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全PRの83%がAIレビューだけでマージできるようになった開発組織はその後どうなったか

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July 23, 2026

 全PRの83%がAIレビューだけでマージできるようになった開発組織はその後どうなったか

AI DevEx Conference 2026 発表資料

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July 23, 2026

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Transcript

  1. ⾃⼰紹介 • 名前 ◦ 市島 慎吾 (Shingo Ichijima) • 会社

    ◦ 富⼠ゼロックス (2016/04 ~ 2018/08) ◦ バイセルテクノロジーズ (2018/09 ~ 2019/12) ◦ ラクスル (2020/01 ~ 2023/01) ◦ カウシェ (2023/02 ~ ) • 役割 ◦ Engineering Manager (Backend) • アカウント ◦ X: @shinichiji ◦ GitHub: @a-thug
  2. SNSのように 毎⽇開きたくなるECアプリ ダウンロード 累 計 700 万 突破 ※2026年7⽉時点 GMV

    DAU 35 倍 81 倍 ※FY23.8⽉→FY26.5⽉⽐較 ※FY23.8⽉→FY26.5⽉⽐較 売上総利益 売上総利益/⼈ 411 倍 1.6 億 ※FY23.8⽉→FY26.5⽉⽐較 ※FY26.5⽉速報値を年換算
  3. どうしてか、を想像してみた • AIレビューを導⼊している企業は増えてきている ◦ github copilot review, coderabbit, bugbot, etc

    • しかしAIレビューをmerge gateとして置けている企業は少ないのでは ◦ 阻害要因 ▪ レビュー品質、レビューに必要なコンテクスト、マインドチェン ジ、etc • PRをAIにレビューさせることと、AIレビューだけでPRをmergeするま ではかなり距離がありそう
  4. 振る舞いが担保されている重要性 • カウシェではprotoファイルのgRPCエンドポイントごとに仕様を書くよ うにしている ◦ 書かれたgRPCエンドポイントの仕様ごとに正常系‧異常系をステータ スコード別に検証 ◦ そもそも書かれている仕様を満たしているか、をレビューでまず チェックしている

    ◦ 仕様に書かれているがテストケースがない、はAIでのコーディングが 活発になる前からレビューでかなりチェックしてきていた • テストが通る=デグレしていない、をAIが確かめられる • このガードレールが無ければ、AIにApproveは任せられなかった
  5. ここまで刻むと • PRに「適切なコンテクスト」と「⼩さいスコープ」が揃う。 • 学⽣のテストでいうところの、⾃由記述より⽳埋め式や選択式に近い感じ ◦ ⾃由記述は採点(判断)が要るが、選択式は丸付け(◦か×)で済む ◦ レビューも同じで、曖昧さが減るほど、AIの判断の余地が減る •

    ただし丸付けできるのは「決めた通りに作れてるか」まで ◦ 「そもそも、この作り⽅がベストか?」は、AIには判断させていない ◦ あえてスコープを絞って、その判断は作る前に済ませるようにしたから • 詳しくは別記事『制約が開発を速くする』にて ◦ https://zenn.dev/kauche/articles/44ae321438f0ff
  6. ⼈間に渡すのは、戻せないか‧直すコストが⾼い領域 • DBスキーマの変更は⼈間に渡す ◦ データは⽣存期間が⻑くなりがちなのと、⼀度変更すると戻すのが難しい 場⾯が多い • Proto定義の変更も⼈間が⾒る ◦ 他サービスへ影響が波及するのを防ぐ

    • 認証‧決済フローも⼈間が⾒る ◦ 何かあった場合にビジネス的なインパクトが⼤きい部分の責任は⼈間が持つ ◦ 設計のトレードオフやビジネス上の妥当性は、最終的に⼈間が引き受ける
  7. 判定の材料‧コンテクスト • ハザードマップ ◦ コードベースのドメインやファイルをcritical / high / medium /

    low の4段階で⾊分けしている • DBスキーマ危険度 ◦ ある時点のテーブルのレコード数やバイト数、どの変更がどこに影響 するかなどが書かれている • ドメイン知識 ◦ 決済‧本⼈確認‧購⼊のためのルールなどの業務ルールを照合に使う • 検出ルール集 ◦ 過去の⾒逃しから⽣まれたパターンを蓄積する
  8. ハザードマップの作り⽅‧管理⽅法 • まずは⼈が⾒て区分をつけた ◦ サービスの特性や、過去のインシデントを分析して、⼿で⾊分け ▪ ビジネスロジック上、重要な領域 ▪ ホットスポット ▪

