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Yasunobu Kawaguchi
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October 24, 2026
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セッション採択はどう決まり、「よいセッション」とは何か
オープンプロポーザル実行委員17年目の裏側と、その先にある学びの話
Yasunobu Kawaguchi
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October 24, 2026
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Transcript
セッション採択はどう決まり、 「よいセッション」とは何か オープンプロポーザル実行委員17年目の裏側と、 その先にある学びの話 川口恭伸(YesNoBut株式会社 / RSGT / 品川アジャイル) スクラム祭り
2026 2026-10-24
かわぐち やすのぶ 川口 恭伸 X: @kawaguti YesNoBut株式会社 代表取締役 / アジャイルコーチ
一般社団法人スクラムギャザリング東京実行委員会 代表理事 豊橋技術科学大学 非常勤講師 品川アジャイル
今日話すこと/話さないこと 1 採択はどう決まるのか 17分 2 「よいセッション」とは何か 12分 3 よいプロポーザルとは何か 8分
4 Output / Outcome / Impact 5分 • 話さないこと:ウケるプレゼン術、通るプロポーザルの書き方 • 否定はしません。今日は個人視点ではなく、コミュニティ視点で考えます
1 採択はどう決まるのか 実行委員会の中で起きていることを、ネタバレします
1 オープンプロポーザルとLike投票 • ConfEngineの無料アカウントでログ インすれば、誰でもLikeを付けられる • カンファレンスごとに持ちポイントが あり、ゼロになるまでLikeできる。取 り下げれば戻る •
新しくプロポーザルを投稿したり、コ メントを付けたりすると、ポイントが 増える • 貢献でポイントが増える = 参加の仕組 みになっている
1 Likeが表しているもの、表していないもの 表している 表していない • ConfEngineにログインした 人の中で、どのくらい支持を 得ているか • 参加したい人の数を予測する
手がかり • 全来場者の声 • テーマがカンファレンス の全体像に合うかどうか Likeが多いのに採らないなら、説明を用意する。実行委員会では必ず議論します
1 「一軍」で骨格を作る:最後と最初の枠から 基調講演 ランチ ランチ明けの最初の枠【一軍】 あとから埋める枠 あとから埋める枠 最後の枠【一軍がそろう】 • Likeが特に多く、内容もふさわし
いものを「一軍」と呼ぶ(基準の 数はその場で決める) • 最後の枠は一番新しい記憶。前向 きで学びの多い一日だったかを左 右する • ランチ明けは午後を盛り上げる起 点
1 20分×2、45分、100分ワークショップ 20分 20分 45分 他のセッション 45分 100分 2本を組み合わせて45分の枠に そのままスロットに納める
休憩15分 他のセッション 45分 ワークショップ部屋で20名程度、休憩なしでじっくり手を動かす • 骨格ができたら、カテゴリのばらつきを見て入れ替える • 似たテーマが裏番組になっていないか?
1 Likeが少なくても、落選にはしない Likeが少ない理由には、2つの可能性がある A B 参加したいと思った人が少 なかった 投稿が期限ギリギリだった だけ(期間が短かった/み んなポイントを使い切って
いた)
1 テーマを寄せてトラックを作る • 一軍以外でLikeが多いものを中心に、近いテーマで流 れを作る • 同一組織からは3枠まで。同じ会社の事例はまとめて 45分にしてもらうことも • 修正や長さの相談が要るものは「パーキングロット」
へ。課題のないものから全体像を作る • ここで80〜90%の枠を埋め、全員の目に具体的な セッション名が見える状態で議論する
1 空き枠は実行委員推薦で • Likeは多くなくても、 テーマに特徴があり、 Like上位だけではカバー できない分野を推薦で議 論 • 投稿が遅かったセッショ
ンにも、ここで可能性が 残る 投票が起きるのは、ここが初め て • 意見が割れたら多数決。それ までは投票せず、実データを 見ながら議論で決める • 6〜7人だから具体的に素早く 決められる。スクラムの開発 チームと同じ
1 参加者ペルソナでウォークスルー ペルソナ1 A 1枠目 2枠目 3枠目 ペルソナ2 B C
