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所得税の基本と計算ガイド

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May 01, 2025
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 所得税の基本と計算ガイド

所得税は個人の1年間(1月1日~12月31日)に得た所得に対して課税される税金です。しかし、「所得」と一言で言っても、家族構成や生命保険の加入状況によって実際の課税対象額は大きく変わります。この発表では、所得税の仕組みや課税対象額の計算方法について、具体的な例を交えながらわかりやすく解説します。給与所得者の方が自分の所得税がどのように計算されているのか理解できるようになることを目指します。
税金の計算は複雑に思えるかもしれませんが、基本的な流れを把握することで、自分の所得税についての理解が深まり、適切な資金計画に役立てることができるでしょう。

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西本豪

May 01, 2025
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  1. 給与所得と課税対象額の違い 給与所得を確認 年間に得た給与収入の総額を確認します。これが出発点となり ます。 控除額を計算 給与所得控除、社会保険料控除、各種人的控除など、適用され る控除を計算します。 課税対象額を算出 給与所得から各種控除額を差し引いて、実際に税金がかかる金 額を求めます。

    税額の計算 課税対象額に所定の税率を適用して、納付すべき所得税額を計 算します。 重要なのは、年収すべてに税金がかかるわけではないということです。例えば、年収400万円の既婚者の場合、さまざまな控除を適 用した結果、実際に税金が課される金額(課税対象額)は124万円程度になることもあります。つまり、年収の約3分の1にしか税金 がかからないケースもあるのです。
  2. 課税対象額の計算方法 給与所得控除 給与収入に応じて一定の計算式で算 出される控除額です。給与所得者の 必要経費として認められています。 年収400万円の場合、概算で124万円 が控除されます。 社会保険料控除 医療保険、介護保険、年金保険、雇 用保険などの社会保険料として支払

    った全額が控除の対象となります。 一般的なサラリーマンの場合、年収 の約15%程度です。 人的控除 基礎控除(38万円)や配偶者控除( 38万円)、扶養控除などが含まれま す。これらは個人の家族構成によっ て適用される控除額が変わります。 所得税の計算では、まず給与収入から各種控除額を差し引いて課税対象額を求めます。例えば、年収400万円の場合、給与所得控除 (124万円)、社会保険料控除(58万円)、基礎控除(38万円)、配偶者控除(38万円)、生命保険料控除(8万円)などを差し引 くと、課税対象額は124万円となります。
  3. 給与所得控除の仕組み 給与等の収入金額 給与所得控除額 180万円以下 収入金額×40%(最低65万円) 180万円超~360万円 収入金額×30%+18万円 360万円超~660万円 収入金額×20%+54万円 660万円超~1,000万円

    収入金額×10%+120万円 1,000万円超~1,500万円 収入金額×5%+170万円 1,500万円超~ 245万円(上限) 給与所得控除は、会社員として仕事をするために必要な経費を一律の計算式で控除するものです。事業所得者が経費を個別に計上できるの に対し、給与所得者は一律の計算式で経費相当額を控除する仕組みになっています。 例えば、年収400万円の場合、「360万円超~660万円」の区分に該当するため、「400万円×20%+54万円=134万円」が給与所得控除額となり ます。この控除額は税制改正により変更されることがありますので、最新の情報を確認することをお勧めします。
  4. 社会保険料控除と生命保険料控除 社会保険料控除 社会保険料控除には、健康保険料、介護保険料、年金保険料、 雇用保険料などが含まれます。これらは「標準報酬月額」×「 保険料率」で計算され、原則として会社と従業員で半分ずつ負 担します。 標準報酬月額は4月~6月の給与平均を基に決定されるため、こ の期間の残業代などが少ないと、年間の保険料も少なくなる傾 向があります。支払った保険料は全額が控除対象となります。 生命保険料控除

