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ボトムアップ限界を越える - 20チームを束る "Drive Map" / Beyond Bo...

ボトムアップ限界を越える - 20チームを束る "Drive Map" / Beyond Bottom-Up: A 'Drive Map' for 20 Teams

2026年4月28日開催の「Product Management Summit」で登壇した際の発表資料です。
https://product-management-summit.findy-tools.io/2026

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Transcript

  1. Product Management Summit 2026 ボトムアップの限界を越える 20チームを束ねる "Drive Map" 井上 英樹

    株式会社カオナビ CPO プロダクトプランニング本部 本部長 2026.04.28 © kaonavi, inc.
  2. 自己紹介 © kaonavi, inc. 2 キャリア EC業界 20年 大手向けECサイト構築・支援会社に新卒入社 PG

    → PL → PM → プロジェクト責任者 → 製品責 任者 100サイト以上の構築・支援を経験 ▼ 社会人20年目で初転職 2025年4月 カオナビ入社( PdM)  → 1年経過 転職で学んだこと フリーアドレスで席がない テレワーク主体で顔がわからない → 自社プロダクトを「社員辞書」として活用 前職の武器が通用しなかった 「社内調整力」「空気を読む力」は越境しない 越境して通用するのは 「背景を言語化する力」
  3. しかし、その裏で起きていたこと © kaonavi, inc. 9 20チームがそれぞれの「認識」「正義」で走る 優先順位 → 競合対策 /

    顧客要望 / 前任の引き継ぎ … プロダクト戦略のオーナーが事実上不在 全体最適の視点で判断する人がいない 「機能を作ること」がゴール化していた 事業インパクトの観点で説明できるチームがなかった 最大の課題 ビジョンと 開発チームの間に 翻訳レイヤーが なかった あるチームの半年ロードマップを見て「なぜこの順番?」と聞いたら、 誰も事業インパクトの観点で答えられなかった
  4. ピラミッドで考える「ボトムアップの限界」 © kaonavi, inc. 10 初期フェーズ ― 4角錐 Vision 戦略

    Team 1 Team 2 Team 3 Team 4 全員がビジョンを直接聞ける 0→1 が中心で迷いが少ない 正確なピラミッドが自然にできる 現在 ― 20角錐 Vision ??? 翻訳レイヤー不在 ??? ビジョンの解釈がチームごとに異なる 0→1 / 1→10 / 10→100 が混在 歪なピラミッド=価値が届かない
  5. プロダクトプランニング本部の設立 © kaonavi, inc. 12 • 開発本部長に課題感を共有 • プロダクト戦略とデリバリーを担う専門部署として 2025年10月にプロダクトプランニング本部を設立

    • そこから3つの施策を推進 01 プロダクト戦略の 明確化・言語化 事業戦略を開発目線で翻訳 やること・やらないことの基準 02 Drive Map の 設計と導入 全チームが「自分の位置」を 確認できる共通地図 03 「報告」から 「相談」への転換 会議体・コミュニケーションの 型を根本から再設計
  6. ① プロダクト戦略の明確化・言語化 © kaonavi, inc. 13 事業戦略の開発観点への翻訳 事業戦略を実現するために、 プロダクトとしてどんな戦略をとるかを 具体的に定義

    優位性(モート)の明示 「当社でないとできないこと」は何か 差別化の源泉を全チームで共有 やること・やらないことの基準 判断に迷った時の優先度を明確化 属人的な判断を排除 顧客セグメント別の共通言語化 顧客の課題・攻め方をセグメント別に 整理し、チーム横断で共有
  7. ② Drive Map ー 全チームの「共通地図」 © kaonavi, inc. 14 Drive

    Map とは 指示書ではなく、ナビゲーション。 全チームが「自分の位置と向かう先」を 同じフォーマットで語れる共通地図。 設計の意識 「なぜやるか」をチームに紐づけ 全チーム同一フォーマットで共有 情報の非対称性をなくす Drive Map の構造 目先だけでなく中期の目標を意識させ、「何をもって成功とするか」を各チームが自ら考える仕組み 開発部門 OKR チームゴール (半年後/1.5年後) 追いかける指標 (Metric) 事業KPIとの 接続 プロダクト 戦略 → → → →
  8. ② Drive Map ー 導入プロセスと工夫 © kaonavi, inc. 15 導入プロセス

