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ウェブ小説とSF 歴史,マンガ・海外との比較から考える 日本SF大会23.8.5講演資料

ウェブ小説とSF 歴史,マンガ・海外との比較から考える 日本SF大会23.8.5講演資料

ウェブ小説とSF
「作品」ではなく「しくみ」の話
1.オンライン小説とSFの歴史(縦軸)
2.マンガと小説の比較(横軸)
3.アメリカ,中国,韓国との比較(横軸)
→今後SFがウェブで取り組むべきこと
を考える

ウェブは手段であって目的ではない
ウェブ小説と言っても提供方法は様々
何のために使うのか?
目的に適した手段は何か?

SFとオンライン小説の関係を整理すると…
・2000年代以前と
・2016年以降
にトピックが集中
→SF作家・ファンの性質と関係

SF界がウェブ小説を甘く見ていた
00-10s中盤にweb発の書籍化市場が爆増
いったい何が起こったのか?
なぜこの間、日本SFとウェブ小説の
関係は遠かったのか?
ここに今後を考えるヒントがあるかも

日本のウェブ小説の歴史
1990年代の特徴
・有料化/(出版社抜きの)直売志向
・英語・海外展開志向
・マルチメディア
・集団創作
・分岐する物語/ハイパーテキスト
→「紙でできないこと」志向が強い
  ウェブ自体を目的化しがちだった

90s→00sでのウェブ小説の変化
・有料化/(出版社抜きの)直売志向
→ウェブでは無料だが出版社が紙で有料書籍化
・英語・海外展開志向→日本語/日本ローカル
・マルチメディア→文字だけ
・集団創作→単一作者
・分岐する物語/ハイパーテキスト
→リニアな物語
+ランキングと投稿PFの台頭

90s後半から00s初頭に起きた画期
既成新人賞は「作家が作家を選ぶ」(1)
楽園,アルファポリス,スターツ出版が
「読者が直接作品を選ぶ」(2)を開拓
「量が質を担保」(ウェブ人気が出版物としての商品価値の裏付けになる)
→1より2が「売れる」打率高いと発見

2000年代に確立されたポイント,ランキング制の投稿PF発で人気の作品を書籍化するビジネスモデルが2010年代前半までに拡大
これらの試みでは作家もPFも版元も数字を取る=人気になるを目的にしており,達成手段が確立され成功した

00s後半以降の投稿PF時代の重要な点
・群として投稿される=リテンション増大
特定サイトへの来訪回数増加
・単発ヒットではなくブーム,レーベル,ジャンル化,タグによる流行/現象の可視化
書き手・読み手の定着。探しやすくなる
・ポイント,ランキング制と書籍化が紐付く
書き手にロールモデルと投稿戦略が生じる
本―ウェブへ相互にユーザーが流入
→本質は流行ジャンルの誕生ではなく
再現性の高いヒットのしくみの形成
→SFがウェブ活用によって何を
目指すにせよ「しくみづくり」「エコシステムの全体最適」の
観点からの取り組みが必要

一方,出版社の文芸発の試みはほぼ失敗
12年講談社アマテラス→15年終了
13年電子誌「デジタル野性時代」「つんどく!」「yomyom pocket」→15年までに終了
13年ディスカヴァー21×CRUNCH MAGAZINE
新人賞1回で終了

雑誌の果たすべき機能は対読者にある
・作家・作品の育成と宣伝
・リテンション 定期的に届け,
継続的に関心を繋ぎ止める
・顧客エンゲージメント向上
これができないなら
惰性で続けてもやる価値なし

サイトに小説あげれば万事解決、ではない
うちもウェブ小説やるで!

