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足立に遊んだ関東文人の総帥 谷文晁と二人の文一 / Buncho and Bunichi
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AdachiCityMuseum
July 09, 2020
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足立に遊んだ関東文人の総帥 谷文晁と二人の文一 / Buncho and Bunichi
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July 09, 2020
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Transcript
谷 文晁 た に ぶ ん ち ょ う 足立に遊んだ
関東文人の総帥 谷文晁《波濤雲龍図》(当館寄託 舩津家資料) と 二人の文一 ぶ ん い ち ふ た り 1 令和 2 年 7 月 9 日
谷 文晁 (宝暦13~天保11年、1763~1840) ・白河(現 福島県白河市)藩主久松松平家 第九代当主、松平定信につかえ た絵師。 たに ぶんちょう ・千住・足立の人々と親しく交友し、
文晁に入門する人物も足立に 現れました。 「谷文晁像」(野村文紹『肖像』より) 国立国会図書館蔵 ・詩文や書画に精通する「文人」の 代表格で、全国に多数の弟子を 抱え、絵の指導をしていました。 し ら か わ ま つ だ い ら さ だ の ぶ ぶ ん じ ん 2 画壇を牽引した関東文人の総帥 が だ ん け ん い ん そ う す い ひ さ ま つ
江戸時代に築かれた「文人」たちの文化 ・かつて中国で、高い教養を持ち、詩文や書画に精通して風雅な生活を送る人のことを 「文人」と呼んでいました。 ・江戸時代後期、中国の「文人」への、あこがれを持った各地の人物たちが、詩や書画、 俳諧、狂歌などを通じた交流を楽しんで、独自の文化を築いたのです。 亀田 鵬斎(儒学者・書家) 〈下谷近隣の文人たち〉 ・千住にほど近い下谷(現 台東区)には著名な文人が数多く暮らし、文晁もその一人でした。
酒井 抱一(俳人・琳派絵師) 大田 南畝(戯作者・狂歌師) 画像はいずれも野村文紹『肖像』(国立国会図書館蔵)より ぶ ん じ ん ふ う が は い か い 3
足立に親しむ文人 文晁 – 千住酒合戦 に招かれて- ・千住の文人、建部巣兆の友人だった酒井抱一、亀田鵬斎と共に、文晁も千住・足立地域 の商家・文人との親交を深めていきます。 ・文化12(1815)年に千住の飛脚問屋、中屋六右衛門の還暦祝いとして催された、呑み比べの 大酒宴「千住酒合戦」 には、文晁も抱一、鵬斎と一緒に賓客として招かれました。そして、
その様子を娘婿の一世文一と供に記録書画巻《高陽闘飲図巻》に描いたのです。 酒合戦に招かれた賓客たち 《高陽闘飲図巻》 (千住仲町・個人蔵)より せ ん じゅ さ け が っ せ ん た け べ そうちょう さ か い ほ う い つ か め だ ぼ う さ い ひ きゃ く ど ん や な か や ろ く え も ん ひんきゃく むこ ぶ ん い ち こ う よ うと う い ん ず か ん の 4
文晁・文一親子の描く酒合戦 ・次々と盃を干す参加者たち。 ・台所は料理の準備に大忙し。 谷文晁・一世谷文一 画 「酒戰図」 《高陽闘飲図巻》(千住仲町・個人蔵)より しゅせん ず 5
文晁・文一親子の描く酒合戦 ・用意された大量の酒。 ・参加者以外にも 酒が振舞われました。 谷文晁・一世谷文一 画 「酒戰図」 《高陽闘飲図巻》(千住仲町・個人蔵)より しゅせん ず
6
足立に親しむ文人 文晁 –関屋里元への追善- ・天保2(1831)年、前年に亡くなった千住の文人、関屋里元への追善の句歌集が作られます。 文晁はその中に、足立の文人や、酒井抱一門下の鈴木其一らと共に挿絵を寄せて、 里元を悼みました。 谷 文晁「白梅図」 鈴木 其一「月に夜桜図」
