ全体を読まないと理解できない⽂章になってしまう ◦ ⽇本語の性質上避けにくい ◦ 英語論⽂では逆茂⽊型は書くのはNG、(B)のようにすべし
• 逆茂⽊型に対抗する⼼得 ◦ ⼀つの⽂の中には⼆つ以上の前置修飾節は書きこまない ◦ 修飾節の中のことばには修飾節をつけない ◦ ⽂または節は、なるたけ前とのつながりを浮き⽴たせる ようなことばで書きはじめる • 💡とりあえず思うままに書く→後で刈り落とすという 2フェーズで書くもあり https://www.jstage.jst.go.jp/article/butsuri/74/3/74_175/_pdf/-char/en
はっきり⾔い切る姿勢 • いくらか不⾃然に思えても、できるかぎり明確な、断定的な⾔い⽅をしたほ うがいい • 「〜と思われる」「〜と考えられる」→当否の最終的な判断を相⼿にゆだね て⾃分の考えをぼかした⾔い⽅。逃げの余地あり ◦ 「⾃分は〜と思う」「〜と考える」と書くべき •
「ほぼ」「約」「ほど」「ぐらい」「たぶん」「ような」「らしい」をでき るだけ削ること • 💡修飾語と同様、⼀旦書いてあとで刈り取ってみるとよい
図表‧参考⽂献を⼤いに使う • 図や表はいちばん⼤切な役割をしばしば演じる ◦ 本⽂をはじめる前に準備すべし→何を書かなければならないかはっきりする ◦ それしか⾒ない読者もいる。キャプション‧説明をつけるべし ◦ 💡可能な限り前段で全体感が伝わる図表を置くとよい •
引⽤‧参考⽂献は出典を明⽰して効果的に使う ◦ 💡研究室の恩師⽈く「参考⽂献の無い‧少ない論⽂は、⾃分が勉強していないこ とを⽩状しているようなもの」
わかりやすく簡潔な表現 • ⽂は短く、短くと⼼がけて書くべき ◦ 💡⻑くて3⾏。⻑くなりそうなら2つに分ければよい • 不要に漢字を使わない ◦ 字⾯が⽩いほうが読みやすいとされる ◦
「但し」→「ただし」、「等」→「など」、「事」→「こと」… ▪ 💡絶対NGではないが、字⾯が黒いなと思ったときに対応してみるとよい ◦ 💡電⼦情報通信学会 会誌原稿執筆のしおり 付録A 常⽤漢字表‧送り仮名につい て などルールに従ってみるのもよし • 読点(、)の打ち⽅ ◦ ①受けることばが、すぐ続くときはつけない。離れているときはつける ◦ ②2つの⽂からできている⽂は、間につける ◦ ③読点が多すぎてくどいときは③は省いてよい ◦ 💡難しいので読み返して整える https://www.ieice.org/jpn/books/kaishiannai/kaishishiori.pdf
おわりに • 対象読者に読んでもらい、かつ理解してもらえる技術⽂書の書き⽅のテク ニックを『理科系の作⽂技術』を引⽤しながら紹介した • 特に「⽬標規定⽂」「トピックセンテンス」「逆茂⽊型への対抗」だけは覚 えて帰ってほしい • ごく⼀部の紹介なので、ぜひ書籍のほうも読んでほしい •
兎にも⾓にも量をこなさないと上達しないので、どんどん書くべし • ⾃分も改めて全然できていない‧わすれている箇所があったので、磨いてい きたい