版元サイトにちょぼちょぼ
小説をアップしても
たくさん読者はこない
リテンションが弱い
数,人気で競うなら工夫が必要

00-10s前半の日本SFは大きな動き無し
ウェブ,電子がしくみ,体制を変えず

北米は10年代前半から着実に変化?
11 10年度ネビュラ賞最終候補短篇6/7がオンライン初出.ノヴェラ,ノヴェレット部門も電子版で読める(買える)ものが大半を占める
米Asimov誌,12年時点で約3割が電子購入で部数増
Hugh Howey”Wool”KDP発でヒット

PFとSF界のランキングの違い
投稿PF:投票権の持ち主=誰でも
星雲賞:カネ払ってSF大会来る猛者
読みたい:SF関係者

→「誰でも」だとジャンル固有の
価値観で作品が選ばれない.
価値観の共有者に限定するから機能.
評価「方法」は似てても評価「者」が違う

日本の文芸,SFは
タグ,ポイント,ランキング制×投稿PFの
・作品評価の定量化 ・読者が作品を選ぶ
・マッチング,検索精度の追求
・リテンション(作品量、更新頻度)最大化
・コメントを通じての読者の作品参加
・ウェブで無料で読める敷居の低さ
・ウェブ→書籍化→マンガ→映像のIP展開
といった一連のポイントを外すか無視
有料ウェブ小説への挑戦にもスマホ以降消極的

なぜ文芸,SFは素直にできないのか
売れるよりもジャンル的な価値を重視
作家は読者より偉い,線引きすべき
紙はウェブより偉い、以下同文
うちのジャンルは他より偉い、以下同
量より質
売り物はタダで見せられない
タダで見せたら素人と同列になる
こういう価値観で駆動している
00s~のウェブ書籍化思想と相性悪い
だからできない、やらない
オルタナティブな方法論を模索するも
目的と手段が不整合

10s以降,漫画と小説の何が違ったのか?
マンガは雑誌から
ウェブ、アプリ、電書に
主軸を変更
小説はウェブ小説PF以外
うまくDXできたとは言えない

マンガアプリの機能
・育成→ジャンプ+他の大量読切,
    最新話は出版社系APPでのみ配信
・宣伝→電書ストアで1~3巻無料,LINEマンガで無料連載,気軽な作品へのリーチ実現
・リテンション→23時間待てば1話無料
・エンゲージメント→出版社APPを連載媒体として  
  認知、顧客ロイヤルティと客単価を共に上昇
雑誌→デジタルで機能を置換,発展

なぜリテンションが大事なのか
人は書店に行かないと本を買わない.
昔は定期的な来店動機を雑誌が作った.
複合店はレンタルビジネスでも作った.

リアル書店は習慣的な来店装置を喪失
→マンガAPPは時限式無料で毎日来店
→→小説はPF以外リテンションが弱い

マンガは
出版社系とストア系で役割分担
小説はこれができてない

特にファネルの設計に難あり.
間口広く呼び込み+濃い方へ誘導
の施策が小説では弱い(後述)

ただ小説とマンガでは市場規模が違う
マンガ…6770億円
小説…700億円程度
→マンガ同様の投資は
期待できない…?

ただしウェブ小説の市場規模は
韓国…21年6000億ウォン以上
韓国コンテンツ振興院調べ
中国…ネット文学全体で230億元,
中国作家協会ネット文学センター『2022中国ネット文学青書』
SFの電子書籍(書籍・雑誌の電子版,ネットオリジナル)13.7億元
新華網日本語2023.6.3「中国SF産業、22年の売上高877億5千万元」
ウェブ+電書小説市場だけで
日本の小説市場全体に匹敵(韓国),凌駕(中国)
日本も投資で伸びる余地大
もっとも3%向け小説がIP展開可能か,ビッグビジネスになるかは疑問
(とはいえ何もしないとジリ貧)

米中韓との比較でわかること
99 キングRiding the Bullet,The Plant50万部直販→DL後振込方式で課金率48%に低下,00年12月停止
ジョン・スコルジー"Agent to the Stars”
シェアウェア公開、収益4000$→書籍版05年
02 『老人と宇宙』サイト公開→Torから05年書籍化、ヒューゴー賞最終候補作。
「ぼくは長篇をオンラインで発表して大手出版社からオファーを受けた最初のSF作家だと思う」
00s前半 多数のウェブジンが作られる
03 ドクトロウ『マジックキングダムで落ちぶれて』無料公開
人気作家,新人,中堅皆ウェブ公開してる
→日本SF作家ウェブに小説あげなさすぎ?
SF版元が保守的なせい?
新作も出版契約切れの作品もUPしては?