画像はいずれも『関屋里元追善集』(当館寄託 名倉家資料)より せ き や り げ ん つ い ぜ ん す ず き き い つ い た 7
一世 谷文一 (天明6~文政元年、1786~1818) ・宮津藩(現 京都府宮津市)の医師の子で、 文晁の長女、宣の婿に入りました。 ぶ ん い ち
・文晁と共に足立を訪れていたと 考えられ、「千住酒合戦」の絵も 残しています。 少年時の一世谷文一の肖像 (当館寄託 舩津家資料) ・画に優れ、文晁の後継者として 将来を嘱望されましたが、32歳 の若さで早世します。 文晁の子にして早熟の俊才絵師 み や づ の ぶ む こ しょ く ぼ う 8
文一の描く千住酒合戦 ・千住酒合戦の様子を記録した書画巻は、一つだけでなく複数作られました。その中には、 文一一人で描いたものもあります。文一も千住酒合戦に訪れていたのでしょう。 ・谷文晁、一世谷文一の合作による 「酒戦図」(《高陽闘飲図巻》(千住仲町・個人蔵)より) ・一世谷文一 一人による 「酒戦図」(《後水鳥記》(当館蔵)より) しょ が
か ん 9
千住に伝来した 文一の屏風 《双鶏図屏風》 ・銀箔貼の屏風に貼ら れた、鶏の親子の図。 千住の商家に伝来し ました。 全体 そうけい ず
びょうぶ 江戸時代後期 (当館寄託 若田家資料) ぎ ん ぱ く ば り 10
二世 谷文一 (文化11~明治10年、1814~77) ・一世文一の長男で、絵師として 父と同じ「文一」を名乗りました。 ぶ ん い ち ・現在の足立区江北地域の豪農で、
文晁の弟子だった舩津文渕と 親しく、しばしば江北を訪れて いました。 ・宮津藩に仕える他、幕府の派遣 した万延遣米使節に随行して、 アメリカにも渡りました。 二 世 谷 文 一 《 鷹 図 模 本 》 ( 当 館 寄 託 舩 津 家 資 料 ) ※ 画 法 修 行 の た め の 二 世 文 一 に よ る 模 写 。 アメリカにも渡った文晁の孫 み や づ ま ん え ん け ん べ い し せ つ ふ な つ ぶ ん え ん こ う ほ く 11
舩津 文渕 (文化3~安政3年、1806~56) ・上沼田村(現 足立区江北地域)の豪農。 ふ な つ ぶ ん
え ん ・二世文一の親しい友人で、絵画 作品や手本類など、文晁一族の 様々な資料を任せられて、自家 に伝えることとなりました。 ・文晁に入門して「文渕」の号を もらい、絵師としても活動しま した。 舩 津 文 渕 《 猛 虎 図 》 ( 当 館 寄 託 舩 津 家 資 料 ) 文晁の資料を伝えた二世文一の友 か み ぬ ま た 12
文渕が伝えた文晁一族の資料 –文晁たちによる絵画- 谷 文 晁 《 波 濤 雲 龍
図 》 ( 当 館 寄 託 舩 津 家 資 料 ) ※ 最 晩 年 の 文 晁 が 文 渕 の た め に 描 い た 一 幅 。 一 世 谷 文 一 《 虎 図 》 ( 当 館 寄 託 舩 津 家 資 料 ) 13
文渕が伝えた文晁一族の資料 –膨大な数の粉本- ※粉本=学習用の手本や、他者の作品の模写、構想段階の下絵などの総称。 ふ ん ぽ ん 谷文晁 『西蛮画獣譜写』の内の一図。 ※オランダで刊行された博物書『動物図譜』の
挿絵の模写。 (当館寄託 舩津家資料) 谷文晁《育王山図 模本》 ※室町時代の絵師、雪舟の作の模写。 (当館寄託 舩津家資料) 14
文渕が伝えた文晁一族の資料 –文晁・文一の印- 谷文晁の落款印 とうこうぶんちょうのいん 印文「江東文晁之印」 (当館寄託 舩津家資料) 一世谷文一の落款印 ぶんいちいん 印文「文一印」
(当館寄託 舩津家資料 らっかんいん らっかんいん 15
お わ り 足立区立郷土博物館 三代に渡って 千住・足立に親しんだ谷家の人々。 彼らと共に風雅を楽しみ、 豊かな「足立の文人文化」は 形作られていきました。 編集:学芸員
小林優 ふ う が ぶ ん じ ん 16