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自作WebSocket (RFC6455)
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Hakkadaikon
December 19, 2025
Programming
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49
自作WebSocket (RFC6455)
12/18 自社の社内LTで発表した内容
https://github.com/Hakkadaikon/websocket
Hakkadaikon
December 19, 2025
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Transcript
⾃作WebSocket (RFC6455) 2025/12/18 発⽕⼤根
[introduce] name = “発⽕⼤根” department = “SRE” hobby = [“卓球🏓”,
“謎解き🔍”] UTF-8 NORMAL main introduce.toml
趣味で作っている WebSocketライブラリの話をします マニアックな話です
WebSocketとは ‧Webサーバーとクライアント間で双⽅向通信をするためのプロトコル ‧⾊々なところで利⽤されている ‧ライブ配信のコメント‧投げ銭 ‧SNS ‧株価取得 ‧オークションの⼊札 ‧etc…
WebSocket を使いたいと思った動機 ‧趣味でやっているSNSがある ‧そのSNSがWebSocketの上で動いている + オープンなプロトコル ‧⾃分でWebSocket サーバーを⽴てたいと思った
Web通信の変遷
OSI 7階層モデル L1 物理層 (ケーブル‧電気信号) L2 データリンク層 (Ethernet, WiFi) L3
ネットワーク層 (IP, ICMP) L4 トランスポート層 (UDP / TCP) L6 プレゼンテーション層 (SSL/TLS) L7 アプリケーション層 (HTTP / WebSocket / SMTP / FTP) L5 セッション層 (HTTPのハンドシェイク)
TCP / IP ‧UDPと違い、コネクションを 確⽴する必要がある ‧プロセスやOS単位で、コネクション を開ける個数が決まっている ‧コネクション数は節約できた⽅が 沢⼭の通信先と通信できる
Web通信の変遷 1 1991年〜 HTTP 0.9 イギリスの物理学者、 ティム‧バーナーズ‧リーが開発 URLを指定してコンテンツをダウンロードするだけの仕組みだった (GETのみ) GET
/index.html
Web通信の変遷 2 1996年〜 HTTP 1.0 [RFC1945] 仕様がRFCで管理されるようになった POSTなど、GET以外のメソッドが⾊々と増えた リクエストごとにTCPのコネクションが張られていた GET
/index.html HTTP/1.0
Web通信の変遷 3 1997年〜 HTTP 1.1 [RFC2068 -> RFC2616 -> RFC7230〜7235
-> RFC9112] 単⼀のTCPコネクションで複数のHTTPリクエストが送れるようになった GET /index.html HTTP/1.1 Host: foo.example.com Connection: keep-alive -> TCPコネクションを使いまわす
Web通信の変遷 4 2011年〜 WebSocket [RFC6445] 単⼀TCPストリームでリクエスト/レスポンスの双⽅向通信ができるようになった HTTP1.1 で動作する GET /resource
HTTP/1.1 Host: example.com Upgrade: websocket Connection: upgrade Sec-WebSocket-Version: 13 Sec-WebSocket-Key: E4WSEcseoWr4csPLS2QJHA==
Web通信の変遷 5 2015年〜 HTTP2.0 [RFC7540 -> RFC7441 -> RFC9113] テキストではなくバイナリのやりとり
(TCP等と同じ) より多くのデータを送れるように
Web通信の変遷 6 2015年〜 SSE (Server Sent Event) [RFC] HTTPでサーバーから通知を送れるようになった (サーバー
-> クライアントの⼀⽅通⾏) HTTP1.1, HTTP2.0で実⾏可能 GET /events HTTP/1.1 Host: example.com Accept: text/event-stream -> 継続的にサーバーからイベントが貰える Cache-Control: no-cache Connection: keep-alive
Web通信の変遷 7 2022年〜 HTTP3.0 [RFC9114] HTTP2.0と同じく、バイナリベースのやりとり TCPではなくQUICの上で動作する QUIC: UDPでTCPのような信頼性を確保する
⾃作 WebSocket
WebSocket の各⾔語のサポート状況 多くの⾔語でWebSocketを使うためのOSSがある & 標準でつかえる⾔語 もある ‧標準で使える⾔語: JavaScript/TypeScript, C#, Java,
etc…
せっかくWebSocketサーバー⽴てるなら ⾃分で”1から”作りたいな...