    呼ばれる頻度が多く、落ちたり負荷が⾼まるとまずい領域 ▪ etc... • そのあとは、改善ループを回しつつ、たまに⼈が⾒てチェック ◦ DBの危険度(テーブルの⾏数‧サイズ)も同じやり⽅で最新化 • ⼈が⾻格を作り、メインはAI、たまに⼈がチェックして鮮度を保つ
  9. 毎晩、5つのエージェントがルールを改善する • Measure ◦ PR統計を集計する ◦ 承認率、誤判定数、ルールの発⽕率 • Explore ◦

    リポジトリとインフラを巡回し、詰まりや未知のパターンを探す • Improve ◦ 検出ルールとパターン集を、実際に編集する • Reflect ◦ 翌⽇の優先順位を決め、各エージェントへの指⽰を⽣成する • Audit ◦ 全変更を検証し、改善が逆効果になっていないかをチェックする
  10. ⾒逃しも拾ってルールに加えていく • メインのAIレビューの⾒逃しに備え、外部のレビューツールも並⾏で動か している ◦ 外部のレビューツールがした良い指摘や漏れを取り込んでいく • Measure Agentが、その指摘や漏れを記録する •

    Improve Agentが、似た漏れや指摘が応⽤できる箇所が他にないか を横断で分析する ◦ そして新しい検出ルールを⾃動で⽣成する • いろんな情報を⾷わせつつ、取捨選択させて育成をしている ◦ これを毎⽇⾏う
  11. どうやって投⼊していったか • 過去数万件のPRをローカルAIで精査し、ルールとナレッジの初期データと して投⼊した • 最初の数週間はAIレビューはコメント投稿のみ⾏い、⾃動マージまではし ないようにした ◦ あまりにも厳しい判定が多い、と感じたので却下すべき理由がなけれ ばApproveという考え⽅に⾄った

    • そしてAIレビューbotがApproveするようになり、その後は⼈にチェック をされることなく⾃動マージするようになった ◦ ⾃動マージが少し怖かったのは事実 ◦ エンジニア全体としてのマインドチェンジは必要だった
  12. その安⼼‧安全は何を守るか、何の価値を産むか • つい「安⼼」「安全」の⽅に倒したくなる • でも「具体的に何が困るのか」を⾔ってみると、意外と出てこなかったりす る • 「本番に何が⼊っているか分からない」も突き詰めたら「なんとなく怖い」 • 本当に危険な箇所(ハザードマップ)は具体で⾔える

    ◦ ⾔語化できない不安は切り捨てずに⼩さく試す ◦ 怖いから、で⽌まらない • 他と同じようなことをやっても同じような結果しか出ない ◦ どこで差をつけるか ◦ 少⼈数のスタートアップだからこそ取れるリスク
  13. 事業には効いていそう • 明確に事業は伸びた ◦ 直近⽉ベースの年換算で売上⾼約71億円、売上総利益約62億円ペース ▪ 1人あたりの売上総利益が約 1.6億円 ▪ GMV35倍、売上総利益411倍

    (※FY23.8⽉→FY26.5⽉⽐較) ▪ DAU81倍、APIトラフィック565倍 (※FY23.8⽉→FY26.5⽉⽐較) • いろんな要因があるため相関関係をハッキリと特定することはできない が、スループットの向上は⼀因ではありそう • 代表note ◦ https://note.com/kempei_monna/n/nc2e8417de104
  14. なぜそう⾔えるのか? • カウシェのtoCという事業ドメイン ◦ AI x EC x ソーシャル という、不確実性の⾼い領域で事業を⾏っている

    ◦ toBのSaaSみたく「これを作ると売上が⽴ちそう」みたいなものが少ない • ディスカバリーの頻度を⾼め、インサイトを集め、より打率を上げていくこと が重要 ◦ もちろん顧客インタビューなども⾏っているが、結局は想像でしかない ▪ めちゃくちゃ考えたけどやってみなくちゃ分からないことはある ◦ 試⾏回数を増やして、短いイテレーションで改善していくことが⾮常に重 要なフェーズ ▪ その試⾏回数に効いた、と⾔える
  15. 深く⾒るのは⾮機能要件と異常系 • 正常系はAIとテストでだいたい担保できる • ⼈がしっかり⾒るのは、AIが想像しにくい以下の領域 ◦ 異常系 ◦ ⾮機能要件(件数‧スケール等) •