北米は10年代前半から着実に変化?
06 Clarkes World創刊.10sには世界のSFを翻訳
09年Andy Weir"The Martian"個人サイト連載,11年KDP,
 14年ランダムハウス刊,15年映画化
10年発表ヒューゴー賞ゼミプロジン部門Clarkes World(06年創刊)がウェブジン初、ファンジン部門StarShipSofaがポッドキャスト初の受賞.CW誌は月$2.99の定期購読販売電子雑誌.掲載作品はウェブで無料で読める
オンラインマガジンLightspeed創刊,ウェブ版無料,号ごと電子バラ売りと定期購読.
11-13Hugo賞最優秀セミプロジン賞最終候補,14-15年受賞
→日本も各種賞でウェブ(発)部門を設けるべき
SFのpodcast番組を増やすべき
 (音声メディアによるリーチ)
小説とともに解説や議論もウェブで提供
→これが「SFのファンにする」には重要

CW誌等は定期購読電子誌.
だが、掲載作品はウェブで無料閲覧可能
ポッドキャスト制作も並行
(北米ウェブジンはこれがよくある形態?)
→電子小説誌の不便さ,
読者の新規流入のなさをウェブや音声で補完
日本のプロジン,ウェブジンも導入してほしい

日米の差の理由は不明だが推定すると
・定期購読文化の有無が
有料Webzineへの抵抗の強弱と関係?
・書店数の多寡? 面倒だから電書率高い?
・出版社のTechへの取り組みの違い?
・超大手と零細版元が二分化した中では
オルタナティブな方法論の模索が必須?
・平均年齢の違い? ・国民的な気質?
・ウェブ小説とそのPFへの忌避/嫌悪の有無
もろもろの違いの考察も重要だが
日本であまりやられていないが
有効そうなことは、とりあえず
やってみたほうがいいのでは

中国の場合
98 台湾でBBS連載の蔡智恒『第一次的親密接触』書籍化,大陸でも大ヒット。ウェブ小説書籍化時代
中国最初のオンラインSFファングループ登場
無料で良質なウェブジンが10s前半まで制作される
03 起点中文網、ウェブ小説に課金モデル導入.
成功→作家に専属契約金払って連載するように.
郝景芳『1984年に生まれて』登場の毎日1万字書く最高収入ネット文学作家はたぶん起点出身・唐家三少
晉江原創網(晉江文學城)創設,女性向けで人気に.
顧適ら一部SF作家もデビュー以前に投稿.

ウェブの方が紙より規制が少ないこともあり
有料ウェブ小説の試行,移行,隆盛が早期に発生
作家が無料自由連載で人気を得る
→契約作家になり作品の有料販売可能へ
という二階建てモデル(NAVER挑戦漫画等と同様)

中国ウェブ小説はIPビジネス化
15『マスターオブスキル全職高手』(起点12-16)邦訳刊
19 Douyin番茄小説でウェブ小説参入.完全無料でユーザー拡大→IPビジネスで収益化. MAU9000万
21 墨香銅臭『魔道祖師』(晋江15-16)邦訳刊.
中国ウェブ小説が日本で初めてヒットする
→映像やウェブトゥーン化して各国に輸出
SFも外販&IPビジネス化への流れに乗る

中国もプロ作家のウェブ投稿がよくある?
00-10s ウェブで穿越Chuanyue小説が隆盛・定着
06 郭敬明「最小説」創刊.紙雑誌だがwebにもup
09 無料SFオンライン誌「新幻界」創刊(現在消滅)
郝景芳作品なども掲載
10 『三体III』発売後、宝樹がBBSに『三体0』投稿
12 郝景芳,BBSに「乾坤と亜力」投稿
13 馬伯庸ブログ「南方に嘉蘇あり」執筆
storycom,ClarkesWorldと提携,中国SFの翻訳促進
16 ファンダム母体に法人「未来事務管理局」設立,毎日更新「不存在日報」開始,若手短篇集出版
→SFに企業参入,企業として働きかけアリ
日本はここが弱い.投資対象と見られてない
市場規模やSFのIPとしての期待値が違うが…

ただPFでウケる穿越のようなジャンルもあるが,
中国でも有料ウェブ小説PFでジャンルSFが爆売れしていたわけではなさそう.
PFでは高頻度更新の大長編がウケる.
SF界では知的満足と構成力が重視される
とはいえBBSやブログであっても
「投稿したらSFファンが読む」場がPFと別に存在してることは重要?