    民間の生命保険会社に支払った保険料の一部が控除される制度 です。「生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金 保険料控除」の3種類があり、それぞれ最大4万円まで控除され ます。 計算方法は保険料の金額によって異なり、例えば年間支払保険 料が8万円以上の場合、一律で4万円が控除されます。なお、契 約時期により旧契約(平成23年12月31日以前)と新契約(平成 24年1月1日以降)で控除額が異なる場合があります。
  5. 所得税率と計算方法 所得税は課税対象額に応じて税率が変わる累進課税制度を採用しています。課税所得が増えるにつれて適用される税率も上がる仕組みです。所得税の計算式は「課税対象額×税率- 控除額=所得税額」です。 所得税の税率は以下のように段階的に設定されています: • 195万円以下:5% • 195万円超〜330万円以下:10% • 330万円超〜695万円以下:20%

    • 695万円超〜900万円以下:23% • 900万円超〜1,800万円以下:33% • 1,800万円超〜4,000万円以下:40% • 4,000万円超:45% 具体的な計算例として、課税対象額が124万円の場合、税率は5%となり、124万円×5%=62,000円が所得税額となります。 一方、課税対象額が400万円の場合は20%の税率が適用されますが、単純に400万円×20%とはなりません。控除額を使用して「400万円×20%-427,500円=372,500円」という計算になり ます。控除額は、税率が変わる境界点で税額が急激に上がらないよう調整する役割を果たしています。 なお、平成25年から令和19年までの間は東日本大震災からの復興財源として「復興特別所得税」が課されており、所得税額の2.1%が追加で徴収されます。例えば上記の124万円の例 では、62,000円×2.1%=1,302円が追加され、合計63,302円が所得税額となります。400万円の例では、372,500円×2.1%=7,823円が追加され、合計380,323円となります。 給与所得者の場合、実際には給与から「源泉徴収」という形で毎月自動的に所得税が徴収されており、年末調整や確定申告で過不足を精算します。フリーランスや個人事業主は確定 申告を通じて所得税を納付する必要があります。
  6. 所得の種類と税金の仕組み 給与所得 会社員などの給与から給与所得控除を差し引 いて課税 事業所得 個人事業主の収入から必要経費を差し引いて 課税 不動産所得 家賃収入などから必要経費を差し引いて課税 配当所得・譲渡所得

    株式投資などの収益に対して一律20%課税 所得税は所得の種類によって細かな仕組みが異なります。給与所得者は給与所得控除が適用される一方、個人事業主は実際にかかった経費を計上でき ます。また、株式投資からの配当所得や譲渡所得は、所得の金額に関わらず一律20%の税率が適用されます。 しかし、どの所得であっても、所得から控除を差し引いた課税対象額に税率を掛けるという基本的な仕組みは同じです。自分の所得状況を把握し、適 用される控除や税率を理解することで、効率的な税金対策や資産形成が可能になります。
  7. まとめ:所得税を理解して賢く対策 自分の収入と控除を把握する まずは自分の年収と適用される控除(給与所得控除、社会保険料控除、人的 控除など)を正確に把握しましょう。源泉徴収票や年末調整の書類を確認す るとよいでしょう。 課税対象額と税率を確認する 収入から控除を差し引いた課税対象額を計算し、自分がどの税率区分に該当 するかを確認します。課税対象額は予想以上に低くなることもあります。 節税対策を検討する 生命保険料控除や医療費控除、ふるさと納税などの制度を活用することで、

    適切に税負担を軽減できる可能性があります。自分に適した控除や特例を調 べてみましょう。 定期的に見直す 税制は改正されることもあるため、定期的に最新情報をチェックし、自分の 状況に合わせた対策を見直していくことが大切です。 所得税の仕組みは複雑に見えますが、基本的な流れを理解することで自分の税金への理解が深まります。年収がいくらであっても、課税対象額はさまざま な控除によって大きく変わります。この知識を活かして、効率的な資産形成や生活設計に役立てていきましょう。 また、自分で計算するのが難しい場合は、確定申告の際に税務署の相談窓口を利用したり、税理士に相談したりすることも検討してみてください。正確な 知識を持つことが、適切な税金対策の第一歩です。