    特に効果的なのは、経験でしか知らない過去の地雷 ◦ 例えば、連携する外部SaaSが過去こういう障害を起こした ▪ その挙動を踏まえた実装にする • 明⽂化されていないと、AIには気づきにくい。 ◦ だから⼈がルールを⾒つける
  16. アウトプットは5.5倍、判断を伴う仕事は1.5倍 • マージされたPRは5.5倍に増えた • ⼈間がレビューに関与したPRは約1.5倍に増加 ◦ 判断を伴う仕事を1.5倍に抑えたまま、全体のアウトプットは5.5倍に できた ◦ しかし同じ期間に開発メンバー数は2倍になった

    • 1⼈が判断するPRの件数は⽉25%削減したため、むしろ減っている ◦ 作る量は増えたが、1⼈が下す判断の数は減った • 判断の難しさ、理解すべき物事の総量は増加した ◦ しっかり⾒るPRだけになってしまった
  17. システムの安定性 • revert率は下がった ◦ 3.8%→0.5〜0.9% ◦ revertの絶対数は増えた:5件→20件前後 ▪ revert全部が障害と関係しているものではない •

    中規模以上の障害は月 1~6件で横ばいとなり、意外と変わらず • AIレビューの見落としによる障害は? ◦ あった ▪ しかし、これを人間がレビューしていたとしても普通に見落としていた ような事象だった ◦ したがって、品質ゲートとしての AIレビューはちゃんと機能している
  18. New comerの育成は? • 仕組みとして、新規加⼊者にはAIレビューによるmergeまではさせないよ うにしている ◦ 意図は以下で、加⼊後3ヶ⽉はAIレビューのコメントのみにしている。 ▪ ⾃分が作ったものを正しく説明する経験を積ませたい ▪

    New comerと既存チームメンバーとの接触回数を増やしたい ▪ ⾔語化できていない開発メンタルモデルの共有をしたい ▪ コードをチームのものにしていく、という儀式をやりたい • ⼀定これでなんとかなっているように⾒えている ◦ (AIが出てくる前より) ⾃分が提出したコードが説明できるようになっ たか、は正直なところ不明 ▪ 個⼈差ありそうだな、とは思っている
  19. 次に詰まるのは『作る前』 • 実装 ~ レビューが早くなった分、詰まる箇所が『作る前』へと移った ◦ 『作る前』= 何を作るか‧どう作るかを意思決定して、合意すること ◦ AI云々関係なく、元から⼤事だった部分

    • ⼭ほどある情報から、何を取捨選択して判断していくかがボトルネックに なりうる ◦ 判断の軸を⾔語化しないと、その⼈‧プロセスがボトルネックになっ てしまう
  20. 開発⽂脈におけるボトルネック • かつては設計、実装、PRを出す、レビューを待つ、指摘を直す、マージ、 QA、リリース ◦ 今や実装 ~ マージまでが⼀瞬になってしまった • QA⼯程もボトルネックではあるが、カウシェでは設計部分のボトルネック

    の⽅が詰まっている ◦ ここさえ正確にできれば、あとは⼈が介⼊することなくコーディング エージェントが複数の開発施策を並列でやれるようになるのでは、と 考えている
  21. ベストであることを合意する、というボトルネック • 『なんでこれをやるんだっけ、なぜこの⽅法にするんだっけ?』の妥当性 をチームで合意する ◦ 本当に現時点でのベストか?の検証フェーズ ◦ コードの1⾏ずつではなく、なぜそうしたかという意思決定に責任を持 てるようにする •

    他の⼈にこれが現時点でのベストであることを合意してもらうのはタフな 作業である ◦ まずは⾃分⾃⾝、他の⼈に説明できるように理解する必要がある ◦ これをサボったツケが理解負債というものになる
  22. ベストを模索し、説明可能にする仕事 • コードの⼤半はAIが書けてしまう ◦ しかし⾃分なりにベストを模索して、最適解を模索し続ける責務は 残っている • そして、それを他⼈でも理解できるように「説明可能な状態」にすること ◦ これは合意を得るための「作業」ではない

    • 説明できるようにするまでの過程でこそ、理解そのものが磨かれ、そこか らさらに最適なものが浮かび上がってくる ◦ ただし⼈間の理解できる量には限界があるので、全部を理解し続ける のはどこかで破綻する ◦ 理解しなくていい領域を仕組みで広げ、理解は本当に必要なものへ集 中させる
  23. 告知 • 📣 採⽤中 📣 ◦ Backend、Mobile、Platform、ML/DS、Data、EM、VPoE、PdM、Designer … • 📣

    7/24(⾦曜) 1930〜 渋⾕カウシェオフィスにてMeetUpを開催 📣 ◦ 「カウシェって実際どんな感じなのか」 ◦ 「中の⼈に直接はなしを聞いてみたいな」