また,日本ではPFでウケる,穿越的な
高頻度更新,大長編連載が可能な
娯楽SFウェブ小説のサブジャンルが
開拓不足とも言える

等々

iida ichishi

August 05, 2023
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Transcript

  1. 11 SFがウェブ小説を勘案すべき理由 web小説書籍化は安定,文芸市場4割占有 30 50 82 100 105 108 106

    102 101 104 0 20 40 60 80 100 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 ラノベ単行本(ほぼweb小説書籍化)市場規模 出版科学研究所調べ ウェブ発ラノベ単行本推定発行金額
  2. 12 ウェブ活用に移らなければ市場縮小は確定 衰退に抗して新規SFファン獲得を目的にする? 30 50 82 100 105 108 106

    102 101 104 0 20 40 60 80 100 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 ラノベ単行本(ほぼweb小説書籍化)市場規 模 ウェブ発ラノベ単行本推定発行金額
  3. 32 ウェブ出身作家起用,ウェブ活用進む 16 平鳥コウ『JKハルは異世界で娼婦になった』 「超水道」ミタヒツヒト『イマジナリ・フレンド』 ゲンロン大森望SF創作講座「超・SF作家育成サイト」 17 宮澤伊織『裏世界ピクニック』ネットロアネタ Arcadia出身カルロ・ゼン『ヤキトリ』 電書レーベル惑星と口笛ブックス創刊

    18年;藤田祥平『手を伸ばせ、そしてコマンドを入力しろ』 七士七海『異世界からの企業進出!?転職からの成り上がり録』 19年; もちだもちこ『ゲームでNPCの中の人やってます!』 緋色優希『ダンジョンクライシス日本』 小野美由紀「ピュア」SFM19.6初出→「HayakawaBooks&Magazines(β)」20万PV
  4. 33 ウェブ出身作家起用,ウェブ活用進む 19 U-NEXT電書サービス開始,20年読み放題.SF作家起用 20 VG+設立,オンライン公募賞かぐやSFコンテスト開始 北野勇作『100文字SF』ハヤカワ文庫JA 電書レーベル・ゲンロンSF文庫 21年;SF短篇アンソロジーに同人誌やウェブ発増え始める 江永泉,木澤佐登志,ひでシス,役所暁『闇の自己啓発』

    「日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト」@pixiv(さ なコン)第1回開催,以降毎年開催 SFM「異常論文特集」公募がTwitterで行われ21.6号掲載 12月同様の手法で「幻の絶版本」特集を提案し炎上,中止 22年;百合文芸小説コンテスト@pixiv「SFマガジン賞」
  5. 38 ウェブ小説の展開からわかるSF者の特徴 Innovator 時間 Early Adapter Early Majority Late Majority

    年代 80-90s 2000s ~2015 2016~ ウェブ小説 ビジネスの 成長度 ※イメージ ・新しもの好きと保守層の集まり 軌道に乗せて儲けるところにはいない ・初期参入者の経験が検証/継承されにくい?
  6. 39 ウェブ小説の展開からわかるSF者の特徴 Innovator 時間 Early Adapter Early Majority Late Majority

    年代 80-90s 2000s ~2015 2016~ ウェブ小説 ビジネスの 成長度 ※イメージ ・アーリーアダプタやアーリーマジョリティ の気持ちがわかってない可能性が高い ・普通の事業者ならやるところを外しがち
  7. 64 00s後半 リンク集から投稿PFへ 00 Arcadia開設 03 オリジナル小説投稿板 09 投稿作を改稿『アクセル・ワールド』刊 04