    理想論だけでなく、文化を尊重 長年カオナビを牽引してきた PdMと一緒に、 これまでの文化も大切にしながら設計 パイロットなしで一気に導入 スピード感を重視。現場ヒアリングを 並行して設計に反映 走りながら改善 完璧を待たず導入し、運用しながら磨いた なぜ一気に導入したか パイロットだけでは 「他人事」になるリスクがあった 全チーム同時で 「共通言語」としての効果を最大化 「変わる」というメッセージ自体が 組織へのシグナルになる 作ることが半分、運用に乗せることが半分。 Drive Map は「作って終わり」ではない
  9. ③ 「報告」から「相談」への転換 © kaonavi, inc. 16 Before:やめたこと 情報共有型ロードマップ会議 月1回 /

    全チーム集合 / 一方通行の報告 アジェンダ:「今週やったこと」 報告を聞くだけで終わり 横の相談が生まれない PdM が自チームに閉じている プロダクト全体を俯瞰できない After:はじめたこと Slack 非同期アップデート 進捗は事前共有。会議時間を消費しない 戦略実行 Sync MTG 議題は「困りごと・判断が必要なこと」 → 3ヶ月で非同期+居残り方式に進化 プロダクト共創ボード 営業・CSの声をDrive Mapに接続 仕組みだけでは動かない。日常のコミュニケーションの「型」を変えることが不可欠
  10. 3つの壁と乗り越え方 © kaonavi, inc. 18 解消 権限のない中での影響力 PP本部長 ≠ 開発組織の上司

    Drive Mapを描く側だが、 実行する20チームは部下ではない まず「役に立つ人」に。 Give First で信頼構築 What/Why は企画、How は開発という線引き 解消 開発文化との融合 企画側の「こうすべき」に 開発観点での反発 文化の違いによる摩擦 What/Why と How の線引きを明確化 開発部長も兼務し相互理解を深めた 挑戦中 組織構造の限界 PdMがチーム埋め込み型で 「自チーム最適」に閉じがち 全体最適の視点が育ちにくい この4月に組織体制を変更 PdM組織の再編・役割分離を実施中 まだ道半ば。しかし、課題を構造的に捉え、 1つずつ解いていくプロセスこそが価値 → → →
  11. トップダウンの結果、ボトムアップが加速した © kaonavi, inc. 19 ミドルPMの自律性が向上 戦略の「なぜ」が明確になり判断速度が向上 Discovery ⇔ Delivery

    のサイクルが加速 「確認待ち」→ 「自分で判断して動く」へ 若手PMの視野が拡大 機能開発が「点」→ 半年後・1年半後の ゴールを見据えた提案ができるように 目の前のタスク → 中長期を語れるPMへ チーム間の対話が自然発生 他チームのDrive Mapが見えることで 横連携が自発的に発生するように 自チーム最適 → プロダクト全体への意識 正しいトップダウンがボトムアップを解放する。二項対立ではなく、両輪で回す
  12. 1年の軌跡 © kaonavi, inc. 20 〜3ヶ月 聞く 組織の状態把握 関係値構築 「聞く側」に徹する

    〜6ヶ月 体現する 開発部長として 現場に入り込み 実態を把握 〜9ヶ月 描く・変える Drive Map設計 会議体の再設計 共創ボード導入 〜12ヶ月 組み替える PdM組織の再編 役割分離の設計 体制変更の実行 12ヶ月〜 つなげる CPO就任 経営と現場を つなげる構造へ
  13. 3つの持ち帰り © kaonavi, inc. 21 01 ボトムアップ文化は「翻訳レイヤー」なしでは規模に耐えられない ビジョンがあること、現場が優秀なこと どちらも必要条件だが十分条件ではない。その間をつなぐ構造が必要 02

    Drive Map は「管理ツール」ではなく「共通言語」 全員が同じ地図を見て会話できること。作ることが半分、運用に乗せることが半分 03 ボトムアップを活かすために、あえてトップダウンの構造を作る 矛盾に聞こえるが、翻訳レイヤーを担い、 現場の自律性を正しい方向に解放するのがシニア PMの仕事