ということで、今年作ったのが この WebSocket サーバーライブラリ
⾃作WebSocketライブラリの特徴 ‧開発⾔語: C⾔語 (C23) + アセンブラ ‧サポートOS: macOS, Linux ‧ライブラリ依存:
無し (Linuxの場合) ‧機能サポート状況: 右記 (機能的には最低限) opcode support 0x1 (text), 0x2(binary), 0x8 (close), 0xA (pong) TLS support No Sub Protocol No Extensions No Compression / Decode No
⾃作WebSocketの推しポイント
推しポイント 1. C⾔語 + アセンブラによる構成 -> ⾼速 2. 依存ライブラリなし ->
Dockerコンテナ(scratch)にバイナリ1つコピーすれば動作する -> コンパクトなバイナリ/コンテナ (サイズ < 1MB)
C⾔語のメリット ‧50年の歴史があり、情報が多い ‧メモリを直接触れる -> ⽬指そうと思えば、極限まで⾼速化やバイナリ最⼩化を⽬指せる ‧最近よく使われているGo⾔語やZigなども 初期バージョンはCやC++で出来ていた
”外部ライブラリ依存なし”でソフトウェアを作るには 通常、ファイル操作やネットワーク通信を⾏うには カーネルで提供されている関数をシステムコールで呼び出して ⾏う必要がある カーネル 空間 システム コール ユーザー 空間
デバイス ドライバ ネット ワーク カード
”外部ライブラリ依存なし”でソフトウェアを作るには ‧システムコールは libc経由で呼び出すことが多い ‧OSやCPUアーキテクチャの 差異を吸収 -> libcに依存する! カーネル 空間 システム
コール ユーザー 空間 libc (DLL) OSや アーキテクチャ の差異を吸収
”外部ライブラリ依存なし”でソフトウェアを作るには ‧OSやアーキテクチャの 固有の処理を理解して ⾃分でシステムコールを 呼び出す -> libcに依存しない! -> シングルバイナリに出来る! ※Go⾔語はbuiltinでこれをやって
いるのでlibcに依存しない カーネル 空間 システム コール ユーザー 空間 libc (DLL) OSや アーキテクチャ の差異を吸収
システムコール (Linux / x86_64の場合) __linux_x8664_asm_syscall: movq %rdi, %rax movq %rsi,
%rdi movq %rdx, %rsi movq %rcx, %rdx movq %r8, %r10 movq %r9, %r8 syscall ret システムコールを アセンブラで呼ぶ必要がある OSやCPUアーキテクチャで 使うレジスタや書き⽅が変わる
システムコール (Linux / x86_64の場合) syscall (arg1, arg2, arg3, arg4, arg5,
arg6) rdi rsi rdx rcx r8 r9 rax rdi rsi rdx r10 r8 システムコールで 使うレジスタ 引数の値が 渡されるレジスタ syscall レジスタを読み替えて渡す必要がある
システムコール (他のOSの場合) さっき書いたスペック表 ‧開発⾔語: C⾔語 (C23) + アセンブラ ‧サポートOS: macOS,
Linux ‧ライブラリ依存: 無し (Linuxの場合) => これには理由があります ‧機能サポート状況: 右記 (機能的には最低限)
システムコール (macOS の場合) macOSの場合 => システムコールの直接呼びだし / 静的リンク => ⾮推奨
https://developer.apple.com/library/archive/qa/qa1118/_index.html
システムコール (macOS の場合) 同じ理由でGo⾔語もDLL (lib)を使うことに (#17490: 2016/10/18) https://github.com/golang/go/issues/17490
システムコール (Windows の場合) カーネル 空間 システム コール ユーザー 空間 libc
Windows API (DLL) NTDLL (DLL) OSや アーキテクチャ の差異を吸収 ここまではサポートされている
システムコール (Windows の場合) NTDLLの関数やシステムコールの直接呼び出しは⾮推奨 https://learn.microsoft.com/ja-jp/sysinternals/resources/inside-native-applications
どのくらい⾃作したか WebSocketのパーサー / ハンドシェイク(通信確⽴)の他には... ‧ハンドシェイクに必要なHTTP1.1の解釈 (RFC9110 / RFC9112) ‧ デバッグするためのログ出⼒
‧ハンドシェイクに必要な暗号化の関数 (base64 / sha1) ※sha1はパブリックドメインのソースを埋め込み & リファクタ TCP/IPから上のレイヤーは、ほぼ⾃作 (TCP/IPはカーネルの機能を使⽤)
⾃作プロトコルスタックのすすめ ‧HTTPやWebSocketなど、プロトコルについて解像度が上がる => OSS選定の時も役に⽴つ ‧仕様がハッキリしている => 勉強がてら何か作りたい、でも作りたいものがない みたいな⼈にもオススメ
課題
課題 ‧SSL/TLSの⾃作 => ⼀旦断念している ‧暗号系の関数 (楕円曲線暗号など) を⾃作するコストが⾮常に⾼い ‧外部に出すには必須 => 今のところ、テストや内部ネットワーク⽤
‧HTTP1.1にしか対応していない ‧HTTP2.0で動かすには、RFC8441等の実装が必要 ‧HTTP3.0は標準でTLS通信をサポートしているため、実装が難しい
今後の展望 ‧SSL/TLSの⾃作 (いつか) ‧HTTP 2.0 でのWebSocket サポート (RFC8441) ‧WebSocketとしての機能拡充 (NoをYesにしていく)
opcode support 0x1 (text), 0x2(binary), 0x8 (close), 0xA (pong) TLS support No Sub Protocol No Extensions No Compression / Decode No
ご清聴 ありがとうございました