    小説家になろう開設 『ゼロの使い魔』二次創作隆盛 07小説を読もう! タグ,ランキング,検索整備 09 活動報告・ブクマ*等 11 『魔法科高校の劣等生』刊 *作家と読者のコミュニケーションを活性化
  8. 69 下記に加えてマンガの方が売れる事態に 30 50 82 100 105 108 106 102

    101 104 0 20 40 60 80 100 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 ラノベ単行本(ほぼweb小説書籍化)市場規模 ウェブ発ラノベ単行本推定発行金額
  9. 作家の 発掘・ 調達 企画の ジャッジ 制作 宣 伝 流通・ 販売

    他メ ディア 展開 既成 小説 出版 公募の 新人賞 数人での 編集会議 定性評価 雑誌→ 書籍化 書下し 雑誌 新聞 書店 流通 映像 化など ウェブ 小説 書籍化 PFランキング、 お気に入り などの数 ウェブ → 書籍化 PF SNS 書店 流通 映像 化など 72
  10. 94 00-10s前半の日本SFは大きな動き無し 95年パソ通→『福音の少年 錬金術師の息子』03年ぺんぎん書房→07年デュアル文庫 03年はてダ→08年GA文庫 林亮介『迷宮街クロニクル』 05 平谷美樹 角川春樹事務所サイト00-02掲載『時間よ止まれ』 07

    松浦理英子 「Timebook Town」04-07年連載『犬身』刊 センス・オブ・ジェンダー賞大賞(辞退) 08読売新聞yorimoヨリモノベル 森博嗣『スカイ・イクリプス』 刊 当時の会員数は21万 10 『ニンジャスレイヤー』Twitter連載開始 11年日本SF作家クラブ「SF Prologue Wave」開始 山本弘『MM9』,Webミステリーズ10-12年隔月連載,11-13年書籍化 12年藤井大洋『Gene Mapper』KDP,13年早川書房刊 ウェブ,電子がしくみ,体制を変えず
  11. 100 10s後半以降も文芸では… 17年上田岳弘『キュー』Yahoo!連載 ジェネラティブアート付 13年~メルマガ連載 村上龍『MISSING』 20年電書版では画像掲載 13年グループSNE のARG"3D小説bell" 14年書籍化

    ウェブ内の謎を解く,ニコ動コメントを使い人物 に次にすべき行動を示す,RPGツクールで作られた ゲームをプレイ提示された場所で謎を解く等々
  12. 109 やらなかった結果がこれ マンガは復活し、文芸は半減以下に 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

    7000 8000 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 日本のマンガ市場 (単位:億円)出版科学研究所調べ 紙のコミックス 紙のコミック誌 電子コミック(雑誌含む)
  13. 122 ストアで広く販売 無料で見込み客獲得 自社APPで新作 育成 自社APPで濃く販売 誘導 ・ 投資 理想

    特にファネルの設計に難あり. 間口広く呼び込み+濃い方へ誘導 の施策が小説では弱い(後述)
  14. 123 ただ小説とマンガでは市場規模が違う マンガ…6770億円 小説…700億程度 紙の推定;単行本ラノベ100億が販売金額で全体の 37.2%→小説全体では268億 文庫ラノベ108億から 108/37.2%=290億 単268+文290億+新書+雑誌=600億? 電書の推定;22年書籍新刊推定発行金額約3418億円の

    うち日本文学小説物語約641億円で全体の18.8% 文字もの電子書籍市場446億→小説446×18.8%=83億 紙+電子で小説市場は良くて700億円台 出版科学研究所「出版月報」2021.9,『出版指標年報2023年版』を元に計算および参照
  15. 99 キングRiding the Bullet,The Plant50万部直販 →DL後振込方式で課金率48%に低下,00年12月停止 ジョン・スコルジー"Agent to the Stars”