• 仮組みができたら、いくつかの ペルソナで「どの順に選びそう か」をホワイトボードに線で引 く • 線がなるべく縦にまっすぐ伸び るように。同じテーマを追う人 が部屋を移動せずに済む • ユーザーストーリーマッピング やスチールスレッドに近い
そして、寝かす。 • 対面の議論は速い。でも一時の熱狂で決めて 後悔したことは、誰にでもある • 「ひとまず完成!」で手を止め、数日の冷却 期間を置く • 一晩寝ると、おかしな点や見逃しに気づく。 来られなかったメンバーも追いつける
落選とは「落とした」のではなく、 「入れられなかった」 ということ さまざまな理由で採択を試みたけれど、全体の中に入れられな かった。何かの理由で落とされたわけではありません
1 実は手間がかかるのは、ここから 登壇意思確認 メール原稿を用意して、採択者に意思を確認する 補欠リスト 辞退が出たら組み直せるよう、先に合意しておく 落選者へ 連絡と、何らかのベネフィット(例:チケット枠の優先確保と割引) 票読み 月次キャッシュフロー表を更新し、チケットを一枚単位で数える
複雑にしてもカンファレンスの価値は上がらない。もっと楽をし よう、がコンセンサス
1 これは、プロダクトオーナーシップの話でもある セッション採択では プロダクトバックログでいえば Likeは一つの指標 → ステークホルダーの声だけで並べない 一軍で骨格、最初と最後から → 体験を左右する部分から形を決める
テーマを寄せてトラックに → テーマやエピックで流れを作る 実行委員推薦で空き枠を → ペルソナでウォークスルー → ユーザーストーリーマッピング 寝かす → 熱狂の直後に確定せず、見直す 数字に出ない価値と多様性を判断する
2 そもそも「よいセッション」とは何か 採択の手前にある問い。まず、聞く人にとって
2 参加者の時間をいただくということ 1 参加者は、複数のセッションから「選択」している 2 つまり他のセッションを諦めて、あなたの45分に投資している 3 その時間は、二度と戻ってこない
2 ミスマッチを避けるのは、必要条件にすぎない タイトルと内容の ズレ 「実践」とある のに理論の話だ け 対象者が不明確 約束の不履行 マネージャー向
け?実践者向 け? 示唆した学びが 提供されない でも「期待通りだったけど、何も新しいことはなかった」では、 その時間が活きたとは言えないかもしれない
2 知識の3層構造 形式的知識 理論、考え方、本で読んだこと ⇅ 統合された理解 両者が結びついた、使える知識 ⇅ 素朴理論 •
人は何も知らないから学ぶので はなく、何かが分かり始めてき たからこそ学ぶ • 聞いて、こう考えてやってみた。 結果どうだった。またどう考え た。その往復で理解になる 自分の実践から生まれた経験則 出典:三宅芳雄・三宅なほみ『教育心理学概論〔新訂〕』放送大学教育振興会
2 よいセッションが参加者の中で起こす4つのこと 1 スピーカーの考え方・実践が語られる 2 自分の素朴理論と照らして「ああ、あれはこういうことだったのか」 3 または「自分はこう思っていたけど、別の見方があるのか」と揺さぶられる 4 自分なりに解釈して、やってみたくなる
だから必要なのは、スピーカー自身の素朴理論(失敗・葛藤・試行錯誤)が見える こと、考え方と実践の往復が語られること、対話できる余白があること
2 学びの遅延発火 結びつきはセッション中に起きなくてもいい。ただし、体験が悪 いと発火しない よい体験なら よくない体験だと • もう一度振り返ろうとなる • 頑張ったことくらいしか
わからない • 話すきっかけにならない • 社名くらいしか覚えてい ない • スピーカーのSNS投稿に反応す る • 「あれ良かったよね」と話す • やってみて、わからなければ聞 く
2 ウケるプレゼン / よいセッション ウケるプレゼン よいセッション スピーカーの話を「わかり やすく」伝える 参加者が自分の経験と対話 しながら、理解を深める場
になる
3 だから、よいプロポーザルとは何か よいセッション体験は、よいプロポーザルから
3 プロポーザルは、参加者への最初のコミットメント プロポーザル → 最初のコミットメント セッション概要 履行の宣言 → セッション その実現
大事なのは一貫性。内容をなるべく誠実に書くことから始まります
3 「ネタバレするくらいに書きましょう」 陥りがち よりよい 内容を隠して 「気になる」と 思わせ、選んで もらう 内容を明示して「まさに求めて いたもの」と思ってもらい、適
切な人に選んでもらう • ミスマッチを防ぎ、参加者の時間を活かせる • 本当に必要な人に届く • スピーカー自身の約束も明確になる
3 アウトラインは、スライドの設計図になる ConfEngineの欄 アウトラインの役割 • Abstract:全体像 • Outline:話の流れ、構成 ★ •