    シェアウェア公開、収益4000$→書籍版05年 02 『老人と宇宙』サイト公開→Torから05年書籍化、 ヒューゴー賞最終候補作。 「ぼくは長篇をオンラインで発表して大手出版社か らオファーを受けた最初のSF作家だと思う」 00s前半 多数のウェブジンが作られる 03 ドクトロウ『マジックキングダムで落ちぶれて』無料公開 北米
  16. 99 キングRiding the Bullet,The Plant50万部直販 ジョン・スコルジー"Agent to the Stars” 02

    『老人と宇宙』サイト公開→Torから05年書籍化、 03 ドクトロウ『マジックキングダムで落ちぶれて』無料公開 この時代からウェブでSFを読む/評価する/買う が芽生えていたからこの後につながる →日本SF作家ウェブに小説あげなさすぎ? SF版元が保守的なせい? 新作も出版契約切れの作品もUPしては? 人気作家,新人,中堅皆ウェブ公開してる
  17. 132 北米は10年代前半から着実に変化? 06 Clarkes World創刊.10sには世界のSFを翻訳 09年Andy Weir"The Martian"個人サイト連載,11年KDP, 14年ランダムハウス刊,15年映画化 10年発表ヒューゴー賞ゼミプロジン部門Clarkes

    World(06 年創刊)がウェブジン初、ファンジン部門StarShipSofaが ポッドキャスト初の受賞.CW誌は月$2.99の定期購読販売電 子雑誌.掲載作品はウェブで無料で読める オンラインマガジンLightspeed創刊,ウェブ版無料,号ごと 電子バラ売りと定期購読. 11-13Hugo賞最優秀セミプロジン賞最終候補,14-15年受賞 ※CWやLSあたりがVG+などのロールモデル?
  18. 136 北米は10年代前半から着実に変化? 12年Tor.com顧問編集者にWeird Tales編集長07-11 年Ann VanderMeerが就任,Hugo賞Fancast部門創設 13年Amazon.com Kindle World,ヴォネガットの 二次創作小説の電子書籍販売を可能に

    →紙雑誌は部数低減,賞の短篇部門にも紙発が減少 14年オンラインマガジンUncanny Magazine創刊,16- 20年Hugo賞最優秀セミプロジン賞受賞,16年ハオ・ジン ファン著、ケン・リュウ訳『折りたたみ北京』Hugo賞最優秀 中編小説賞受賞.同誌はウェブで掌編や記事を無料 公開,短篇含む雑誌全体は有料電書のみで読める
  19. 137 北米は10年代前半から着実に変化? 17 TumblrでAlexandraRowland"Hopepunk"提 唱,19VOX,20WSJ,Merriam-Webster等紹介→Mary Robinette Kowal”The Calculating Stars” won

    the 2019 Hugo Award for Best Novel , the 2018 18年アリクス・E・ハーロウ「魔女の逃亡ガイ ド」18年作Hugo賞受賞,Apex Magazine初出 Apex誌は電書隔月発行+最新号2か月かけ無料 ウェブ公開,短編podcast毎月制作
  20. 147 中国もプロ作家のウェブ投稿がよくある? 00-10s ウェブで穿越Chuanyue小説が隆盛・定着 06 郭敬明「最小説」創刊.紙雑誌だがwebにもup 09 無料SFオンライン誌「新幻界」創刊(現在消滅) 郝景芳作品なども掲載 10

    『三体III』発売後、宝樹がBBSに『三体0』投稿 12 郝景芳ハオジンファン,BBSに「乾坤と亜力」投稿 13 馬伯庸(マーボーヨン)ブログ「南方に嘉蘇あり」執筆 storycom,ClarkesWorldと提携,中国SFの翻訳促進 16 ファンダム母体に法人「未来事務管理局」設立, 毎日更新「不存在日報」開始,若手短篇集出版
  21. 148 中国もプロ作家のウェブ投稿がよくある? 09 無料SFオンライン誌「新幻界」創刊(現在消滅) 10 『三体III』発売後、宝樹がBBSに『三体0』投稿 12 郝景芳ハオジンファン,BBSに「乾坤と亜力」投稿 13 馬伯庸(マーボーヨン)ブログ「南方に嘉蘇あり」執筆

    storycom,ClarkesWorldと提携,中国SFの翻訳促進 16 ファンダム母体に法人「未来事務管理局」設立, →SFに企業参入,企業として働きかけアリ 日本はここが弱い.投資対象と見られてない 市場規模やSFのIPとしての期待値が違うが…
  22. 149 中国もプロ作家のウェブ投稿がよくある? 09 無料SFオンライン誌「新幻界」創刊(現在消滅) 10 『三体III』発売後、宝樹がBBSに『三体0』投稿 12 郝景芳ハオジンファン,BBSに「乾坤と亜力」投稿 13 馬伯庸(マーボーヨン)ブログ「南方に嘉蘇あり」執筆

    ただPFでウケる穿越のようなジャンルもあるが, 中国でも有料ウェブ小説PFでジャンルSFが 爆売れしていたわけではなさそう. PFでは高頻度更新の大長編がウケる. SF界では知的満足と構成力が重視される
  23. 156 韓国:00sにウェブ小説映像化権ビジネス成立 97 ハイテルにイ・ヨンド『ドラゴンラージャ』 連載、大ヒットでファンタジーブーム起こる。 99 パソ通ナウヌリにキム・ホシク『猟奇的な彼女』連載 01~ 小説カフェでクィヨニ作品が大ヒット 03

    ウェブ小説PF「JOARA」,06 MUNPIA設立(改称) 04 この頃ウェブジン鏡(ゴウル)始まる アマチュ アも自由に掲示版に小説掲載可,優秀短篇は執筆陣 に参加できた.既成文壇とは別にウェブ発SFが継続 05 科学ウェブジャーナルCROSSROAD設立,キム・ボヨン等掲載 00s? ジュブナイルSF叢書「アイディア会館」がpdfでDL可能に
  24. 157 韓国:00sにウェブ小説映像化権ビジネス成立 97 ハイテルにイ・ヨンド『ドラゴンラージャ』 99 ナウヌリにキム・ホシク『猟奇的な彼女』連載 01~ 小説カフェでクィヨニ作品が大ヒット 03 ウェブ小説PF「JOARA」,06

    MUNPIA設立(改称) ↑読者が作品を選ぶ,↓作家/編集が作家を選ぶ 04 鏡(ゴウル) 掲示版に誰でも小説投稿可 ウェブ人気→書籍化モデルでは ジャンルSFに適した作品が出づらい問題に 鏡らが取り組み,これが十数年後に結実?
  25. 161 無料で見込み客獲得 自社APPで新作 育成 好きになってもらった あとで有料販売 誘導 ・ 投資 理想

    日本では無料で間口広くアクセス, 商用利用できる非「小説PF」系の 有力ウェブ小説サービスが不足
  26. 162 無料で見込み客獲得 自社APPで新作 育成 好きになってもらった あとで有料販売 誘導 ・ 投資 理想

    日本では無料で間口広くアクセス, 商用利用できる非「小説PF」系の 有力ウェブ小説サービスが不足 がゆえに、日本から外販する際も どこにどうアプローチすべきかが, 紙ベースの発想になっていないか 顧みてもいいかもしれない
  27. 163 韓国:10年代半ばから作品,BMの輸出 17 キム・イファン『絶望の玉』双葉社でマンガ化 SFというよりデスゲームだが 18 ピッコマ「待てば無料」でノベル本格配信開始 19 チョン・ソヨン『となりのヨンヒさん』邦訳刊 ※非ウェブ発

    20 ピッコマ、韓国ウェブ小説の翻訳配信開始 19年SFアワード中短篇部門大賞シム・ノウル 「世界を終わらせるのに必要なジャンプの回数」 RIDIでwebtoon化 22 韓国の新興ウェブ小説PFノベルピア日本進出
  28. 168 韓国:SF作家がK-POPのIP展開に起用 22 キム・チョヨプ,LE SSERAFIM“ANTIFRAGILE” 特典小冊子にHYBEオリジナルストーリーの「プロ ローグ」に参加。「本編」はLINEマンガで読める カカオ代表「今後両社がシナジーを出せる分野は ウェブトゥーンとウェブ小説」 NAVERはHYBEと手を握り、BTSなどを主人公にした