Learning Outcome:参加後に何が できる・わかるか • Target Audience:具体的な対象者 像 1. 審査:内容を具体的に評価できる 2. 採択後:スライドの設計図。脱線し ない 3. 参加者:事前に把握でき、後日の索 引になる 今日のスライドも、プロポーザルのアウトラインをそのまま骨格にしています
3 AIに頼めること、本人にしか書けないこと 生成AIに頼める 本人にしか書けない 細部の肉付け、構成の整理、 分量。量が多いことはもう 大きな問題ではない 核となる実践、素朴理論、 そして葛藤
3 採択されなくても、プロポーザルには価値がある 1 採択される そのカンファレンスで話せる 2 別の場で活きる 他のカンファレンスの実行委員や、地域の勉強会の主 催者が見つける 3
人とつながる 同じ課題を持つ人がコンタクトしてくる。実践者同士 の発見装置 4 取り組みが見える 毎年出す人の成長が見える
3 そのための日々の過ごし方 実践と素朴理論を蓄積する 考え方と実践を往復し、失敗や葛藤を咀嚼して血肉に する 言語化を習慣にする アウトラインを書くこと自体が思考の整理になる フィードバックに開く 完璧でなくていい。完璧でないからこそ対話が生まれ る
他者のセッションに深い興味を テクニックではなく、背景の実践と思考のプロセスに 語るべきは完璧な成功談ではなく、試行錯誤のプロセス
3 余談:「初心者歓迎」を掲げない理由 • ハードルはできる限り下げた い。誰にとってもフレンド リーでありたい • でも、初心者だけが尊いわけ ではない •
入り口で迷っている人には手 を差し伸べたい。ただ、お風 呂の温度を確かめたい(Test the Waters)時もある 正統的周辺参加:みんなが場を 支えている • 実行委員:年間を通して場を継続させる • スタッフ:仕事を休み、聞きたい回を我 慢して • 登壇者:時間を投資して知見を共有する • スポンサー:予算を確保し、目的と場を 整合させる • 参加者:最も多く、最も多様な、主役
4 Output / Outcome / Impact そして、コミュニティへの参画
4 登壇で得たい成果は、スライドの先にある Output スライドや発表概要。 必要だけど、それだけ では足りない Outcome Impact 試してみること 功と幸福が上がること
→ 参加者が持ち帰って、 → コミュニティ全体の成 参考:Jeff Patton 基調講演(RSGT2025)
4 登壇だけが参画ではない • Likeやコメントを付ける:それ自体が 採択を支え、ポイントも増える • 他者のセッションを深く聞く:その人 の実践ごと受け取る • スタッフ、スポンサー、参加者として
場を支える 開く人が増え、深く受け取る人が増える。その相互作用で、対話の質が上がる
4 はじめてプロポーザルを出そうとしている方へ 不安 期待 • 人の前で喋るのは、とて も大変なこと • 一度も話したことがなけ れば、圧倒されてしまう
• 私がやっていることには、価値があ るかもしれない(強く信じている) • 他の人に聞いてもらいたい • もっといろんな人と知り合って、楽 しく過ごしたい 皆さんのやっていることに価値があるのは、間違いない。スクラ ムギャザリングやスクラムフェスは、それを尊重できる場です
100人全員に、話す価値があったとしても 100人の話を、 100人が聞くことはできない • 100人に聞かせることはできても、 100人の話を聞くことは物理的に成立 しない • それが、カンファレンスの「トーク」 という形式が抱える課題
4 だから、プロポーザルは名刺代わりに出す • まずは、出す • 「私はこういうことをやっている /考えている/成し遂げたい人間 です」とアピールする • 通らなかったとしても、その場に
行って、話しに行く。主体的に 話すことが、最大のゴールではない
4 話し合った、その先にあるもの 洗練される 話し合う 考え方やプラ クティスを持 ち寄る → 周りの人たち と、より一緒
にうまくやれ る インパクト 毎日の活動が変わる → 価値が増え、失 敗を避け、お互 いを認め合える → 給料が上がる、 売上が上がる、 笑顔と「ありが とう」が増える 他の人にとってなくてはならないもの、あなたにしか提供できな いものを提供できるようになる
4 考え続けると、だんだん辛くなる • なくてはならないものを提供するのは、 簡単ではない。ずっと考え続けなければ いけない • 考え続けると、だんだん辛くなる • だから人に見せて、フィードバックをも
らう • 高め合って、褒め合って、辛いところは 慰め合う これが、カンファレンスという場の基本的な構造だと信じています
ここには、 社会があります • あなたの毎日の活動には、価値が ある • それを信じればこそ、自分に自信 を持つほど、周りの人の価値も認 めてあげられる
4 良さが分かるのは、とても高度な認知 • 同じことを志し、試し、失敗し、学んでいなければ、相手の良 さは感じ取れない • 相手がトライしている大きな勇気、透明性、言語化の能力 • 近しいことをやっていなければ、その詳細度で相手を認めてあ げることはできない
話せるようになることも大事。でも相手の話を受け止めることは、もっと重要
4 受け止めるスキルを高められる場所は、どれだけあるか フィードバックをもらう フィードバックをする 自分のいる場所を、他の人 に聞いてもらう 人の話を聞いて、相手に とって意味のあるフィード バックを考える 高密度な人との関わり合いの中で、それを考え続けながら行動する
4 高密度な関わり合いの中で 失敗しても大丈夫 お互いを、相手をリスペクトする 自分より相手 その中で自分も貢献し、自分も生かされる 受け止めてもらう勇気 生かされること、受け止めてもらえることに勇気を 持つ 負荷をかけすぎない
相手も人間です。全員が人間です
4 自分のことばかり考えていると 自分のことばかり 自分も相手もうまくなる • うまくいったことを言え れば、気分が良くなる • 相手の話を聞いて、自分 ができていないと不安に
なる • お互いがウィンウィンに なる • 細かな関係性をすべて成 立させることで、良い社 会、良い周りが成り立つ そこには細やかなコミュニケーションのスキル、人間としての熟達が必要
4 頭で考え、本で読んだだけでは分からない • 本当にできるかどうかは、試してみる必要がある • それをする場所が、コミュニティ。ギャザリング、ス クラムフェス、カンファレンス • その大きな世界観の中の一つの要素が、プロポーザル を出すこと
素晴らしいプロポーザルの元になるのは、毎日の活動
4 毎日、周りの人と何を話していますか 「これできました、これで きました。どうですか、ど うですか」ばかり 周りの話を聞いています か? 周りがうまくいっているか を、どう気にしています か?
4 プロポーザルは、フィードバックを受ける行為でもある 透明性 毎日の活動と考えを、 プロポーザルで開く 検査 適応 ドバックを受ける させる →
聞いてもらい、フィー → 考え方と実践を、洗練 プロポーザルはアウトプットであると同時に、スクラムの透明 性・検査・適応に通じる
4 昨日のキーノートから アジャイルは死んで、アジリティが継続する —— 島田浩二さん「Let's Change Our World—Again」スクラム祭り2026 デーブ・トーマスの Simplicity
を中心に、アジャイルとアレグザンダーをまとめて • 中心には、人がものを作るとい う、確固たる活動がある • 世界があるべき姿に修復されて いくように、世界を手助けして いく
あなたの魂(Agency)を 入れなかったら、何も動かない • 落ち着いて、大丈夫。外に出て、話 し合いながら • 全ては学びだ。もっと私たちは上手 くなっていける
4 あなたのプロポーザルは、どちらですか カンファレンスの真ん中で、 全員に聞かせるもの 一人の話題提供者として、 みんなの話し合いを実りあ るものにする一歩 (参画者・貢献者・コント リビューターとしての一 助)
あなたのプロポーザルは、 花を一本、生ける • 生きている花を一本生けて、それを みんなで話し合う。その一本 • 一本一本、花を咲かせていこう(昨 日のキーノート)
4 パターンの一つ一つは、花の一本一本かもしれない • アレグザンダーのパターン・ランゲー ジは、一つ一つのパターンで構成され ている • 組み合わせて全体を作れるように、そ こにいる利用者に選択肢を与える •
パターンの一つ一つは、もしかしたら 花の一本一本かもしれない それを生かすのは、使う側
4 カンファレンスという、全体の活動 花を見る このカンファレンスで 作られる、一本一本の セッション 話し合う 生ける、育てる → 花について語り合い、
→ 私の花を、私の場所に 知的コンバットを重ね る
4 自分の花は、どうなっていると役に立つか • そうした全体像を意識しながら • 自分のセッションは、どうなって いると皆さんの役に立つかを考え る • 周りに話を聞きながら、少しずつ
高めていく この行為は、すごく訓練になる
人に話を聞いてもらうことは、 全ての活動の根源にある • 何かを提案して、何かをやらせて もらう • その価値を認めてもらって、対価 をもらう = 経済活動の核心にあ
る、とても重要なスキル
あなたの実践と思考には、 価値があります 採択された方も、されなかった方も。ひとつのカンファレンスは、 数多くある場の一つにすぎません。ぜひ、次の一歩を。 • RSGTのセッション採択はどのように決まるのか(2018) • https://kawaguti.hateblo.jp/entry/2018/12/03/002216 • よいセッションとは何か?(2025)
• https://kawaguti.hateblo.jp/entry/2025/12/16/230723