    ウェブトゥーンを10ヵ国言語で同時公開。カカオも SMの主要歌手で同様の試みをするとみられる 「SM+カカオ、どんなシナジー効果を出すのか…···ウェブトゥーン、海外進出、協業に力を入れる見通し」,「ハンギョレ」23.4. 2
  29. 203 SFファン増には小中学生市場への参入も要検討 1,200 1,300 1,400 1,500 1,600 1,700 1,800 1,900

    2,000 2,100 2,200 600 650 700 750 800 850 900 950 1000 1050 1100 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 児童書販売額と14歳以下人口 販売額(億円) 14歳以下人口(万人)
  30. 204 00s以降,小中学生の書籍の読書冊数は倍増 6.8 6.3 7.1 5.8 6.5 6.4 6.7 5.4

    6.4 6.3 6.8 7.6 6.1 6.2 7.5 8 7.7 7.7 9.7 9.4 11.4 8.6 10 9.9 10.5 10.1 11.4 11.2 11.4 11.1 9.8 11.3 12.7 13.2 1.9 2.1 2.1 1.9 2.1 1.7 1.7 1.8 1.9 1.6 1.8 1.7 2.1 2.1 2.5 2.8 3.3 2.9 2.8 3.4 3.9 3.7 4.2 3.7 4.2 4.1 3.9 4 4.2 4.5 4.3 4.7 5.3 4.7 1.3 1.3 1.5 1.4 1.3 1.3 1.3 1.2 1.1 1 1 1.3 1.3 1.1 1.5 1.3 1.8 1.6 1.5 1.6 1.5 1.7 1.9 1.8 1.6 1.7 1.6 1.5 1.4 1.5 1.3 1.4 1.6 1.6 1.5 1.6 1.5 1.7 1.4 1.5 1.6 1.6 1.6 1.6 2.2 1.5 1.6 1.5 1.6 1.7 1.3 1.4 1.4 1.5 1.7 1.5 1.4 1.6 1.6 1.8 1.6 1.3 1.2 1.2 1.1 1.5 0 2 4 6 8 10 12 14 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2021 2022 書籍の月間平均読書冊数 学校読書調査、読書世論調査をもとに作成 小学生 中学生 高校生 日本人全体
  31. 205 00s以降,小中学生の書籍の読書冊数は倍増 6.8 6.3 7.1 5.8 6.5 6.4 6.7 5.4

    6.4 6.3 6.8 7.6 6.1 6.2 7.5 8 7.7 7.7 9.7 9.4 11.4 8.6 10 9.9 10.5 10.1 11.4 11.2 11.4 11.1 9.8 11.3 12.7 13.2 1.9 2.1 2.1 1.9 2.1 1.7 1.7 1.8 1.9 1.6 1.8 1.7 2.1 2.1 2.5 2.8 3.3 2.9 2.8 3.4 3.9 3.7 4.2 3.7 4.2 4.1 3.9 4 4.2 4.5 4.3 4.7 5.3 4.7 1.3 1.3 1.5 1.4 1.3 1.3 1.3 1.2 1.1 1 1 1.3 1.3 1.1 1.5 1.3 1.8 1.6 1.5 1.6 1.5 1.7 1.9 1.8 1.6 1.7 1.6 1.5 1.4 1.5 1.3 1.4 1.6 1.6 1.5 1.6 1.5 1.7 1.4 1.5 1.6 1.6 1.6 1.6 2.2 1.5 1.6 1.5 1.6 1.7 1.3 1.4 1.4 1.5 1.7 1.5 1.4 1.6 1.6 1.8 1.6 1.3 1.2 1.2 1.1 1.5 0 2 4 6 8 10 12 14 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2021 2022 書籍の月間平均読書冊数 学校読書調査、読書世論調査をもとに作成 小学生 中学生 高校生 日本人全体 詳しくは拙著 『「若者の読書離れ」というウソ』 『いま、子どもの本が売れる理由』 参照(ド宣伝)